この世界に横島が来て早十年。自己流の修行により以前よりも強くなったが
果たして、サーヴァント相手にどこまで通用するのか?そして、作者は聖杯戦争を始められるのか!?
危険な第三話、開幕でござる〜
今日も今日とて日課をこなし、食卓で腹ペコタイガーとニュースを(新都の方でガス爆発があったこと)見つつ朝食ができるのを待っていると、怒鳴り声が聞こえてきた。
「また、慎二のやつかっ!」
「ち、違うんです。これは私が勝手に転んで・・・」
「転んだだけでそんな痣ができるかっ!どうやら慎二のヤツまだ殴られ足りないみたいだな。」
桜の手首の痣を見て憤った士郎を、桜がなだめようとしていた。
「どーした?」
「兄貴!見てくれよコレ!」
そう言って桜の手首をつかんで横島に見せる士郎。
「!慎二のヤツ・・・まだ懲りてないと見える・・・・」
苦い顔をする横島。
「横島先輩も違うんです。これはわた・・・」
「桜ちゃん、兄貴をかばいたいのは解るけど、八つ当たりで自分の妹に手を上げるようなヤツには制裁を加えなければいけないんだ。」
「兄貴の言うとおりだ。」
うんうんうなずく士郎
「で、でも先輩、前もそういって2対1のリンチになってたような・・・」
前回は桜に八つ当たりしていた桜の兄’間桐慎二’を二人が見つけ、
問答無用で制裁を加えた挙句に、『もう桜に手を上げません』という血判状を書かせて十字架に貼り付けにしてやったのだった。
そのときの事を思い出し桜は冷や汗を流した。
「わかってるよ、さすがにあれはやりすぎたしな。」
「今度は一発にしておくから大丈夫だ。」
「いえ、そうじゃなくて・・・」
桜の押しとどめようとする声もなんだか諦めの境地にあったりしている。
そんなこんなで、登校途中の民家で長物が使われた惨殺事件があったり、
士郎がバイト帰りにビルの屋上で遠坂を見たとかいったりして、この日も何事もなく終わった。
そして日常が終わる。
この日を境に
衛宮士郎と横島忠夫の運命の日だ。
(横島視点)
士郎が昔の夢を見たらしい、俺とはじめて出会った頃の夢だ。
あの日に始めてこの世界にやってきて、切嗣の息子であり衛宮士郎の兄になったのだ。
最初の頃は元の世界に戻る方法や、あのときに行方不明になったシロを探したりもしたが、もう半分諦めている。もうシロの事もあまり思い出せない、それどころか美神さんを初め、おキヌちゃん、タマモ、親父、お袋、タイガー、ピート、雪之丞、唐巣神父、ドクターカオス、マリア、エミさん、冥子ちゃん、愛子、小鳩ちゃん、西条、美神隊長、ひのめちゃん達の顔に薄もやがかかったように思い出せなくなってきている。霊力の修行をしているのは未練みたいなもんだ。それにまた、こんな感じで学生生活を送るのも悪くないとも思っている。それでも・・・・
「はあ・・・」
今日も朝食はいつものメンツでとっている、その最中にのため息は意外とよく聞こえるものらしい。
「?どうしたんだ兄貴?」
「いやなんでもない、ちょっと昔のことを思い出してな」
「そっか」
それ以上は突っ込まないでくれる士郎に心の中で感謝した。
「あれ、先輩、その手。。」
「え?あれ?・・・何時ついたんだろうこんなの」
桜が示す先にあるのは士郎の左手、そこから血がにじんでいた。
おかしい事に、血が出ているのにそこには蚯蚓腫れのような痣があるだけだった。
「昨日、どこかで切ったかな?それにしちゃあ痛まないし」
「まあ、痛まないんだったら平気だろう。」
「ああ」
部活がある桜と別れて校舎に向かう、とそこで奇妙な違和感を感じた。
妙にみんなに元気が感じられない。
見ると士郎も同じ様に気づいたらしいが、少し首を傾げてそのまま校舎に向っていった。
「・・・気にしすぎだよな」
そういって自分も校舎にはいっていった。
土曜の授業は早く終わるため、授業終了後には士郎は何時もの通り一成の手伝いをし、俺はこの間の更衣室覗きの罰で学校中の便所掃除をする事になっていた。
「しっかし、罰掃除が便所掃除ってのもアナクロだよなあ」
ぶちぶち言いながらも手は休めない、ここらへんは美神除霊事務所での刷り込みが働いてるのだろう。
「うっし、終了あとは・・・」
最後の一つは弓道部の道場にあるトイレだった。
道場の扉を開け中を覗くと、明かりが点いていた。
「ん?誰かいんのか?」
「あれ?兄貴どうしたんだ?」
「いや、この間の女子の着替え覗きの罰掃除、お前こそどうしたんだ?」
自分の記憶が正しければ士郎は一成と一緒に校内の備品見回りをしているはずだったが、時刻は七時をとうに過ぎている、こんなにかかるはずは無かった。
「俺は慎二のやつに頼まれて、弓道部の備品の調整とかを」
「・・・おまえってほんとにお人よしだよなあ、体よく使われただけじゃねえか、それ」
「だって、苦手なヤツが下手にいじって壊したり怪我したりするよりかはいいじゃないか」
「まあ、そうだけどな、お前が好きでやってるんならそれでいいさ」
「ああ、兄貴はまだ掃除するのか?」
「ん、ここで最後」
「じゃあ、俺もまだもう少しかかるから一緒に帰ろうぜ」
「わかった。」
30分くらいかけて便所掃除を終わらすと、もう辺りはすっかり暗くなっていた。
「うひー、さむさむ」
「こんな時間だしなー、・・・ああ、暗いと思ったら月が隠れてる。」
「ありゃほんとだ」
他愛も無い話をしながら帰路に着く二人。
キンっ! カキンッ! カチンッ!
微かだが何かが打ち合う音が聞こえてくる
「?」
「どうしたんだ、兄貴?」
「いや、なんか物音が聞こえてきて・・・」
キィンっ! カキンッ! キキンッ!
「本当だ・・・」
「校庭のほうからだ。行ってみよう。」
そういって校庭に向う横島。
「俺も行くよ」
そのあとから士郎も続く。
校庭に回る
「あれ・・・いったい?」
「・・・人か?」
遠くから見ただけでは良く見えなかったので近づいてみる。
本能が危険を察知したのか、二人とも隠れながら進んでいることを自覚してはいなかった。
そして、音の発信源を見・・・
そこで、二人して意識が凍りついた。そこには何かよく分からないモノがいた。
赤い男と青い男がいる。
時代錯誤を通り越して冗談とも思えないほどに武装した二人が本気で斬り合っている。
視覚で追えない動きで二人とも切り結んでいる。
フリーズした脳で理解できた事は、あの二人が本気で殺しあっている事とアレが人間ではなく別の何かである事だ。
見ただけで関わらない方がいいとわかる。
逃げたら殺されるが逃げなくてもまた殺される。
そんなジレンマの中、見たくも無いのにその殺し合いに見入ってしまった。
音が止む。
殺し合っていた二人は距離をとり、向かい合ったまま立ち止まった。
終わったのか?・・・・
そう思った瞬間、途轍もない殺気を感じる。
「うそだ・・・なんだ、アイツ・・・!?」
士朗が何かに気づいたようだった。
視線の先は槍を持った青い男・・・・
魔術が無くともわかる、なにかやばい事が起きることが・・・
直感だったが士郎も同じ事を考えているはずだ。
あの赤い男は殺される。
その瞬間、士郎が大きく呼吸をした。
「誰だっ!」
青い男がこちらを凝視した。
その瞬間、俺は金縛りから抜け出し、士郎を連れて逃げ出した。
見られた以上は殺される。
十年以上のブランクはあるものの、そのことに逸早く気づく事ができたのは修羅場をいくつも潜り抜けた経験からだろう。
「士郎っ!とにかく逃げて逃げて逃げまくるぞ!」
「あ・・・あ」
士郎も駆け出した。
とにかく距離をとるため走った。
「うおおおおおおおおおおっっ!!!」
雄たけびを上げながら逃げる。
だが、二人一緒ではちゃんと逃げ切れるか解らない。
なら・・・
「士郎っ!二手に分かれるぞっ!これならどっちかがやられてももう一人が助かるかもしれん!!」
「わ、わかった。」
そして二手に分かれた。
なぜか、士郎は校舎の中へ向ったが、今は人のことよりも自分のこと、そのまま外に出て走り続けた。
しばらく走り続けると後ろに気配を感じた、
「!きやがったか!」
足を止めずに毒づく。
とにかく、こちらを見失わせればこっちの勝ちだ。
すぐそばの路地裏に隠れる。
「へえ、人間にしては足が早いな」
すぐに吠え面かかせてやる!!
「サイキック・猫だましっ!!」
追ってきたやつの鼻先に霊波を放出しながら両手を叩く、逃げる時の横島の十八番『サイキック・猫だまし』をかましてやった。
「ぐわっ!」
一瞬、目を封じた瞬間にまた逃げ出す。
「わはははははっっ!!!鬼さんこちらっ!」
「て、てめえ!」
視覚が封じられた事よりも、こんなただのガキにやられた事に腹を立てたのか、その顔には青筋がいくつも浮いていた。
「ぶっ殺す!!」
遊びから、準戦闘モードに切り替えて追跡を始める。
しかし・・・
「どこ行きやがった!?あの糞ガキめえ!!」
青い男は、横島を追いかけ冬木市を三週くらい回ったが、ついに見失ってしまった。
その間、横島が十年前から冬木市全体に仕込んでいた罠に襲われたが、それがまた、性質が悪く罠に見せかけて注意をひかせ別の罠が発動したり、その別の罠が見せ掛けで、本命は最初のだったりとかなり手が込んでいた。
「野郎!生ゴミ、犬の糞、バナナの皮・・・・バカにしやがって・・・」
注 罠の中身はかなりえげつないものであったことをここに記す。
ひとしきり、怒鳴ったあとに青い男は何かに気づき、そのまま去っていった。
「ふう・・・どうやら逃げ切れたみたいだな。」
すぐそばのマンホールから横島が顔を出した。
「あー、もう罠のほとんどは作り直しか〜」
めんどくさげに呟いた。
「家も近いし、一度帰るか・・・疲れた」
生死をかけたフルマラソン(どっちかって言うとハードル競争のマラソン版)に勝利した横島はそのまま家に帰っていった。
家には誰もいなかった。
「まさか・・・士郎のヤツ・・」
最悪の想像に顔を青くする横島、しかし、そこに・・・
「はあ、はあ、」
「士郎っ!?」
満身創痍の士郎が帰ってきた。
「あ、兄貴・・・無事だったのか・・・」
「お前こそ・・・て、その胸!」
士郎の胸には赤い血がこびり付いていた、自身の怪我なら病院行きだ。
「ああ、あの青いヤツに胸を貫かれて殺されたはずなんだけど、気づいたら治ってた。」
「気づいたらって・・・いったいどうして」
「さあ、誰かが治してくれたよう気がするんだけど・・・?」
「そうか、でもまあ、生きてるんならそのうち合えるだろう。」
「・・・そうだよな生きてるんだしな」
「ふぐっ!」
「!おい!どうした!?」
「はっ!はっ!はっ!」
いきなり苦しみだす士郎を見て慌てる横島だが数回の深呼吸で士郎は落ち着いたようだった。
「いや、さっきのことでちょっと、もう大丈夫だ」
「そうか、よかった。」
そうして、ようやく一息ついた二人はさっきの事について話し合った。
「あれってさ・・」
「ああ、人間じゃなかったよな」
見た目は人だが、あれは人じゃないだろう。
まさか、神族や、魔族の類か・・・?
いろいろと話し合うが、情報量の少なさは如何ともしがたい
「・・・こんなときに親父が生きてれば」
ポツリと漏らす士郎。
俺達の親父、衛宮切嗣は5年前に他界している。
「バカ、分からなくとも自分のできる事をするんだろう?」
「悪い、そうだった。」
「まずは選択だ。関わるか、関わらないかのか、弱音はそのあ・・・」
カラン、コロロン
「「!?」」
屋敷の天井につけられた鐘が鳴る
ここは一応魔術師の家だ。
見知らぬ者が入ってくれば警鐘ぐらい鳴るようになっている。
「まさか・・・」
「そのまさかだろうな・・・」
このタイミングで警鐘が鳴るってことはヤツしかいない!
屋敷は静まり返っているが、確かにヤツが近づいている事が分かる。
このまま座して死を待つわけには行かない。
「やるしかないのか」
「ああ、けど、いざとなったら逃げるぞ」
震える足を押さえつつ横島は言った。
「士郎、おまえは何か強化できるものを探せ」
「ちょっと待てよ、兄貴はどうする気だよ、丸腰で。」
「ん、大丈夫だ。俺にはコレがある。」
’栄光の手’
右手にそれを出す。墓まで持っていくつもりの技だが命がかかっているのにそんな事は言ってられない。
「!?兄貴、それっ!?」
「説明は後だ、早く準備しろ。」
「わ、わかった」
返事をしながら何か細長いものを掴んで
’同調 開始’’構成材質 解明’’構成材質 補強’’全工程完了’
それを強化する。
「それは?」
「・・・藤ねえが持ってきたポスター」
いやそうな顔をした士郎に同情しつつ、戦闘体勢に入る。
「さあ、来るなら来い!」
ビュオッ!
いきなり、上からやってきた。
「おわっ!」
「わっ!」
転がってよける士郎と横島、すぐさま、立ち上がり構える。
そいつはそこにいた。
「・・・余計な手間を。見えていれば痛かろうと、俺なりの配慮だったのだがな」
そいつは気だるそうに槍を持ちかえる。
「ほう、てめえもいたのか・・・ちょうどいい、手間が省けた。俺にあそこまでの屈辱を味合わせた報いを受けさせてやる」
なんだか、怒っていらっしゃる。
「アハハハハハ、いやね、こっちも命がかかっているもんですから・・・」
「まずはてめえからだ」
ソイツはまず俺に向って槍を突き出した。
「うわっ!サイキック・ソーサー!!」
栄光の手をサイキック・ソーサーに変えて耐えるが、その衝撃まで殺す事はでずにそのまま窓を割って後ろにいた士郎と共に外に飛び出す。
「うおっ!」
「わあっ!」
飛び出した二人はそのまま転がりつつも体制を整えた。
「ほう、変わった芸風だな、おい」
男が言う。
「ふむ、そのわりには魔力を感じない、ボウズ、何もんだ?」
「いや、まあ企業秘密というわけで・・・・」
たははと笑うが実のところ余裕なんてまるでなかった。
「・・・・まあいい、意外と楽しめそうだという事に変わりは無い」
そして、先ほどよりもさらに手加減した一撃を加えてゆく。
「わ、わわっ!」
「くっ!はっ!」
再び栄光の手にかえて応戦。それでも裁ききれないものを士郎が補った。
目標は土蔵、あそこで士郎の武器になるものを探す。
そのためには時間稼ぎ!
「士郎!お前は先に土蔵へ行け!」
「え?でも」
「いいから行け!勝つ事は無理でも負けない事ぐらいなら俺でもできる!」
「わ、わかった」
土蔵へ向う士郎を確認しつつ改めて男と向き合う。
「負けないとはまた、大きく出たな。」
男は笑っている。
「あいつを逃がすための嘘か・・・」
「いや、言っただろう。負けない事ぐらいはできるって」
男は妙な自信をもつ横島を訝しげに見て、
「そうかい、そういうことはこいつを裁いてから言うんだな!」
明らかに先ほどよりも速い一撃を繰り出した。
それより一瞬早く
「文珠!!」
’模’
男の放った一撃は横島の持つ槍によって弾かれた。
「なにっ!?」
驚愕に顔を歪ませる男。
そこには、男と同じ姿で武装する横島の姿があった。
「わはははははははは!!!これぞ俺の秘密兵器じゃー!」
笑う横島。
「まさか、そんなかくし芸を持っていたとはな」
楽しそうに笑う男。
「行くぞっ!!」
第四話に続く
あとがき
すいません。なんだか毎回謝っているような気がするブルガです。
あまりに話が長くなりすぎたためにここで分割させていただきます。
第四話はすぐにでもお届けできるようにします。
横島対ランサー、決着はどうなるのか?次回をお楽しみに!