そんな彼等に横島から
「頼みたいことがある」
と連絡が来たのはアシュタロスの戦いから一週間が過ぎた日のことだった。
もうひとつのGS美神IF
〜ルシオラ復活 漢たちの友情〜
前編
「横島クン用件は何だね? キミと違って僕はあまり暇じゃないのだが」
一同を代表していつものように憎まれ口を叩きながら西条は彼らを出迎えた横島、それに何故か横島と一緒にいるドクターカオスに向かって問いかける。
実際、他のものはそうでもないがオカルトGメンに属している西条は戦いの後始末に追われていて本来この場に来ることさえできないくらい忙しかったのだ。
それでもこの場に来るのは横島の人徳か、はたまた西条の人柄か。
それはともかく、そんな西条の言葉に横島はいつものように対応せず、単刀直入に言葉をつむぐ。
「今夜、ルシオラを復活させる。それに協力してもらいたいんだ」
「!?」
この場に集まったものは皆、多かれ少なかれ横島とルシオラにあったこと、そのルシオラの復活がほぼ絶望的であった事を知っており、その為驚きを隠せなかった。
「その為にドクターカオスが一緒にいたのかね?」
「ええ、そうですよ唐巣神父。今までカオスには土偶羅と一緒にあれこれ計算してもらってましたから」
いち早く冷静になった唐巣の質問に横島はそう答える。
「で、どうやるんだ?」
「それはワシが説明しようか、小僧」
雪之丞にそう応じてカオスは説明を始める。
「まず横島にワシら全員の霊力を送り横島の霊力を上げ、『合』『体』の文珠でルシオラの霊破片と合体する。
そして横島とルシオラが融合する過程で横島の中にある嬢ちゃんの霊体と霊破片が結びつかせ嬢ちゃんを復活させ分離する」
「そんなことが可能なんですか!?」
「可能じゃ。じゃが合体中、横島の霊力が弱まったり、分離するタイミングを逃すと逆に吸収され嬢ちゃんに取り込まれてしまうがの」
今とは逆になってしまうわけじゃ、とピートに答える。
この説明に女性陣には協力を求めず男性陣にしか声をかけなかった理由がそこにはあった。
「だから俺達男にしか声をかけなかったのか」
「そういうこと。女性の霊力だと俺の霊力だけじゃなくルシオラの霊力も上がっちまうらしいからな」
雪之丞にそう答える横島。
「でもなぜ今なんですか、ドクターカオス。もう少し待ち皆の体調が万全になってからではダメなのですか?」
あの戦いから一週間たったとはいえ、未だ皆の体調は万全とは言いがたかった。
「それは横島の中にある嬢ちゃんの霊体は時間がたつほど少なくなる。本来はすぐに行ったほうが良かったんじゃが、戦いの後では皆の霊力はほとんどなかったからの。今日が霊体量と皆の回復力を考えるとベストなんじゃ」
土偶羅と共に緻密な計算の元今日の日を選んだ、とカオス。
とここまで黙って聞いていた西条が横島に問いかける。
「これは可能性の面から言ったら賭けに近いだろう。
それでもやるのかい、横島クン?」
「ああ、やる」
西条の意思の確認の形はした説得に、横島はいかなる説得にも応じない強い決心をにじませて短く返す。
「そんな危険なことに俺らが協力しないと言ったら?」
「別に、一人でやるだけだ。
それにもし失敗してルシオラに吸収されても人間の魂から魔族の魂を分離させるよりはましな状況になるからな」
もっとも現状より数%もかわらないけどな、と胸中でつぶやく。
雪之丞の脅迫じみた説得にも微塵の動揺も見せない横島。
これで彼らは横島の説得はできず、自分達は協力すこと以外に出来る事はないと悟らざるを得なかった。
「悪いな俺の我が侭につき合わせて」
「まったく、本当にそうだね。この貸しは大きいよ」
「俺にできることなら後で何でもするさ」
「そうかい? じゃあ事が終わったら何か食べにでも行こうか。
もちろん横島君のおごりで」
「いいけどあんまり高いものは無理だぞ」
言外に、『ルシオラだけを復活させ自分はどうなっても言いなんて考えないように』と釘を刺す西条。
それが分かった横島は素直にそれに応じた。
「おお、それは良いノ〜。横島さんゴチになります」
「横島クン悪いね」
「何おごってもらうか」
「ボクは何でも良いですよ」
横島の生還への意思を感じた為か、そう軽口に付き合う面々。
いい感じで緊張の解けた面々。
「じゃ、はじめようか」
こうして男達はルシオラ復活に動き出す。
雪之丞、ピート、タイガー、西条、唐巣、カオスが横島を囲むように位置につく。
それを見届けると横島は精神を集中し己の限界まで霊力を高める。
それと同時に雪之丞達も霊力を束ねて横島に送る。
「今じゃ横島!!」
タイミングを見計らっていたカオスが横島に指示を出す。
それに答えて横島は『合』『体』と刻み込まれた双文珠を作り出しルシオラの霊破片と合体する。
そして美神との合体時と同様な姿がそこに現れる。
「ルシオラ! ルシオラ!!」
己の中にいるはずのルシオラに呼びかける横島。
するとだんだん肩のところにある水晶みたいなパッドに人の顔のようなものが見えてくる。
そしてそれがルシオラ本人と分かるようになってきた瞬間!!
合体している二人が入れ替わり、ルシオラ主体の合体に変化した。
突然のことに唖然とする面々。
「ヨコシマ、霊力を上げて! このままだと私に吸収されてしまうわ!!」
肩パッドにいるヨコシマに向かい叫ぶルシオラ。
『悪い…。お前が復活できたと思って気緩めちまった・・・』
横島の意識は今にも失われかねない状況だ。
「畜生! こっちもこれ以上余裕がねぇ!!」
一同を代表するかのように額に汗を浮かばせ雪之丞が叫ぶ。
元々万全でなかった霊力も限界に近づきつつあった。
「ダメ、ヨコシマ! あんな思い二度としたくない!!」
横島に呼びかけるも反応はだんだんと鈍くなっていく。
状況は刻一刻と悪化していくばかり。
一体、横島はどうなってしまうのか!?
後編に続く
あとがき
いかがでしょうか?
横島の霊力だけを上げ、横島とルシオラの霊力差を縮めるためには男性陣しか出番がない。
漢臭いSSを書こうと思い勝手に作った設定です。
またドクターカオスはタイミングを計り全体の指揮をする為、霊力は送っていません。
色々無茶がある設定・展開ですがその辺はさらっと流してくださるとありがたいです。
後編はもう出来てますので明日投稿させて頂きたいと思っています。
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