降りそそぐ追想の淡雪(L-side)





エニエスロビーの戦いで身体が動かなくなっちまって、バスターコールを抜けた 後もしばらく転がっていたら、いつの間にかウソップの姿が見えなくなっていた 。

「ウソップ!?ウソップ!!ウソーーップーーーー!!!」

転がったまま叫んでも返事はなくて、チョッパーにおぶってもらって一緒に探し ても見つからなくて、おれは慌てた。

やっと会えたのに。

話ができると思ったのに。

いつの間にか船に乗っていたそげキングが言うには、ウソップは先に帰ってしま ったらしい。
…まだおれのこと怒ってんのかな。
メリーを諦めようとしたおれのこと、やっぱり許せないんだろうか。
ウソップの言う通りだった。
メリーは船だけどおれ達の仲間で、おれ達をピンチから救ってくれた。
あの時聞こえた声は、メリーのものだったに違いない。
メリーはウソップが命をかけて守った船で、そしてそのメリーがおれ達を救って くれた。
ウソップがいてくれたからこそ、おれ達もメリーもこうしてここにいるんだ。
なのに肝心のウソップだけがいない。


お前はさ、ウソップ。
おれに色々言ったけどさ。
おれだってメリー大好きなんだ。大事なんだ。
お前がメリーを思う気持ちには届かないのかも知れないけれど。
アイスのおっさんが言ったぞ、こんなにすごい海賊船は見たことないって。
見事な生き様だったって。
おれもそう思う。
だからここで別れようと思う。

ウソップには悪いけど、今ここにお前がいなくて良かった。
これ以上お前の泣き顔なんか見たくねェ。
メリーが生きていたとあんなに嬉しそうだったウソップ。
そのメリーを今度こそ本当に海に還そうとするおれを、お前は許してくれるかな 。


メリー号が燃えてゆく。
イーストブルーのウソップの村からこんなところまで、おれ達を運んでくれたメ リー。
ありがとな。
お前の最期はおれ達がちゃんと見送るから。
エニエスロビーに迎えにきてくれたのはお前なんだろう?メリー。
ゾロは船が喋るわけねェと言ったけど。
ナミもあるわけないと言ったけど。

でも、やっぱりそうなのか?
いくら好きでも、大事でも。
やはり船は船でしかないのか?
そんな思いが少し頭を掠めたりしたもんだから。

浮かぶ思い出の中で、聞こえてきた声に。

息を呑んだ。

ガラガラと音を立てて崩れていくメリー号から、今度こそはっきり声が聞こえた 。
この場にいる誰の耳にもはっきりと。
メリー以外に誰がいる?これは疑いようもなくメリーの声だ!!

『メリーにだって生きたいって底力はある!』

あの日のウソップの言葉が、胸の中でズンと重さを増した。



そしておれはまた思い知らされる。
メリー号が本当におれ達の仲間だったってことを。
傷ついた仲間を置き去りには出来ないと、あの日おれから離れていったウソップ の気持ちを。
もっと大切にしてやればよかった。
おれは船長なんだから、ちゃんとメリーのこともわかってやれなきゃなんなかっ たんだ。
お前を最後まで守ったのはウソップで、一番大事にしていたのもウソップで、だ からお前はこんなにすごい海賊船になったんだな。
ごめん、メリー。
ありがとう、メリー。
おれはやっぱりまだまだだけど、頑張って絶対海賊王になるから。
海賊王を乗せた最初の船は海賊船メリー号だと胸を張って言えるように。




メリーを見送り、おれ達はガレーラの船へ乗り込んだ。
メリーは海へ還った。ウソップの描いた海賊旗と共に。
だからきっと、メリーは寂しくない。

ウソップはやっぱりすげェな。
あいつの器はやっぱりでけェ。
おれはウソップがいねェとダメだ。

――――― でもウソップは?

『おれが海を出ようとした時にお前らが船に誘ってくれた。それだけの縁だ』

一緒に帰ろうと言ったのは、おれを元気づけるためのウソだったのか?
だって、お前は一人で行ってしまった。

『お前とはもうやっていけねェ』


ロビンを取り返したのに。
全て取り戻したはずなのに。

あの夜のあいつの言葉だけが頭によぎり、吐き気がする。


そしておれはそのまま意識を手放し、深い闇へと沈み込んでいった。
まるで海のような暗く寂しい闇へと、一人。



next
愛の拳(U-side)



のぼのき
ドラ様

TOP


PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル