眠りについたとたん、聞かれたくないことを、きらきらと瞳を輝かせて尋ねる金髪の少年が現れる
しかも何なんだそのタイトル
確かに、風呂上りを見られたり、なぜか二つの布団がぴったりとくっついた状態で敷かれたりしていたが
湯上りのほんのりと色づいた肌とか、うれしそうに身を寄せる姿には正直かなりぐらついたが
幸い、実年齢を知っていたので“俺はロリコンじゃない×20”でその都度へ平常心を取り戻したのだ!
『レンちゃんのレンは、恋愛の恋だからねっ!他にもイベントはいっぱいだよ。でもレンちゃんは恥ずかしがり屋さんだから、漢字の方で呼ぶと怒られちゃうの』
そうだったのか。どうりで自己紹介の時も片仮名だったんだな
しかし、これ以上こんなことが続くと、いくら俺でも色々もたん
『勘弁してくれ。なんて夢だ』
『夢だけど、夢じゃないよ。僕の能力の一つで、母様の夢にお邪魔してるんだ。えっとね“時間は一秒たりとも無駄に出来ないの。寝ている間も特訓してね”っていう指令が来てるの』
誰からの指令かは、考えずとも分かる
横島の脳裏では、妖艶な美女が意地悪く笑っている姿がありありと浮かんだ
『んな指令出されても、夢の中で何をどうやって鍛えろと』
『イメージだよ。母様の能力には、想像力が大事だから。ここは母様の夢だから、母様が本来主導権を握ってる。だから、母様の“意志”で、僕の見せる“夢”を変えてね』
すっと、イルの姿が消える
ぐにゃりと景色が歪み、世界が再構築される
真っ先に、映し出されたのは
『おキヌちゃん!?』
事務所の仲間である幽霊の少女に似た女の子が、強大な霊団に追いかけられている姿だった
何故本人と確信できなかったかというと、その女の子にはちゃんとした生身の体があったからである
夢と現の境は、その光景を見た瞬間に消えた
脳が、全身が、煮えたぎる
少女に駆け寄ろうとして、その体をすり抜けた
『な!?』
『無駄だよ、これは僕の“夢”なんだから。想像に干渉できるのは想像だけ。さあ、母様。彼女を守るために、どんな“夢”を紡ぐの?』
イルが言ったのと同時、サイキックソーサーを何倍にもしたような巨大な盾が展開される
『さすが母様、飲み込みが早いね。でも、一方方向だけじゃ護れないよ?』
“盾”があるのとは違う方向から襲ってくる霊団の一部
横島は盾をドーム状に変えて対応する
『これが俺の“夢”でもあるなら、どうにでもなる!だてに毎晩毎晩、実際にはあり得ん妄想をしとるわけじゃない――!』
自分で言って自分で凹んでいれば世話はない
どよーんとした空気が場に満ちる
『えっと、そのっ、母様は十分魅力的だと思うよっ!それより、護ってるばかりじゃ何の解決にもならないよ?』
あわててフォローを入れるイル
まだ特訓は終わっていないのだ、ここでいきなりテンションを落とされるととても困る
『はっ、そうやった!』
慌てておキヌちゃん似の女の子のほうを見ると、脅えた表情をしていた
夢だと分かっていても、心臓にとても悪い
『くそっ、はやくなんとかしねぇと!』
悪霊そのものを“消”そうとするが、元から“夢”にあるものには手を加えられないらしい
“斬”撃や“爆”撃を加えて見るが、攻撃を加えた端から元に戻るので意味がない
『良く分かりもしないで攻撃をしたって無駄だよ。まずは敵を知ること。情報を制するものは世界を制す!んだからね』
イルが見かねてヒントを出す
『敵を知るって言ってもなあ。どうやればいいんだ』
弱点など、どう目をこらしたって見えない
『それは自分で考えてね。ヒントを出すと、弱点だけじゃ意味がない。あの人達の存在そのものを知ろうとしないと』
『存在そのものを知る、か。うーん・・・・・・・そうか!』
自分の意識を、悪霊に重ね合わせて見る
出来ないはずはない、ここは、自分の心の中なのだから
流れ込んでくる意識
痛みと、苦しみと、哀しさと
全てに共通しているのは“生きたい”という切望
『そっか。そうだよな。誰だって、“生”きたいもんな』
一つの想像を紡ぐ。今まで具象化して来たのに比べ、はるかに抽象的な概念
“救”いというイメージ。死んだものが生き返る事は出来なくとも
次の世の“幸”せという“夢”を
霊団たちは、全て“浄”化されていた
同時に、横島の意識が落ちる
Side:イシュタル
まだ暗い夜の中、イルは一人、自分の部屋で目を開けた
「これで良い?母……ううん、イシュタル様」
臣下の礼をとる
この少年だけは、自分を母と呼ばなくなってしまった。少なくとも面と向かっては
見た目は最も幼くても、魔神の長子としての自覚は一番早かった
それを誇らしくも、寂しく思う
『ええ、まずは一段階修了ね。あっ、ちゃんと肝心なところはぼかしておいてくれた?』
「うん、言われたとおりにしたよ!」
イメージを現実化する感覚だけを残して、後はただの夢と同じく、目が覚めたら忘れるように
『ありがと、愛してるわ。記憶を覗いて分かったけど、ここは結構あたし達の世界と近い見たいだから、同じ事件が起こる可能性もあるし』
流れとか幾人かの性別は変わっているが、事件そのものは今のところ変わっていない
そこから、この世界は割と自分の世界に近いとイシュタルは結論を下した
先のことを知るのは、よい結果を招く場合もあるが、悪い結果を招く場合の方が圧倒的に多い
昔、かの前知魔に言われた台詞だ
「ねえ、イシュタル様。だったら、僕らの父様達もいるのかな?」
『いるでしょうね。あたしが選んだ男なら、あの子の人生に関わっていないはずがない。最も性別が変わってる可能性もあるけど』
その言葉に、イルは握りこぶしをつくって言った
「じゃあ、父様はライバルなんだね!」
なぜかバックに、ごごごと燃え盛る炎が見える
可愛らしい容姿のイルには、似合ってなかった
『あー、ちょっと、イル?』
「だって“恋人”になっちゃったら、母様をひとりじめされちゃうんでしょう?その前に、僕が“恋人”になるの!」
母様、というのが自分ではなく、今は少女になってしまっている少年だというのは分かったが
あまりにもツッコミどころがありすぎる台詞に頭を抱えそうになる
『誰にそんなこと教わった?ついでに、恋人の意味はなんて?』
「どっちにとっても“一番”で、“恋人同士”は互いを“どくせん”する権利があるって、リッちゃんがいってたよ!」
脳裏に浮かぶ、魔界最高指導者の妻の顔
彼女にとって頭が上がらない人物の一人であった
『間違っているとも言いがたいけど、恋人同士のなり方は教わったの?』
聞きつつも、イシュタルは彼女がどんな教え方をしたのか手にとるように分かってしまっていた
「うーんと、“きせいじじつ”をつくればOKだって」
『それは確実に間違ってるから』
魔界式の考え方は、あんまり教えないで欲しかった
夜が明けるまで、幼いんだか大人びているんだかよく分からない我が子の性教育に費やすことになったイシュタル
もっとも成果があったかどうかは謎である
Side:横島
「今日はちょうど休みなので、拙者が鍛錬をつけることにあいなった。未熟者だが、よろしくお頼み申す」
そんな一言でどこぞの森に引っ張ってこられたのはまだ許そう
「だけど、この格好はなんじゃー!?」
本日の服装:セーラー服(ミニスカ)+ニーソックス+長めのかつら
「母上は今は女人だからな、力よりも体の軽さを活かした戦いの方が良いだろう。格好もそれに合わせて見たのだが。こんな場所で知り合いに会うことはがまずないだろうが、万一を期して変装も頼んだのだが」
確かにかつらをつけて薄化粧をすると、驚くほど似合っていて、うっかり危ない道に逝ってしまうところだった
ちなみにかつらをポニーテールにまとめ、化粧を施したのはただ一人女性であるレンである
普段男装をしていても、女性としてのお洒落は一通り叩き込まれたらしい
いつの間にか母上呼ばわりされているのはこの際無視である
「だからってなんでこんな格好なんだ」
「拙者の趣味だ。本当は巫女服にしようかとも思ったのだが、動きやすさを重視した」
にっこり笑ってさらっと返す少年
邪気のまったくなさそうな爽やかな笑みを、その台詞が裏切っている
「てめぇぇーーー!!」
栄光の手で切かかるも、どこからか出した刀で受け止める
「まだ説明は終わっていない。怪我をした場合に備え、スカートと胸ポケットには治癒用の札が一枚ずつ入っている。……うむ、目の保養だな」
鍔迫り合いをしながらも、ちらりと覗く胸元を見るのは忘れない
ここらへん、誰かさんに似ている
「どちくしょー!なんでレンちゃんが修行つけてくれんのやー!!」
「レンの得物は銃だからな、鍛錬の仕方がまったく違う」
冷静に話しつつも、隙を見て大きく跳び間合いをとる
そして、刀を鞘に収めた
「では、まずは足の速さと探索能力を鍛えよう。これから私は逃げるので、母上が追いかけてくれ。私が捕まったら、母上の着替えを返す」
いうやいなや、物凄い勢いで走り出す
森の中なので障害は多いはずなのだが、それらを綺麗にかわして去っていく
「やってやる!俺はやってやるぞ!こんな格好いつまでもしてられるか!」
こうして、追いかけごっこはスタートした
ごいん!
初っ端から、木の根に足元をとられてつまずいたが
Fin
今回は特訓編です
あれ、なんだか息子さん達が暴走気味?
ちなみにイシュタルさんは、アシュタロスに育てられた後、GS試験編で原作の流れに合流してます
イシュタルさんのところは、性別に意味がある人は変えてません
おキヌちゃんに関しては、さすがに乙女じゃないとまずいと思うので
では、レス返しを
D,様>萌えどころ、受け継いでたんだ・・・(オイ)男は、あの兄妹達が排除するでしょう。百合の花園、はてどうなることやら。確実に百合にいきそうな方は、現在二人予定してますが
altfa様>こちらこそ、初めましてです。レンちゃんは作者の愛を一身に受けているので、ツボにはまって下さって嬉しいです。父親は、イシュタルさんの一存で選んでいるので、どんなに真面目でも間違いは起きます。というより起こさせます
紫竜様>時間軸はそう滅茶苦茶でもないですよ?アシュタロス戦終了後、だいぶ時間が立っているのでシロも成長しておかしくないかと思ったのです
柳野雫様>はい、三人男で女一人です。コイン以外でも、どうしてもっていう面子は元の性別です。後、一方が逆転したらもう一方も逆転とかいう連動性も。(まだやってませんが、カオスとマリアとか)
九尾様>兄弟四人のうち誰か一人だけは女の子にしようと考えてたんです。イルも女の子になる確率はあったんですが、やはりここは一番苦労しそうな子(常識人)を
T城様>はい、だいぶ生活環境がよくなっています<花戸家
後、本文中危ない発言は多々ありますが、まだ母親と重ねてる程度です。襲ったりとかは、多分ないはず
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