彼のオカルト業界へ与えた影響力は計り知れないものである。
正式量産型Ｍ・１の開発・・・それは今まで不可能とされていた、アンドロイドの制御として、不確定で不安定な魂を使った物である。
そしてそれは、当初に予想されていた故障・暴走など一切起こる事は無かった。
そして、その高いサポート能力と標準装備されている対霊装備が認められ、何人ものＧＳ・オカルト関係者が喉から欲しがる霊的アイテムとなったのだ。
その反響の高さに応じて、Ｍ・１の廉価版のＭ・２、そしてそれらの改良版として新たに世に出されたＭ・３。
―――そして、その能力の高さに目をつけたオカＧはドクターカオスの協力を受けて開発した、自衛隊独自運用のＸ-00-Ｏの実現。
正しく、世の春を謳歌するドクターカオスではあるが一部の噂では痴呆の疑いがあるらしいが・・・。
週刊誌「オカルト現代」の特集『ヨーロッパの魔王に迫る！！』より抜粋
GSB横島修羅黙示録！！リポート5
「ふ・・・太陽が黄色いなぁ」
いかがわしい建物から出て、ニヒルに決めようとする横島・・・ちなみにバイザーで隠しきれてない顔色から、憔悴しているように見える。
―――ちなみに、横島達は結局ラブホテルに泊まったりする。
「蛍・・・出来る限り目立たないようにあの小さな建物に入ろう」
横島はうつらうつらしてて、おぼつかない足取りの蛍にそう言うと――所謂ラブホテル街の表通りの建物に隠れるように建ってある、寂れた宿泊所へと目立たないように足を向ける
―――周りの目を気にしての行為だが、コソコソと挙動不審な態度といかがわしい建物に少女を連れ込む姿は誰がどう見ても性犯罪者のソレだったりする。
「おやおや・・・いらっしゃい」
その建物に入り、昔懐かしのブラウン管のパネルを確認する・・・全部がら空きだ。
左手に進むと先程挨拶をしてきた、何が可笑しいのか終始ニヤニヤする老婆がフロントで待ち受けていた。
「・・・宿泊したい」
その時の横島の顔は、苦虫を100匹程噛み潰した表情をしていただろう。
「あいよ、５万円だねぇ」
「・・・っな、看板の10倍かよ！？」
そう横島は叫ぶと、老婆はフロントに備え付けの電話におもむろに手を伸ばすと、
「あ、もしもし？警察で「ガチャン！！」どうしたんだい」
（ちくしょー・・・この婆！！）
ニヤニヤしながら、こちらの足元を見てくる・・・ちなみに蛍は目が覚め、辺りが珍しいのか好奇心旺盛な目をあちこちに向けている。
「だぁあーーー、分かったよ！！」
バン！！
叩きつける様に・・・実際に万札５枚をフロントに叩きつける―――あぁ・・・なけなしの軍資金が・・・。
「まいどあり」
ニヤニヤしながら、鍵を渡してくるソレをひったくる様に受け取ると蛍の手を引きながら部屋へと向かう。
―――途中で出会った従業員らしき若い男に、「この鬼畜が！！」と汚物を見るような目で見てくる・・・もう勘弁して。
通された部屋は一般的な部屋であった―――いや、俺は別にラブホテルなんて泊まったこと無いが。
「・・・・」
蛍はしきりに部屋の中にあるものをいじっていく―――あぁ、テレビはつけないように。
ボスッ
部屋の中心に座するダブルベッドに、横たわる・・・やっと一日の疲れが癒せるみたいだ。
ポスッ
―――蛍が俺の横に同じように、横になる。それをとても愛らしく感じ、蛍の頭を撫でる。
「んっ」
くすぐったそうにする蛍の様子を微笑ましく眺めながら、ふと思う―――風呂はどうしよう・・・。
「・・・？」
じっと横島は蛍を見る―――流石に女の子に風呂抜きって駄目だよなぁ・・・でも誰が風呂の入り方を教える・・・やっぱり俺・・・？
ハァ・・・
一日の疲れはまだ取れそうに無かった。
―――つ、疲れた・・・まさか、和服の着脱が分からないとは・・・そりゃあ、霊体の時のままの服を構成した俺が悪かったけどさ・・・。
ベッドの上で、シャツ一枚になって寝転ぶ横島・・・その隣には何とか着付けれた和服を着て、熟睡してる蛍の姿
服のどたばたで大変ではあったが、風呂では二人で色々な話をした。
―――蛍は、今日出会った珍妙な三人組を言葉足らずではあるが、一生懸命に言い表そうとする。
―――それを横島はジッと聞く・・・聞きながら分かったことは、その三人組のうち一人は知り合いであった事・・・横島はそれに軽く驚き、後日お礼を言っておく事にした。
二人での入浴はまるで親子のソレであった。
「う・・・んん」
隣で熟睡し、寝返りをうつ蛍の姿に苦笑しながら、横島はふと思う。
（俺にもし娘がいれば・・・）
ギリィ！
――が、横島はその考えに至ったとき自分の奥歯を噛み締める。
（まさか・・・俺は蛍を代わりにしようとしてるんじゃあ・・・・）
自分の軽率な考えを打ち消すように、目を閉じる。
（明日はアイツの所に行って、服の調達でも・・・・）
スゥ・・・
静寂の中、二人分の寝息だけが部屋を支配していた。
「昨晩はお盛んでしたか？」
（この建物[消滅]させてやろうか・・・）
早朝、横島と蛍はフロントで鍵をニヤニヤ笑いの老婆に渡すと建物から外に出る。
気持ちのいい朝日が、横島達に降り注ぐ・・・降り注ぐのだが、
ヒソヒソ・・・ヒソヒソ
周りの視線が痛い・・・そりゃあ、いかがわしい建物から黒っぽい服を着た男性と少女が出てくれば怪しいというか、既に犯罪だ。
―――ここで冒頭に戻るのだが、この程度では誤魔化しきれない。
「・・・・・・・」
「わぁ・・・」
横島は蛍を小脇に抱えると、その場から全力で離脱する・・・
今、通報されると確実に指名手配の罪状に性犯罪者が追加される。
―――それだけは避けたい
東京新市街地区・中央公園
「ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ」
キョロキョロ
横島は慣れない土地を爆走し、その度に奇異の目を向けられながらも何とか落ち着けそうな場所へと辿り着けた。
蛍は、公園に咲いている草花が珍しいのかウロチョロしている。
「ほ、蛍ー・・・余り遠くへ行くなよーー・・・」
横島は、公園のベンチを見つけるとそこに座り込む――流石に配分も考えず全力で走るとシンドイ。
「・・・」
エア・カーの普及によって車道の必要が無くなった為に広くなった公園、そこには様々な人が思い思いに憩いの一時を過ごしていた。
昔懐かしの遊具で遊ぶ子供達、ジョギングする男女に会話を楽しむ老夫婦など
（これがいわゆる、心の洗濯って奴かねぇ）
久しぶりに心が穏やかになるのを感じる横島―――その姿はハッキリいって枯れていた。
指名手配を受けている横島が堂々と街を往来できるのは、ひとえに[変装]と[変化]の文殊によるものである。
普通、文殊は生成してから『概念』の方向性を念で刻み込む。
―――ならば、生成の段階から概念の方向性を決めていればどうなるのか
その理論で生まれたのが、最初から文字の込められた文殊である。
普通、文殊はそれに込められた霊力が尽きると効力を失い消滅する。
―――しかし、この文殊は込められた霊力が尽きても横島が霊力を注ぎ足し注ぎ足しする事により効力を失わず、それこそ半永久的に稼動する事が出来た。
だが――、この文殊は普通のソレより効力が多少劣り、更には文殊最大の特徴でもある柔軟性が失われる事となった。
横島は、この―――持続性と即効性、二つの文殊をその場の状況によって使い分けている。
常時、稼動させてある[変装]によって顔を変え、[変化]によって霊波パターンを変える事により、横島は堂々と街を往来する事が出来るのだ。
―――単に平日の昼間から公園のベンチで、だらけきっている男が世間を騒がす指名手配犯とは誰も思わないだけかもしれないが
「さて・・・そろそろ行こうか」
「うん」
横島は空を飛び交うエア・カーを見上げてる蛍に呼びかける。
トットットットットッ
こちらに走り寄る蛍を見ながら、ちゃんと返答を言葉で返すようになったなぁ、と横島は頬をだらしなく緩ませる―――どうやら、親バカの気があるようだ。
「どこに行くの？」
歩きながら蛍は横を歩く横島を見上げる。
「古い知り合いの所だよ」
二人の姿は、人通りの賑わう通りに姿を隠した。
新市街地区、その一角に存在する今時の東京では珍しい木造建築のアパートが存在する。
その名は「続・幸福荘」
その管理人は趣味でアパート経営をしており、住人が全く居なくてその部屋を物置にいているという変わり者として有名であった。
―――管理人室
そこでは、老人と16,17の少女と眼鏡を掛けた30代の女性の姿があった。
「お久しぶりですわ・・・ドクター・カオス」
女性はその言葉とは裏腹に、全く親愛の表情は見せない。
「・・・」
ドクター・カオスと呼ばれた老人は、返答せず唯黙々と目の前のテレビが映す映像を見続けるのみである。
「まず、先日のご協力に関して感謝します」
カオスが反応しないのを、全く気にせずに女性は言葉を続ける。
「今日の用件はもうお分かり・・・では無いでしょうねぇ」
女性は明らかに見下した目線を目の前の老人に向ける。
「オカルト法・特例の適用により、ドクター・カオスの研究資材・資料を摘発させて頂きます」
――その時、
「・・・マリア」
カオスは初めて、その口を重々しく開く
「イエス、ドクター・カオス」
マリアと呼ばれた少女は、カオスの次の言葉を待つ。
「飯はまだかのぉ」
「先程・炒飯を・食べたばかり・です、ドクター・カオス」
カオスはボケていた。
「貴方達、早く作業を終わらせなさい」
女性は目の前のコントには気にも止めず、廊下で待機していた黒服の男達に指示を出し、部屋を出て行く。
「ご協力感謝いたしますわ」
顔に嘲笑を貼り付けながら、部屋を出る女性
ガラガラガラガラ
ガシャン
「・・・」
騒音が響くアパート・・・それに何の反応をもたらさないカオス、そして塩をまく準備をするマリア。
シンッ・・・
そして、それが半刻続いた後にようやく辺りに静寂が漂い始めた。
ガチャ
―――が、扉を開く音がその静寂を打ち消す。
「なっ、ばーさんか！あ、明日まで家賃待っててくれんか！？」
途端に部屋に入ってきた二人組みに慌てるカオス―――ちなみにその話は200年前の話である。
「おいおい・・・ボケた振りはもう必要ないぞ」
苦笑しながら二人組みの片割れ・・・横島は[変装]の文殊の効果を消す。
「おぉ、坊主久しぶりだな！」
途端に先程まで浮かべていたボケっとした表情を打ち消し、喜色満面の様子で返した。
あとがきと、言う名の謝罪
ＭＧＳ３やってて、執筆が遅れましたごめんなさい。
とりあえず、次の話は明後日までには書き上げたいなぁ・・・頑張ります
批評感想お願いします。
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