「ちょっと付き合ってもらえますか?」
昼休み、薄茶色が目の前にあった
確かレンとかいった、さゆりさんの子供だと思われる人物
「ああ、いいけど。あいつはいいのか?」
晃牙と名乗った男は、まだ女子に囲まれ中だ
ちょっと、いやかなりムカッと来るものがある
「晃牙にやらせるわけにはいかないから」
なぜか苦笑いを一つこぼす
そのまま、屋上へと連れて行かれた
「ここらへんでいいかな?ちょっと失礼します」
そういうと、おもむろに服をめくり上げた
そして、嘆息する
「やっぱりあの二人に任せるべきじゃなかったな。この巻き方だとちょっときつすぎる」
そういって、てきぱきとさらしを巻き直していく
はっきりいって、手馴れていた
「いくらあの三人でも、着替えとかは任せちゃいけないですよ?たとえ元が男でも、今のあなたの体は女性で、あの三人は男なんですから」
至極真面目な表情で諭される
しかし、この内容からしてまさか
「お前、おん・・・・むぐっ!?」
「だ、だめですよ、大声だしちゃ」
まさに目にもとまらぬ素早さだった
そのままの勢いで口を塞がれた横島はだいぶ苦しそうだが
「あっ、すみません、つい。でも、人払いの結界とかも使ってないし、大声は出さないほうが」
あわあわと言葉を連ねるレン
「い、いや、それはいいんだが、お前は本当に女なんだな?」
問いかけというよりは、確認
「はい。おれ、っ と私は女です。諸事情から、他の兄弟と同じく男として育てられましたが」
その諸事情とやらは、この子がこの世界に放り出されているのだと同じ理由なんだろうな、となんとなく感じた
無性に目の前の少女がかわいくなって、抱きしめてみる
「えっ!?あ、あのっ、そのっ」
真っ赤になってあわてるさまは、やっぱり可愛いなと思う
なぜか、セクハラまでする気にはならなかったが
「ん、レンちゃんってかわいいな。そんな格好してるのもったいない」
「・・・・・・それをあなたに言われても、複雑です」
抱きしめられたままそっぽをむくレン
抱き合ったまま、数分が過ぎたころ
『いい雰囲気になってるところ悪いんだけど』
「「うわあっ!」」
横入りして来た声に飛びのく二人
『お母さん、不純同性交友もむしろ望むところよ?こんなところじゃさすがにまずいんじゃない?ほら、二人とも一応性別隠してるわけだし』
くすくすと、からかい混じりの笑い声が聞こえる
「か、母さん!?そ、そそそんな!」
レンが首をぶんぶんと振って否定する
こっちもなんか顔が火照ってきた
「ずっと見てたんだろうが!そのからかい方は意地悪ぃぞ、さゆりさん」
『あら、こういうとき、うまい切り返しが出来るようになって初めて一人前よ?それでね、二人とも』
頭に直接響く軽やかな声に、また何を言われるのかと身構える
『扉の前でずっと見張り番をしてる健気な息子の方も、気にしてやって欲しいのだけど』
「え?まさか、晃牙!」
扉を開けて見ると、そこには黒髪の少年が
「すまん、まさかずっと待ってたのか?」
晃牙は、横島を見て嬉しそうに笑うと
「然り。この学園には霊能に通じている者がいる故、結界を張るよりこちらの方が確実な人払いになるかと思ったのだが」
「だったら、おれに一声かけてくれればいいのに」
自然に一人称を切り替えているレンを見て感心する
見習おう、いやいっそ師匠と呼ぶべきか?と悩んで見る横島
「言えば、気を使うであろう?おぬしは、母上が最も忙しいときに出来た子。最も甘えるということを知らんからな。存分に甘えるいい機会かと思うてな」
同い年とは思えないような、穏やかな笑み
いったい、何歳なんだこいつら
「なあ、お前らの兄弟順ってどうなってるんだ?」
全員互いを呼び捨てにしているから、ちっとも分からないんだが
「えっと、イルが一番上で、次が晃牙、三番目が千夜で、一番末が私です」
今、すっごく有り得ないことを聞いた気がする
「イルって、あのちびっこいのが一番上!?嘘だろ?つか、末がレンちゃんって!!??」
混乱している横島にぼそりと空牙が説明をする
「人ではないものの血が混じっている故、成長が不安定なのだ。ちなみにイルが18、拙者が17、千夜が15、レンは14だ」
「14!?それじゃ、レンちゃんは本当なら中学生!?」
セクハラしなくてよかったと思う横島
これでも、ロリコンじゃないという一線だけは譲れないのだ
きっと、本能が警鐘を鳴らしてくれたんだろう。ありがとう、本能
「ずっと魔界で育ったんでその辺の区別はないけど、そうなるね」
ふと、口調が男のものにもどっているのに気づく
たとえ兄弟でも、他人がそばにいるときはこの口調を使うように教えられたのだろう
「そう言えばレンは魔界を出た事がなかったのであったな。拙者は師匠が人界にいたゆえ、たまに連れ出されていたが」
キーンコーンカーンコーン
いろいろ突っ込みたいことも聞きたいこともあったのだが、予鈴でそれはお預けとなった
ただな、レンちゃん
ずっと魔界にいて、実年齢14なのに、何でああもすらすら答えれるんだ(現社)
やはり英才教育なのか!?そうなのか!?
「では、ともに帰るとするか。横島殿」
「あれ、レンちゃ・・・レンは?」
「先刻、女人の集団に拉致されていた。しばらくすれば解放されるだろう。あれは、昔から少々要領が悪い。おまけに、女人は無碍にせぬよう教えられているからな」
のんびりと妹を批評する彼は、要領よく逃げたのだろう
「何気に酷い奴だな、お前」
「先程はレンが独り占めしておったからな。帰り道くらい拙者に独り占めさせてくれ、横島殿」
確信犯の笑みに、こいつが17というのも嘘くさいな、と思う横島
妹を生贄に、転校生に興味津々の女子達から逃げ切ったという事実は、流石にわからなかったが
「本当に待ってなくていいのか?」
「レンも子供ではない。一人でまっすぐ帰れる。それよりも、拙者は横島殿と話がしたいのだが」
「へ?俺と?」
「ああ、長い付き合いになりそうだからな。お互いのことを知って、損はあるまい」
「それもそーだな。じゃあ、まずは好きな食いもんからいくか。食は全ての基本だからな!」
たわいない話をしながら歩く
まるで、普通の男子高校生同士のような会話
ごくありきたりの、それでも彼には縁のなかったもの
勢いよく喋る横島に相槌を打ちながら、空牙は極上の笑みを浮かべていた
ちなみにそのころの妹
「レン君の好みのタイプってどんな子!?」
「彼女はいるの?」
「むしろいないなら私が・・・!(同意権多数)」
「ははは・・・・・・恨むよ、晃牙」
こっそりと握りこぶしを隠して、兄への復讐を誓っていた
で、アパートについたのだが、明らかに形状が違う
ふた周りほど大きくなって、外観も小奇麗になっているような
「お帰りなさい!兄様、空ちゃん。あれ、レンちゃんは?」
「まだ学校だ」
「そっか。学校って楽しそうだもんね。僕も行ってみたかったな」
これが年上かと遠い目になる横島
が、そんな場合ではない事に気づく
「ちょうどいいところに帰ってきたな。改装も無事すんだ」
「改装って、何しやがった!?」
「何、少しここらをこのアパートごと買い取って、少しばかり増築したまでだ」
ちなみに資金は向こうから持って来た精霊石を売ってつくった
「たった一日でどうやって・・・」
「正確に言えば、まだ一日はたっていない。質問の答えだが、それはまだヒ・ミ・ツだ」
無表情のまま、指を立ててちっちっと振る
「お前はどこぞのゴキブリ魔族か」
「こんなときのお約束だ。それよりイル、まだ寝ていろ。本調子には、なっていないのだろう?」
「だーいじょうぶ、お出迎えにきただけだから。まだちょっとふらふらするけど、ちゃんと寝てるから」
そういって、ドアをぱたんと閉じて部屋に入る
「仮にも男と女が同じ部屋で寝るのはまずいとレンの主張だ。兄さんはレンとその部屋を使ってくれ。一応内部にもドアをつけたので、行き来は可能だが。私達の部屋はこちらだ。ちなみに反対側には花戸一家が住んでる」
元からの入居者には家賃はそのままで住んでもらっているらしい
「はっ!?ちょっとまて!!」
だだだだだだだっ!!!
何をさておいても確認せねばならない!
それだけは、そうそれだけはなんとしても!
それは、一つの箱の中に全てあった
「青少年が欲望を解放するための書物、確か“エロ本”とかいったか。きちんと傾向別、五十音順に分けておいたぞ」
「ああああああ!(血涙)」
他人には触れられたくない俺の聖域が!
「レンはその手の事に関してとても疎い。見たとたん、真っ赤になって硬直すると思われる。なので、その箱は鍵つきにしておいた。これが鍵だ」
無造作に、小さな鍵が渡される
思わず、がしっと手をつかんでしまった
「千夜、お前は俺の救世主だ!」
「何、礼を言われるほどのことでもない。ちなみに私はナースなどが好きだな。無論白だ。ピンクは邪道」
「俺、お前とはとても仲良くなれそうな気がする」
「ちなみにイルはメイド、晃牙は和服萌えだ」
本当かどうかもわからぬことを吹き込む千夜
「あいつらも漢だな…」
ここに、男の友情が生まれた
この時点で、横島は自分の体が女のものになっているという事実を完全に忘れている
Side:イシュタル
「先生、晃牙はいないのでござるか?」
目の前に、音もなく一人の女性が降り立った
成熟したボディラインに、凛とした顔つきの美女
彼女は、イシュタルが人界から連れて来た数少ない一人だ
「あの子も含めて、あたしの子供達は今最終試験の真っ最中」
「そうでござったか。その、先生、体の方は・・・?」
「さあね、どうなるかは天すら知らない。まあ、意地でもあの子達が帰るまではもたせるわ。それより、あの子に稽古付けに来たんでしょう?代わりに、あたしに付き合いなさい」
霊波刀を右手に生み出す
「願ってもない。では久々に、お相手仕る!」
女性も同様に霊波刀を作り出す
美しき女剣士達の死合いが、静かに始まった
Fin
ということでレンは女の子でした。素に戻ると敬語。今のところ、素に戻るのは母親と横島の前だけでですが
十円玉による厳正な占いの結果、表が出たのでシロは元のままでした
ちなみに、子供達の父親は決めてません
魔界面子でないことだけは確か(記憶を消す必要がないので)
イシュタルパートでも、共通しているところはあります。今回はその一例を
次には修行編か、シロ編にいく予定
四人の能力なども次で
ではレス返しを
D,様>全部は反転してませんよ、一応。十円玉が裏返っちゃった方だけです。百合は・・・どうだろう?あるとしたら、タマモあたりかな?
aaa様>すみません、期待を裏切ってしまって。オリキャラは、最初から出す予定でした。これ以上は増えませんが
九尾様>あははは、作者にも分からないです(遠)元々父親は重要視してないので。でも、パピリオは魔界組なのでありえないんですよ。ついでに拙者と言っているのは、師匠の影響です。後アシュ様は、反転してません。反転したら成り立たなくなるので
Dan様>正確にはコイン任せです。猿は、そもそも神族ですから出てくるかどうか