炎の中に立つ一人の戦士
その赤き身体に宿るのは
護るに特化した者が持つ
熱き魂だった
エピソード弐 這い寄る蜘蛛
「い、今のは・・・?」
奇妙な夢に目を覚ます横島。そして辺りを見回すと
「あ〜、やっと起きた〜」
「やっと起きたワケ」
六道冥子と小笠原エミが立っていた。横島は自身の身体を見ると、どういう結果になったのかを悟った。
「俺・・・負けたんですね」
俯き気味になる横島。そんな暗い空気を、冥子を放った言葉が吹き飛ばす。
「大丈夫よ〜、横島君は引き分けで終わったから〜」
その言葉に驚嘆する横島。急いでエミの方が見ると、同意見だというように笑みを浮かべる。
「・・・そうですか」
それを聞いて安堵の表情を浮かべていると、突然エミが表情を変え、横島に詰め寄る。
「ところでおたく、さっきの“アレ”はなんなワケ!?」
「へっ?」
突然の事に状況が理解できない横島。そんな横島に冥子が分かりやすく(単純)に説明する。
「だから〜、さっき横島君が“変身”した姿の事を言ってるの〜」
その言葉にやっと理解する横島。しかしそれを知ると同時に一種の不安を覚える横島。そんな時
(言っておくが、アレは魔装術ではないぞ)
心眼の声が頭の中に響いた。
「あれ心眼?生きとったんか!?」
(そなたが私を護ったのではないか!!)
心眼の突っ込みにすぐに納得する横島。そして心眼は先ほどの姿について説明し始めた。
(とりあえずお前の疑問について答えるが、まずアレは魔装術ではない。そなたは悪魔と契約しておらんしな。それにあの姿からは邪気を発しておらず、それどころか救世の気を発しておった)
「救世の気?なんだそれ?」
心眼の言った言葉の意味が理解できないでいると、心眼が説明を開始した。
(簡単に言えば、誰かを救いたいという強い思いを持った者が放つ気だ)
心眼の説明を聞きやっと意味を理解する横島。
(とりあえずそなたはしばらく休んでおれ?雪之丞との闘いでダメージが溜まっているだろうし、先ほどの姿になっている時の霊力の消耗も激しいだろう)
心眼の言葉を聞き軽く身体を動かすと、全身に疲労と苦痛を伴ったものがあり、横島は身体を捩りながら痛みに耐えていた。
「あはは〜、横島君変な格好〜」
邪気のない笑い声を上げる冥子。それに釣られ薄く笑みを浮かべるエミ。二人の態度を見てふて腐れる横島だが、悪い気がしないでいた。
「ところで・・・何故そこに冥子さんの式神がいるんですか?」
横島が指差した先には、十二神将の一匹であるマコラが冥子の傍に立っていた。
「メドーサと白龍会のつながりを証明するための鍵よ」
そう言ってエミは不敵な笑みを浮かべた。そしてマコラに冥子が命ずると、マコラの姿は・・・メドーサに変わった。
「なあに、試合前にあたしはあんたと話なんかないわよ。あんたは医務室に行かないの?雪之丞の相手はお友達でしょ?」
「そんなツレないこと言わないでよ」
ミカ・レイは医務室に向かう勘九郎を呼び止めていた。現在エミ等が実行している“作戦”を阻止されないためにである。
「戦う前に話したいことがあるのよ。たとえば・・・メドーサの事とか」
ミカ・レイの言葉に固まる勘九郎。ハッキリいってバレバレである。
「素直に認めて自首した方が身の為よ。でないと次の試合・・・命の保障できないから」
「それは貴方にも言えるんじゃないの?美神令子」
その言葉に固まるミカ・レイ。同じ考えを持つ策略家はやはり同じパターンを取るようだ・・・(苦笑)
「まあそんな事は気にしないわ。次の試合、いい試合にしましょうね」
不敵な笑みを浮かべる勘九郎。気分を害したのかミカ・レイは足早にその場を去っていった。
「ふふ、楽しみね・・・痛っ!!」
首筋に痛みを感じ勘九郎が見てみると、緑色の小さな蜘蛛が張り付いていた。不愉快と思った勘九郎は蜘蛛を振り払った。
「ったく、あたしの身体に傷がついたらどうするのよ」
勘九郎は不機嫌なままその場を去った。しかし勘九郎は気付いていなかった。自分を刺した蜘蛛が・・・灰となって消滅したことを・・・。
「この解読は本当なんですか!?」
解読者の言葉を聞いた西条は驚嘆していた。解読者の説明によると、この遺跡の存在理由は、超古代に霊力の高い戦士が邪悪な種族を倒した後、来世に送られた邪悪な魂を封印するために作られたというものだった。
「おそらくここの研究中になんらかの事故が発生し、その封印が解かれたのだと思います。ここにいた研究員たちは、邪悪な魂に適合できず、崩壊したのだと思われます」
「もし適合していたら・・・?」
西条の問いに解読者はある方向を指差した。そこには当時の邪悪な種族を映した壁画が描かれていた。
「あの者たちと“同じ”存在になっていたでしょう」
その言葉に落胆する西条。すると突然何かに気付いたように解読者に尋ねた。
「その邪悪な種族を倒したといわれる戦士については何か分かっていませんか!?」
西条の言葉を聞き、解読者はある壁画に書かれた文を読み始めた。
「もしこの封印が解かれた時、それと同時に戦士と同じ魂を持つ者がその身に宿す力を呼び起こし、救いをもたらす戦士として戦うだろう。我らが英雄・・・“タダオ”が戦士『クウガ』の後継者として・・・」
「いよいよ決勝です!!突出してレベルの高いこの二名、果たしてどちらが主席合格となるのでしょうか!?」
結界内で対峙するミカ・レイと勘九郎。勘九郎は無表情で落ち着いているが
・・・
(さ〜て、私をナメてかかるとどうなるか思い知らせてあげるわ。・・・とりあえず横島君のセクハラに対するお仕置き20回分ぐらいの苦痛を味合わせてやら無いと・・・)
ミカ・レイはかなりキレていた。(つかお仕置き20回分って(汗))
「勝ってください、美神さん」
信頼の目を向ける小竜姫。それに対し“本物”のメドーサは・・・
(あの美神って女が相手か。・・・まぁ勘九郎なら勝てるでしょう・・・問題はあの横島っていうガキだね。意外と力を持っているとは、腐っても小竜姫の弟子って訳かい)
心の中で悪態をつきながら様子を見ていた。やはり二人の間では
≪ピリピリピリ≫
稲妻が走っていた。そしてその背後では
(頼むよ美神君。早く終わらせてくれ〜!!)
切実な心情の唐巣神父がるるる〜と泣いていた(苦笑)
「試合開始!!」
審判の声が上がると勘九郎は魔装術を発動した。それに対しミカ・レイは神通棍を伸ばし霊力を送り出す。
「死になさい、美神令子!!」
勘九郎は一気にミカ・レイに向けて剣を振り下ろす。しかしミカ・レイはそれをうまく受け流し、剣を台にして宙に舞い上がる。
「なめてんじゃないわよ!!」
神通棍を肩口に向けて振り下ろすも、剣で受ける勘九郎。そしてそのまま力ずくで押し飛ばす。
「くっ!!やるわね。でもまだまだこれからよ!!」
着地に成功したミカ・レイはすぐに体勢を立て直し、勘九郎に向かって走り出した。連続で神通棍を振るうが、ことごとく剣で弾きかえす。勘九郎も剣で切り掛かるが全て受け流す。そしてそれは幾度となく続いた。そんな中ミカ・レイはある事に気付いていた。
(おかしいわ・・・霊力を全力でブッ飛ばしているはずなのに何でバテないの?・・・もしかしてこいつ・・・魔物になりかけてるんじゃ!?)
ミカ・レイの思考を切り裂くように続く攻撃。その光景を見ながら小竜姫も気付いていた。
「彼はもう半ば人間じゃなくなっているわ。霊力を実体化させる事は肉体を力の付属物にするという事。あれじゃもう意識が長く持たないわ」
「でも強いわ。第一意識がある分使い勝手が悪いからね。丁度いいわ」
小竜姫とメドーサが睨み合う中
「そこまでだ」
審判の声が上がった。その後ろには横島・エミ・冥子・おキヌ・タイガーが立っていた。先陣を切って前に出たエミが取り出したビデオテープを前に出す。
「鎌田選手、術を解きたまえ!君をGS規約の重大違反のカドで失格とする!!」
審判の声に両者の動きが止まる。そんな中ミカ・レイは・・・
(“作戦”がうまくいったようね)
と納得していた。この“作戦”というのは、冥子の式神マコラがメドーサに変装し、雪之丞から証拠となる情報を聞き出すというものだった。だがそれを聞いて勘九郎は動揺を見せてはおらず、全く動いていなかった。そして突然・・・
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
叫び声を上げながら身体を掻き毟る勘九郎。するとその下からは
本来ある道着を着た人の身体ではなく
深緑の身体を持ち、手首からは二本の爪を生やし
下腹部に銅色のベルトを着けた
“蜘蛛”が姿を現した。
「な、何よ・・・これ?」
震える声で誰彼関係なく問いかけるミカ・レイ。それに答える者がいるはずも無く、その場に居る者は、異常な恐怖を感じ取っていた。そんな中
(痛っ!!)
蜘蛛を見た瞬間、頭の中に小さな痛みを感じた横島。
(何故だ・・・何故アイツに見覚えがあるんだ!!)
誰も知らない間に始まろうとしていた。時空を超えた光と闇の闘いが・・・。
あとがき
やっと二話が書けました。何か勢いに任せて二話分書いた気も・・・(汗)
とりあえず根性で頑張っておりますが、何時まで持つかちょっと心配です。
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