恐らく軍の研究施設であろうと思われる場所で、二人の男が、叫びながら必死に走っていた。
「ちくしょー! なにが悲しゅうてこんな山奥まで来て、バーサーカーなんちゅう化け物とドンパチやらなあかんのや!!」
「うるせーぞ、忠夫!! 死にたくなかったら、黙って走れ!!」
その二人の後ろから、二人の倍以上の大きさの人型のロボットらしきものが飛びながら追いかけてきていた。
「来た! 来ちまったぞ、優!!」
「んなことはわかってるっての!! もう少しでシェルターだ! きりきり走りやがれ!!」
二人を追いかけるロボットの体の各所がメリメリと裂けて、その裂け目から幾つかのレンズのようなものが見えた。
「やべっ、撃ってくる! 忠夫!!」
「わかってるっつーの!!」
それを見た二人のうちの一人が、その手の中に光る盾のようなものを幾つも生み出していた。
その次の瞬間、ロボットがレンズから光線を発した、と同時に叫び声が上がる。
「阻め! ウォール!!」
その叫びに反応して、光の盾が連なり壁のようなものを作り出す。
ロボットの放った光線は、その光の壁に防がれた。
「よっしゃー!」
「喜んでる暇はねえぞ! ちゃきちゃき走れ!!」
二人はそうしてまた走り出した。
ロボットは、光線を防いだ後も残っている光の壁で、足止めを食っている。
それを尻目にしばらく走ると、ドームのように開けた場所に二人は到着した。
到着と同時に、二人は急いで銃を抜き、天井の同じ場所に銃弾を当てつづける。
「「ぶち抜けー!!!」」
銃弾を全て撃ち尽くした後、二人は相手が向かってくるだろう場所を振り向いた。
二人が打ちぬいた場所からは、大量のスチームが出てきていた。
「さーて、これで人事はつくした。 あとは俺たちかあいつか、どっちのバーサーカーが生き残るかだな。」
その言葉を言うと同時に、男はナイフを抜いた。
「タマモのやつに、今回置いてく代わりにきつねうどんをおごる約束をしてるし。 それに、あの美人の中佐の電話番号を聞いてねーからな。 死ぬわけにはいかねーよ。」
こちらは、言葉と同時に右手の先に光の剣を出した。
「そういやあ俺も、岡部との約束があるからな。 気合をいれんとな。」
「おーおー、もてもてだな、優。 初穂ちゃんと香穂ちゃんだけでなく、弥生ちゃんまで毒牙にかけるか。 ちっとはこっちによこせ! ちきしょー!」
「なにをぬかしやがる、このボケ! あいつらと俺はそんなんじゃねーし、お前にはタマモがいるだろが!!」
「あほか、俺はロリコンじゃねーんだぞ! 将来性はともかく、今のあいつに興奮できるかっての!!」
そんな言い合いを続ける二人の前に、光の壁を破ってきたロボットが現れる。
「来たか。 そいじゃあ行くか、忠夫!」
男はナイフを構える。
「おうさ、優!」
男は光の剣を構える。
二人はお互い相棒の名前を呼び、頷き合う。
「「勝負!!」」
そして、二人は突貫する。
数日後
「なんすか、山本さん? いきなり呼び出して。 仕事だったら勘弁してくださいよ、この前のバーサーカーとの戦闘でまだぼろぼろなんすから。」
その体中包帯だらけの男は、部屋に入るとすぐに目の前の中年の男にそう言った。
よく見れば、それはあのロボットに向かった二人の内の光の剣を構えていた男だった。
「そうよ。 まだ、約束のきつねうどんをおごってもらってないんだから。 仕事なら、その後にして。」
その男の隣の、個性的な髪型をした少女がそう言った。
その髪型は、ポニーテールが九つあるというものである。
男には、よくナインテ−ルと呼ばれている。
「安心してくれ。 確かに仕事の話だが、今すぐという事ではないし、危険度が高い仕事でもない。」
その山本と呼ばれた男はそう言ったが、目の前の包帯男は疑いのまなざしで見ていた。
「この前も危険度は低いって言って、発見された大量の文珠の回収に行かされたけど、確かアメリカの特殊部隊に囲まれた記憶があるんだけど、気のせいかな。」
その包帯男の言葉に山本は額に汗をたらして、話を続けた。
「そ、そうだったかな? ま、今度は本当に危険度は低いぞ。 これを見てくれ。」
山本はそう言って、懐から写真を取り出した。
それには、一人の女性が写っていた。
「おお、すげーきれーなねーちゃんっすね。 くー、お近づきになれてーぜ! で、この美人がどうしたんすか?」
「彼女の母親は時間移動能力を持っていた。 それがどういう意味かわかるな。」
山本の言葉に、男は初めて真面目な顔をして答えた。
「そいつは難儀な事っすね。 時間移動能力を持った人間は、遺跡と同じ位各国で欲しがられてますからね。 しかも、何故か一部の魔族からも狙われている。」
時間移動能力で出来る事はたかが知れているが、そのたかがでさえ国家に与える影響は大きいものとなりえる。
だから、それを持った人間は各国の上層部に狙われていた。
魔族の方は、なぜ狙っているのかはわからないが、下手をすれば国などよりやっかいな相手であろう。
「そうだ。 今はアーカムの方で隠蔽を行っているが、問題があってな。」
「問題っすか?」
「ああ、彼女は母親と同じGSの道を歩んでいるんだ。 彼女の母親は凄腕のGSでもあってな、その娘だけあって、かなり優秀だそうだ。 将来的には、魔族と相手をするような事件にも関わる事になるだろう。」
ここまで言えばわかるだろう、という言葉を言外に含ませて、山本は言った。
そこまで聞いた男が、嫌な予感がするなという風に顔をしかめながら言葉を挟んだ。
「もしかしたら、この私めに彼女のガードしろと。」
「その通り!! 彼女は1週間後に事務所を開く予定だから、助手としてもぐりこんでくれ。」
その言葉を聞いた男は、冗談ではないとばかりに大声を出して言った。
「そんなん嫌っすよ! 下手すりゃあ、魔族と特殊部隊を同時に相手しなけりゃあいけないじゃないっすか! 優かジャンの方へ言ってくださいよ!!」
「しょうがないだろう、ジャンや優はGSというものとの接点が無い。 その点お前はスプリガンであると同時に、GSを目指しているのは周りにも知られているからな。 しかも、無類の女好きである事もな。 GSになるためには現役のGSの弟子入りしなくてはいけないから、注目されているGS、しかも飛びきりの美女である彼女の助手になってもおかしくないだろう。」
男は、山本の言葉に納得がいっていない様子であったが、無理やり自分を納得させるようにしていた。
「はあ、わかりましたよ。 どうせ、もう決定事項なんでしょ。 ま、学校の出席日数もやばくなってきたし、ここいらでスプリガンの仕事を一時休業するのもいいか。 GS助手なら、学校に行く時間を今までより多く取れるだろうからな。」
しかし、その希望は達成されることはなさそうだった。
「ああ、すまんがスプリガンの仕事も続けてもらうぞ。」
男はそれを聞いて固まったが、すぐにさっき以上の勢いで叫びだした。
「なんですと! つまり、それは今まで以上に俺から出席日数を奪うという意味ですか!? 俺に留年しろという意味ですか!?」
「仕方ないだろう、人手が足りていないんだから。 近頃、今まで以上に色々な組織が活発に活動しだしたんだからな。 一人でも多くのスプリガンが必要になっているんだ。」
詰め寄られた山本はなんとか説得しようとしたが、男には通じてい無い様子でさらに叫びだしていた。
「イヤじゃー、留年なんてイヤじゃー! 同級生に先輩なんて言われる学園生活なんてイヤなんじゃー!! 俺は絶対に ゴスッ 」
「まったくうるさいわね。 小さい事でガタガタ言ってんじゃないわよ。」
そう言って少女は男を殴り飛ばした鉄バット(どっから出したんだ?)を放り投げる。
「いつもすまんな、タマモ君。 これが今回の事に関する詳しい資料だから、渡しておいてくれないか。」
山本から差し出された資料を受け取った少女は、その資料を見ながら自分が殴り飛ばした男の後襟を掴んだ。
「ん、わかったわ。 で、これには私も一緒に行っていいのよね?」
「それは良いが、今回の仕事は一応彼女のことがばれるまでの見張りのようなものだから、そんなに人員を裂きたくないのでね。 できれば君には、その間は優あたりと組んでいて欲しいんだが。」
駄目だろうな、という顔をしてそう言った。
「悪いけど、忠夫以外と組むつもりはないわ。 じゃ、また。」
少女はそう言うと、気絶したままの男を引っ張って、部屋から出ていった。
それを見届けた山本は、ため息を一つつくと、ドアに背を向けて目を閉じながら声を出した。
「・・・行ったか。 これで、美智恵君との約束は果たせそうだな。 大変だろうが頑張ってくれよ、スプリガン・横島忠夫。」
あ・と・が・き
はお、ほんだら参世です。
まあ、見ればわかるでしょうが、これはGS美神とスプリガンのクロス物です。
『素晴らしい日々へ』はどうした、とおっしゃる方もいるかもしれませんが、現在ちょっとばかし話の矛盾点のような物が発見されたんで、書きなおし中です。
他にもそんな所が無いか書いておいた過去編のあらすじを見直してるんで、16話はもうちょいかかります。
楽しみにしてくださっていた方、すいません。
連載を増やすのはどうかとか思ったんですが、思いついたネタを出さずに錆び付かせんのももったいないかと思って出してみました。
あっちの方も終わってないんで、更新は遅めかもしれませんが、見捨てないで生暖かく見守ってやってください。
ちなみにタイトルは、スプリガンが遺跡の守護者だからって事で、GSの方の極楽と合わせて『極楽の守護者』として見ました。
・・・・・・・・・・・・・ネーミングセンス0だな(涙)
ヒロインの第一候補は今の所ぶっちぎりでタマモです。
彼女が横島君とすでに一緒にいることについての説明は、その時の事を番外編で書くんでそれまで詳しいことは待ってください。
あと、横島の過去とかもそのようにしますんで。
ちなみに、優とはGSのあるキャラとくっ付いてもらう予定なんで、そういうのがいやな人にはお勧めできません。
では、これにてばいならってことで。
>NEXT