横島たちが召喚された次の日、トリスとネスティは任務が決まった、とのことで試験をした部屋に呼ばれた。
「トリスよ、お前に最初の任務を与える。心して聞くがよい。」
「はい。」
「お前はこれより護衛・・・獣?・・・こほん、お前が呼び出した者と共に、
修行を兼ねた見識を深めるための旅にでるのだ。
・・・なお、視察の旅の期限は定めぬものとする。」
(へっ?)
フリップの最後の言葉の意味が理解できないトリス。その様子を見てフリップはいやらしく笑う。
「蒼の派閥の一員としてふさわしき活躍を示すことができた時、それを持ってこの任務の完了とする。」
「お待ちくだされ!フリップ殿!」
「どうかなされたか?ラウル殿。」
「何をもってふさわしき活躍とするのか、説明すべきでは!?」
「それはトリスが自分で考えるべきことでしょう。いくら後見人とはいえ過保護は困りますなぁ、ラウル殿?」
かなり嫌味ったらしく言うフリップ。召喚師の幹部にしておくにはもったいないほどの悪役っぷりだ。
「じゃが・・・」
ラウルがなおも言い募ろうとするとフリップは切り札を出してきた。
「それにこの任務は幹部一同が協議した上で決定したことですぞ。
不満があるのならグラムス議長や総帥にお言いなさい。」
「・・・っ」
フリップの言葉にラウルが何も言えなくなった時、トリスが発言した。
「わかりました、フリップ様。」
「トリス?」
トリスの発言を聞いたネスティは、何を言っているんだこいつは、というような顔をする。
「その任務、お受けいたします。」
トリスの言葉を聞いてフリップは生理的に気持ち悪い笑みを浮かべる。
対照的にネスティやラウルは驚いている。
「君はバカか!?これは任務の名を借りた、君を追放するための命令だぞ!!」
「わかってるわよ。」
(そんなの、最初からわかってる・・・)
「あたしはもうこれ以上あたしをかばって師範が立場を悪くするのはイヤなのっ!」
「・・・」
トリスの言葉に何もいえなくなるネスティ。
それからフリップが勝ち誇ったような声で説明を続けていった・・・
そして説明が終わり、旅立つための準備をするために、部屋に戻ってきたトリス。
「お帰り。どんな任務になったんだ?」
「あ、横島さん・・・
えーと、世の中を見てくるように、って言われました。」
「じゃあ、トリスは旅にでるのか?」
「はい。」
「ふーん・・・なら一緒に付いて行くしかないか・・・」
「えっ、何でですか!?」
「俺たちはトリスに召喚されたから、トリスに送り還してもらうしかない。だからトリスがある程度、まぁ文珠とかの補助つきで俺たちを元の世界に送り還せるぐらいの力をつけてくれるまでは、一緒にいなくちゃならないんだよ。」
「あ、そうだったっけ・・・」
「それに・・・」
「それに?」
「この世界でどうやって暮らしていけばいいのかわからないしな。」
(そういえば、あたしが横島さん達を召喚したんだから、
あたしが横島さん達の面倒を見なきゃならないんだった・・・)
今更ながらのことに気づくトリス。その間に横島たちは旅立ちの準備を終えていた(といっても、荷物などが無いので身なりを整えて部屋から出るだけだったが)
「早く行くわよ。」「急ぐでござる。」
「わっ、ちょっと待って〜。」
そうした、どちらが旅に付いていく方なのかわからない光景が展開されていると、そこにネスティが現れた。
「何をやっているんだ、君は・・・早く行かないか。」
「わかったわよ・・・」
(少しぐらい、別れを惜しんでくれたっていいじゃない・・・)
そして蒼の派閥の門に着いた。
「もういいわよ、ネス。見送りはここまでで。」
「・・・・・?」
「心配してくれるのはありがたいけど、あたしも一人前になったことだし、一人でここからは行けるわよ。」
「・・・・・・・・・」
トリスの言葉にあきれた顔をしている横島とタマモとネスティ。
「トリス・・・まさか気づいてなかったのか?」
「?、何が?」
「普通、あなたを見送りにくるだけの人なら、こんな旅支度をしないと思うけど・・・?」
「・・・ということは・・?」
「まさか、気づいてないとは思わなかったが・・・
・・・・君が任務を言い渡された後、フリップ様から命令が届いてね。
不本意ではあるが、君の監視役として同行を命じられたんだ。」
「・・・・・・・ええ〜っ!?」
「それに横島君たちのこともあるしね。」
「・・・そっか、・・・・・あははははは」
ネスティが付いてくる事を知って驚いていたトリスだったが、ふとうれしそうに笑い始めた。
「どうしたんだ?」
「いや、あたし正直不安だったの。外のことなんかまったく知らないし、知ってる人が誰もいなかったから。」
「・・・僕は監視役として来ているんだから、甘やかしたりしないぞ。」
「それでも、うれしいのよ♪」
「・・・・・・・・・・まったく。」
トリスの本当にうれしそうな様子に微苦笑しながらも暖かい雰囲気を出すネスティ。
「さて、横島君達もいることだし、まずはこの街『聖王都ゼラム』について案内するとしよう。トリス、君もあまり知らないだろう?」
「うん。」
(そういえば、授業をサボってたときも昼寝ばっかりしてたしね・・・)
「それでは、行こうか。」
そうしてトリスたちは移動を始めた。
―劇場通り商店街―
「ひゃあ・・・これ、ぜーんぶお店なのよね?」
「すごいわね・・・」
「・・・・・・・(コクコク)」
「すごいでござる・・」
トリスたちは店の多さに圧倒されている。
「ゼラムには大陸の各街から、様々な品物が集まってくるからな。多くの店があるんだ。まあ、どの店で買えばいいか、すぐにわかるようになっているんだが・・・・・って。」
「ねえ、これなんかいいんじゃない。」
「いや、こちらのほうが可愛いでござるよ。」
「・・・・・」(トリスにくっついて品物をじっと見ている)
ネスティが説明をしているにもかかわらず、それを無視して服を見て楽しんでいるトリスたち。
「・・・・・人の話はちゃんと聞いていろ!」
「ご、ごめん。あんまりにも珍しかったから・・・」
「すまぬでござる・・」
「(ビクッ)・・・ごめんなさい・・・・」
「ふぅ、まったく・・・横島君、君もシロを・・・?」
ちゃんとシロを見ていてくれと横島に言おうとしたところ、横島が見当たらないので周りを見渡すネスティ。
「横島ならあそこにいるわよ。・・・・もっとも今は近づかない方がよさそうだけど・・・」
「?」
タマモの言葉に首を傾げながらも指差された方を見ると・・・
「美しいお姉さん!僕と一緒にお茶しませんか!!もちろんお茶だけでなく、ぜひとも将来を見据えたお付き合いも!!!」
「きゃあ〜〜!!何なのこの人!?」
「ね、だから言ったでしょ・・・・・って」
「・・・・・・・・・・」
(な、なんなんだ、これは?あれは誰なんだ?昨日の横島君は何処に逝ったんだ?!・・・・・ハッ!まさか、夢だったのか! い、いや違う!今の光景の方が夢なんだ!そうだ、そうにちがいない!?これは夢なんだ!!!早く目を覚ましてトリスの任務を聞きに行かなければ!!)
昨日の横島とのあまりのギャップにか、その場で固まり現実逃避を始めるネスティ。
「・・・・・これ以上横島を見せとくと、精神崩壊しかねないわね。トリス、横島を止めてくるからネスティをお願い。」
「・・・・夢・・・夢だよね、これ・・・・早く起きなきゃ・・・」
「・・・・・こっちも重症ね。先に横島を止めてこようかしら。」
「そうするしかなさそうでござるな。」
早くも二人目に振られた横島に近づいていく。
「くっそ〜!なんであかんのや!」
「・・・とりあえず、美人を見たら飛びつく癖を直すべきでござるな。」
「タマモ、シロ、止めに来たのか!?俺を止めるなよ!!今、俺は世界を超えた恋愛を始めようとしているんだからな!?」
「・・だから、やめなさい。」
「おねいさ〜ん!僕とお茶しませんかぁ〜!」
「先生、少し話を・・・」
「この世界に来る前から愛してました!」
「話を聞けって言って「いやぁ〜お美しい!貴方に会えてぼかぁ幸せです!!」・・」
ブチッ!!
ボウッ!
ブゥン!
「ん・・・?」
殺気を感じた横島が振り返るとそこには
二匹の修羅が居た。
「あ、あの〜タマモさん?どうしてそんなに大きな狐火を出していらっしゃるんでせうか?
それにシロさんも何で霊波刀なんか振りかぶってるんでしょうか?」
「さあ・・・どうしてかしら・・・・?」
「先生・・・今、拙者の刀は血に飢えているでござるよ・・・」
「お、お、お、落ち着け!話せばわかる!だからその人を軽く十回は殺せそうなコンボはやめてくれ!!」
「「問答無用・・・!!」」
ゴオオオォォッ!!
ザシュッ!!
「ぎゃああああ!!!!」
「ふう、さっぱりした・・・・それじゃあ次の場所に行きましょうか。」
「そうでござるな。」
「・・・お・・・お兄ちゃん・・放っといて・・大丈夫・なの・・?」
見るに耐えぬ殺戮劇を見たからか、かなり怯えつつシロタマに聞くハサハ。
「ん?ああ、問題無いわよ。横島ならあの程度五分で回復するし。」
「いや、先生なら二分でござるな。」
横島の頑丈さを信用しているのか、ギャグキャラ扱いしているのか、まったく自分たちの攻撃を食らった横島を心配していないシロタマ。
「それよりも先にトリスたちを正気に戻すわよ。」
「お〜い、起きるでござる〜。」
「・・・・・・」
そのままトリスたちを引きずって、注目を集めすぎているその場を離れていくシロタマとハサハ。
「だ、誰か・・・・助けて・・・」
・・・・・全身に火傷を負い、無数の刀傷をつけられた、ぼろ屑のような横島を晒し者にしたまま。
「あかん・・・もう死ぬ・・死んでまう・・・」
そこに足音が近づいてきて、横島を助け起こす。
「おお、どなたか知らんけど助かっ「先ほどの騒ぎの原因は貴様か!!ついて来い!!」った・・・・・ってぜんぜん助かってないし!むしろ状況がわるなっとる!俺が何をしたっていうんやー!!」
「さあ、とっとと歩け!!」
「誰かー!ヘールプ!!ヘルプミイー!!」
・・・・・・南無三
言い訳+お知らせ
ものすごくお久しぶりなラグナです。
今回投稿が遅れたのにはかなり切実な事情があったんです。
どのような事情かというと・・・・
第三話を投稿した次の日に風邪で四十度の熱を出し倒れる
↓
一昨日まで倒れたまま。勿論、その間の試験は全滅
↓
全滅したおかげで補習と追試で冬休みの大半が埋まる
↓
そのせいでバイトを首になるのが確定
なんていう素敵即死コンボが発生してしまっていました。
食費は自分で稼げと親に言われているので(一人暮らしです)
来月からの食費を稼ぐために新しいバイトを探している途中です。
というわけで新しいバイトを見つけてそこに慣れるまで
一週間に一回ぐらいしか投稿できなくなると思います。
ですので、今までよりも遅くなるでしょうがご容赦ください。
さて、今回の話についてですが
何も言う事はありません。・・・存分に貶してください(泣
話の展開上(作者の思いつきとも言う)ネスティのキャラを壊してしまいました。・・・・これに懲りてもうしませんから許してください(泣
ギャグを書くのが苦手なのと作るのに一日程度しか時間が無かったのとで、かなり出来は悪いです。
今度からはもう少し時間をかけて書きます。
最後に、前回の話では紛らわしい説明をしてしまい真に申し訳ありませんでした。
今度からは注意書きなども見やすい場所に書くことにします。
送還術などの設定については、前の話のレスでしぃりうさんが書かれたとおりの設定です。(私の考えの中では)
ではレス返しを
>夢現さん
トリスが力をつける以外にも、そういう帰り方でもいいなと思っています。
サモンシリーズのキャラを出すにはちょうど良い理由になりますし(笑
ネスティについては前回のレス返しで書いたとおり、話を急いだ私のミスです。すみません。
>砂糖さん
テスト自体を受けられず轟沈しました(泣
続きを楽しみにしてくださったのに、こんな駄作しか書けず、真に申し訳ありません。
>SKさん
決して横島は力で対抗しようとしていたわけじゃないんですが、周りはそう見てくれませんから。
このサモンの世界でもその能力ゆえに、彼はいろいろな事に巻き込まれることになります。
>しぃりうさん
まず、勝手に名前を出してしまい、本当にすみません。
私が書くともっとくどくなってしまうので勝手に書いてしまいました。
これからはそういうことにならぬよう、事前に気をつけます。
トリスとシロの暴走は少し先の話になってしまうと思いますので、しばらくお待ちください。
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