荒れ果てた大地に一組の男女がいた。
男は何を思っているのか目を閉じてただじっと佇んでいた。
見る人が見ればもしかしたら男が何かを待っているのが分かったかも知れないが、
あいにくこの場には男の他にすぐそばで膝を着きまるで従者のように付き従っている女しかいない・・・
「マスター、こちらに近づいてくる二つの力を感じます」
「ああ、恐らくあの二人だろうな・・・・・・・・・さてどうしようか」
マスターと声をかけた女はただ黙って己の主の次の言葉を待った。
「・・・いつまでもこのまま追いかけっこしてても終わらないしな」
そう言うと男はゆっくりと眼を開けその二つの力が近づいてくるほうに視線を向けた。
その気配に気付いたのだろう。女の方も着けていた膝を離し男と同じほうに身体を向けた。
しばらくした後、二人の前に一人の神族と一人の魔族が降り立った。
二人は共にとても悲しそうに、また何かを決心した強い眼の色をしている。
「そうか、どうやらようやく決めたみたいだな」
その眼の色に気付いたのだろう、男は神族の男にゆっくりと話した。
「ええ、貴方が今まで散々逃げ回っていたおかげで時間も有りましたから」
「そうやで、こっちも決めざるを得なかったわけやけど・・・ほんまはずっと前から決まっとったみたいやけどな」
そう言うと神族と魔族の二人はそれぞれ構え臨戦態勢を取った。
「そう、もう決まっていただけだ。そしてここが最後の戦いの場だ」
男は二人の雰囲気が攻撃的になったのを察知すると同時に腰を落とし、どんな攻撃にも備えられるように身構えた。
男に付き従っていた女も男が構えると同時に構え男の言葉を待った。
「お前は魔族の方を相手しろ。俺が神族の方を殺すまで時間を稼げ」
「お任せ下さい。マスター」
女が言い終わったと同時に四つの影が一瞬にしてその場から消えた。
いや、消えたのではない。ただ眼にも映らないほどの速さで戦っているのだ。
男が右手に霊力を集め爪を創り神族に振り下ろす。神族はそれを左に避け、がら空きになった胴体にめがけ霊波砲を放つ。
しかしその攻撃に気付いていたのか男は振り下ろした勢いをそのままに身体を回転させそれを避ける。
そこに神族の霊力を周りが見えなくなるほどに集めた蹴りが男を襲う。
避けきれないと思ったのか男は両腕を蹴りの前に持っていき腕に霊力を集め神族の蹴りに備える。
ドゴンッ!!
普通に蹴っただけでは考えられないような音を発しながら男を蹴り飛ばす神族。
追撃をかけようとして自分に向かってくる霊力に気付き慌てて霊力で壁を創り防ぐ。
が、神族に向かってきた異常ともいえるほどの霊波砲の霊圧と収束率にその壁はほとんど用を成さなかった。
それに気付いて右に身体を捻って回避行動に移るが間に合わず左腕に直撃を受ける神族。
バシュゥゥゥゥゥウウ!!!
「があああぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」
神族はあまりの苦痛と衝撃に耐えられず悲鳴があがる。
男は何を思ったのか神族に追撃はせずその場で神族の悲鳴が収まるのを待っている。
「くっ!・・・・・・ハァハァ・・・さ、流石ですね。私を・・・ここまで傷を負わせたのは貴方が初めてです。
・・・ぅっ・・・・・・それに、すでにここ人間界と神界と魔界には境界が無く・・・・・・私も全力を出せるというのにこれほどの力の差が有るとは思いませんでした・・・・・・」
「そうでもない。俺もこの通り腕を持っていかれた」
そういうと男は神族にあらぬ方向に折れ曲がった両の腕を見せた。
「それは・・・嬉しいですね。このままやられっぱなしでは神族最高責任者の名前に傷が着きます」
「ふん、まだそんなことを言っているのか。神族最高責任者と言ってももうお前しか神族はいないだろうに」
「ええ。そうですね・・・それに魔族の方もあそこで戦っているサッちゃん以外にはもういませんし」
そう言って神族・・・いや神族最高責任者のキーやんは吹き飛ばされた左腕の応急処置をしながら男と話す。
男は遥か遠くで戦っている自分の使い魔とサッちゃんの方をなんでもないかのように見やり、自分の目の前に一つの小さな玉を出した。
「文珠・・・ですか。ほんとに勝手が良すぎる道具ですね。それが無くても貴方は脅威だというのに」
キーやんはそう言って「復/元」とかかれた二つの文字を書き込める文珠・・・双文珠・・・を見て一瞬にして元通りに戻った男の腕を見た。
しばらく直った腕の調子でもみるかのように腕を振り回したりしていたが、どうやら満足したのかキーやんのほうに再び視線を向けた。
「そうでもないさ。確かにこの能力は使い勝手がいいかもしれないがこれを使うまでには犠牲があったからな」
男はそう言って自分の胸の辺りに手の平を持っていき、何かを確認するかのように眼を閉じた。
「さて、どうやらそっちも治療は済んだみたいだな。では続きと行こうか・・・」
「そうですね・・・流石に腕は貴方みたいに直せませんが戦うには十分休ませてもらいましたし、それにこれ以上時間をかけるとどんどん不利になっていきそうですから」
キーやんが話し終わったのを確認して戦いを再開しようと男は先ほど見せた双文珠ではなく普通の文珠・・・単文珠を出そうとしてふと違和感を感じた。
いや、感じてしまった。
しかしそれは一旦置いておき今は目の前の戦いに集中することにした。
単文珠に浮かび上がる「爆」の文字。それを霊力を籠めてキーやんに向けて弾き飛ばす。
それに向けて霊波砲を放ち途中で爆発させるキーやん。
爆発のせいで視界が遮られるを気にせずにその中に飛び込んでいく男。男はなぜだか知らないが焦っていた。
先程の話でサッちゃんのことが出てからキーやんはどこかこちらに意識を集中していない。いや、確かに集中はしているのだがどこか集中しきれていないという感じだ。
そのことに気付いた男は頭に浮かんでくる嫌な予想を否定しながら、そしてどこかで確信しながらキーやんに聞いた。
「・・・おいキーやん。さっきからこっちに集中していないみたいだが、貴様何を企んでる」
「企んでる・・・そうですね。確かに私はある機会を探っています。まぁこれは貴方と戦っているのが私ではなくサッちゃんだとしても同じだったでしょうが・・・」
二人はお互いに一発でもまともに当たれば相手を十分殺せるだけの霊力を籠め一進一退の攻防を続けている。
男は右手に籠めた霊力を爪の形から刀の形に変化させキーやんを袈裟切りにする。それを紙一重でかわし、霊波砲を極限まで細く鋭くしたレーザーのようなものを男の股から頭にかけて振り上げる。
男は右手とは別に左手にも霊力を溜め半球の形をした盾のようなものを創り出し、そのレーザーを受け流した。
おかしい・・・男はそう思った。確かにキーやんの攻撃はどれもがまともに当たればこちらは重傷を負うだろう。でもどこか詰めが甘い・・・
そうまるで何か別の狙いがあるかのような・・・・・・
そこまで思ったとき一瞬集中力が思考に邪魔され無防備になる。それを見逃すほどキーやんは甘くなく霊力が籠められた右フックが男の胴体に叩き込められた。
「ぐふぅっ!・・・く、くそっ。集中が途切れたか」
そう言って次の攻撃に備えまわりに気を巡らすが攻撃がこない。
不思議に思ったがそれどころではないと思い直し、キーやんの方に眼を向けて・・・・・・・・・自分の失態を呪った。
キーやんは男の方を向いていなかった。キーやんが向いていたのは男の方ではなく、サッちゃんの方。
正確には男の使い魔の方を向いていた。
「気付きましたか・・・でももう遅いです。そこで自分の不甲斐無さを噛み締めながら見ていなさい」
男はキーやんの右手の指先に集まる先程までとは比べ物にならないくらい高くそして収束された霊力を見た。
そしてそれが自分の使い魔に一直線に向かっているのを。
「貴方はずっと昔から自分に向けられる痛みより身近な者に対して向けられる痛みに耐えられない人でしたね。
・・・・・・・・・そして彼女は貴方の最後の身近な者。力だけが強くても、心の強さは隠せません」
「や・・・止めろ・・・・・・」
男はキーやんの攻撃を止めさせようと飛び掛ったが、あまりのこの先実現してしまうであろう光景に恐怖し思うようにスピードが出ない。
「いいえ、止めません。貴方を止めるにはもうこれしか思い浮かばないのです・・・・・・神魔人横島」
「止めろぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」
だが、その神魔人・・・神族と魔族と人間の霊基を持つ男・・・横島忠夫の思いも届かずキーやんの指先から霊力で出来たレーザーは放たれた。
つづく
あとがきのようなもの
皆さん初めまして。Mirrorです。
前々からここには顔を出してて楽しく拝見させてもらってました。
ですが「おい、そんなこと言ってるけどいままでお前の感想なんて見たことねえよ!」
と思っている人もいるかと思います。
・・・ごめんなさい。感想とかって書くの苦手で・・・なんか失礼なこととか言えないし恥ずかしいし・・・
とか思っちゃって今まで書かずじまいでした。
二次小説を書くのは今回のこの作品が初めてで、読みにくかったり誤字脱字とか、さらにはキャラの性格などが違うと思います。
まぁ横島に限って言えばワザとなんですが、それ以外で違うようでしたら是非指摘してください。
あと、字を大きくしたりとかそういったのは良く分からないのでしてません。そういうのが好きな人はごめんなさい。
あ〜でも欲を言えば感想も欲しいです。でもあんまり辛辣なのは勘弁して欲しいな〜^^;
今後の展開ですが、大体は決まっています。ラストもどうするつもりかも一応決めてます。
でも今卒論で忙しかったりするのでかなり不定期連載になると思います。それでも完結させたいので皆様からの熱い声援とか応援が有ると嬉しいです。
それでは今回はこの辺で・・・
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