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!警告!バイオレンス有り
「s.CRY.ed Key-Alters第11話 前哨戦(スクライド+Kanon)」Pr.K (2004.12.17 23:21)



 相沢祐一という灼熱の弾丸が打ち出され、御役御免となった発射台――元は無理やり取り付けたサイドカー、その結合部を仕込んでおいた火薬でパージ(分離)する。
 コントロールを失い、歩行路に乗り上げてどこぞの店に突っ込んでいったことを心の中で詫びながら、危ういところで転倒を免れたバイクのキーを強くつまむ。
 ・・・・・・この先を征く。そう思うと、キーを持つ右手が小刻みに震えてその不安に拍車をかける。
 別に、使わなくても済むかもしれない。コレはそういった物だ。うまく立ち回れば、銃弾だって足りる・・・・・・ 

 ――馬鹿か俺は

 不安に思ってどうする? ためらってる余裕がどこにある? ・・・・・・ないじゃないか。
 ああ、そうだ。立ち止まったら大切なものはどっかに消えちまう。

 「後悔なんて、したくないからこうしてんだろーが!!」

 キーを、一段階深く差し込み、何かが噛み合わさる音が、コイツから洩れる。

 ――――グォォォ・・・・・・

 サイドカーという名の鎖から解き放たれたエンジンが、油血をこれまでにない勢いで飲み干し、昂っていく。ダンスパートナーを変更されたギアーは狂ったように踊り、オフロードタイヤはオンロードにマーキングを施していく。
 バックパック内は今頃素晴らしいアトリエとなり、アイツラを眠りから覚ましてくれているだろう。体の方だってきっと喜んでいる。本来の姿に、戻れるのだから。
 相沢を隣に乗せるようになってから、ずっと封印してきたコイツの苛立ちは相当なもののはずだ。
 現に、主人である俺を振り落とさんと牙をむき、鼓膜を破るほどの奇声を上げているのだから。
 だがこんな駄々っ子には長々と構ってはいられない。右の銃口を目前に迫ったガラス張りの自動ドアに向けて軽く薬室に残っていた弾丸をばら撒く。
 あわてて顔を引っ込めた男数名の顔スレスレを、ガラスをぶち破った弾丸が通過し、受付嬢らしき人影を掠めて社のロゴに突き刺さった。
 ドタドタとここから見たら豆粒大の警備員がこの騒ぎを聞いて駆けつけてきた。手に持っている物騒なものから判断するに、やはりまともじゃない。
 銃口がコチラに向けられるが、遅すぎる!後輪には十分なトルクはかけておいた。後は重心配分を覆して・・・・・・

 「どっせぇぇい!」

 体に鞭打った力技でコイツ――製作者のバアサンはゴルドダンサー(黄金の剣舞師)とか呼んでいた、趣味丸出しなカラーリングのボディ−を浮かせてウィリーさせる。
 迫り来るタイヤに引き金が狂ったらしい、吐き出された銃弾はあらぬ方向に飛んでいった。再び引き金を引こうとしているが、はたから見ても無駄な力が入りすぎている。あれでは引くことはできまい。
 さあ、ショータイムの始まりだ。まずは登場シーンを派手に決めないと銀幕のスターは務まらない。

 前輪から突き抜けてくるガラスの衝撃。フロントタイヤが生み出した強烈な暴力はガラスみたいなヤワなものの抱擁では役不足だった。キラキラとしたチャフにも似たきらめきをかき分け、不釣合いなフロントタイヤが破片を巻き込んで先程の警備員の顔面に突き刺さる。
 タイヤの下から洩れてくるくぐもった絶叫。気絶すら許さぬほどの激痛が襲っているであろうその体に、60度の傾斜を保っていたバイクを水平状態に戻す。
 グチャリと何かが潰れるような音。タイヤの下から警備員の頭から噴出した白の混じった赤が染み渡っていく。エンジンの回転数を上げる。絶命しているから悲鳴は聞こえなかったが、リアタイヤが警備員の股間の辺りでなにか汚らしいモノを潰した。
 ・・・・・・相沢には、今の俺を見て欲しくはない。そう言う意味でもこの作戦は都合がいい。
 問題は、合流までにバイクの返り血を如何にかしなくちゃいけないんだが、給湯室を使わせてもらうとしよう。ロッカーを漁ったら臭い消しの一つや二つ出てくるか?
 そんなことを考えている間に非常ベルは鳴り響いて、これならば警備員室にも伝わっているはず。
 好都合だ。これなら半分はこっちに来る。
 キーを元の位置に戻したバイクから降り立って、警備員であったものから銃器を奪っておく。中々レトロなデザインだ。
 相沢に会うまでに、撃った反動で骨の一本や二本は確実に折れてしまうだろうが、内臓が傷つかなければ戦闘は続行可能・・・・・・いけるな。
 空になっていた拳銃の薬室に命を吹き込んでいく。あえてゆっくりと挿入していくこの緊張感がたまらない。
 一、二、三、四、五、六。よし、十分だ。
 キーを再び差し込む。今度はカチッという音はしない。後ろの連中はどうやらもう馴染んでしまったらしい。気の早いことだ、メインディッシュはまだ上にいるのに。
 登りのエスカレーターは左端にある。やや小さいかもしれないが、大丈夫だろう。なによりエレベーターよりも安全だ。
 警備員はまだやってきていないな。コレだけ待ったのに来ていないってものある意味・・・・・・もしかして、けっこうな量があっちに回ってる?

 「・・・・・・やば!」

 慌てて回転数を上げてロケットスタートを決めた! どうやら急がなきゃいけないらしい。
 見上げるとこのビルは途中まで吹き抜けになっている。四階くらいにはまばらな人影が見えるが、それでもあっちに集中したみたいだ。

 「マジで、踏ん張ってろよ!!!」



――――――――――――――――――――――――――――――――



 右と正面からアサルトマシンガンを構えて突撃してきた男たちの鼻っ面に、盾で銃弾を塞ぎながら抉りこむような突きを加えて一撃で悶絶させる。
 その後ろから迫ってきた、全く捻りのない似たような格好の男の眼前で、盾を本来の姿である五つの緑球へとブレイク(分散)し、目をくらませた隙に左手に戻ってきた緑球をその頚動脈にからませキツク締め上げ、窒息させた。
 無論、殺人は法律的に不味いので直前で止めてある。
 後ろから聞こえた発砲音に反射的に反応して右手の剣を盾に変える。一発は抜けて左肩を削ったが、問題ない。
 あすかの横から、相沢が肩のブースターでその発砲した男との距離を一気に詰めて、その拳を無防備な腹に打ち込んで気絶させた。深く刺さっているから肋骨は完全にへし折れているだろう。
 傷が脊髄に届いていないことを頭の片隅で祈りながら、あすかは13個の緑球を長い棍状に繋ぎ合わせた。

 「相沢君」
 「なんっすか?」
 「そういえば、これからどうします?」

 その質問の意図がつかめなかった相沢は首をかしげてハァ? と不振そうな声を出した。

 「どうするって、香里の妹を助けて、ここの頭をぶっ潰す以外に何が?」
 「――だから、その過程においてこれからどうするのかを相談してるんですよ」
 「まずは北川と合流しようかな、と」
 「どうやって探すんですか? 第一、僕らは今何階にいるかも分かってないんですよ」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・早いとこ次の階に行きましょうよ」
 「考えなしですか!?」

 あすかの突っ込みを無視した相沢は、またドタドタと足音が聞こえてきた方に歩を進める。
 あすかは慌ててそれについていくが、内心思っていた。

 (――いっそのこと、見放して1人で行動しようかな・・・・・・) 




〜数分後〜


 「飽きてきた」
 「んな問題じゃないでしょうが!!!!」

 全員半殺しの憂き目に会った集団を蹴っ飛ばしつつ、相沢たちは先程の場所から全然進んでいなかった。
 それもそうだろう。撃退すればするほどに波状攻撃は間をつめて行われ、さしもの相沢たちも精神面で限界――はまだ遠いが、それでも疲弊していることに代わりはなかった。

 「だって、こいつら何組目?」
 「およそ14組めですね。一組5人でしたから、もっと来てもおかしくないと思いますけど?」 
 「げ・・・・・・階段まだかな。早いとこ次のフロアに」
 「それは、止めておいた方がいいでしょう」

 橘は棒から2つの緑球を分離して、数時間前と同じように生命活性の粒子を降らせていく。

 「ども・・・なんで?」
 「いえいえ・・・突入してからまだ余り時間は経っていませんが、おそらく監視カメラ等には映ってしまっていたはず。それならこの量にも説明がつきます。それに、きっと階段近くでは重装備の上に待ち伏せしているはずですから」
 「ってことは、この場で立ち往生してろと? そんなの強行突破すれば」
 「違います、君が突入時にあけた穴。そこから僕のエタニティーを使って降りるんですよ。それなら見つかる可能性も低い」
 「なるほどねぇ。穴を・・・・・・ん? 穴・・・・・・?」

 壁に体を預けて一息つき、あすかはボロボロになったコートを脱ぎ捨てて汗だくの体を冷ましている。
 相沢は、右手を開閉しながら、何かをボソボソと呟いている。あすかが怪訝そうな顔をしているが、全く気付いていない。

 「・・・・・・そうか、そうすりゃ良かったんじゃねえか。どーせいつものことなんだし」

 なにやら自分なりの結論を出した相沢はすっと立ち上がって左腕を突き出した。
 左手には弾丸が構築され、重々しく開いた肘のチェンバーに装填された。
 十分に冷え切っていたブースターは、熱され空を切るようにキィィとジェット噴射機のような稼動音を立てて、拳はキツク握り締められて限界まで強度を上げる。

 「ちょっ! いきなり何する気ですか!?」
 「道がないなら――――作る!!!」
 「え?」

 空だった左手であすかの襟首を掴み、右腕の第2関節を曲げて、腰を落とし肘を床スレスレまでに引き絞る!
 床にフレアを吐き出すと同時に跳躍しその拳を天井へ打ち込んだ!

 「ジェットブレイカァーー!!!!
 「ちょっとぉぉぉ!!!!」

 あすかの絶叫を無視して、上にいた数名の警備兵をぶっ飛ばしながらも次の天井をぶち破った相沢は休むことなく次弾を装填する!
 次の狙いは斜め上のスプリンクラー、火照った体を一気に冷やすにはちょうどいい。

 「さあ! こっからが本番だぜ!!!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――



  (名雪)く〜〜・・・・・・スクライドだお〜〜〜・・・く〜


――――――――――――――――――――――――――――――――


 雲の切れ間から射す光が破裂した水道管から溢れる光に反射している。眩しい。
 一つ、また一つ。焦ることなく、確実に瓦礫を撤去していく。
 この美坂という家であった場所で、私の部屋の真下がここなら、きっとあるはずだ。
 丸腰で逝く訳にはいかない、突入には万全の準備が必要だ。
 焦るな、落ち着け。自分にそう言い聞かせながらもその手の動きは段々と早くなってきている。
 栞・・・・・・早くしないと、・・・・失ってしまう。
 大切な妹を、たいせつな――

 ――何を?

 「!!? だれ!」

 声の聞こえてきた方に向かって右腕を軸とした独楽のような回し蹴り。空を裂く。

 「・・・誰もいない?」

 気が抜けて尻餅をつきそうになるが、済んでのところで踏ん張ってこらえた。

 「――――っ痛!?」

 伸ばしきった左腕に鈍い痛みが走り、思わずその場に倒れこんでしまう。しまった、ここまで傷が治っていなかったなんて、少し危ないかもしれない。
 おそらく《フランベルジュ》の使用に耐えられるのは、足で一回、手で二回。それ以上放ったら体が耐えられない。ホウランドまで取っておく必要がある。
 左手のヌメリとした感触に眉をしかめる。
 知らず知らずのうちに、左手の爪が手のひらに食い込んでいた。
 が、そんなことにはかまっていられない。
 再び瓦礫を撤去して数分後、小型の旅行鞄――私が仕事道具を入れている鞄が出てきた。
 火薬類が大量に入っているのだ。この程度の爆発で壊れるようなヤワな作りではない。
 それでも焦げ落ちた『火気厳禁』の札をはがして、キーナンバーを合わせて手甲と足甲を取り出し、私服の上からだが装着する。
 あのスーツはこの状況では見つけるのに手間がかかるし、こんな場所で着替える気にはならない。
 鞄の内ポケットから《フランベルジュ》を取り出し、ポケットに仕舞っておく。
 火薬の取り扱いとしては無用心だが、ここしか仕舞う場所がないから仕方ない。
 踵をとんとんと合わせて、具合を確かめる。よし、問題はない。

 「香里〜〜」

 「名雪・・・・・・上?」


 ちょうど私がいるところから見て、風呂場であった場所に、猛スピードで降ってきた名雪が、目をチクチクさせる噴煙を撒き散らしながら着地。
 あああ、今ので家の面影が完全に消えた。

 「・・・・・・テロの助長にでも来たの?」

 「違うよ! お母さんが名雪についてていいって言ったから、大急ぎで来たんだよっ!」

 秋子さん、流石にこれはないと思うんですが?

 「何を言われたかは知らないけど、コレは私の問題よ。貴方がそこまでして関わる事は――」

 そう言ってやると、名雪はにんまりと微笑んでN−HORY式の敬礼をした。

 「水瀬秋子隊長の命により、これより貴方を監視します!・・・・・・コレでいいよね?」

 そう来たか秋子さん、思わず笑みがこぼれる。不思議だ、こんなに心細かったのに、今ではこんなに力がわいてくる。
 左腕を伸ばしきった時の痛みも気がつけば引いていた。これなら、名雪のフォローさえあれば十分戦えそうだ。

 「謹んでお受けするわ・・・・・・・ありがとう、名雪」

 「えへへ〜〜。じゃあ、急いで行こうよ! 祐一たちと久瀬君も行ってる筈だから」

 ――秋子さん、本と・・・なんか引っ掻き回してくれますね。

 「じゃあ、いっくよ〜」

 「名雪、それはいいけど、何で私を担ぐ体勢なの?」

 「早く乗ってよ、急ぐんだよ?」

 ああ、ダメだ。この子本気だわ。
 観念しておぶさると、名雪のアルターが踵から指の間の関節という関節を展開したのが見えた。・・・・・・まずい、コレは名雪の十八番、

 「ねえ、それは私への負担がおおき」

 「天駆のラビットシュートォ!!

 今より数分間、沢渡隊員すら三半規管をやられかけたという縦Gに耐えなければならなくなった己の短慮を嘆いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――


 「う、ウォ◎@×♯ーー!!!!」←形容しがたい音

 「あー、そんなきつかったの?」

 「当たり前でしょうが・・・・・・・・・・・気持ち悪い」

 ここは、ナンバープレートには9階男子トイレと書かれた場所。相沢に引きずられまくって、昼飯をすべて吐き出したあすかがグロッキーに陥っていた。
 あの後ジェットブレイカーで壁という壁をぶち抜きまくったせいか、予想外の行動に混乱したらしい警備員たちは全く姿を表さず、休憩を要求したあすかの為に相沢はトイレ前で停車していた。

 「普段からこんな無茶やってたんですか?」

 「ま、日常茶飯事ってやつですね」

 どんな日常だ。
 意義を申し入れたい気分になりながら、今叫んだらまた便所へ逆戻りしなければいけないのでぐっとこらえる。
 その代わりに重たいため息をつき、最初のスプリンクラーでぐっちょりぬれてしまったコートを絞った。

 「これも、帰ったら捨てなきゃ」

 「俺はコレしかないから無理なんだけどなぁ。今度冬服買うの手伝ってくれません?」

 「北川君に頼んだらいいでしょう?」

 「アイツ、自分と同じデザインの服しか薦めてこないから」

 口元をゆがめたあすかは目を閉じゆっくりと自分の状態を確認し始める。
 体温・・・まあ良し。服・・・交換しないと。精神力・・・まだ大丈夫。
 自分の状況を把握したあすかは絞り終わったコートを着る、着心地は最悪。

 そして悩む、1人で対処できるか? アルターは耐え切れるか?
 ――自分が歳をとったことが実感できる。
 昔なら休憩なんてしなくても大丈夫だったが、この有様では、自分が足手まといになる可能性が高い。
決意を固めたあすかは、早々に相沢に切り出した。

 「相沢君、先に行っててください。僕は、もう少し休みます」

 「・・・・・・もう少しなら待ちますけど?」

 「ダメです。こうしてる間にも、栞って女の子がどうなってるか分からないなら、急ぐべきですよ」

 まだ相沢は疑念の目を向けてくるが、「迎えに来ます」。そう言って自分が空けた穴に飛び込んでいった。
 相沢が飛び込んだ穴からは威勢のいい掛け声と壁が打ち崩される音。
 残されたあすかは、安らかな顔をしながら、廊下をゆっくりと歩いて相沢を考察していた。


 彼はきっと、カズマよりは甘いだろう。優しい、とでもいうのだろうか? 人を殺した経験もない。だからこそ真っ直ぐで、頑固なんだ。
 全部投げ出すような吹っ切れ方は出来ないが、目の前の壁を無視することも出来ていない。自分から荷物を背負い込もうとする傾向がある。

 「・・・・・・なんだ、こうやって考えると、カズマには似てないじゃないか」

 自嘲の笑みを浮かべたあすかは両手に8個の球からなる棒剣を握った。あと、実戦経験もまだ少ないらしい。

 「こんなやつに気付かないとは、あれなら僕だって現役はれるかな?」

 こんなやつの前でそんな事を考えている自分がおかしく、くすっと笑みを漏らす。
 恐らくは熊か? どちらにしろ、警備員を喰らってもまだ腹を空かせているらしい。この、アルターのケダモノは。

 「まあ、久しぶりに頑張ってみますか」



   ◆



 「どけぇ!」

 バイクの運転に集中しながらマシンガンで見えてるやつを牽制していく。
 運の悪いやつは流れ弾に当たっているらしいが、今の北川にいちいち確認していく余裕は無かった。
 片手でマシンガンを撃つ事自体無茶なのだ、いつ肩が外れるかヒヤヒヤしながら射撃しなくてはならない。 
 金属のぶつかる空虚な音、弾切れになったマシンガンを投げ捨て一気にエスカレーターを駆け上る。
 あと少しで吹き抜け部は抜けられる。さっきから妙にビルが揺れるのが気になるが、些細なことだと思いたい。
 いい加減限界にきているタイヤを気にしながら、北川はようやく七階まで辿り着いた。
 エスカレーターから移動後、一旦停車してバイクの疲労度をチェックしていく。問題はない、まだ走れる。
 そしてエンジンをかけようとして、

 ――バックパックを外して即座に駆け出した。

 むせ返るような血の臭い。その懐かしさと苛立ちに身を任せ、それでもキーは抜いておいた。
 休憩室とプレートがかけられた部屋に入る。


 「・・・・・・こんなのありかよ?」


 恐らくは数名がサボっていたのだろう、煙草独特の苦々しさがまだ残っている。備え付けの大窓からは絶景と取れる外の風景が一望できて、このビルの建築者の選択は正しかったということが見て取れた。
 問題は、クチャクチャと咀嚼音を立てている、無駄にでかい蛇
 ――ニシキヘビ科ボア亜科のアマゾンを代表する蛇、アナコンダだ。
 無論そんな専門知識を身につけていない北川からみればただの大蛇だが、その脅威は散らばった肉片がと窓にこびり付いた血が証明してくれていた。

 拳銃の弾を炸裂弾に入れ替えながら、北川はゆっくりと、気づかれているだろうが忍び足で部屋を抜け出し・・・・・・振り向いた蛇と目が合った瞬間炸裂弾を乱射した!
 体皮を掠めたが動きを止めるには至らない。逆に文字通り逆鱗に触れられた蛇はその顎でドアを食い破った!

 「なっ、これは失敗か!? ならこれで!」

 その驚異的な顎力に戦慄しつつ、北川はバックパックからとっておきのパイナップルを投げる!
 廊下全体を包み込む爆風。その余波の追い風を利用しつつ北側は稼げるだけの距離を稼ぎ、停めていたバイクに辿り着いた。
 すぐさまキーを差込み、エンジンをかけたところで、

 ゾクゥッ!

 全身を悪寒が襲った。

 ――――ドンッ――――ドンッ――――ドンッ

 「これは、もしかして・・・・・・・」

 間違いなく、彼の相棒が使うあの力を司る分解音。覚悟を決めたのか、北川は新たな銃弾を装填していく。
 ゆらりと、炎が作った雲海を抜けて、一匹の蛇がその姿を現す。
 異形、その顔を覆う装甲が、その金属の翼が、南アメリカ大陸で信仰されている太陽神ケツアルコアトルを思い出させる、その邪悪なシルエットすら脅威である。

 「・・・・・・こうなったら仕方ないか」









    『征くぞ!!!』

 奇しくも同時刻にして同じビル、人対獣の戦いが、始まる。



























〜後書き〜

やや急いで書いたって気がするんですが、スランプはまだ終わらない。

九尾さん>ゴミ掃除開始です。

キャメランさん
大魔球さん>前に投稿してたのは、加筆修正してます。色々気に入らない表現もあったので。それが終わったらhtmlにして何処かに投稿しようかと。





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△記事頭
  1. 別のサイトで別の作品のあとがきにカノンの作品をそろそろ出すとありましたので、そろそろ出ると思ってました{キャメラン}

    大暴れしてますね。祐一は人を殺さないようにしてるってのは今まであるようで出してなかった設定だと思います。そこらへんはまだカノンの祐一のままなんですね。{大魔球}

    カノンとしての部分が垣間見えて嬉しかったです{キャメラン}
    キャメラン&大魔球(2004.12.18 00:46)】
  2. とにかく全部ぶっ壊していいから爽快ですね〜。人殺しても正直バイオレンスって気がしません(前回読んでますから)。なんか踏み潰したか?って感じです。
    アナコンダってだけでも驚きましたけど、アルタービーストでしたか。強そうです!
    九尾(2004.12.18 00:49)】

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