どうも皆さんこんにちは、横島忠夫です。
私は今、病院のベッドの上に、包帯だらけで寝ています。
「・・・・・・・・・・・・・・なんでさ。」
某運命なゲームの自称正義の味方な主人公のセリフを吐きながら、俺は世の無常について考えてたりしたりするのであった。
* * * * * *
あの後、おキヌちゃんのおかげで何とか立ち直れたのは良いんだが、とんでもない問題があったりしたのだ。
まあ、なんと言うか、・・・・・・・・・・・・・俺はおキヌちゃんに襲いかかって、そのまま最後まで逝っちゃってたりしたので、ぶっちゃけおキヌちゃんの格好が悩殺LV.MAXてな感じになってたのだ。
簡単に言うと、上半身にかろうじて服だったと判断できる程度に原型を残した布地がかかっているだけだったりしたのだった。
んで、実はあの空間は外部から[遮][断]されていただけだったので、一定時間が過ぎたら元に戻るんであって、当然そこには美神さん達が待っていたりするのだ。
おキヌちゃんの姿とその瞬間に香ってきた匂いから何があったのかは明白で、当然俺は美神さんと、何故か居た小竜姫様に一撃をくらって吹っ飛んだりしたのである。
不幸だったのはそこが東京タワーの上であった事と、俺がその一撃でも起きないくらいに深い眠りについていた事で、俺はそのままブチ落ちて行ったのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何で生きてんだ、俺?
ちなみに、ピートとタイガーはいち早くその匂いを感じて何があったかを察したタマモと、匂いは感じたけど察する事が出来ずにタマモに指示されて動いたシロによって目隠しされたのでその現場は見ていなかったらしい。
コン コン コン
「うぃ、開いてますよー。」
する事が無いのでボーっとしながらそんな事を考えていたら、ドアをノックする音が聞こえたので、俺はノックの主を部屋へと招いた。
入ってきたのは、あの時居た人達全員で、美神さんと小竜姫様はすまなそうにしながら入って来ている。
「あ〜〜〜〜、横島君。 大体の事はおキヌちゃんに聞いたは、・・・・・・・勘違いしちゃってゴメン。」
「すいません。 事情も知らずにこんな事をしてしまって、どうお詫びしたら良いか。」
二人はそう言って頭を下げてくれてたりするが、俺の方はある事によって頭が真っ白になってたりする。
「み、・・」
「「「「「「「み?」」」」」」」
「美神さんが素直に頭を下げて謝ってる! と言う事は現実じゃないのか、俺はまだ眠っているのか!?」
「「「「「「「だあああああああ!!」」」」」」」
俺のこのセリフを聞いて、部屋の中にいる全員が思いっきりずっこけた。
ふむ、・・・
「白か・・・。」
何が、とは言わんが、とりあえず手を合わせながら拝んでいたとだけ言っておく。
ジャキッ キンッ
「「で?」」
「スイマセンゴメンナサイ、クウキガオモカッタンデチョットカルクシヨウトオモッテノオチャメダッタンデス。」
だからその首に突き付けた神剣と神通棍を退かしてください、お願いします。
「まったく、おキヌちゃんからあんな事聞いてたから、どういう顔で会えば良いか悩んでたのが馬鹿みたいじゃない。」
神通棍を収納しながら、美神さんはため息をつきつつそう言った。
「おキヌちゃんのおかげで、もうすっかりモウマンタイですよ。 いや〜〜〜〜、やっぱり俺はギャグるのが一番しっくりしますわ。」
そう言って笑ってると、つられたように他の皆も笑い出した。
何か、こんなにも自然に皆と笑えるのは久しぶりな気がするな。
そうしてひとしきり笑った後、俺は少しだけ真面目な顔になって皆の顔を見回した。
皆も俺のその雰囲気を察してくれたのか、笑いを止めてこっちを見てくれている。
「さて、おキヌちゃんに聞いているらしいけど、改めて俺から言わせてもらうわ。 ・・・・・・・・・・・俺は自分の弱さを棚に上げて、皆に対して逆恨みみたいな事を考えてた。 てめえの薄汚さから目を背けるために、心の中で皆の事を罵倒していた。 しかも、その事実を認識した瞬間に、記憶を閉ざしてまで逃げて、皆に迷惑をかけた。 詫びはきっちり入れる、謝って許してもらえるかはわかんないけど、・・・本当にごめん。」
俺はそう言い終わると、ベッドの上に正座して、皆に対して土下座をした。
場の空気が重くなるのを感じながらそうしていると、いきなり頭に鋭い何かがザクっと突き刺さって来た。
な、なにか懐かしい感触な気がするんだが。
「み、美神さん。」
「み、美神殿。 さすがにそれはどうかと・・・。」
やってるのは美神さんらしいな。
と言う事は、やっぱりこれは、・・・・・・・・・・・・・・・・ は、ハイヒール!?
「横島君。」
わお、何かすっごい不吉さを感じる声色ですよ、皆さん。
「な、何で御座いましょうか?」
「当分の間、時給255円ね。」
も、戻ったーーーーーーーーーーーー!!
800円まで上がった時給が戻ったーーーーーーーーーー!!
まあ、バツだから甘んじて受けっけど、生活の方はどないしよう。
「ああ、それと・・・・・」
俺の頭の上からヒールをどかしながら、美神さんが言葉を続ける。
「あんな事があったんだから、おキヌちゃんにはケアが必要だと思うのよ。 事務所の部屋を一室貸したげるから、あんた責任持って一緒に居てケアしてあげなさい。 まあ、事務所で過ごせってのはこっちの要請だから、その間のアパートの家賃はこっちで持ってあげるわ。」
やられたって感じだった。
時給を減らす事をバツにして俺の気持ちをある程度納得させて、おキヌちゃんのケアってことで一緒に暮らさせて生活費の事を解決させる。
それに加えて、一緒に暮らさせる事で、少なからずあるこっちの気まずい気持ちをさっさと無くさせようってとこかな。
本当に、さすがは美神さんって思わせられるな、こりゃ。
おキヌちゃんの顔の方を見ると、なにやら苦笑しているような顔になってるし。
「美神さん。」
「何よ?」
「有り難うございます。」
「・・・・・・・・ふん、あんたに居なくなられたら、うちの事務所が総崩れ起こしそうだからってだけよ。 これからもこき使ってやるから、覚悟しときなさいよ。」
美神さんは少し顔を赤くしながら、そんな事を言った。
んでその後、他の皆からも許しをもらって、皆の気持ちが嬉しくて少し涙ぐみそうになってる時に気付いたんだが、
「そういやあ、何で小竜姫様がいるんですか?」
「へ? ・・・・・・・あ。」
その反応はなんですか、小竜姫様。
もしかして、ここに来た目的を忘れてたんですか?
「あーーーー、こほん。 色々あって言うのが遅れてしまいましたが、私がここに来た目的をいいますね。」
小竜姫様は咳払いをしながら、そんな事を言ってきた。
・・・・・・・・・・・・絶対忘れてたな、この人。
「横島さん。 貴方の中のルシオラさんの霊基構造が、何らかの理由で活性化したらしい反応が感じられたと言う、ヒャクメの報告を確かめる為に来ました。」
「「「「「「「え?」」」」」」」
小竜姫様以外の全員が同じような顔になっていた。
そりゃあそうだ、今まで安定していて、何の反応も示していなかったモノがこんなタイミングで活性化したなんて言われたら、誰だって呆然となるわ。
「な、ななななな、なんで今更そんな事になってんのよ!?」
「そ、そうですよ。 前に見たときは安定してて、横島さんに害を及ぼす事なんてないって言ってたじゃないですか!?」
「か、活性化したら何かあるのでござるか!? 先生は大丈夫なんでござるか!?」
美神さんとおキヌちゃんとシロが、そう言いながら小竜姫様に迫って行った。
ピートとタイガーも問い詰め様としたみたいだけど、三人のあまりの剣幕に少し呆然としている。
タマモはあくまで冷静なままで、三人が落ちついて、小竜姫様からすこし離れた所で質問を口にした。
「で、どういうことなの、活性化って?」
三人の剣幕に押されて少し息切れしていた小竜姫様は、その質問を聞いて気を取りなおして、話の続きを始めた。
「元々、人間の中に魔族の霊基構造を取り入れて無事に済むわけが無かったのを安定させていたのは、ルシオラさんがその中に横島さんを害してはならないという思念を残していたからなんです。 ですが、今回の事で横島さんは記憶を取り戻す際に、完全に負の感情に捕われてしまっていた。 その負の感情から来る陰気が魔族の因子に影響を与え、危ういながらも安定させていたバランスを狂わせる結果となったらしいです。」
聞いていて、自分に腹が立つ思いだった。
ルシオラが俺にしてくれた事を、自分で無意味にしちまったんだから。
「それで、このままだとどうなるの?」
「今はまだルシオラさんの残した思念が押さえているので大丈夫ですが、長くとも一年以内、短ければ半年でそれは限界を迎えます。 そして、その後に残る本能のみが残った霊基構造が完全に活動を開始すれば、
横島さんでも、ルシオラさんでもない、別の新しい魔族が誕生します。」
* * * * * *
「安心してください、妙神山でそれをさせないための準備を始めています。 1ヶ月後に迎えに来ますので、それまでにそちらの準備を整えてください。 少なくとも、一年以上の間は下山できませんし、完全に大丈夫にするまでには数年の時を必要としますから。」
そう言って、小竜姫様は妙神山に帰って行った。
その後は、ほどよく重くなった空気を全員で感じて、その場は解散となったのだった。
俺は持ち前の回復力を発揮して、普通なら全治数ヶ月の怪我を1週間で治して退院。
その足であの場に居なかった他の皆の所に行って、全員に謝って行った。
あの時の事を知らない人達は涙とともに、知っている人達は馬鹿と言う言葉とともに、俺を許してくれた。
雪之丞は見つからなくて、西条の奴とは何故か殴り合う事となってしまったがな。
去り際に聞こえた、
「ふん、僕とここまで殴り合うなんて男は世界中で君ぐらいのものだよ。
・・・・・・・・・・・無事に帰ってきたまえよ。 僕は君の事なんかで流す涙は無いが、周りの人達は君程度の人間の死でも涙を流すくらい優しい人達ばかりなんだからね。」
なんて言葉には、不覚にも少し目頭に来るものがあった。
そして、俺は今東京タワーの上に立っている。
真っ赤な夕日が見える、東京タワーの上に。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何から言えば良いかな?」
ゴメンと言えば良いか、すまんこってすと言えば良いか、許してくれと言えば良いか。
って、全部謝る言葉ばっかだな。
「まあ、まずはゴメン、だな。 お前がやってくれた事、無駄にしちまったよ。 後、見てただろうけど、おキヌちゃんと付き合う事になったよ。」
そこまで言って、俺は夕日ではなく、遥か上空を見上げるようにしながら目を瞑った。
「俺は彼女と、皆と一緒に生きるよ。 今度は間違わないように、あせらず、ゆっくりと前に進みながら。 だから、 」
俺はそこで言葉を切って、手の中に持っていた[移]の文珠を発動させる。
そして、消える瞬間に最後の一言を紡いだ。
「見守っててくれな、ルシオラ。」
後書き
さて、これで過去編も修行パートへ。
この中で、ほとんど説明の出てない武神流の設定をいくつか出す事となります。
でも修行風景でなく、ハーレムへと至るいきさつの方が主軸となりますがね(ニヤリ)
さて、次回は前回言った通り現代の唯ちゃんのパートに行きます。
小竜姫の説明を受けるまでの唯ちゃんの心境、そこらへんとかを出して行きますんで、楽しみにしててくださいっす。
では次回にて、またお会いしましょう。
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