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『愛の本能』byRiko
「なぁ悟空、この世界に生息するありとあらゆる生物というのはね、 一見すると個々が勝手に動き、生きているように思えるけれど、実は そうではないんだよ。ある視点から系統立てて捉えてみると、『一定 のメカニズム』というべきものが存在するんだ。まぁ僕がやっている 『学問』という代物は、如何にそれを発見出来るかということなんだ けれどね。」 砂糖をたっぷり入れたミルクティーを悟空に差し出して、楊は秘密を 打ち明ける子供のような顔で笑う。悟空は湯気の立ち昇るカップに口 をつけ、ひょろりと背の高い、少なく見積もっても自分より十は年上 であろう彼を見上げた。 楊に出会ったのはごく最近のことだ。ある日街をブラついていた悟空 は、繁華街の大通りをよろよろと歩いていた彼とぶつかった。久々に 買出しに来たのだという彼は外見どおりに非力で、両手一杯の荷物に 大層難儀していた。見かねた悟空はその荷物を引き受け、目的地まで 運んでやったのだ。着いた所は『大学』とかいう、自分が暮らす寺院 と比べても見劣りしないくらい大きな建物で、何度も何度も礼を繰り 返した楊は、悟空を『研究室』という部屋に招いてお茶と菓子を御馳 走してくれた。その部屋には雑多に様々な物が積まれた幾つかの机と、 見渡したら目眩を起こしてしまいそうな膨大な書物、それと悟空が今 まで見たこともない、珍しい道具が沢山あった。キョロキョロと辺り に視線を巡らしながら「あれって何?」を連発する悟空に、楊は面倒 な素振りも見せず、一つ一つ丁寧に答えてくれた。 そうこうするうちに日が暮れて、寺院に帰る悟空を楊は街まで送って くれた。「また遊びに行ってもいい?」と尋ねると「いつでもおいで」 と、眼鏡越しの瞳が柔らかく笑った。 それまで寺院以外の世界をほとんど知らずにきた悟空にとって、楊の いる大学の研究室という所は、見る物聞く物全てが新鮮で驚きに満ち た、まるで玩具箱のような場所だった。 また悟空は、楊の人柄そのものも好きだった。どう見ても遥かに年上 である筈の彼は、大人ぶった偉そうなところが少しもなくて、まるで 同年代の少年のように笑い、語った。何より彼は、決して悟空を子供 扱いして見下ろすことをせず、あくまで対等な友人として接し、日々 の出来事や自分が研究している学問について語って聞かせた。楊の話 の内容は、時には半分も理解出来ないこともあったが、それでも悟空 には充分面白かった。 今まで悟空の周りには、こんな風に一つの物事を大変な熱意を持って 話す人物はいなかったからだ。 「『一定のメカニズム』って、例えばどんなこと?」 早速悟空は、頭に浮かんだ疑問を口にする。楊は悟空の正面の椅子に 腰を下ろし、自分も手に持っていたカップに口をつけた。 「そうだなぁ…例えば、ほとんどの動物には雄と雌、つまり男と女が いて、男は女を女は男を選ぶわけなんだけれども、それらは全て次世 代へと確実に自らの血脈を繋ぐ為のメカニズムとして深層意識に組み 込まれているわけさ。愛情も、そして時として嫉妬と表現される感情 でさえもね。」 「嫉妬って…ヤキモチもってこと?」 「そう。まぁこれは人間の話だけれども…浮気が発覚した場合、男は 女そのものを責めるけれども、女は相手の女を責めるというパターン が多い。それは何故か?女の方がより感情的だからだなんて言う人も いるけど、実際はそんな単純な問題じゃない。それもまた血脈を残す 為のメカニズムの一環なのさ。男は女に浮気をされれば、生まれてく るのが自分の子だという確証が揺らいでしまう。下手をすれば、全く 自分の血を残せない恐れがある。でも女はそうじゃない。生まれた子 は全て間違いなく自分の子だ。だが、その為に選んだ男が他の女の方 へ行ってしまえば、これもまた自分を次世代へと繋げられない危険性 が出てくる。だから男は女を責め、女は女を責めるんだよ。感情だけ で左右されていると思われがちなこんなことにさえ、自らを残そうと いう『本能のメカニズム』はしっかりと作用しているわけなんだね。」 楊の話に熱心に聞き入っていた悟空だったが、やがて視線を俯かせ、 ぽつりとこんなことを呟いた。 「じゃあさ…そしたら、自分を残す為じゃないSEXって、何の為に あるのかな…?」 外した眼鏡を軽く拭いていた楊の手が、ピタリと止まる。自分に注が れている楊の視線に気付いた悟空が、顔を上げた。 「ゴメン…俺、ヘンなこと言った?」 「え?い、いや、そうじゃなくて…悟空からそういう話題が出るのが ちょっと意外だったから…こっちこそゴメン。もし話すのが嫌じゃな かったら、続き、聞かせてよ。」 慌てて首を振って見せた楊は、眼鏡を掛け直してから、いつもどおり の笑みを悟空に向けた。悟空は安心したように小さく息をつき、再び 口を開いた。 「…俺の相手の人はね、男の人なんだ。俺は最初の人がその人だった から、それを特別ヘンだとか思ったことなかったんだけど…街で仲良 くなった女の子とかさ、『可愛い』とは思っても、だからってそれで どうこうなりたいとかは、別に思わないんだよね…」 「その、相手の人はどうなの?」 「…たぶん、女の人とシたことも、あると思う…でもそれも特別の人 とかじゃなくて、そういう仕事の、お姉さんとか…」 「フーム…なるほどね…」 たどたどしい悟空の説明に「うんうん」と楊が頷く。暫しの間、沈黙 が二人を包んだ。 やがて楊が、少し躊躇いがちに会話を再開した。 「あのね…これはきちんとした学説でも何でもなくて、あくまで僕と 友人との雑談の合間に出てきた話だから、その程度のこととして聞い てほしいんだけど…」 「うん…?」 「えーっと…他の動物にはそういう現象があるのかはよくわからない から、人間に限っての話になるけど…悟空達だけじゃなく、その衝動 が『自分を残す』って方向に向かわない人は他にも沢山いるわけで、 じゃあそれは何故なんだろうって話になった時さ、僕の友人はこんな ことを言ったんだ。『自分を残そう』という本能のメカニズムがある のなら、それとは逆の『自分を残すまい』とする抑制のメカニズムの ようなものも、また同時に存在するんじゃないか…とね。」 「抑制の…メカニズム?」 「そう。つまり血脈を『繋ぎたい』ではなく『断ち切りたい』という 反作用の深層意識だよね。それは増え過ぎることを防ぐ為か、はたま た文化の成熟度の問題なのか…なんてことを話したことがあったんだ けど…」 楊の話がそこで一度途切れた。自分を見上げている悟空の眼差しが、 そのあどけない面持ちには不似合いなほど真剣なのを見て取ったから である。楊は手近の机にカップを置き、その両手をポン…と悟空の肩 に乗せた。 「楊…?」 「そんな思い詰めた顔をしないでくれよ。これはあくまで可能性って いう話さ。あらゆる可能性を考えてみるということが、学問だからね。 実際はそんな単純に割り切れるものじゃない。自分を残さないという 理由だけだったら、最初から一人でいた方が簡単だけど、やっぱり人 は、相手を求める。それが恋愛感情という形じゃなくてもね。例えば 今こうやって僕と悟空は、向かい合ってお茶を飲み、話をしている。 僕達は歳も全然違うし、お互いに何か凄い便利なわけでも得するわけ でもない。でも僕達は友達だろう?それを論理的に説明しろと言われ たって、できっこない。心の問題は本当に微妙で、それこそ千差万別 だからね。その複雑な様々な事柄の中から『揺るがない真理』とでも 言うべきものを、僕達研究者は探し求めているんだよ。」 気落ちしてしまった様子の悟空に諭すように、しかし子供扱いで誤魔 化そうとはせず、楊は静かな声でそう語った。 『抑制のメカニズム』と、楊は言った もし本当にそんなモノがあるんだとしたら 「自分を残すまい」って気持ちがそうさせるんだとしたら たまたま一番身近にいるのが俺だから たまたま今はその気持ちが俺に向かってるってコト…? …マズイ。マジでヘコンできた。でも…… 「おいサル、帰ってきて早々何をボーッとしてやがんだよ?」 三蔵の声に不意に意識を引き戻された悟空が、そちらを振り返る。 『あぁ、そういえば俺、帰ってきてたんだっけ』などと考えながら、 悟空はぼんやりした表情で「ゴメン」と呟いた。そんな悟空の様子 に、三蔵はチッと小さく舌打ちをした。 「ところで…昼間テメェと街を歩いてたヤサ男は何者だ?」 「へ…?あぁ、楊のことかぁ…確かにヒョロヒョロで力も無いけど、 ヤサ男はひでぇなぁ。最近友達になったんだ。街からちょっと北へ 行った所に『大学』ってデカイ建物があるじゃん?そこで研究って いうのをしてる奴なんだ。」 「大学の研究員だぁ?どう考えたってそんな野郎とテメェじゃ話が 噛み合わねぇだろうが。」 「ンなことないよ。あそこ、珍しいモンがいっぱいあって楽しいし …それに、楊はあんま俺のこと子供とかって思ってねぇんじゃねぇ かな?わりと普通に自分の研究の話なんかするし。だから言ってる ことの半分もわかんねぇ時もあるけど、でも楊の話は面白いよ。 一つのことをあんなに一生懸命考えてる奴って、初めて会ったし。 今日もさ…」 いつもの調子を取り戻しかけていた悟空の声がふと途切れ、その顔 にまた、心此処にあらずといった表情が浮かぶ。三蔵は少々乱暴な 手つきで、まだ吸いかけだった煙草を灰皿に押し付けた。 気に入らない。 自分の知らない所で知らない人間に懐いていたのも 全く無防備に間抜け面を晒していたのも 多少聞きかじってきたことで 足りない頭を悩ませているのも 何もかもが、気に入らない。 「…ンだよ。言いたいことがあんなら、はっきり言え。」 「えっ…うん…あのさ、三蔵は…子供欲しいと思ったコトある?」 「はぁ…?」 悟空の口から出た言葉があまりに予想外だったので、三蔵は不機嫌 の真っ只中だったにも関らず、間の抜けた声を上げてしまった。 だが、みつめてくる悟空の瞳は至って真剣だ。 「お前なぁ…今更だが、俺の職業わかってるか?」 「もちろんわかってるよ。でも『坊さんだからダメ』とかいうのは 抜きで、産んでくれる相手の人が誰かとかも置いといて、三蔵が、 『自分を次の世代に残す』子供が欲しいかって訊いてるんだ。」 (…なるほど。その野郎はその手の分野の研究とやらをしていて、 今日の話のテーマはソレだったわけだな。) 三蔵は椅子の背にドサリと身体を預け、大きな溜め息を吐き出した。 「自分を次の世代に残すだと?ゾッとしねぇな。何だってンなこと しなきゃなんねぇんだ。大体、てめぇの子供だっつってもあくまで それは別の人間で、俺自身なわけじゃない。俺は、俺一人で充分だ。 自分のカケラを繋ぐ人間なんて要らねぇよ。」 「…やっぱ、そっか…」 三蔵の答を予想していた口ぶりで、でも何処かもの哀しげに悟空が 微笑う。三蔵の胸の内の苛立ちが、更に増した。 「何勝手に自己完結してやがんだよ、何だってそんな突飛なことを 訊く気になったのか、その過程をきっちり聞かせろ。」 「あ…えーっと、さぁ…」 責めるような三蔵の声に、どう伝えたらいいのか暫し逡巡を見せて いた悟空は、困ったような表情で首を振った。 「…上手く説明出来ないから、やっぱいいや。今の話は、無し。」 「『やっぱいいや』じゃねぇだろ、訊いてんのは俺の方だぞ?誰も お前がわかりやすく説明出来るなんて思っちゃいねぇよ。とにかく、 洗いざらいしゃべっちまえ。」 一方的にこの話題を打ち切ろうとした悟空の態度に、三蔵の口調は 益々厳しくなる。俯いて唇を噛んでいた悟空は、やがてぽつぽつと、 先刻楊と話してきたことを語り始めた。 とは言っても、何せ語り手はあの悟空である。当然ながら楊のよう に理路整然と話をまとめられるわけもなく、話の内容があらぬ方向 へ飛んだり、行きつ戻りつを繰り返したりで一向に先に進まなかっ たりということもあったが、「洗いざらい話せ」と自分から言って しまった手前、時に軌道修正を加えながら、三蔵は彼にしては珍し いくらいの辛抱強さで、その話に耳を傾け続けた。 「…で?その『抑制のメカニズム』とやらが俺の中にも存在して、 それがたまたまそのテの欲求がお前の方へ向かうようにしている… なんてくだらねぇコト勝手に考えて、一人でヘコンでたんじゃねぇ だろうな、オイ?」 悟空のまとまりに欠けた話をひととおり聞き終えた後、苦々しげに 三蔵は言い放つ。 全く、学者を志すなんて人種はロクな奴がいない。 「普遍の真理」なんてモンを探究するのは勝手だが、ただでさえ脳 みその容量の少ないこの猿に、中途半端な知識を刷り込まれるのは イイ迷惑だ。 だが意外にも、悟空は真っ直ぐに三蔵を見据え、再び首を振った。 「…違う。確かにそれも考えたし、それでちょっとヘコンだりとか もしたんだけど…でも…」 でも、本当のヘコミの理由はそこじゃない。そうじゃなくて… 「自分を残したくないってことは、自分のことが好きじゃないって、 そういうことなのかなって…思ったんだ。もし三蔵がそう思ってる んだったら、それが一番淋しくて、哀しくて、イヤだなって…そう 思って…もし三蔵の子供を産みたいと思うくらい三蔵のこと好きに なってくれる人が現れたら…三蔵の気持ちも、ちょっとは変わるの かなぁって…さ…」 『お前を選んだのはたまたま偶然だ』と言われるより 大好きなこの人が自分自身を好きじゃないのかもってことの方が 俺にはずっと淋しくて哀しい もしその気持ちを少しでもいい方向に変えられるなら その時横にいるのは、俺じゃなくても構わない 三蔵は新しい煙草に火を点け、深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐き 出した。 「…自分を残す願望がねぇからって、自身を嫌ってるとは限んねぇ だろ。じゃあ俺からも訊くが、お前は今まで一度でも、自分のガキ を残したいなんて思ったことあんのか?」 これだけ延々とその事を話題にしていながら、悟空は全く「自身に 当てはめて考える」ということは思いも寄らなかったらしい。 きょとんとした表情で、大きな瞬きを一つしてみせた。 「だって…俺は普通の人間や妖怪と違うもん。俺自身、母ちゃんの 胎から産まれたわけじゃないし。だから子供なんて出来ないよ。」 「そういう理屈は抜きでって、お前が言ったんだろ。だったらお前 も、自分の思ってることを話せ。」 そんな三蔵の言葉に、悟空は考えを巡らせているような表情で軽く 首を傾げた。 「…欲しいかどうかって話なら…要らねぇかな、やっぱり。生まれ てくる子が俺と同じモンを背負い込まなきゃなんねぇんだったら、 それってかなりキツイじゃん?だから俺は、俺限りでおしまい。 …それでいいんだ。」 「うん」と一人頷き、静かに微笑う悟空に、三蔵は「ほら見ろ」と 言わんばかりの視線を向けた。 「お前の言い草だって俺と大して変わんねぇじゃねぇか。だったら それも『抑制のメカニズム』とかいうヤツで、お前は自分を嫌って いて、その感情がたまたま俺に向かっているだけで、ガキを産んで やるって女が現れりゃコロコロ変わんのか?お前が抱えてる気持ち なんて、その程度のモンか?」 「!?ちげーよっ!!俺は自分を嫌ってなんかいねぇし、男とか女 とか、そんなん関係ねーじゃん!?」 それまでのしおらしい様子が嘘のように怒鳴り返した悟空の金の瞳 に、強烈な意思の光が戻った。 「俺、よく三蔵の瞳とか髪とかが好きって話するけど…それだって ホントは、全部付け足しなんだよな。極端なこと言っちゃえばさ、 三蔵が俺をみつけてくれるのにもっと時間がかかって、例えばそれ が五十年後だったとして、シワだらけの頭の薄いジジィになってた としても…きっと俺、一緒に来たよ。三蔵が、ちゃんと三蔵のまま だったら。」 三蔵の長い指が、悟空に向かって伸ばされる。それを悟空がじっと 見ていると。 “ピンッ!!”と、力一杯のデコピンをかまされた。 「痛ぇっ!!何すんだよっっ」 「バーカ。答なんか、とっくに出てんじゃねぇか。」 悟空の文句を歯牙にもかけず、三蔵は煙草を燻らせながら軽く目を 眇めた。 「テメェがたった今言ったことだろ。男だろうが女だろうが、頭の 薄い年寄りだろうが、ンなモン全部付け足しなんだろ?俺だって、 ンなこたぁどっちだっていいんだよ。俺が俺で、お前がお前なら。」 きっと同じように互いを引き合う きっと同じようにその手を選ぶ 自分が自分で、相手が相手でありさえすれば 零れ落ちそうなくらい見開かれた悟空の瞳が、真っ直ぐ三蔵に向け られる。三蔵は面映そうにフイと視線を逸らした。 「…ンだよ、黙ってねぇで何とか言え。」 照れ隠しのように殊更ぶっきらぼうに言い放つ三蔵に、悟空は満面 の笑みを浮かべ、言った。 「なぁ三蔵…シよっか?」 “ゴホッ”と、三蔵の喉元から彼らしからぬ煙にむせたような咳が 漏れる。今度は三蔵が、不意打ちに目を見開く番だった。咳込んだ せいで少し潤みを含んだ紫の瞳には、躊躇いなく自分に笑いかける 悟空の顔が映った。 「…今さ、すっごく三蔵とキスしたい。抱きしめて、確かめたい。 …ダメ?」 眩しい金の瞳が、返事を促すように覗き込んでくる。三蔵は既に 短くなっていた煙草を揉み消した。 「…途中で『腹減った』なんて抜かしやがったら、蹴り殺すぞ。」 「ヘーキだよ」と応え、悟空は上目遣いに三蔵をみつめる。その悪 戯な瞳を閉じさせるよう、三蔵は瞼にそっと口付けを落とした。 「不思議だよなぁ」と、戯れのように指を絡ませながら悟空が呟く。 三蔵はあちこちに軽いキスを送りながら、目線でその言葉の続きを 促した。 「これが『本能のメカニズム』ってヤツなら、相手は限定しなくて いい筈なのに、メチャクチャキスしたいって思うのも、思いっきり 抱きしめたいって思うのも、やっぱ三蔵以外の人間って思い浮かば ねぇもんな……」 「当然だろ。」 間髪入れずに一言そう答えた三蔵が、小さな耳に唇を押し当てる。 『…俺も、そうだから─────』 微かな微かな、ややもすれば聞き逃してしまいそうな、吐息だけの 彼の囁き。 次の刹那、悟空は指の先まで真っ赤になった。 「うわっ…どーしよ…どーしよう…絶対そーゆーコト、直接言って くんないと思ってたから…何か…どうしていいかわかんないくらい …嬉しい……」 はにかみがちに、けれど真っ直ぐに三蔵を見上げて悟空が笑う。 三蔵は口許だけで笑みを返し、その身体をゆったりと抱きしめた。 快楽も 欲望も 痛みも 渇望も 全てが唯一人の互いへと向かい、流れ込む 『論理』も『法則』も飛び越えた それはまぎれもない、『愛の本能』───── END. 《戯れ言》
『overflowing』さま
UP
にして頂いたモノ。動物行動学者
竹内久美子先生のお話が、この話のきっかけ。 このタイトル、最初は『本能のパラドックス』というのを考えて いました。「シたいなぁ」という気持ちが同性へと向かうのは 本来の本能には反しているワケで、でも「シたいなぁ」という 気持ちは、これまたまぎれもない本能なワケで。コレはパラ ドックスだよなぁと。でも最後の5行がポン、と頭に浮かんだ 時に「あ、やっぱタイトルはこっちだわ」と確信しまして(笑)。 あまりにベタだとは思いましたがコレに決めました(^^;) |
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