ランスが、魔人織田信長を滅してから二日が過ぎた
その間、リーザス・反信長軍は長崎の治安維持に追われていた
そして、ランス本人は、未だに、深い眠りの中にいた・・・
長崎城の一室、そこで、ランスは眠りについていた
「失礼、ランスの調子はどうですかな?」
一仕事終えたばかりのバレスが、ランスの看護に当たっていたセルに話しかける
「肉体の怪我はもうとっくに治っているはずなのですが・・・
精神、心の損傷が酷いようで・・・私ではどうしようもありません」
セルは、悲しげな声で、バレスの問いに返した
「そうですか・・・何、ランスは儂の子です
たとえどのような苦境に陥っても、最後の最後には必ず帰ってくるはず
それに、今日中に日光殿達も来るはずでしょうしな
まぁ、そう急いて起こす事もありますまい」
バレスも、どこか悲しげながらも、気丈に振る舞い、セルにそう話しかけた
セルも、そのバレスの言葉に微笑むと、再び、看護を再開した
ランスは、その間、深い、眠りの中で、夢を、見ていた
懐かしいような、それでいて、忌まわしいような夢を・・・・
????(ランスの夢世界)
「とぉ〜、やぁ〜、たぁ〜〜!!」
小さな子供が、木刀のようなものを必死に振り回していた
「あらあら、怪我だけはしちゃだめよ?」
女性・・・おそらく、その少年の母親が、微笑みながらその子供に話しかける
「うん!!僕もお父さんみたいに立派な将軍になるんだ!!
だから、怪我なんてしないよ!!」
少年も、笑みを浮かべながら、母親にそう返した
「兄様〜〜〜、お手紙が届いてます」
少年より、1、2歳年下の少女が、手紙をもって、必死に少年の方に走ってきた
少年は、少女の姿を認めると、素振りをやめ、少女が持ってきた手紙を受け取った
「あっ、あいつからだ・・・」
少年がその場で手紙の封を開けようとすると、母親が制止した
「ちょうどお茶の時間だし、家の中であけなさい」
母親がそういうと、少年は頷き、少女の手を取って、家の中へと入っていった
母親は、眩しいものを見るように目を細めながらも、笑みを浮かべていた
母親達が、お茶会を始め、少年が手紙の封を開けようとしたとき・・・
「大変です!!魔物が、襲撃してきました!!」
その家の警備兵だろうか?武装した一人の男が、そう報告した
「なっ・・・!!避難所の方はどうなっているのですか?」
その報告を聞き、母親は一瞬あわてた表情を見せるも
即座に、冷静な顔に戻り、その男に尋ねた
「どうやら、発見はされていないようです
今は軍が防いでいますが、主力がラング・バウの軍事演習に向かっている事もあり
完全に防ぎきる事は出来ないと思われます」
母親は、その兵の報告を聞くと、立ち上がり、即座にこう話しかけた
「では、迷惑をかけますが・・・避難所まで、護衛をお願いします」
「はい、我等の命にかけても、避難所までお送りいたします」
兵がそういうと、母親は少年と少女の手を取り、家から出ていった
その母親達の周りを囲むように、護衛兵達が隊列を組み
家から、避難所へとの護衛をしていた
特に戦闘も無く、避難所まであと少しというところまで来たときに・・・
「敵襲!!うわぁ!!」
母親達のちょうど先方を歩いていた兵が、羽の生えた魔物の攻撃にあい
死にはしなかったが、わずかに負傷をし
そして、そのまま突っ込んできた魔物を回避するために
母親は、横にとび、その母親の方に、少年も、飛んでいた
「奥様!!ご無事ですか!!」
魔物の数が増え、母親の方と、その反対側とに遮断されてしまったために
反対側の兵が、安否をたずねるために声を上げた
「私は大丈夫です・・・アミランは、あの子は無事ですか!!」
「アミラン様はご無事です!!今、こいつらを片付けて合流いたしますので」
「いえ、アミランが無事ならそれでかまいません
アミランを連れ、急ぎ避難してください
私も、この子を連れてにげますので・・・お願いします!!」
母親は、自分の子供の安否がわかると、安堵の表情を見せ
魔物の討伐ではなく、子供の安全を優先するように頼むと
自分も、少年を抱きかかえ、立ち上がった
「わかりました!!アミラン様はお任せください!!」
兵の、その声が聞こえると共に、母親は、即座に駆け出した
魔物たちも、母親側と、アミランという名の少女側とに別れ、追跡を始めた
段々と、母親側を追う魔物の数が増え
次々と、護衛としてついてきていた兵達とはぐれていき
ついには、母親と少年だけとなり・・・
さらに、街の中でも、特に人気の無い所へと、追い詰められていた
「はぁ・・はぁ・・・くっ・・・こうなったら・・・」
母親は、何事かを決意すると、少年を強く抱きしめた
「・・・御免ね、こんな事に巻き込んじゃって
お母さんが、何としても守ってあげるから
だから、お母さんの事・・・嫌わないでね」
母親がそう言うと、母親の背中から、羽が、生えた
その羽は、襲ってきた魔物たちと同じ、天使の羽であった
魔物達が、母親達に近づくと共に、母親が、前方に手をかざすと
魔物達は 一瞬にして 消滅していた
「さぁ・・・かかってきなさい!!
貴方達に遅れをとるほど、このリリィは衰えてはいないわよ!!」
母親、リリィがそう言うと、どこからとも無く剣が出てきて
それをつかむと共に、次々と襲ってくる魔物たちを消滅させていた
少年は、一切声を上げず、母親のその勇姿を、見続けていた
その目に、怯えなどは無く、ただ、見惚れていた
いったいどれほどの量の敵を葬ったのだろか
圧倒的な力で魔物を葬っていたリリィも、疲れを見せ始めていた
「・・・愚かな、下等な生物に情を抱くとは」
魔物達の中で、特に強い気を発していたものが、リリィにそう話しかけた
「くっ・・・・レダ!!」
リリィはそう言うと剣を構え、より強く、子供を抱きしめた
「なぜそうも抗う、その子供をおとなしく差し出せば
かつての罪を許され、またあの方に仕えられるのだぞ?」
魔物・・・レダと呼ばれたものが、そう、リリィに問いかける
「確かに・・・この地に降りた当初の私なら、
この子を、何の躊躇いも無く差し出していたでしょうけど
でも、今の私には・・・・そんな事は出来ないわ!!」
「愚かな・・・しょせんお前も下等だったというわけか
自らの使命を忘れ、神の命に逆らった事、後悔して死ぬがいい」
レダはそう言うと、即座にリリィに切りかかった
リリィは、剣でその攻撃を防ぐと、強く抱きしめていた子供を放した
「少しの間隠れてて!!直ぐにこいつを倒してあげるから」
少年は、母親の言葉におとなしく従い、近くに隠れていった
「・・・お前が、私に勝てるとでも思うのか?」
レダが、なんら感情のこもらぬ瞳でリリィを見つめ、そう言い放った
「確かに、昔から貴方にはかなわなかったけど・・・
人間達の間の諺にもあるわよ・・・母は強し・・・ってね!!」
リリィは、そう言うとレダに切りかかった
もはや、近辺に魔物は存在せず
ただ、存在しているのは、リリィとレダだけであった
その事は、お互い理解しているために
リリィは、少年が隠れている場所をわずかにかばう程度の戦い方であり
レダも、少年の方にわずかに向かう程度の戦い方をしており
お互いに、目の前の敵を撃破しようと、全力を尽くしていた
だが、決着は、あっけなくついた
流石に、疲労を隠せなかったのだろう
リリィが、ほんの少しだけ、呼吸を整えるために、その動きを止めた瞬間に
レダの剣が、リリィの、胸を貫いていた
「なっ・・・・」
「確かに、以前よりは強くはなっていたが、私には、勝てなかったようだな」
リリィが、地に崩れ落ちるのを確認すると、レダは、少年の隠れている場所に向かい
少年を掴みあげると、リリィの方へと帰ってきた
「母さん!!こいつ・・・放せ〜〜〜!!」
少年は、リリィの姿を見ると、即座に暴れ始めた
だが、レダはそんな少年の行動を無視すると、リリィに話しかける
「当初の計画以上に、質のよい器を生んだようだな
せめてもの報酬だ、そのまま、人として朽ちるがいい」
レダがそう言うと、リリィの背中に生えていた羽が、消えうせた
「ごめん・・・ね・・・母さん・・・もう・・・駄目みたい
守ってあげられなくて・・・ごめんね・・・」
リリィは、ただ、自分の子供を見つめて、そう、泣きながら、謝っていた
「母さん!!母さん!!」
少年も、自分を掴んでいる手を引き離そうと必死に暴れるが
レダは、微動だにせず、少年を掴み続けていた
「本当に・・・・ごめんね・・・・ラ・・・ンス・・・・・」
リリィは、そういうと目を閉じた
それを見届けると、レダは少年・・・ランスと呼ばれた少年を気絶させた
「ランス・・・それがこの器の名前か
リリィ、もう一つの報酬だ、その名前、この器の固有の物としてやろう」
レダはそう言うと、空に舞い上がり、どこへともなく、飛び去っていった
レダが、少年を抱えたまま飛び続けてどれくらいが過ぎただろうか
人間達の世界とは違う、どこか不思議な場所へとたどり着くと
レダは、少年を抱えたまま、虚空に向かって話しかけた
「ご命令どおり、器を捕らえてきました」
レダがそう言うと、どこからともなく、一人の男が現れた
「ご苦労、事の経緯は特と見させてもらいました
あの報酬、少々甘すぎる気もしますが、まぁいいでしょう」
男はそう言うと、ランスを受け取り、台座のような場所へと、ランスをおいた
「さて、これほど優秀な器なら、十分に耐え切れるでしょう」
男がそう言うと、男の手に真っ黒な玉が
光を全て吸収しそうなほどに真っ黒な玉が、どこからともなくあらわれ
その玉を、男は、ランスに押し付けた
そして、その玉は、ランスの体に、沈むように入っていった
「さて・・・後はこのまま一週間ほどすればいいでしょう
そう、ルドラサウム様を楽しませる為の、駒にする時間には・・・ね」
男はそう言うと、レダに何事かを命令すると、その場から消えうせた
そして、その場には、台座に置かれたままの、ランスが残された
それから、どれほどの時間が過ぎただろうか
ランスに、何かの処置を施した男とは違う二人の男が、その場にあらわれた
「おぃ・・・本当にやるのか?」
「あぁ・・・姉さんが殺されたんだ、これ以上あいつらに従う気はない」
その二人の男は、台座の前で何かをつぶやくと、ランスの方に近づいていった
「うわ・・・マジかよ、この子供を新しい魔王にするきだったのか・・・」
「ガイは、破壊と殺戮を嫌っているからな
そこで、この子供を次の魔王として仕立て上げて
人間界から生まれた魔王として、戦乱を大きくする気だったんだろうさ」
一人の男が、そう言い放つと、ランスに向かって手をかざした
「どうするきだ・・・ここまで強力な術式だと、俺達じゃあ解除できないぜ?」
「あぁ、だが、多重封印をかけて、遅らせさえすれば・・・
人間としての内に、少年の寿命が終われば、大丈夫なはずだ」
「だがな・・・この少年にかけられた特殊術式、厄介すぎねぇか?」
「・・・周りの闇を増幅して吸い、溜め込む性質か・・・
二重では足りない・・・三重、いや、五重の封印がいるか」
男達がそういい、ランスに手をかざしたまま何らかの詠唱を始めると
「流石に、そこまでされるのは困るんだがな」
ランスに、最初に処置を施した男が現れ、そう言い放った
「くっ・・・!!プランナー!!」
ランスに術式を施していた男が、その男・・プランナーを睨み付けた
「やれやれ・・・時間切れかよ!!」
もう一人の男がそう言うと、ランスは、その場から消えうせていた
そう、ランスを、どこかへと転移させたのだ
「ほぅ・・・お前がそのような行動をとるとは・・・」
プランナーは、面白そうに、転移させた男を見た
「これでも、主君への忠義よりも友情をとる男でね
何十ものジャミングをかけた上での転移だ、俺にもどこに飛んだかはわからないぜ」
男はそう言うと、プランナーの方を向きながら、戦闘態勢をとった
「まぁ、構わんさ、処置は十分施し終わっている
いつ、どこで芽吹きするかがわからない種の方が
ゲームとしては、楽しめるからな」
プランナーはそう言うと、手を振り払った
それと同時に、凄まじい閃光が走り、その閃光が収まったとき・・
その場には、プランナーしか存在していなかった
「さて、種が発芽するまでの暇つぶしを計画せねばな・・・・
ルドラサウム様は退屈をお嫌いになられるからな」
プランナーはそう言うと、再びその場から消えうせていた
現実世界 夜中 長崎城 ランスの部屋
そこには、眠り続けているランスを看護している、アールコートの姿があった
アールコートは、ランスが倒れたという報告を聞くと
無理を言って、日光達の部隊と合流し、長崎へと向かってきたのだ
セルは、ハウレーンの方の治療に当たっており
今この部屋には、アールコートとランスしかいなかった
「・・・・ランスさん、早く、起きてください・・・・」
アールコートは、ランスの頭を撫でるように、そう言った
どこか、寂しげな瞳で、ランスを撫で続けていると・・・
『ガシッ』
「・・ぇ?ら・・・ランス将軍・・・起きたんですか」
アールコートの腕が急に掴まれ、ランスが起きたと思い話しかけるが
『グィッ』
「ぇ?・・・きゃあ!!」
なぜか、急に引きずり込まれ、アールコートが悲鳴を上げた
以下 数十行にわたり謎の行為が続いています
翌日、ランスが、目を覚ますと、なぜか隣に、アールコートが眠っていた
ランスは、そのアールコートの姿を認めると、一瞬で凍りついた
ランスの硬直がとけたのは、日光がランスの様子を見に来たときであった
少々、その時にいざこざはあったが、アールコートを起こし
ランスも、洗浄され、元の色を取り戻した緑の鎧を着込み
全将軍が集合しているという、長崎城の会議室へと向かっていった
ランスは、その道中、昨日見た夢について、思い出していた
その夢が、全ての真実に繋がる事がわかったのは、これからまもなくの事
世界が、後に大いなる敵を認識する事となった最初のきっかけが
これから行われる、長崎における軍議であった・・・・・
あとがき
今回、なぜか最後に微妙にシリアス崩しをしちゃいました(ぇ
最後に方に出てきた男達の名前は、まぁ、無名という事で(ぉぃ
次回、シリアスになるか微ギャグになるか・・・作者にもわかりません
@2〜3話でヘルマン編に行く予定でしたが
肝心の大阪城決戦を忘れてました(ぉぃ
その為、@3〜5話になる可能性があります
まぁ、気長にのんびりとお待ちください
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