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『初心者クエスト:他人のために』




   ≪3≫

 洞窟の前で岩陰に隠れてから、三十分ほどが過ぎただろうか。
「……グルゥゥ」
 一番最初に気がついたのは、臭いに敏感なケルビーだった。
 周囲に満ちていた悪臭がひときわ強まったことを察したのだろう。警戒を促すように低い唸り声を発して、ネネルの注意を呼び覚ます。
「あれがオクトパストンね……」
 洞窟に目をやったネネルが見たのは、まさしく首なし怪物だった。
 ずんぐりとした黄色い体に、無数の手足。一見したところ人間と似た造りだが、首が生えているべき場所には、ぽっかりと黒い穴が開いているだけだった。
 どこか滑稽な姿であるような気もしないでもないが、それは間違いだ。幾本もの手に握られたギラギラと光る刃物を振るわれて、この怪物に襲いかかられば、外見から侮っていた連中も後悔することは間違いなかった。
 とはいえ、しょけんは野生の生き物だ。獣程度の知恵しか持ち合わせていないことが、ネネルにとって幸いした。
(よし、そのまま。気づかれませんように……)
 洞窟の入り口に置いた肉の塊を祈るような気持ちで見つめる。
 怪物は、ネネルが仕掛けた罠には気がつかなかったらしい。肉の臭いを嗅ぎつけたのか、たくさんの足をわらわらと操って走りだす姿は、やはりどこかユーモラスに見える。
 地面の上の肉を太い腕でつかむなり、頭上にかかげるようなポーズを取った。どうやら首の穴が首になっているらしく、肉はその中へと消えていく。後に残ったのは、クチャクチャといじましい咀嚼音だけだ。
 朝食にありついた幸運なオクトパストンは、しばらくそのあたりをぶらぶらと歩いていたかと思うと、ふいにおぼつかない足取りになった。
 次の瞬間、怪物はぱたりとその場に倒れ、耳障りないびきを響かせ出す。
 どうやら薬が効いたようだ。さきほど肉の上に撒いておいたのは眠り薬だった。オクトパストンを無傷で捕らえるため、カラから渡された小道具のうちのひとつである。
「よし……」
 頃合を見計らって、ネネルは岩陰を飛び出した。彼女の背後にコボルトとケルビーが続く。
 彼女は縄を取り出すと、地べたに転がったオクトパストンをがんじがらめに縛り上げた。
「さあ、この怪物をあそこまで運ぶのよ」
 洞窟の入り口を囲った柵、そこからさらに外側を流れる川を示す。
 縄の端をケルビーに引かせ、コボルトと一緒にずんぐりしたオクトパストンの体を押していくのは大変な重労働だった。急がなければ、洞窟から怪物の仲間たちが出てくるかもしれないと思うと、ついつい気持ちをあせらせてしまう。
「……ふぅ。ウルラク、お疲れさま。それからケルビーも、ありがとうね」
 数分ほどもかけて、川べりの岩陰までオクトパストンを運び、そこでようやく息をつくことができた。
 彼女にとっては、ここからが本番だ。
 ネネルは作業にとりかかる前に、ケルビーの召喚を解除し、精霊の世界へと送り返した。
 続けて、コボルトも飼育記録書に封じる。ビーストテイマーの間に伝わる秘術によって、実態をそなえた生物を本の形に変えておくことができるのだ。
 たとえ信頼すべきペットたちといえども、この先に自分がするべきことを見せたくはなかった。彼女は記録書を背嚢に詰めてから、かさばりそうな荷物をひとまとめにして岩壁のそばに置く。愛用の笛はすぐに取り出せるように、袋の口に刺しておいた。
「さて、これでよし」
 仕度を終えると、その場に残されたのは縄で縛られたオクトパストンと、彼女だけとなる。
 あとは薬が切れる前に、やるべきことを終えなくてはならない。ネネルはまず、怪物の下半身に近づいて腰のあたりを眺めた。それから大きく息を吐いて気持ちを落ち着けてから、たくさんの足を掻き分けるようにして、垢じみた腰蓑をぺろりとめくり上げる。
「うわ……」
 オクトパストンの足の間にぶら下がっていた性器は、足の一本かと見紛うほどに太かった。
 体色そのままの黄ばんだ肉棒から、噎せ返りそうなほど濃密な牡臭が漂う。亀頭の大きさは成人の握り拳ほどもあるだろうか。黄疸色の肉茎は無数のイボにびっしりと覆われ、醜悪きわまりない。まるで巨大なナメクジのような逸物ぶりだった。
(こ、こんな形だなんて、聞いてないよ……)
 性の経験がない生娘には、凶悪な形状を誇る怪物の牡器は衝撃的すぎる。
 ネネルは驚きのあまり膝を震わせてしまい、その場にへたり込みそうになったが、どうにか平静を取り戻した。
「とにかく、さっさと終わらせなきゃ」
 人助けのために、ここから樹液とやらを採取しなくてはならないのだ。
 彼女は荷物入れから革袋を取り出した。卑猥な形状をした男根の先端部をすっぽりと包み、袋の口を革紐で縛る。
 準備を終えると、ネネルは無数の突起に覆われた太幹を両手で包むように手を添えた。
「んっ……」
 指先に当たってくる不快なイボの感触をこらえつつ、不器用な手つきで肉竿を上下にさする。
 どうにかして射精に導くことができなければ、彼女の目的は達成されることがない。
 ネネルは必死になって、怪物の太マラに奉仕を施す。その甲斐あってか、やわらかな手でさすり続けるうちに、黄色い陰茎がヒクつき、次第に膨張していった。
「そ、そろそろなの……かな?」
 手の動きを速める。すると、勃起の硬度はますます高まり、袋に包まれた亀頭冠がムクムクと肥大化していく。
 屹立の反りが上向くにつれ、茎肌の表面を覆うイボまでもが鋭さを増してきた。無数の肉瘤は、まるで麦粒のような先細りとなり、やたらと手肌にぶつかってくる。擦っている手のひらに刺さりそうなほどであったが、ネネルは苦痛をこらえて摩擦を続けた。
 醜い男根の膨らみ具合が、やがて最高潮に達する。先端部に被せた革袋は今にもはちきれそうなほど膨張を迎えていた。おそらく充血しきった海綿体が、袋の内部でパンパンに膨れ上がっているのだろう。
 慄くネネルは頬を赤らめ、顔を俯けた。
 すると、その直後、張りつめていた肉棒が激しく痙攣する。
「あっ……!」
 ふいに、ブチッと何かの切れる音が頭上に響いた。
 射精の勢いで、袋の口を結んでいた革紐が切れてしまったらしい。間欠泉のごとく噴出した性汁によって、あろうことか亀頭に被せてあった袋が弾き飛ばされてしまったのだ。
 精液を採取するための袋が、洞窟内の川にぼちゃんと飛び込む。
「そんなぁ。嘘でしょぉ〜」
 落胆するネネルの見ている前で、革袋は水底深くへと沈んでいってしまった。




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