「あなたをGメンのほうで身柄を保護します。
質問、そのたは受け付けません」
話は文字通り唐突に始まった。
某日。
アシュタロス戦の記憶もだいぶ薄まった今日この頃。
横島はGメンの隊長…つまり、美神美知恵のところへ。
そして、唐突に命令されたのだ。
『Gメンに入り、以後、西条の管轄下に入れ』と。
「明確な理由を聞かせられない限り、その命令には応じられませんよ!」
「…いわなかった?質問も、何も受け付けるつもりはない、と」
横島は理解できていない。
なぜ、こんな強引な手をとるのか。
自分をGメン直轄において何の利点があるのか。
そのあたりを思考し…ひとつ、思い当たった。
贖罪とかそういうものでは確実にない。
確実にないとすれば…
「文殊か…要するに文殊供給をGメンで完全管理しようと。
そのために…俺の行動を完全管理しようというわけか…」
「…………ええ。その通りよ?
ハッキリと言ってしまえば、あなたの力の中、見るべきところがあるのはまず際立ってそれだけ。
それ以外を考えても…見つかる?自分が『価値がある』と胸を晴れる要素が。」
沈黙。
それが支配するかのようだった。
周囲には目の前にいる美神美知恵。
それ以外にはだれもいない。
「だったら何だっていうんですか…」
「…単純よ。
最近…あの戦いで肩身の狭い思いをした人たちがいてね。
東京で言えば…神凪とか。
西のほうだと…神城とか。
正直に言えば、そっちからの影響力もあって。
こちらとしては挽回するカードがほしいの。
そのカードが、あなたよ、横島クン」
(他人の都合かよ…)
そう、内心でつぶやけば。
横島の内心それを拒絶する思考が浮かび上がる。
ただひとつ。
それは、別れをも意味するが。
今まで、共にいて。
一緒に笑って。泣いて。
心を、満たしてくれていた人たちとの別れ。
「お断りだ。傀儡になるつもりはない!」
叫び、横島は彼女のテーブルを思いっきり叩いて叫んだ。
彼女の、要求に対する否定を。
「そう、美神令子除霊事務所所属員としてのGS免許剥奪を申請しておきます。
罪状は、先達の戦役。
あのときの魔族に対する協力。いえ…寝返り。
またこちらに寝返った、という扱いにしておきます」
(それだけでこの女との縁が切れるんだったら…文句はない…
そう、認識する)
美知恵は続ける
「事務所に戻ることは許しません。
あそこは、美神令子除霊事務所員と、その依頼者が赴くべきところ。
部外者の入っていいところではないわ」
淡々と、動じることなく彼女は続けていく。
別れさえ言うことも許されず。
いや、従う理由もないのかもしれないが…
「出て行っていいわ。
ここにくることも…もうないでしょうけど。」
横島は無言で出て行く。
そして…そのまま姿を消した。
事務所の人間はそれないに探したようだが、やがて、諦めていった。
横島忠夫。
その名が彼女らの口に上るのは、それから2年ほど後の事。
その時間を修行と、研究に費やした横島は、とある都内のボロビル。
地脈的にはそれなりに優秀なそこに、ひとつ、城を構える
『横島異能相談所』
元来人間以外に好かれやすかった彼が、その特性を生かして、共存できるところは共存していこうと考えた結果らしい。
ビルの中から、二人、人影が出てくる。
「小僧…いや、所長か。
モグリとはいえこんなところを作ったのだ。
かぎつけられるかも知れんぞ?」
「心配性だな、カオス。
若返ったというのに…まあいい。
安いものだが、祝いといこう。マリア?買い物頼めるか。」
若かりしころ、700年前の姿そのものになっているカオス。
香港戦などの功績で若返らせてもらったらしい。
いろいろ実験台風味だったようだが。
マリアはうなずくと、カオスからそう多くはない資金を受け取り、コンビにまで歩いていく。少々の、買い物をするために。
「掃除だ、手伝え。」
「ん。」
二人はそんなやり取りをして中に入っていく。
奥多摩のとあるボロビル。
そこが物語にクロスするのは、もう少し先の話。
えと。
三作品ほどこの後かかわらせる予定のを出しておきました…
チャットばっかりやっていたせいかな。いろいろ問題が。
三年近くぶりに書くSSですので…お許し…を?
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