『432−433』(U-side)





世の中は予想できないことだらけだということをウソップは身を持って知ってい たが、なにもこんな時に、と思わなくもない。
しかし冷静に考えれば、海列車に乗ってエニエスロビーへ乗り込んだ海賊を探し に、海軍がウォーターセブンへとやって来るのは至極当然である。
むしろ遅すぎると言ってもいい。
遅すぎたが故に、油断してしまったとも言える。
とにかくこれで『ルフィやクルーの様子を窺いつつ、復帰へのタイミングを見計 らう』というウソップの当初の目論見は完全におじゃんだ。
恨むぜ海軍。

最初はただ様子を見に行くだけのつもりだった。だがその直後に入った海軍上陸 の情報で、ウソップは戦闘も覚悟の上でここにやって来たのだ。
しかしそこに待っていたのはルフィにベタ甘のじいちゃんだった。
そういえば、以前青キジからじいちゃんの話題が出た時、ルフィの様子がおかし かった。
まさか、海賊の祖父が海兵だとは・・・
だがそのおかげで、とりあえず、いきなり捕まったりすることはないらしい。
ホッとしたと思ったら、今度は顔なじみの登場だ。

ウソップは、もとよりいきなりルフィ達に話しかけるつもりなどはなかったが、 立て続けに起こるびっくりイベントにすっかり飲まれてしまった感は否めない。
案の定ルフィの頭からはすっかりウソップのことなど抜け落ちている様子で、友 人を宴に誘ったりしている。
とても顔を出すような雰囲気ではなく、ウソップはただただ成り行きを眺めるこ としかできなかった。
そうしている内にもルフィがあの悪名高いドラゴンの息子だということがわかっ たりと、イベントは加速して進んで行く。
もちろん驚きはしたが、それはそれ。例え何者であれ、ルフィはルフィだ。想う 気持ちに変わりはない。
ただ壁の向こうが果てしなく遠く感じる。

多分。
手を伸ばしさえすれば届くのだ。
頭ではわかっているのに。


◇◇◇


W7全体を巻き込んだ宴も佳境に入り、所々で酔い潰れる奴らも出始めた頃。

「よ!そげキング!肉食ってるか?」

いきなりルフィに肩を抱かれ、酒臭い顔を近づけられたウソップは、飛び上がら んばかりに驚いた。

「ルルルフィ君どうしたんだねいきなり!ビックリするじゃあないか!」
「ししし、悪りィ。肉食ってるかなーと思ってよ。」
「あ、ああ頂いてるよ。この水水肉というのは本当にジューシーで美味だね。」
「だろ?ホラいっぱい食えよ!まだまだいっぱいあるから…」
「いやいやいやちょっと待ちたまえルフィ君。気持ちは嬉しいが、そんなにたく さん一度には無理だ。君じゃあるまいし。」
「…そうか?」

目に見えてガッカリするルフィを不思議に思いながら、ウソップはプールサイド に腰を下ろした。ルフィもそれに続く。
仮面さえ被ればこんなにも自然に接することができるのに。
まだドキドキする胸を押さえ、しばらく二人で黙々と肉を食べた。ウソップが二 串目を食べ終わろうかという頃、ルフィがぽつりと言った。

「ウソップがさ…」
「え?」
「ウソップが食べたがってたんだよなァ、この、これ。水水肉。」
「ルフィ君…」
「アイツ、これ食ったかなァ。こんなにうめェのに、おれ、ウソップに分けてや んなかったんだよなァ。」
「……きっと、ウソップ君もたくさん食べたよ…」
「ならいいんだけどな。こんなに大きな宴なのに、お祭り好きのアイツがちっと も顔も出しやがらねェから…怪我、ヒデェのかな。それともいよいよ愛想つかさ れてんのかな。」
「そ、そんなこと!」

ウソップは思わず大声でそう叫び立ち上がった。水面に浮かぶ満月が揺れ、ほん の一瞬空気が止まる。

「ナイと思うのだよ私は、うん。」

我に返り、小声でそう続けた後、再び腰を下ろす。

「それにウソップ君はすこぶる元気だ。心配ご無用!今はそう、そのぅ…」
「そっか。元気なら、いいんだ。」

そう言ってルフィは微笑んだ。心底安心したように、けれどどこか寂しそうに。

「ルフィ君…」


もしかしたら、今だろうか。
そげキングではなくウソップに。元のおれ達に戻れるチャンスは、もしかしたら 今なのかもしれない。
だとしたら逃すわけにはいかない。頑張れおれ!

「あ、あのー。落ち着いて聞いて欲しいのだが、実は私…いやおれは…おれが… そのウ…!?」

勇気を振り絞り、もじもじと話し始めたウソップだったが、突然感じた肩の重み と温もりに言葉を止め、顔を上げた。
上げた先にはすやすやと安らかに眠るルフィの顔。

「…っだよコイツ…信じらんねェ…」

緊張の糸が解け、ウソップは一気に脱力した。擬態語を使うならガクーンといっ たところだ。
ったく、人がどれだけの覚悟を決めたと思ってんだ!

「んー…ウソップ…」

けれどもむにゃむにゃとルフィがそう呟くのが聞こえてしまったので。

「……飲みすぎなんだよ、お前。」

水面に映る満月と、海賊王と狙撃の王。
あともう少しこの情景を楽しむことにしようかと、ウソップはぼんやり考えた。


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のぼのき
ドラ様

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