「賢者様ーっ!」
バンッ
元気良く木作りの扉を開け放ったのは、14歳位と思われる少女。
「あれ・・・居ない。上かな?」
探していた人物は部屋には居なかったようで、部屋の奥にある階段を上っていった。
[屋上]
「ようやく100年か、中々楽しかったな・・・。だが、もうここの紫色の夕日を見ることもなくなる・・・・・か。いつもの事ながらこの日が来るのは待ち遠しいようで、寂しいな。」
「賢者様っ!」
階段から顔を覗かせるのは先ほどの少女。頭には狐のような耳、流れるような美しい茜色の髪。腰にはふさふさの尻尾。
綺麗というよりはまだまだ幼さの残る顔立ち、だが将来は美人になるだろう事が約束されているだろう。
「シューラか、どうした?」
賢者と呼ばれた男は振り返り、シューラと自らが呼んだ少女を見た。
「っ・・・。」
紫と橙色の混じった夕日を背にし、漆黒の腰まである髪を持ち賢者と呼ばれた男。18歳と言っても通じるだろう。
彼は若かった。いや、年をとることが無かった。何故なら・・・世界から外されたのだから。
彼は憂いて居た、これから訪れる別れを、悲しみ、嘆き、苦しんでいた。
それを見たシューラは、その瞬間何も考える事が出来なかった。圧倒されたと言っても良い。
(何て哀しそうな顔をしているのだろう・・・。ここ最近様子がおかしかったけど、ここまでの表情をする事は無かったのに・・。)
「?・・どうした、シューラ?」
少女の様子を訝しげに上から覗き込んでいた。
「なっ・・なんでもありませんっ!」
「そ、そうか・・。」
顔を真っ赤に染めながら力いっぱい否定するシェーラに、苦笑しつつも尋ねる。
「何か用事があったんじゃないのか?聞きたいことが有るなら急いだ方が良い・・・」
最後の方の言葉が段々弱くなっていく。
「え、何か用事があるんですか ? だったら明日でも良いですけど・・。」
「いや、明日は無理だ・・・と言うか、後僅かだな。」
「ど、どういうことですか!?」
「昔言ったことがあっただろう? いつか別れの日が来ると・・・・それが今日という訳だ。」
シェーラは思い出した。小さい頃一度聞かされて居た事を。
<シェーラ、俺はいつか旅立たねばならない。遠い・・・そう、遠い所にだ。>
<何故ですか? いつもの様に私を連れて行ってはくれないのですか?>
首を振りながら真面目な顔で優しく話し掛けてくるが、幼いシェーラには余り効果が無い。
泣きそうになりながら必死な様子で自分も連れて行ってくれと懇願するシェーラに、彼は言う。
<それは無理だ、過去3回ほど何か一緒に行けないかを試したが無理だった。分かってくれシェーラ>
<嫌だっ!・・・嫌、嫌、置いていかないで!>
ついに泣き出してしまったシェーラを優しく抱きしめながら、「ごめん」と言葉には成らない吐息を吐き出す。その後泣きつかれて眠ってしまったのだった。
「・・・・。」
幼かったシェーラは無意識のうちにその事を余り考えないようにしていた。今日この時までは。
育ての親との分かれ、拒絶するのは当然の心理と言えただろう。
「思い出したか?・・・・そろそろ・・・・・・だな。」
そう言った彼の周りが徐々に光り輝いてきた。
「嫌、嫌、行かないで!!お願い!」
シェーラは涙を流し懇願した。
「それは俺に決める事は出来ないんだ・・・悪い」
彼の哀しそうで、悲しそうな顔はシェーラは一生忘れられないだろう。
徐々に光が大きく、明るくなっていく。もう彼の姿を直視する事も出来ない程に。
「嫌だっ!お願いだから行かないで・・・・・・嫌だよっ嫌だ・・・・父様」
光が膨らんだ。彼を中心に3メートル程か。
「父様!」
義父のもとに駆け出した。
「最後に父と呼んでくれたか・・・・有難う、シェーラ。愛する娘」
光は縮んだ、彼を中心に。手を伸ばしたシェーラは彼に触れる事は無かった。
光が消えたから、彼もまた・・・・。
「う、ぅぅぅううううぁああああああああーーーー」
シェーラの慟哭は愛する父と、愛しい男性と、尊敬する賢者を一緒に失った者の嘆きだった。
(幸せになってくれ)
プロローグ end
あとがき
初めまして。いつも読むばかりだった(感想も書かず)ので、思い切って投稿してしまいました。
SSは初めてですので、誤字脱字は笑って貶してくれれば幸いです。
実はGSは全巻読んだ事はありますが、手元にはありません。
ですから・・・・矛盾点が沢山でるかもしれません。ご指摘ください。頑張って矛盾を消します。
作品についてですが、ちょくちょく投稿できればと思っています。
投稿してしまった手前、最後まで投稿しつづける事を、私の僅かながらの良心に誓います(ぇ
今回謎に残った事は沢山有るでしょう、いづれ分かると思いますので長い目で見てやってください(長編の予感?
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