式森和樹はエリザベート(すぐに玖里子の傍に行った)をひょうたんから出すと、玖里子に対して監視されていた証拠(部屋から壊した盗聴器をいくつか発掘)を渡し監視のことを納得して怒る玖里子が少し経って冷静になって聞いてきた「何時壊したのか」という質問をはぐらかして、夕菜と凛に男の娘を仕事で助けたとき男が依頼料を払おうとしなかったから色々あったことを言った。
それだけのことを言うと
「「「「仕事?」」」」
と四人がそれぞれ細かいところは違うが同じ意味の言葉を言ったので、何でも屋みたいなことをして生活金を稼いでいるというようにごまかしながら(様々な活動資金を得るという理由がある)仲介者兼裏街の影の支配者である、ちょっと前何処かの屋敷で割烹着を着て薬物飼育したりフード着てほうきに乗ったりしていませんでしたかと聞きたくなる青いチャイナ服を着た“ミスター陳”を思い出していた。
が、すぐに玖里子が
「仕事は良いけど、何で脅迫したりするの?」
と聞いてきたので、詐欺師顔負けの誠意あふれさせながらの自分の手の白さを確信した態度で
「玖里子さんも人聞き悪いことを言わないでください!俺が何時脅迫なんて酷い事を……」
「あたしにはさっき叔父に対して言った言葉は、言うこと聞かなきゃ実行するっていうふうに聞こえたんだけど」
半眼で呟く玖里子の言葉に、凛やエリザベートだけでなく夕菜までもが同意して頷いたが、そんなことに怯みもせずに
「いやだな〜皆、さっきのはあくまで忠告だよ♪弱み握っていることを教えただけの♪何でそれが脅迫になるんだい?」
それを聞いて、途方もない頭痛を覚えながらも玖里子は
「あんたってさ、さっきの話のように家の幹部の半分以上の弱み握っているのよね。それってあたしがここに来る前なの?」
という切実な質問(2日足らずで弱みを握ったかもしれないから)に対して和樹は
「弱みを知ってはいますよ……証拠は握ってないけど」
と、さすがに2日では十人以上の証拠までは握れずこういう弱みを持っているということだけしか調べられなかったことに仕方ないと思いながらも悔しげな和樹に
「……何でそれであんたの脅迫「要求」……要求が通じるわけ?半分以上賛成しなくちゃだめなんでしょう」
という玖里子の疑問に和樹は
「だから、洋志さんにお願いしたんですよ。半分集まらなかったときのために」
「……幹部の人たちにあんたなんて言ったの」
「差出人不明の『こちらは、ある無力な子羊です。そのため何の力もなく何もできません。その哀れな子羊を可哀そうだとお思いになるのでしたら助けてください、可哀そうとお思いにならないのならこの事を公表するしかなくなります―中略―助けてくれるのなら明日の会議で洋志氏の提案に賛成してください』って、書かれた手紙が証拠にはなるけど決定的なものじゃないからあまり威力のない写真とかを同封して、彼らが家の中に1人でいるとき突然目の前に現れただけですよ。俺は何も言っていません」
いざというときには洋志に疑いを向かわせて彼をトカゲの尻尾として扱うことを、もし玖里子がエリザベートと一緒に仕掛けてこなくてもやっていたと和樹は明言した。
「……全員に送ったの?」
「ええ」
「……………」
内心で満場一致で賛成されるんじゃないかと思いながら気力を振り絞って
「……ていうかさ、何で弱みなんて握ってんの」
どうやってなんて聞いても教えてくれそうにないので、答えてくれそうな中で一番知りたいことを聞いた。
その言葉を聞いた瞬間和樹は遠い目になり
「何でって―――」
昔のことを少し思い出していた。
そこは執務室だった。
豪勢さこそないが、置いてある机や椅子やソファ等は最高の材料を手作りで作った最高級品のものだということが素人目にも分かるような部屋。
最もその執務室に入る者は、机や椅子ではなくその後ろに置かれた星条旗とその部屋の主にまず目がいくため部屋の装飾等に目をやらないのが普通だ。
だが、今部屋の主の目前にいる男というより少年と呼ぶべき人間は、ソファに腰を降ろしながらその感触を楽しんでいるようだった。
―――魔術に対する最高級の結界が張られたこの部屋に空間転移で突如として現れ外部との連絡を断ち部屋の主が緊急ベルで呼んだ常時大統領府で警備しているシークレットサービスたちを睨んだだけで殺さずに床に倒れ伏させながら、大統領執務室でくつろいでいる少年は異端以外の何者でもなかった
その常人(並の魔術師含む)なら目を疑い恐慌状態に陥ってもいい状況において、部屋の主である四十台後半の大柄な黒人男性である元医者であったガーナーはシークレットサービスが気絶しているだけだと知り安心しながらも、その剛毅な態度を崩さず
「部屋にノックもせずに突然入ってきて許可なくソファに座るのが君の礼儀かね」
少年を睨みつけながら言い放つと少年は立ち上がって一礼し
「失礼しました、大統領」
惚れ惚れするほどの完璧なあいさつをした。
その少年のシークレットサービスを殺さなかった行動とその礼儀正しい態度に“会話が可能”と判断した(というよりそれ以外の行動は出来なかった)ガーナーは
「この部屋以外の者たちはどうなっている?」
「外傷も無く寝ていますよ。もちろん死んでいません」
一番聞きたかったことを聞いて安堵と共に疑問を覚え
「マクドナルド家が、今日警護についているはずだが彼らはどうなっている」
アメリカの誇る炎術師の一族のことを聞くと、少年は目を僅かに開くと何かを確認したように頷き
「安心していいですよ。死んではいません。ただ……十歳の子供に一族の精鋭全員なすすべも無くぼろ負けしたので精神的に立ち直れないかも知れませんが」
その言葉を聞きガーナーは目の前の少年が何者なのかを理解し、僅かな怒りを上回る感嘆の声を出した
「そうか……君が、八神和麻か」
十歳ほどの年齢の少年を連れた十五,六の少年の名は、中近東・欧州・アメリカ東海岸に至るまでの場所である程度以上の地位にいる者達にとって多大な意味を持つ。
その少年は、少年を見た一部の者たちから人類最強と呼ばれているだけではなく史上唯一確認された契約者と目されていることもあるが、それ以上に“人類最高の魔術師”と呼ばれ恐れられていたアーウィン・レスザールを彼が首領を務めていた世界有数の魔術組織アルマゲストと共に滅ぼしたことがその手段と共に注目され憎しみと驚嘆を浴びているのだ。
なぜ、憎まれているかというと、“教会”・“協会”というアルマゲストと同規模以上の魔術組織を矢面に立たせて戦わせることで自分に対してアルマゲストが注意を向けないようにしてから、教会と協会との総力戦によりアルマゲストの全ての拠点と大半の構成員を失わせると同時に教会・協会の両組織をも消耗させて逃げたアルマゲストの残党を追うだけの戦力をなくさせてから初めて表に出て―それまでは裏で世界遺産などの保護建築物に逃げ込んだアルマゲストの術者を様々な国家や宗教との密着な関係を持つため攻撃するかどうか迷う協会・教会の魔術師たちを尻目に協会・教会の魔術師の集団に変装して潜り込んで正体がばれないようにしてから建物ごと破壊したり、アルマゲストが教会と協会の攻撃に対応しているとき無防備になった後方の拠点を奇襲して消滅させたりしていた―初期のころ協会が雇ってある場所で協会から派遣されたものたちと共に死んだと思われていたアルマゲストに恨みを持つ者たちを取りまとめ激戦の連続だったため疲労の限りにあったアルマゲストの集団を気力・体力共に満タンのものたちで攻撃するという手段を使ったからだ。
そのため、利用されたことをある程度知った(いくつかの世界遺産は自分たちが壊したので責められない)協会・教会の両者は激怒し少年を追い始めている。
が、アメリカにとってはそれ以上に大統領府を半壊し前大統領を負傷させ引退させるだけではなく、当時の副大統領が命じて攻撃させた一個師団の攻撃から無事に逃れながら、三百人以上の死者と三千人近くの重軽傷者と大量の物資を消失させてくれたという、にわかには信じられない被害を出された相手という理由で持って血眼になって探している。
だからガーナーは呆れるよりも
「君は、ここがどこだか分かっているのかね……いや、それはいいとして何のようなのだ?」
自国からしてみれば捕まえれば銃殺刑確定、というより見つけ次第殺害の対象である少年が、危険を犯してここに来ている理由に対して好奇心を刺激されたので聞くと
「大統領府破壊及び第十七歩兵師団攻撃に対する犯人を持ってきました」
耳を疑うような言葉が少年の唇から飛び出した。
和麻の言葉を聞き何とか平静を保ちながらガーナーが
「それは、自首するということなのか?」
と聞くと、少年は笑みを浮かべて
「俺たちのことを言っているならあれは正当防衛ですよ」
その言葉には正直ガーナーも頷きたくなった。確かにあの時偶然(和麻たちが狙ってやったわけではないことはすぐに判明した)巨大な蛇が落ちてきて大統領府は半壊したが死者はいなかったので、正直それだけなら魔術の存在を公表しないために“事故”で済ませることが普通の対応だった。だが、あの時大統領選挙が近く前大統領の敗北がほぼ確定していたことが自体をややこしくさせた。
“大統領府が、テロによって半壊してしまった”というようにされ、その犯人を捕まえるということで支持率を上げようということになったのだ。
しかもそれにはある国家が支援している可能性があるとろくに調べもせずに叫ばれ、ガーナーのような国家のトップが自分の政権支持率向上の理由においてのみ軍事行動を行うということが民主国家として許されないことだと信じる理性的で良心的な政治家にとっては頭痛ものの出来事となった。
そして、運命の日が訪れた時。第十七師団の任務は、表向きでは犯人逮捕だったがそれだけで数万人の人間を動かすことなど普通はやるわけがなく。裏向きであり政府の本音でもある、某国家にそのまま攻め込むという命令が師団長等の高官には行われていた。
最も師団長を含む幕僚を、和麻と和樹は混乱を誘発するために真っ先に狙ったために計画を現場で知っているものは軒並み死亡もしくは身動きできないほどの重傷を負ったためいなくなり、部隊そのものも戦闘続行不可能となったため撤収した。
そして、その絶大な被害は口コミで広まり国民が説明を求めても政府が何も言わなかった(言えなかった)ため、前大統領の政権は負けずに同じ事を主張した大統領候補共々倒れ、その時政府で数少ない反対者であったガーナーが黒人で初めて大統領になったのだ。そんなことでもなければガーナーが大統領になれたことはなさそうなので――ある意味和麻に対してガーナーは借りがあるとも言える
だが、言葉では
「正当防衛だろうと君たちがやったことは変わりない」
と呟かざるを得ないのがガーナーの立場だった。そのガーナーに和麻の呟くような声が聞こえた
「二人の人間、しかも子供によってそれがなされたことを公表できるんですか」
「……むりだな」
「ええ、そうなると魔術師という人種のことも同時に公表しなければなりませんから」
その言葉を聞いて、ガーナーは和麻が現在の政府も国民から真相を要求されても魔術師の存在を公表するわけにもいかずなんと言うべきかと、その対応に苦慮していることを知っていることを理解し、和麻がそれを知っていることに驚きながらもその状況を知りながら“犯人を持ってきた”という言葉を発したことに対する興味を抱き
「外部が大統領府との連絡がつかないことにそろそろ気付く頃だ。時間が無い。君の言う犯人とやらを教えてくれないか」
たずねると和麻の目前の空間が波打つと三人の人間が現れた。今まで見た自称世界トップクラスの魔術師たちの魔術が素人目でも児戯に見えるような魔術を結界が張られた場所で行ったことにも驚いたが、それ以上にその三十代後半の三人の男を先程二人では誰も信じないといいながら一人増えただけで犯人だという少年に対する失望感を一瞬覚えたが
「こいつらはアルマゲストの残党です」
和麻のその言葉を聞くと同時に、和麻の狙いを理解した。つまり
「アルマゲストは、すでに壊滅状態にありごく僅かな残党しか残っていません。彼らを犯人とすることで――」
「今まで公表できなかったのは、数千人を越える大規模なテロリストたちの報復を恐れていたためだったが、現在彼らはわが政府や他の国々の努力により壊滅状態にあるため公表することができるようになった。というわけだな」
「狂信者というのを付け加えたほうがいいでしょう。カトリックとプロテスタントからして見れば」
ガーナーがカトリックとプロテスタントの支持を得られていないことを暗に指摘し、狂信者に対して戦ったという“名札”をつけることで支持を得ることができるという意味の言葉を和麻は言った。
その言葉を聞き、面白みの少ない生真面目な性格と人種と宗教の面から支持を得られず高い能力を持ちながら任期を全うできそうに無いと言われているガーナーは頷きながらも
「……証拠は?」
アルマゲストを最悪のテロリストであり狂信者というようにする根拠があるのかというガーナーの問いに和麻は、アルマゲストが行った人体実験(和樹の分は除いていた)や彼らが身に付けていた一見怪しい宗教の道具に見える魔術道具が写された写真と共に世界遺産に立て篭もりフードをかぶって怪しげな(魔術のだが素人にはヤバイ物にしか見えない)儀式を行っている写真を机に置いた。
それを見てガーナーは、和麻が世界遺産などの重要建築物破壊の件もアルマゲストに押し付けることで欧州の国家やバチカンに責められている、協会や教会に恩を売って彼らの敵意を鈍らせて和解しようと―それ以上に色々調べられて自分たちがやったことがばれる前にアルマゲストに全部押し付けようとしているのが大きい―していることと自分にその仲介を求めていることを理解した。
そして、自分のところにこの話を持ってきたのは、大統領府破壊や一個師団攻撃の犯人をでっち上げ自分たちに対する追撃を逸らすこともあるが、何時まで大統領の座にいられるか解らず様々な意味で追い詰められている自分なら他のこの提案を欲するもの達より食い付きやすいだろうという判断(+ガーナーの人格なら十六の子供の話でも聞く)から来たものだということも……
そして、その判断が正しいことを誰よりも熟知しているガーナーは目の前の少年に対して正直舌を巻いた。
が、和麻の提案を受けようと思うガーナーの中で突如としていたずら心がわき
「これだけでは首を頷かせるわけにはいかないな」
と言うと、和麻は
「話の流れから、今は必要ないと思っていたんですけどね」
そういいながら、数枚の写真付のレポート用紙ほどの大きさの紙片を机に置いた。
訝しげにその紙片を見たガーナーは文字通り驚愕することになった。
そこには、自分が僅かに知っているものとほとんど知らないもの(後に確認して事実だと判明)の違いこそあるものの世間に公表されたら諸外国や国連に叩かれるどころでは収まらず、“第二次南北戦争”を勃発させるに間違いないと確信できるだけのことが記されていた。
その紙片を読み終わるころにはガーナーはその荒れ狂う内心はともかく外見は平静さを取り戻し、震えない手で傍に置いてあった冷え切ったコーヒーを飲んで深呼吸するころには内心も落ち着いた。
落ち着いたガーナーが最初に思ったのは、記された行為に対する怒りではなく先程少年の言葉にあった今という言葉の意味だった。
そのことをたずねると和麻は、脅迫するつもりではなく提案に頷いた後でするつもりだった頼み事を聞いてもらうための材料だったと悪びれずに堂々と言ったので、それを脅迫というんだと思いながらもガーナーは頼み事についてたずねると同時に自分が和麻の提案を呑もうとする意思を口に出したことを知り、しまったと思いながら、ガーナーが提案に合意したことを正確に理解した表情をした和麻の話に耳を傾けた。
そして、和麻が新しい退魔組織を立ち上げる(一瞬納得できない表情を浮かべた)つもりだから、拠点のために大きな都市である程度土地と自分たちが使う銃火器等の武器を売ってもらいたいと言ったことで、和麻が自分とお互いの心臓(和麻にとっては組織に必要な武器の供給及び都市部の通信・経済・教育・遊戯、ガーナーにとっては大内乱を発生させる情報)を握り合いながら握手しようとしていることを理解しすぐさま考え込んだ。
生殺与奪を完全に相手に握られている現状からいって、公人としてはともかく私人としては頷きたくなる頼みごとだ。しかも、その頼みごとには“世界最悪最恐のテロリストにして人体実験を行う異常宗教集団アルマゲストの打倒”という自国の威信を回復させるだけではなく上手く使えば任期を全うできるどころか再選すら可能なほどの極上の調味料がかけられている!しかもそれは、特に苦労もせずに手に入るのだ!!
苦悩するガーナーの耳に和麻の「逆さ吊りに煙とは和樹もやるようになって」という感心した呟きが入った瞬間、和麻がわざわざアメリカ最強の炎術師が警備についている対魔術師最強の防御力を持っているときを選んでここに攻め入ったことを直感じみたもので理解すると同時に暗に和麻が「何時でもあんたを殺せる」と言っていることも理解して戦慄が背中を駆け巡った。
だが、その常人なら失神しかねない恐怖に負けずに和麻に堂々とした声で、この国に本拠地を置くのかと尋ね自分がどれだけ和麻の心臓を握り締められるかを確認したのは、たいしたものだった。
そして、和麻が特に本拠地を置くつもりはなくいくつかの拠点を作るつもりだといわれて、どこに置くのかと聞き返し香港・アデン(中東側にあるスエズ運河の入り口のような場所にある港町)と答えたので「中東に拠点を作れるのか」と個人的な親交がなければ到底無理なことを和麻が言ったことに驚くと、和麻が中東最大級の実力者の大藩王ウルグ・ヴェザスに許可を貰ったことを言ったので、この少年がこの国でも影響力を持つ男の後ろ盾を持っていることに驚きながら、和麻がそのことを交渉の材料としなかったことに若いなと思いながらも和麻の自分の足で立とうとするそのあり方に好感を抱かずにはいれなかった。
そして、先程も圧倒的に優勢な立場にいながらもお互いに心臓を握りあうという対等の姿勢を貫こうとしたことを思い出し、信頼感みたいなものを抱いた――脅迫しながらも相手に信頼感を抱かせるというのが未だ和樹が和麻に及ばないところだろう。最も、多くの守るべきものを持ちながら活発な活動を和麻がしているのに比べて今のところほぼ身一つで大した活動もしていない和樹という違いがあるので一概には言えないが……
だが、ガーナーは信頼感を抱きながらも和麻にこの国に本拠地を置かなければ他の場所で武器を作ったりできるからお前のほうが有利だとしっかり文句は言った。そのガーナーに和麻は土台が違うと端的に和麻とガーナーがそれぞれ抱える組織の規模の違いを言ったので、ガーナーも和麻のその言葉の正しさに頷きながら、頭をフル回転させその場合のお互いの立場を再確認して自分たちが不利だと結論したが、それにアルマゲストという因子と歴史が浅く世界に冠たる魔術師がいない自国に例え支部でも世界最強の風術師が拠点を置き政府と良好な関係を気付くという因子を加えると結論は変わるのでそのことも合わせて計算し……
ガシッ
世界最強の国家のトップと世界最強の風術師は、お互いの利害が一致したことを確認し強固な握手をした。
一部始終を見ていた朧いわく『色々な意味で危ない地平線』が成り立ったときだった。
その後、駆けつけてきた警備員にガーナーは和麻のことを「私の個人的友人にして今回侵入してきた賊を倒してくれた少年」と紹介し、床に無造作に転がっている三人のアルマゲストの残党のことを「悪辣なテロリスト集団の一員にして大統領府破壊及び第十七師団攻撃の犯人でもある」ことを宣言した。
そして、三日後という異例の速さで欧州の大物政治家たちと協会・教会の代表と中東の大物をあるホテルの一室に招き寄せ、アルマゲストにすべての罪をなすりつけることが決定し和麻は欧州との関係を良好(敵対ではなくなった)にできた。
そして、その翌日ほとんどの人間が見て嫌悪感を覚える格好をした三人の男が「世界遺産破壊・米大統領府破壊・米の師団の食事に幻覚剤を混ぜ暴れさせることで中東の平和を崩壊させることをたくらんで多くの人命を奪った・強制的な人体実験・人身及び麻薬売買・毒ガスの製造・個人的核兵器の製造etc.」と、ここ十年で行われた様々な理由で解決してないテロ行為および重犯罪の全てを欧米だけでなく同じく世界遺産を破壊された中東からも押し付けられ公開処刑にされた。
その後、アルマゲストの残党は「世界の平和の敵」と呼ばれ多額の賞金をかけられ、テレビや新聞やインターネットによって顔写真(半分以上は和麻がガーナーに渡した写真に含まれていたもの)が広まりその賞金の高額さとあまりにもの非道な行為(半分以上は押し付けられた)のためこの件に限っては欧米と中東の警察や軍隊等の様々な組織が手を組んだほどだった。
その一部始終を見た和麻と和樹は今まで自分たちが、依頼者に裏切られたとき力でしか解決していなかったことを恥じるようになり、それまでは仕事の内容に対してのみ行ってきた情報収集を依頼人の経済的・個人的な弱みや弱点まで拡大させて、相手が裏切った場合に脅迫を行うようになり、敵対している相手(個人でも組織でも)の弱みの証拠もしっかり握るようになった。
過去の回想から帰った、その時屋外でマクドナルド家の術者の炎を全て封印して逆さ吊りにし終わると同時に目を覚ました1人の少女が文句を言ってきたのがうるさかったから煙攻めにして黙らせていた和樹(戦いの相手にはこのときすでに容赦なし)は
「生きるために必要だからだよ」
過去形ではなく現在進行形で言った。その言葉に
「「「「どういう人生送ってきたの(よ)(じゃ)(だ)(ですか)」」」」
と、和樹から若干の話を聞いた夕菜は伏し目がちに聞いてない三人は目を円くするという違いはあったが同時に呆れと悪寒を覚えて言った。
「どういう人生って……一言で言えば、先生と色々やってたって所かな」
あっさりと言った和樹に、四人は「色々って何だ〜」と突っ込みたくなったが、世界支配だの国家転覆などの想像(あながち間違ってるとはいえない)をしたため聞かなかったことにした。
が、その話の先生という言葉が気になった四人の内心を代表するように玖里子が
「先生って、あんた親は?」
と言ったので夕菜があせったように止めようとしたが、それより早く和樹が事故で両親が死んだので親代わりになった人と言ったので、タイミングを逃した上に両親が死んだことは聞いたが親代わりの人のことは知らなかったので、その先生について聞きたくなった。
が、それより先に凛たちが気まずそうにしたのを見た和樹が前に夕菜に言ったような両親を軽く見た言葉ではない「気にしないでくれ」という言葉を言い。夕菜に対していったのと同じことを三人に言ったので言えなかった。
和樹の話を終わると夕菜が聞きたかったことを聞いた。
「先生って……女性ですか」
その含みを持った言葉の含みにそういった女性の機微に鈍い和樹は特に気付かずにあっさりと
「いや、男だけど」
言いホッとしたようにする夕菜にいぶかしげな気分になり何事か言おうとしたが
「先生と呼んでいるのは、お前の戦い方の師だからか?」
凛の好奇心のこもった質問に脇に追いやり
「戦い方も教えてもらったけど、それ以外にも勉強とか色々なこと教えてもらったよ。先生のおかげで俺は今ここにいれるんだ……」
懐かしげに答えると凛は何処か眩しそうに
「良い先生だったんだな」
「ああ。俺にとって父であり兄であり師でもある人だ」
その言葉の兄という言葉に駿司のことを思い出し和樹に共感じみたものを抱いた凛の前にいる、未だに怯えているエリザベートが抱きついている玖里子がふとといったように
「その人って今何やってんの?」
「外国で、ちょっとした退魔組織というより会社みたいなのやってますよ」
「あれ?あんたって手伝ってないの?」
と先程和樹が何でも屋をやっていると聞いたので訝しげに言うと同じく退魔組織が本家の凛も興味を持ったように言うと
「手伝っていたんですけどね。葵学園の招待状みたいなのが実家に来てそれを近所の人(実際は幻獣)が外国の俺のところまで送ってくれたんで、きたんですよ」
「反対されたりしなかったのか」
和樹の戦闘能力を見た凛は自分のことを思い出しながら聞いた。
「いや、賛成もされなかったし反対もされなかったよ。どっちにするか迷っているって感じで」
それを聞いて何か言いかけた凛だったが
「その後先生に頼みにいったら、もう保護者が書く書類とかを全部そろえて「いってこい」ってあっさり許可してくれたから、迷っていた皆も壮行会という外見の宴会を開いてくれたんだ」
和樹の組織のことを聞いて羨ましくなって
「いい人たちだな」
と呟くように言ったのだが、言われた和樹のほうは
物資の件で初期のころ以前の職場のように組織のトップ(和麻)と話し合いをするとき手榴弾を全身に巻いて出てきてさらに巻きつけた手榴弾のうちの1つを手にとってピンを抜いた状態で話し合いを始めた、ある物資が必要だと誰かが思った時にはその場にいつも充分な量が置いてあるように手配している補給部長や、七十近い年齢でありながら二十台前半の妻を持ち、偶に大量の使用不明金を出して人型兵器という訳のわからないものや魔術兵器等のものすごく使えるものを開発する、外見と中身がマッドという人間の見本みたいな漢でありながら、人体実験が大嫌いなため周囲から畏敬されながらも嫌われていない開発部長をはじめとする変人たちの群れ(和樹含む)を思い出し
(いい人……たち……なのか)
凄まじい苦悩に襲われた。
その後、和樹とその師のことで若干の雑談をすると、まだ名前を聞いてなかったことに気付いた玖里子が
「そういや、あんたの先生って名前ってなんていうの?」
「和麻っていうんですよ」
「ふう〜ん、今いくつ」
「二十二」
とあっさり言われたので聞いていた四人ともふう〜んと、ばかりに頷いたがすぐに何かに引っかかりその引っかかりを夕菜が口に出した
「……和樹さんって、いくつの時和樹さんの先生に会ったんですか?」
「七歳だけど、どうかしたのか?」
「……ということはその先生ってその時」
「十三でしたよ」
玖里子の自分の計算が間違っていると信じたさそうな言葉に対して、和樹が玖里子の計算を肯定する言葉を返すと
「「「「じゅうさん〜!!」
驚愕の叫びが部屋を覆った。十三の子供が七歳の子供を育てたと聞かされれば無理もないが……
「ああ、そうだけど」
「そこって日本じゃなかったの!」
「いや、どっちかというと紛争地帯でしたね」
「他に誰かいなかったの?」
「いや、先生だけでしたけど(朧は、人間じゃないし。こっちの世界の意思ある精霊と違うから黙っておこう)」
「……紛争地帯で、子供1人を十三歳なのに一人で育てるってあんたの先生って何者よ?」
(何者って……)玖里子の純粋な質問に周りの三人が頷くのを横目で見ながら和樹が思い出したのは
最後の拠点(和麻がここになるように調整した)で追い詰められかけていたアルマゲストの魔術師たちを、以前捕らえて洗脳(一度精神を破壊してある命令だけを入力したロボットに)したアルマゲストの魔術師の手引きで大量の罠を仕込んで自分たちが待ち伏せしている峡谷に脱出させ、周囲が丘のようになった行き止まりに誘い込み、さすがに何人かは疑いの表情をした魔術師たちの前に他に捕らえた二人の魔術師を出し、相手の魔術から完全にこちらの姿を隠す結界(同時によほど強力なものでなければ中にいる者も魔術が使えなくなる)を発動し温かいスープ(それだけでは無害で無味無臭の特殊な薬物入り)を振舞わせることで持たれ始めていた疑いを消した。
そして、安心した魔術師たちがくつろぐため持っていた剣や杖を地面に置いて着ていた防御服も脱いで地面に置き数日以上暖かいものを食べてない胃を大人しくさせるため、砂糖に群がるアリのようにスープ鍋に群がって一箇所に集まったところを、鍋を支える台を構成していた複数の朧(刃物という条件であれば既存のものは無論たとえ存在しない形状にさえもなれる)と上空で鳥のような外見をさせた複数の朧(和麻は視覚や聴覚だけでなく嗅覚や味覚や触感さえも普段の数十倍に強化したものを距離に関係なく朧越しに感じられる)によって確認すると、食事に仕込んでいた毒に反応する特殊なガス(ある研究機関から結果を教えると言って譲り受けた)を装甲車にのせてあったバズーカーの親玉みたいなので射出させると同時に、二両の最新鋭戦車と八両のこれも最新鋭の装甲車に乗せた最新鋭の銃等で装備(ある自動車が有名な国家から奪った……未だに犯人不明)し、最新の通信機付ガスマスク・全身を覆う防弾防刃服を着込んで最高位の魔術防御のお守りをつけるという完全装備の者と和麻と和樹を含めた体力・魔力・気力満タンの百四十九名を同時に八方から、ほとんどのものが魔術を防がれ剣と杖ぐらいしか元々持ってなく(というより魔術師という者達は普通そうでこれだけの近代兵器を装備する和麻達が変なのだ)それすらも身近にはないだけでなく、疲れきったのとガスのため体を痙攣させるのと安堵した後だったため精神的にも身動きもできない百二十四(三人はこのときあらかじめ仕込んでおいた魔術では気付かれないようにした超小型の時限爆弾により爆発して周囲に怪我人を出させたためもういない)名に対して攻撃したのである。
――そして殲滅戦というより虐殺が始まった。
さすがに対協会・教会との激戦の中で生き残った者たちというべきかほとんど幹部だからというべきか、半分ほどの魔術師たちは結界があっても魔術を“使える”状態にあった。だが、半数以上は魔術の防御が間に合わず毒ガスで痙攣しているため戦えず、その半分の魔術師たちのさらに半分以上の魔術師も結界に抑えられたため“使える”というだけで一般人の人体を殺傷する威力もなかった。そのため、本当の意味で戦えるものは二十人いるかどうかといったところだった――疲労して体力・気力・魔力の全てがほぼ底をついた……
さらに、攻撃した側は全員アルマゲストに恋人・親兄弟・子供・師・友人等の違いがあるものの何の理由もなく理不尽に奪われ遊ばれ殺されたり生贄にされたり人体実験をされたりされた者たちだった。
だから、アルマゲストの魔術師たちが泣き叫んでも、助けてくれと懇願しても聞く耳を持つどころか死体にさえ魔力を込めた弾を撃ちこみすらしたのだ。
そして、アルマゲストの首領アーウィン・レスザールも、通常ならこの当時の和麻と互角だったのだが疲労しきっていたため半分の力も出せず、最初から聖痕発動+朧月夜全力起動状態の和麻にあっという間に殺されその魂を朧の“力”によって風の精霊王・悪魔(和麻が「お前も食われてみたらどうだ」と言い放った)の元に分けられて送られ“食われて”存在そのものを消滅させられ肉体すらも跡形もなく消滅された。
戦闘後、早期にアーウィンが死んだため十一人の魔術師たちが奇跡的にも逃げていた(ヴェルンハルトやミハイルも含む)ので、追うべきかと聞く者たちに和麻は「いや、追わなくていい……死んだほうがましって目にあわせてやるんだからな」と言い先程殺すのを止めた三人の瀕死の捕虜(彼らのその後の運命からすれば売り物というべき)に目をやりすぐにそむけると
「さて、ミートパイでも食べに行くか〜」
と言いながら自分に対しいつも通りの笑みを浮かべた師の姿だった。
そのことを思い出し
「――凄い人だよ。先生をチョモランマとしたら俺なんかそこらにある丘だね」
とその時自分の記憶に残っていた魔術師たちを灰すら残さずに消滅させたように、その師と同じくアルマゲストに対して血も涙もないだけでなく、師の「相手と直接殴りあう前にできるだけ優位にたっておいて楽に勝つ」戦い方を継承した少年は四人の少女に言った。
その万感の想いを込めた言葉を聞き
「凄い人なんですね」
「あんたがそこまで言う人なのか――」
「一度会ってみたいですね」
「……つまり、おぬしにそこまで呼ばれる者ということか……悪魔の師というわけじゃな」
生身の三人は、和樹の言葉を額面通りにとったが、幽霊生活五百年のエリザベートは年数を重ねたものだけが持つ経験から来る直感のようなもので、なんとなく恐怖を感じて聞こえないような声で呟くようにいった……
それを聞き止め
「ポチ、なんか言ったかい?」
「いえ、なにも」
にこやかに笑いかける和樹にエリザベートが即答する姿を見て、叔父の娘がまだ赤ん坊だということを思い出した玖里子は
「最初に会ったときあんた、子供のことを考えろっていってなかった……叔父の娘さんまだ赤ちゃんだったような気がするんだけど」
恐る恐るといったように聞いたら、和樹は即答で
「玖里子さん。言葉は時と場合によって使い分けるんですよ」
前八条からなる“八神家家訓”―製作者和麻で作った後話しているとき翠鈴に「子供に何言ってんの!」といわれて、はたかれた―第二条の言葉をそのまま言った。
「え〜と、それってどういうことですか」
なんとなく嫌な予感(あのときの言葉全部嘘だったのではないか)がして夕菜が言ったが、和樹は彼女たちの嫌な予感を良い意味で否定した。
「風椿洋志さんの娘さんは魔法回数も充分多いし、生まれたときから社会的地位と経済力に恵まれて味方も多いじゃないか。そんな子と、不確定要素が多すぎて味方も少ない子供を同列に扱うわけにはいかない……第一、別に今のところ公表して洋志さんの娘さんをどうこうするつもりはない」
「そうなの……何で」
「公表することで相手に対して“お願い”できなくなるのは拙いし、相手と交渉(脅迫)するときは、できる限り追い詰めないほうがいいんです。追い詰めて共倒れ覚悟にさせると厄介だし……それに」
「それに」
「子供の一生のトラウマになりそうなことはあんまりやりたくないんだよ。子供には……」
そういう和樹の憂いを帯びた横顔を見て、四人は安堵した。和樹が、なんだかんだ言って優しいところがある人間だということがなんとなくわかったからだ。
安堵する四人の中で、エリザベートがあることに気付いた。
「あの、式森」
「何だ、ポチ」
「…………そのおぬしは子供の一生のトラウマになることはしたくないんじゃろ……わらわは、この通り子供じゃぞ!」
頷く和樹に自分が子供だと主張して、助けを乞おうとしたのだ。それを聞いたエリザベートの隣にいる玖里子が顔を引きつらせ「あんたあたしを見捨てるつもり!」と表情に浮かべた言葉を声にも出そうとしたとき
「五百年以上生きといて何言ってる」
和樹の何言ってんだという言葉がエリザベートに突き刺さり彼女の膝を折らせた上に
「そうだな。金が振り込まれるまでの時間、お仕置きをしておくのもいいかもな」
と和樹をやる気にさせてしまったので、二人とも逃げようとしてあっさりと首根っこを捕まれた時、机の上に置かれた電話が鳴り響いた。仕方なしに中断して玖里子を電話のところまで連れて行き手を離すと受話器をとるように言う和樹を見ながら電話の相手に感謝しながらスピーカーフォンボタンが押されたまま受話器を取り上げると同時に
「玖里子!試算の四十五%の出費って何!」
と麻衣香の詰問の声が部屋に響いた。
この状況で、姉からの電話が来たことに運命みたいなのを呪いたくなった玖里子の手から和樹が受話器をとると
「ちょっと聞いているの!玖里子!」
「昨日はど〜も〜お元気ですか」
「……あなた……まさか……」
「式森和樹です。昨日の今日で忘れたんですか――」
「@@⁂⊡☥✚✠⊞!!!!!」
人間の声ではありえない、まるで鳥か何かの動物のような甲高い悲鳴が向うから届いたが和樹は意にも介さずまたも陽気だが鋼のように硬く冷たい声で
「どうしたんですか?麻衣香さん、そんな声を上げてはしたないですよ」
「あ……あ、あ…あ…あ…ああ」
「どうしたんですか……本当に」
「ヒック……ヒック……うわああああああああああ」
恐怖の絶頂の叫びが轟いたが、それに対して
「そっちから電話したのにそれじゃあ相手に失礼ですよ」
と和樹が言い放つと
「おねがい……もうゆるして……まいかのこといじめないでよ〜」
恐怖のあまり幼児退行を起こした麻衣香の悲鳴が聞こえた。すると和樹はまるで、人買いのような優しい声で
「はは、いやだな〜俺が何時そんな酷いことしたっていうんだい?麻衣香ちゃん」
「だ…だって、きのうまいかをおにいちゃんはいじめたじゃない」
「仕方ないな〜俺が苛めたんじゃないって言ってるのに麻衣香ちゃんはそんなこというんだね。お仕置きが足りなかったのかな〜」
「も、もうやだ……あのおもくてくさくてぬるぬるしたのはやだよ……もう、いきたくなっい……ヒック」
「そんなに行きたくないのかい?」
「エック…うん、ブーちゃんたちのところはもういきたくない」
「麻衣香ちゃんがいい子ならいかなくてもいいかも知れないよ」
「うん、まいかはいいこだよ。だから――」
「俺の言うことをよく聞く?」
「うん」
「そう。じゃあ、まだまだブーちゃん達はおなか空かせてるようだからご飯もっていこうね♪」
「いやああああああーーーーーーーーー!!!!!」
電話の向うで激しい音と悲鳴が轟いて少し経つと「まいかは…まいかはいいこなのに」とかいう泣き声に変わった時にドアを開ける音が聞こえ数人の人間が入ったようだった。その後、狂乱した麻衣香を何人かが取り押さえて「鎮静剤を」とか「飴玉持ってる奴は出せ」などの音と声によって電話越しでさえ状況が良く解った――至福を味わう和樹以外の四人は喜べなかったが……
そして、麻衣香を運び出す音が「朝は正常だったのに」「何があったんだ」「そんな事より病院に」という声と共に部屋から出て行くと、電話に気付いた主席秘書が
「どなたですか」
というとその声を聞き
「あ、佐藤さんですね。式森です、昨日は――」
そこまで言ったとき電話向うでまるで糸が切れた人形のように人間の体が床に落ちたような音が響き「佐藤さんが」という悲鳴と共にまたもドアが開く音と人を運び出す音が聞こえたところで――和樹は向うとこっちの電話記録を“燃やしながら”受話器を置いた。
そして、“何故か”震えて顔を蒼ざめさせている玖里子(他の三人も)に一言
「お姉さん面白い人ですね」
というとすぐに話を逸らそうとしたが
「ちょっと……お願い……待って」
「なんです」
「あんた……姉さんに何したの?」
その一言を聞いた瞬間和樹はまるで罪を擦り付けられそうになっている無罪の人間のように
「そんな!俺を疑ってるんですか!何で!」
「何でって、麻衣香姉と佐藤さんの反応からしてみればあんたしかいないじゃない!」
「あの二人が俺に対して怯えているのは、昨日の朝のことだと思うんですが」
「それにしたって……なに、夕菜ちゃん」
反論しようとする玖里子だったが、その肩を夕菜が叩き「昨日の朝何があったんですか?」と聞いてきたので同じく聞きたそうな凛とエリザベートにも、昨日の朝麻衣香が和樹を呼び出して言ったこととそれに対して和樹がまるで丸腰の相手に向かって銃を突きつけてゆっくりと崖に追い詰めるような凄まじい―おそろしくおとなしい表現だ―口撃を行ったことを話すと夕菜と凛は「どう考えても麻衣香のほうが悪いと思う」と自分と全く同じ意見を言ったのでそれには頷き。エリザベートは「そんな相手におぬしは……」と今回の計画―計画を立てたのは和樹と直接会う前だったので和樹が噂通りの優等生だと思っていた―の無謀さに諦めの表情をしていたので自分も確かに無謀だったと言う意思を込めて頷くと
「話を戻すけど……それにしたって、姉さんあんたに怯えすぎてるのよ」
「だから」
「えーとね、昨日の夕方から深夜まで姉さん行方不明になったんだけど……それとあんたなんか関係あるんじゃないかなーって」
「俺がその時何してたかそっち知ってるんじゃないですか。人のアリバイ昨日調べていたって聞いてますけど」
そういわれて「誰からどうやって聞いたんだろう」という疑問がわいたが、今度は凛から「アリバイとは?」と聞かれたので和樹に疑いを持った家が昨日のアリバイ調べたけど疑わしい行動をとってなかったことを話すと「それなのに何で和樹を疑っているのか」といわれたので
「だって、姉さんの態度にまるで知ってるような速さで対応したじゃない」
そういうと周囲全員が和樹を見たが和樹はまったく動じず
「推測で対応しただけですよ」
「……姉さん、あんたが苛めたっていってたけど」
「昨日の朝のことで俺に苦手意識ができたからじゃないですか」
「……もしかして、昨日姉さんに何があったか……推測できる?」
「それなら何とか」
「……言ってみて」
そういわれると和樹は紅茶を一口飲むと右の人差し指を立てて
「推測その一:ある養豚所でおなか空かせた豚の群れ」
「…………」
それを想像する四人に
「推測その二:素っ裸で大股開きの体勢で縛られて固定された麻衣香さんと佐藤さん」
「「「「えっ!?」」」」
とんでもないこと言われてたじろぐ四人
「推測その三:泥のような形状の豚の餌を全身に塗りたくられて豚の群れの中に放り込まれる、ふ・た・り♪」
「あんた姉さんになにしてんのよー!!!」
想像してしまい口に手をやりながらも何とか玖里子(他三人は口を手で押さえて蒼ざめている)は詰問の声を出したが
「玖里子さん、これはあくまで推測ですよ」
と和樹のたしなめるような声によって何とか踏みとどまり
「……あんたの推測じゃ、姉さんはどういう場合に……さっきみたいになるわけ?」
「そうですね……まず、豚とかの単語を聞いたりしたときですね。それと、豚や豚でできた物、例えば豚汁・ソーセージとかを見たり触ったり食べたりした場合は」
「……場合は?」
「症状みたいなのが軽い場合は吐き気・頭痛・胸焼けを感じる位ですみますけど……やや重い場合は、ジンマシンや軽い発作が考えられます」
「重い……場合は」
「さっきみたいに幼児退行等を起こすことが考えられます」
「………それは、どれくらいで治りそうなの」
「思い出を拭い去る時間ですからそこまで長くないと思いますよ」
「…………具体的には」
「完全にその思い出を拭い去って人生の再起が完了するまでだったら、まあ十年ですね」
「うあ……………あの、さっきさ、豚を連想する言葉なんて言ってなかったんじゃ」
「式森和樹という名前はともかく、その声を聞いたり顔を見たりしたりした場合や――」
性行為をした場合等もそうなるかもしれませんという言葉の途中で
「あんた以外考えられないじゃいのよー」
玖里子の魂の叫びがその場に轟いた。
「玖里子さん……」
穏やかな和樹の声に玖里子は凄みのある声で
「なに!」
「無罪が確定している人間に対してお前は犯人だろうというのは、冤罪以外の何者でもないですよ」
「いや、だってあんた以外の――」
「証拠がありません……俺のアリバイは完全に立証されているんですから」
と、昨日自分そっくりの人形に人目が付くように行動させてアリバイを作っている間、麻衣香と佐藤秘書をさらって、餌を人体のある場所に埋めたり気絶したりしたときに水をかけたりした少年は自分の無罪を主張した。
「そ、そうね。確かにあんたは……」
風椿家があれだけ調べたのに何も出なかったことを思い出したので、和樹への疑いを解こうとした玖里子だったが
「ま、あれだけやれば気が晴れたからな」
「あ、あんた……」
その声を聞きこいつがやったと確信して和樹のほうを見ると、にこやかに和樹に微笑まれて
「玖里子さんとポチは牛ってお好きですか」
自分たちの危機的状況を思い知らされたため自分も同じだと断言できる絶望的な表情を浮かべたエリザベートと抱き合い、助けを求めようとして夕菜と凛のほうを向いたが両方とも薄情にもあさっての方向を見て他人のフリをし始めた。
そんな玖里子とエリザベートに和樹(悪魔以外には見えなかった)はさらに
「牛はお好きですか」
問いかけてきたので、牛を食べるのが好きなのかと聞いているのかそれとも牛になるのが好きなのかと聞いているのかそれとも自分の想像を絶する意味で聞いているのか判断のつかない生贄二人は
「「普通、かな」」
と引きつった声で答えるしかなかった。それを聞くと和樹は夕菜と凛のほうを向き、ビックとする二人にまたも同じ事を言ったので、夕菜と凛は顔を一度見合わせると
「「何で聞くん(ですか)(だ)?」
「あぶく銭はいるからおごろうと思ったんだけど……」
そういわれて玖里子は
「お仕置きするんじゃなかったの」
「いや別に、そこまで酷いこと最初からするつもりなかったし、さっきの麻衣香さんで気が済みましたから貸し1つって事でこの話は終わりにしません」
その言葉が脳に届いた瞬間玖里子とエリザベートは抱き合い、夕菜と凛もホッとした表情を浮かべた。
そして、その後和樹が一時的に幽霊が実体持てるようにすることができるとも言ったので、高級焼肉屋で食事をすることが決定したときに、和樹に金が振り込まれたことが長距離念話で知らされたため確認すると一度彩雲寮に戻ろうと言ったため、彩雲寮の和樹の部屋の前に戻った。
ゆっくりと和樹は一歩踏み出し前から一度やってみようと思っていた“向うの世界の大魔術を一見こちらの世界の魔法のようにすることができるか”を確かめるため、という理由と自分の記憶を失った魔法をできるだけ使いたくないという理由のため
精霊を集め始めた
この世界の魔術師たちが使う、仮想意思と名前を持つエネルギーと同意義の精霊ではなく意志ある現象として世界をあるべき形に保っているこの世界では使われていない精霊を。
故に小規模ならともかく大規模ならば誰にも使われていない力のため周りにおかしいと思われてしまうものを和樹は、その絶大な意志(魔力と置き換えてもいい)と精密なまでの技術によってこの世界で普段使われている精霊と同じ“外見”に見えるようにした。
それを見て四人の少女たちは驚いた。和樹の“外見”を見破ったわけではない。その集まった精霊の量とそれを完全に制御していることに。
今の和樹を神凪一族が見たら目を背けて認めようとしないほとんどの者はともかく、一部の者は自分たちの最強という看板を下ろしたかもしれない。
その炎は、全てを破壊し全てを癒すものだった。誰も使うどころか見たこともないそれを和樹は龍の王とドラゴンの王と契約した助けがあるとはいえ、神凪初代に次いで人の身でこの世界に現出してのけただけでなく、その炎単体でも重悟よりも巨大で精緻なものだったからだ。
その人が集められる最大級の炎を自分の掌大まで圧縮すると、和樹は「索敵君タイプT」によって“視て”いる朝霜寮に向かって転移させ朝霜寮の地下部分を含む全体を覆い
「来い」
と呟いて朝霜寮そのものを振動すらさせずに彩雲寮に引っ付けるように転移させた。
この光景を向うの世界の魔術師が見ていたら空いた口を閉じようとはしなかっただろう。炎術師が数キロ先の場所で炎を使うだけでなく、空間を“燃やして”巨大な建物を空間転移させ、建物に被害どころか振動すら起こさないという現実離れした光景に――最も、一部の者は頷いて納得するだろうが……
そして、和樹は“時間をかければ誤魔化すことはできる”という結論に至り満足げに頷くと振り返って
「これから、エリス起こすんでちょっと待っててくれ」
といい自分の部屋に向かって歩き出したが、その目前で銀の髪に金の瞳をした整った表情の白いワンピース(離れた町に行って買ってきた)を着て蒼い石を首に下げた少女がドアを開けて和樹を確認すると
「ますたー♪」
と嬉しそうに歓声をあげて、和樹にしがみ付いてきたので、その頭を撫でながら
「ただいまエリス」
「うん、お帰り〜ますたー。酷いよ〜私を置いていくなんて」
「ああ、ごめん。ところでエリス――」
「それに、ますた〜魔術も使ったでしょ……あ、お部屋が増えてるよどうしたの」
「寮を引っ付けたんだ。後で話すよ。それよりもエリス――」
呆然と見ていた四人の中で最初に我に返った夕菜(さすがだ)が、口元を引きつらせながらどもりがちに
「……か、和樹さん。そ、その娘は、一体どこのどなたなんですか」
その震えが混じった言葉を聞きこの姿では合わせたことがなかったことを思い出した和樹が
「この娘は――」
あの猫のもう一つの姿なんだと言おうとしたら、夕菜と仲がいいエリスが
「お姉ちゃん、私はね、ますたーのペットで、ますたーは私のご主人様なの♪」
どう考えても勘違いされる言葉を、天使のような満面の笑みで言ってくれた。
「「「「……ご……ごしゅじんさま……ますたぁ!」」」」
間違いなく勘違いした四人に向かって
「早とちりするなよ。この娘は――」
冷静な言葉を告げようとしたところに
「違うの」
なんだか泣きそうな声が聞こえたが、無視して
「ああ、違う。この娘は」
「そんな!ますたーは私とお風呂はいったり一緒に寝たりしてくれたのに〜」
という声が響いたため、自分の失敗を呪いたくなった。が、そんな事をする前にエリスを落ち着かせようとしたが
「和麻さんが、言ったとおり女の人沢山来たからエリスはもう捨てられるんだ」
と、しゃっくりあげているため四人には聞こえない声を聞いた瞬間
(そうか、やっぱり最終的な敵はあんただったんだな先生)
真犯人がわかったので念話でエリスと会話することにした。
《エリス》
《……何……ますたー》
《先生になんていわれたんだ》
《前行った時(一週間ほど前)にね。もしますたーがたくさんの女の子を連れてきたときのためにいい事教えてあげるっていって教えてもらったの。エヘヘヘー和麻さんっていつもいい事教えてくれる優しくていい人だよね》
《さっきのことを言えっていわれたのか》
無限の呪詛をエリスに余計なことを教える師に浴びせながら言う和樹だが
《うん。それとね、これだけ言えばますたーが念話してくるからそのときに》
「お風呂で体洗ってくれたときにはエリスって柔らかくてかわいいねって言ってくれたし、寝ているときには暖かくてぎゅっと抱きしめたくなるよって言って抱きしめてくれたのに……ますたーはもういらないって捨てるんだー!!」
(殺そう)
言っているうちにそうなったときのことを考えたため本気で泣きが入ったエリスの悲嘆を聞きながら、和樹は怒りを通り越した曇りのない殺意を和麻に抱いた。
(ここまで、先生に対して殺意を抱いたのは、黒服に囲まれた何処かの豪族の娘さんに「もう、会わない」って書かれた先生の手紙―中身を知らなかった―を渡して向うが読んだ後周りの銃口と一緒に向けられて手紙の内容を読んだときとか……あと……あと……あと)
すぐに三十以上浮かんだため式森和樹はなんだか泣きたくなった。が、近くでかなりの攻撃魔法が展開されつつあるのに気付きそちらを見ると
巨大な火球を頭上に浮かべながら
「和樹さん……あなたって……あなたって人は……」
子供が一生のトラウマを抱えそうな顔でこちらを睨みつけて地の底から響くような声でうめく夕菜を見たので、頭を抱えたくなったが夕菜を説得するほうが先だと思いエリスに言って猫に変身させて、後ろで刀に手をやっている凛とエリスを捕まえてこっちに来させようとしている玖里子にも自分の無実(そういう意味で手を出したことはないがエリスが言ったことはやっている)を証明しようとした。
「エリス、猫に変身しなさい」
その、荒れ狂う内心とは反対の静かな声に
「え〜ますた〜何言ってるの、人間が……猫になれるわけないじゃない」
素直な嘘がつけない性格のため、まるで台本を読んでいるように棒読みだが、聞く人間によっては、それは脅されて怯えているように聞こえた――例えば、前の四人とかには……
瞬時に膨れ上がる炎と刀を抜く音とエリスを掴んで引っ張っていこうとする気配を感じながら、和樹はエリスに念話で話しかけた
《さっきのも、先生に?》
《んーん、さっきのは翠鈴さんも一緒だったよ》
《翠鈴……さんも……》
師の安全装置みたいな立場の翠鈴までも裏切ったことに和樹は絶望的な気分になった。その和樹に止めとして
《私がね、上手くさっきの言葉が言えなかったときにね。和麻さんと翠鈴さんも「充分すぎるよ」って笑って頭撫でて手作りのお菓子とかくれたんだ♪本当に優しい人たちだよねー。だから、お礼しようとしたら「たくさんの女の人が来たときこれ持って、その映像こっちに送ってくれればそれでいい」ってこんな綺麗な石くれたんだよ》
蒼い石(映像を送る力は一度しかない)を手に持ってそれを聞いたとき和樹は、敗北感しか感じられなかった。
(いつも、こうなるんだよな)
ことごとくこっちの思惑を師は超えてくれるのだ。今回のように……全部読まれて……
敗北感に浸る和樹は知らない。今回のことは帰ってくるといったのに帰ってこないばかりか、たまに帰ってくるエリスに手紙どころか言伝すらしない薄情者(朧が『お前が言うな』とそれを聞いたとき呟いた)に一言言ってやろうと思ったが、素直じゃない性格をしているため捻くれたやり方でやることになり、そこに「何時も泣き疲れさせて」と言いながら和樹の薄情さに怒っている翠鈴が現れて完成したことを
ちなみに今向うの和麻のところでは和麻がそれを録画しながら何人かと一緒に笑い転げていたりする。
「か〜ず〜き〜さ〜ん」
その地獄から聞こえるような声を聞き敗北感に浸るのをやめ
《エリス、これから皆で高級焼肉食べに行くんだけど……》
《行く〜私も行く〜》
《じゃあ、今すぐに猫になってくれ》
《え、でも……》
《向うでは女の子の姿になってもいいから》
《わかった〜》
念話で話し終わり今にも火球を投げようとする夕菜と今にも斬りかかってきそうな凛と短距離走の選手のような構えをする玖里子に
「皆ちょっとこれ見て」
「「「「いまさらなんだっていう(んですか〜)(んだ)(のよ)(つもりじゃ)!」」」」
という四人を無視してエリスを抱き上げると
「貴様、子供を盾にする気か!」
「見損なったわよ!」
「悪魔め!」
「そんな事で止めると思うんですか!」
一人突っ込みたくなったが、とりあえず無視しエリスを猫に変身させた。
「「「「え!?」」」」
そして、呆然とする四人に周りが寮のことに気付きだし騒がしくなってきたため
「だんだん騒がしくなってきたから、隣町の焼肉屋に行かないかい。そこで、話をするから」
そして、三十分後焼肉屋に着き、エリスが自分の使い魔だということと人型はいろいろとややこしくなるので普段猫の姿をしているを説明すると、四人は不承不承といった感じだが頷いた。
その後、夕菜が、エリスが和樹と一緒に住んでることで文句を言おうとしてエリスに潤んだ目で見られながら懇願され迷ってるところを和樹がエリスを猫にさせて頼ませたため、猫の姿ならと夕菜を納得させたり、久しぶりに人間の姿になったエリザベートがおいしいご飯を食べ過ぎたりして、楽しい時間は過ぎていった。
今回の話に副題をつけることが許されるなら『越えられない壁』とか『真・最強の敵』とかにしたいなと思ったりしました。
和麻は、原作に比べて朧という「支えてくれる者」と和樹という「守り育てる者」が周りにいた上に現在家庭を持っているため少し穏やかになっています。
ではレスを
>D,様
今のところ和樹は弱みを握ってたまに自分を裏切った依頼人に使っているだけな
ので、ほとんどの人間は和樹の存在すら知りません・・・・・・今はですが
>皇 翠輝様
教えていただきありがとうございます。面白かったです!
志貴と式と幹也の関係と、琥珀さんと橙子さんの同盟が特に!
>サキ様
誰かを盾にして裏からあやつることに意味があるのです!和樹の学生という立場からしてみれば
>紫苑様
なるほど、胸の大きさと言うのは深いものですね。大変勉強になりました。
財閥である風椿の弱みを握ると政府とかの弱みも握ったりしますよね。
>雷樹様
性格の黒さの五割は和麻のせいです。
そして、世界の偉い方々の弱みを握ったりして色々やっているのも和麻です。
>柳野雫様
そうですね。毒はより強い毒には消されてしまうものです。
だから、夕菜がキシャーには見えなくなったんでしょうね。
>タクト様
この情報は、和樹が情報屋から買ったりしたり他の相手の弱みが連鎖するものが二割ほどです。後の八割は今のところ内緒です。
>アポストロフィーエス様
この黒さに加えて、表面は優等生で通っていることが和樹の悪辣さを一言で表しています。
そうですね、情報は本当に大切です。それがなければ何も出来ませんし
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