「わ、わたしは忠夫という人物ではない。
横島忠夫によく似た人間ばかりのヨコシマン星からやってきた、
正義の味方ヨコシマンである!!」
呆然と口を開いたまま固まるタマモと令子の前で、
腰に手を当て、堂々と胸を張る覆面の男。
変態っぽい。
「ねえ、タマモ。あれって・・・」
「少なくとも忠夫じゃないわ。中身が違う」
タマモお姉様の目に掛かれば、一発で見抜かれるようだ。
多分、忠夫限定の洞察眼だろうけど。
わたしのせいで、この少年を殺しかけたからな、
完全に回復するまで、事実を隠したまま、
同じ事務所の者を手助けし、皆を守るにはこの手しかない。
除霊が終わり、
うむ、今日も良いことをした。
などと考えているこの男、
忠夫に憑依している神族・韋駄天の八兵衛の頭に、
「なにが良いことかー!!」
怒鳴り声が響いた。
「な、なんだ?」
「なんだ、じゃねえ。人の体を使ってなにを遊んでやがる!」
「あ、遊んでなどおらん! 世のため、人のために・・・」
「ほーう、ずいぶん楽しそうだったけど?」
ぎくっ
「昨日の夜、嬉しそうにシャツに刺繍してたし?」
ぎくり
「今日もすっごい、ノリノリだったな」
ぎくぎく
すべて図星であったりする。
「だって仕方がないじゃないかー!
韋駄天なんて、足の速い人と飛脚の神とばっかり言われるんだもん。
神族は、あんまり人の前に姿を現しちゃダメだし、
たまにはこうして、目立ちたかったんだもーん!!」
神族って、変なやつばっかり。
「ヒーローとして注目を浴びたっかったんだもーん!」
「もーん、じゃねえ! 思いっきり下心じゃないか。しかも格好悪い」
「なっ、どこが格好悪いと言うんだ!」
「どこもかしこもだ!」
「ぐっ。わたしはこれが良いんだ!
それに、ヨコシマンが少年だとは誰にもばれとらんではないか!?」
「・・・・・・。今日、何回呼び出された?」
「ん? 五回かな?」
「思いっきりバレバレで、いいように使われてるんだよ!!」
すでにタメ口。
まあ、自分の後頭部を痛打してくれた奴だし仕方ないかも。
こうして、
八兵衛と忠夫のセカンド・コンタクトは起こった。
「しかし、眠らせておったはずなのに、
どうして、このように会話が出来る?」
「オレの中にいるのは、お前だけじゃないからな。
そいつにちょっと協力してもらった」
「?」
「で、いい加減、体を返してくれ」
場所は移り、忠夫の部屋の中。
ベッドにあぐらをかいて、頭の中で会議中。
「しかし、少しずつ治癒しているところで、
今、出ると数分で死ぬかも・・・」
「ほーう、つまり、もう少し正義の味方ごっこがしたい、と?」
「ぎくっ、じゃなくて、本当に・・・」
「もういい。じゃあ、勝手に追い出すから」
「いや、待て、本当に危な・・・」
「因幡!!」
ぱくり!
「・・・・・・」
しょ、少年、なんのつもりだ?
う、ウサギに喰われる神族なんて、一生の恥ではないか!!
「安心しろ、お前だけじゃねえ」
昔、何度目か、訪ねてきたヒャクメも、ぱくりと喰われたし。
とにかく、八兵衛は、
横島忠夫ごと、すっぽりと因幡の腹におさまるのであった。
「♪」
因幡はたいていなんでも喰う。
その理由は空腹であったり、
好奇心であったり、
いつか、忠夫の役に立つかも、というものだったり。
しかし、こう見えて美食家であり、
不味かったものは、理由がない限り、二度と口にしない。
そんな因幡の最も好きなものは、忠夫の霊力である。
だから、忠夫の霊力で出来たカードを見つけたらすぐに喰うし、
夜中も、忠夫から霊波を絶えず吸収している。
まあ、それが忠夫の霊力の代謝をよくし、
霊力量増加に貢献しているのだから、見事な眷族ぶりである。
とにかく、そんなわけで、
忠夫を口に含むのは、なかなかに、至福であったりする。
もごもご
腹に入れたものを、
因幡は保存するものと消化するもので選別できるし、
混在している中から、任意のものを取り出せる。
ケーキの中から怪しい薬だって取り出せたのだ。
すなわち、
ぺっ
忠夫の中から、八兵衛だけを引き剥がして、吐き出した。
「なっ、馬鹿な、憑依を解かれるだと!!」
その事態に驚く八兵衛。
それは、己の神通力が破られたことを意味するのだから、
驚くのも無理はないのだろう。
「やーい、ウサギ以下」
しばらくして忠夫も出てくる。
さらなる因幡の能力、ヒーリング。
口の中で癒すことさえも出来る。
韋駄天から注がれ蓄積されたエネルギーと相まって、
かなり高度なヒーリングが行え、
さらに、出てきたあと、治癒カードを数枚使い、
完全にとはいかないまでも、忠夫、ほぼ完治。
「・・・・・・」
この二人に、激しく負けた気がする八兵衛だった。
「く・・・」
「く?」
「悔しくなんかないもんねー!」
滂沱。
「とにかく、その九兵衛って奴を捕まえたら良いんだな?」
ズルズルッ
「うむ。しかし、そう簡単に捕らえられるやつでもないのだ」
ズルズルッ
「なんでだ? そこまで速かったっけ? でもあんたも同じ韋駄天だろ」
ズルズルッ
「あいつは仕事をさぼって、走ってばかりだったからな、
韋駄天の中でも速いのだ。
・・・しかし、この赤いき○ねというのはなかなか美味いな」
忠夫の中から引きずり出された八兵衛が、
人間界に降りてきた事情を説明。
詳しいことはよくわからないが、とにかく道を外した韋駄天の九兵衛を、
天界に引っ張り戻しに来たらしい。
ただ、道を踏み外しているのは、こいつもではなかろうか、と、
目の前の「8」Tシャツを着た八兵衛を見ながら忠夫は思うのだ。
とっくに、ばれているはず、と言っているのに、
まだばれていないかもしれないから、
他の者の前には姿を現すつもりはないという。
そのくせ、腹が減ってなにかが食べたいというので、
こうして、インスタントのうどんを部屋で食わしてやっているのだ。
オレって優しい。しかも苦労人・・・
「しかもな、九兵衛はもしかすると超加速まで使えるかもしれんのだ」
「超加速?」
「そうだ」
「奥歯にあるボタンをカチッと噛んで押すやつか?」
「確かに、九兵衛も名前に「九」の字はついているが、
それはサイボーグ009の加速装置だ!!」
「・・・・・・」
なぜ知っているのだ、この神族?
「ちなみにわたしは007が好きだ」
「聞いてねえ!!」
「超加速とは、多量の霊力で時間に干渉し、
その流れを遅らせることで、圧倒的速さを得る技だ」
逆に言えば、自分の時間だけ早送りしてるってことか?
「・・・もしかして、小竜姫様も使ってる技かな?」
「ん? 確か人間界在駐の竜神だな。本来、韋駄天の技ではあるが、
竜神でも小竜姫殿ほどの武神なら、使えるかもしれんな」
ほほーう。なら、あのメドーサの動きも超加速ってやつだな。
おもしろくなってきた。
「人間も修行すれば出来る?」
「無理だろう。小竜姫殿の場合は、大きな霊力量があり、
龍気という、質の良い霊力を持ち、さらに生まれ持ったセンスがあり、
そして、長い間修行したからこそ、可能になったのであろう」
・・・そっか。
「超加速って、自分はいつもどおり動いてるけど、
周りの時間が遅く進んでるから、結果的に他人より速いってことだよな?」
「んー、微妙に違う気もするが、だいたいそんなもんだな」
違うのかあってるのか、どっちだ!!
いい加減な神族だ。
「っていうか、あんた、実は頭悪いだろ?」
「なっ、なにを言うか。そ、そんなことはないぞ!
そもそも、神族の一員に向かって、物怖じせんやつだ」
余計なお世話だ。
なにせ、初めて会った神族が、あのドジなヒャクメだからな。
神族を理由に、尊敬しろとか、畏怖しろとかいう方が無理な話だ。
それはともかく、
あのとき、メドーサは、一瞬でオレの後ろに回り込んだ、
というか、瞬間移動したようにさえ感じたけど、
それでも、オレが左手を後ろに向けるのだけは間に合った。
後ろに回り込む時間×超加速が、
手を脇に持っていく時間とほぼ等しかったということ。
「時間の流れを十分の一に遅らせても、
自分の十倍以上速いやつには、速さで負けるってことだよな?」
「む・・・うむ、そういうことだな。多分」
「多分かよ」
「仕方なかろう! わたしはまだ出来んのだ!!」
「威張るな!」
普段、メドーサが人の後ろに回り込むのに掛かる時間が、
オレが手を脇まで動かすのに掛かる時間の何倍かがわかれば、
メドーサの使う超加速の質、
つまり時間の流れを何分の一くらいに、できるのかが推測できるわけだ。
それと、
刺叉をオレが折ったとき、メドーサは超加速を解いた。
それとも、あれは解けたのか?
「超加速は驚いて解けるってこともあるのか?」
「うむ。高レベルな集中力を必要とする・・・らしいからな」
「超加速で走っている九兵衛を、普通の走りで捕まえられると思うか?」
「超加速を使って走るのではない。
超加速は余り長い時間できんはずだし、一定空間の時間に干渉する技だから、
あまり長距離の移動には適さないのだ。できんこともないと思うがな」
「つまり、今回の場合、超加速を使う可能性が高いのは、近づいたとき。
戦闘の時や、捕まえようとした瞬間か」
「うむ。こまめに連続して使うという手もあるがな」
メドーサの超加速の倍率を、X倍としたとき、
オレが、メドーサよりもX倍速く腕を動かせたら、
超加速したメドーサの攻撃を止められる。
いや、同じ比率じゃ、総合的には超加速の方が有利か。
「おーい、少年・・・確か忠夫くんだったか。聞いとるか?」
でも、一瞬でも、X倍以上の速度を出せたら、
超加速を使っているメドーサを・・・
「おーい、らしくない獰猛な顔をしてどうした?」
問題はどうやって倍率を算出するか。
小竜姫様との霊力はそれほど変わりなかったはず。
でも、小竜姫様よりは使い慣れた感じだったから、
小竜姫様の倍率+αで考えるか?
「おーい。うどん、もう一杯ないか?」
いや、こういうのはごちゃごちゃ考えるより、やっぱ勘だな。
体感した感覚でいこう。そうしよう。
そっちの方がオレらしいし、
ってか、めんどくさいし。
それと、あのとき、
自分がいつも以上に速く動いていたにもかかわらず、
眼はちゃんとついてきたよな・・・
体全体が燃えるように熱かったけど、
霊力の活性化かな?
「霊力の活性化で、動態視力が高くなったりする?」
「お、やっと起きたか。そういうこともあろうな。
ただ動態視力云々よりも、むしろ集中力の作用かもしれんが」
集中力ね。
「あるいは脳の活性化も起こっていたとかな。
まあ適当だが、そんな感じではないか? うむ」
今、適当って言ったろ。
「それより、忠夫くん、うどんのお代わりを・・・」
あの状態に意識的に持っていくことを可能にしなくちゃな。
それに、あの燃えるような状態になったからといって、
必ずしも眼もついてくるとは限らないし、
急激な速度変化で、ブラックアウトしたら、意味ないし・・・
慣らしておく必要があるか。
「おーい」
とにかく、全身の霊力の活性化と、
遊天閃地の原理を使ったあの連続瞬発力みたいな動き、
「おーい、ぐれちゃうぞ?」
あのとき、メドーサとの戦いの中で編み出したあの技、
『朱雀炎武』を完成させる必要があるな。
次、会ったとき、あいつに、しつぼぅ・・・
「おーい、また乗っ取って、ヨコシマンに成っちゃうぞ?」
「ごちゃごちゃ、うるせえ!!」
ズドム!
「あ・・・」
手首から霊力を放出した目にとらえきれないような高速の腕の振り、
さらにインパクトの瞬間にも手の甲から放出することによる威力の相乗。
ようは高速の突っ込みである、さすが大阪人。
今まで放った中で、最高の裏拳が、八兵衛を壁にめりこます。
「・・・。えっと、・・・こ、これで高速道路での膝蹴り、ちゃらな?」
「ぐは・・・」
聞こえていないようだった。
「待て、九兵衛!」
翌晩、
「待てと言われて、誰が待つか!!」
うちの事務所のメンバーに協力を仰げばいいと言う忠夫に対し、
人間を巻き込むわけにはいかないと、八兵衛は固辞。
自分一人でケリをつける、と出て行った。
オレは、すでに十二分に人を巻き込んでいる気がするのだが・・・。
一方、忠夫は忠夫で、タマモたちに呼び出され、
鉄道会社から依頼を受けたことを聞いた。
韋駄天九兵衛から新幹線に挑戦状が叩きつけられたらしい。
東京から終着まで、競争しようということらしい。
ということで、問題の新幹線にみんなで乗り込んでいたのだが。
「ようやく、足跡を見つけたぞ。九兵衛が現れるのはここだな」
「よっ、遅かったね」
「なっ、忠夫少年! なぜここへ?」
ぜえ、はあ、と荒い息の八兵衛。遅れて登場。
すでに息が上がっているが、大丈夫なのだろうか。
「根性で捕まえる!」
ということらしい。
そして、新幹線の発車と共に、九兵衛は現れ、
新幹線を抜いたり抜かれたり、
あるいは新幹線の上を走ったりで、八兵衛対九兵衛の鬼ごっこは始まった。
イタチごっことも言うかもしれない。
追い抜いたり、抜かれたり、
疲れて止まって、置いていかれて、
新幹線の最語尾に乗ってから、上を走って追いついてきたり、
「まるで、ガキの遊びね」
「ほんと。韋駄天って、あんなのばっかりかしら」
タマモ、令子。
捕まえる気なし。
「手伝わんで良いんですか?」
「手伝いたいの、忠夫くん?」
見てる限りじゃ、いまいち修行になりそうにないしなー。
「いざとなったら、ヨコシマンがどうにかしてくれるわよ」
「ぐっ。あれは、オレはやりたくてやったんじゃないですからね!」
「わかってるって」
けらけら、くすくす。
お姉様方は、サンドイッチを食べながら笑う。
やっぱり、ばれとるやないかー。
というか、恥かいたじゃないか、タマモ姉の前で。
どうしてくれよう。
悪食の鎖玉モードの、先を首輪に変えて捕まえたあと、
新幹線で引きずり回してやろうか。
少し、いい考えに思えてきた。
外では、未だ八兵衛と九兵衛が、鬼ごっこ。
八兵衛が追いつき、
捕まえようとした瞬間、九兵衛は超加速で離れた位置に移る。
また、段々と距離を詰め、
手を伸ばしたところで、超加速。
近づいて、飛びつこうとした途端、超加速。
二人で遊んでいるというよりも、
八兵衛が一方的に遊ばれているようにも見えなくはない。
とことん、情けないやつめ。
しかし、超加速を使う相手と戦う場合、
こちらが仕掛けるタイミングをうまく見計らい、
相手が超加速に入る瞬間を見極めないといけないな。
観戦するのも多少は役に立つ。
「よし、やっぱりここは、オレが直々に・・・」
「やめときなさいって」
「でも・・・あれじゃ、いつまで経っても捕まらないんじゃ?」
「大丈夫よ。多分、二人で争いながらも新幹線からは離れないでしょうから」
「そうそう、すでに我らが術中」
そういって、のんびりと構えた他のメンバー。
ぽりぽりとポッキーを囓るタマモ。
雑誌を読んでいるおキヌ。
珈琲を飲む令子。
新聞を読むいな・・・っ!!
「い、因幡! ついにお前、新聞を読むようになったのか?」
「み」
「・・・・・・」
「あら、忠夫くんは読んでないの?」
「忠夫はまだ新聞読んだりするほど大人じゃないわよ」
まだまだガキ、とぱたぱた手を振るタマモ。
激しく負けた気がするのだった。
「く・・・」
「み?」
「悔しくなんかないもんねー」
滂沱。
あれ?
そういえば、この新幹線、一回も駅で止まらないな。
終着まで、ノンストップ?
「ねえ、二人には作戦があるみたいだけど、
他に乗客が見あたらないのと関係してるん?」
「まあね。この新幹線、ちゃんとした運行車じゃないのよ」
「環状線の一路線開けてね、ぐるぐる同じところ通ってるの」
ということは、
「終点はないのよ」
確か、挑戦状では終点までは勝負と書かれていたような・・・
「じゃあ、九兵衛と新幹線の勝負も終わらんし・・・」
「八兵衛と九兵衛の勝負も終わらないってことね」
外を見る。
たまに、二人の背中が見えたり、
じゃれ合っているようにも思われる姿が見えたりする。
あれが永遠に?
「そのうちばてるよね」
「そこを捕まえたらいいのよ」
「そ。こっちはそれまで、ゆっくり待てばいいのよ」
二人で白熱しているから、周囲の様子にも気づかないし、
新幹線と共に走り続けるだろう。
「ま、適当なところで新幹線の速度も上げ下げすれば、
うまいこと、ついてきてくれるでしょ。バカっぽいし」
「とことんまで、ばててきたのが、感じられたら、
どこかの駅で止まるためにゆっくり速度を緩めればいいの」
「そうすれば、デッドヒートして、最後の力で新幹線を追い抜いたあと、
多分、向こうも止まるわね。さすがに、くたくたでしょうから」
「止まりきる前に、こっちは捕まえる用意をして出て行けばいいのよ」
実に先を読んで、よく考えてある、
というか、卑怯というか、裏技というか・・・
相手の、周囲への注意力まで計算しているということは・・・
「もしかして、八兵衛が来るのも計算済み?」
「「当然」」
そして、お姉様方の計算どおり、
疲れ果てた二人は、あえなく、お縄につくのだった。
「って、なぜ二人?
なぜ、わたしまで、こうして呪縛ロープで、ぐるぐる巻きに?」
WHY? と叫ぶのは八兵衛。
「あら、忠夫を車から放り出したのは九兵衛の方だけどさ」
といって、一度、九兵衛の方を指す。
ぐるぐる巻きの上、
タマモの狐火で焦げ、
令子にハイヒールで踏まれ、
因幡にさんざ囓られた、ぼろぼろの姿。
「でも実際に、忠夫に怪我させたのって、あんたの方でしょ?」
「うっ」
「慰謝料、ちゃんと払ってもらうからね」
こうして、しばらく、八兵衛は、
ヴィーナス除霊事務所御用達の、というか専属の飛脚、
宅急便として、こき使われるのだった。
その間、九兵衛は、マンションの異界化した部屋に閉じ込められ、
八兵衛が慰謝料分、働き終わるのを待っていたのだが、
「じゃあ、このタイミングで、こう動けば・・・」
「うむ。だが足の運びはこうした方が、速く動ける」
「そっか。でも、こう、回り込むときは?」
「そういう時はだな・・・」
ガチャッ
「二人とも、お昼ご飯できたわよ。
動き回って疲れたでしょ」
「お? 今日は親子丼か。ラッキー」
「む、かたじけない」
忠夫の修行につきあうことで、
八兵衛よりも、よっぽど待遇はよかったという。
「く、悔しくなんかないもんねー」
〔あとがき〕
まずはじめに…………ごめんなさい。
わりと、ヨコシマンって好きなんで、
どう使おうか、いくつかネタを考えてはいたんです。
しかし、いまいち周囲との噛み合いが巧くいかない。
例を挙げれば、忠夫がタマモ姉の前であの格好を披露することを、
容認するはずがない、とか。
中にいる悪食をどうしようとか、因幡も怒りそうとか。
それとまあ、忠夫の糧というか、強くなるために鍵として、
彼らを使いたいなという考えが相まって、こういう形になりました。
八兵衛ファンの人、ひいてはヨコシマン登場を楽しみにしていた方、
ごめんなさい。
八兵衛、壊しちゃいました。てへ♪
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