彼 −碇シンジ− は手に持っていたものを足元に落とす。
呆然としていた。 しかし心のどこかでこうなっているのではないかと思っていた。
今 セカイは 赤い
求めるモノはただ、救い
サ−ドインパクトは止められるコトなく起きた。
人間は勿論、動物植物、バクテリアに至るまであらゆる生命は消滅し、残ったのは少年と赤い少女 新たなアダムとイブ。
しかし、イブは目覚めなかった。ひたすらに眠り続けた。
時折わずかに反応を示すが、ただそれだけだった。
そこでシンジはアスカの反応が鈍くなってきたのを機に食料を探しにその場を離れた。
眼前の赤い水を飲めば飢えも渇きも癒されると知ってはいたが、ソレの原材料がナニかというのもまた知っていたので
到底口にする気になれなかったのだ。
そして、見つけた店の倉庫からミネラルウォ−タ−と食料を抱えて戻ってきたその時彼が目にしたのは
何もなかった。
そう、何もなかったのだ。
赤き少女が横になっていた(ハズの)場所にはただ、赤いシミが残っているだけだった。
少年は知ったのだ。
少女が少年を拒絶し、赤い海の同胞達の下に行ったのを。
自分は間違っていたのだろうか
自分も自分という存在を捨て去るべきだったのだろうか
ヒトには自分が自分であるというのは重荷なのだろうか
碇君
少々ヤバい方向に考えが進み始めたとき 声が聞こえた
慌てて周囲を見回し、捜し求めたモノを見つける 碇君
自分以外のモノを 碇君
アレ いや、彼女の名は
綾波レイ
「綾波・・・・また会えたね 嬉しいよ」
「こんな世界を見て、世界がこうなってしまったのを見て、まだわたしに会えて嬉しいと・・・言ってくれるの?」
「あたりまえだろ? 本当に嬉しいんだもの」
「碇君。 今のあなたには選択肢がふたつあるわ」
「選択肢?」
「ええ。ひとつは、このままここに存在し続ける事。
やがて碇君の心はヒトであることをやめ、ヒトを超えて神になるわ。
それはわたしと共にあり続けるという事。永遠の存在へと身を昇華するというコト」
「もうひとつは?」
「やり直す事。 コレを選んだ場合あなたは第三使徒サキエルと出会う直前に戻るわ。
その場合あなたはヒトであり続ける。
きっとまた苦しむことになるわ。
きっとまた悲しむことになるわ。
そして、矮小なヒトとして滅ぶこととなる」
「それは・・・上手くやれば助ける事が出来るんだね、みんなを。 そして綾波、君を」
「救って・・・くれるの?」
「勿論さ。ミサトさんやアスカやトウジも、そして綾波も救えるのなら救いたい」
「ヒトであることを望むのね」
「うん」
「じゃあ・・・コレのなかから三枚ひいて」
どこからともなく数十枚のカ−ドを取り出す。
ちなみに綾波レイは全裸なので少々目のやり場に困ってるシンジ君。
「これは、LCLに溶けたヒト達から、完全完璧ランダムに選び出した様々なスキル。
とある大佐の『囁かれる』才能から某少佐のボルシチ作成能力、匿名希望主婦の『甘くないモノ』の作り方から
写輪眼、ひいては文殊能力まで色々あるわ。
この中から四枚選んで欲しいの。
そのスキルはきっとあなたの力になるから」
「四枚だけかい?」
「それ以上はあなたのキャパシティを超えるから。
スキルというのはその技能だけではないわ。身に付けるにあたっての様々なモノが存在する。
例えばきっかけ。例えば理由。例えば修練。その全てを背負う事になる」
「わかった」一枚引く。クラブのQ。
「それは・・・慣性制御能力。とあるエスパ−が身に付けていた『視界内の運動エネルギ−を完全にコントロ−ルする』能力」
一枚引く。ダイヤの9.
「それは『幸運』。くじ運から金運、仕事運から失せ物発見、果ては女運まで全ての運が少しだけ良くなる」
「・・・意味ないじゃん」そして三枚目を引く。スペ−ドのK。
「アンデッド封印能力・・・もとい『クルダ流闘殺法』。影も闇も全て」
「・・・知らないな」そして四枚目を引くハ−トのK。
「好きな女の子に大声で告白する能力」「おい」
「冗談。本で、あるいはテレビで一目見ただけでその料理をオリジナルより上手く作る能力」
「二枚はともかくあと二枚は全然役に立たないな」
「・・・ごめんなさい」「綾波が謝る必要はないよ。結局僕の運が悪いからだし」
ちなみにジョ−カ−は「天然女誑し」能力だった。
「それじゃあ、悪いけど送ってくれるかな?『あの日』に」
続きます。
また思いついてしまったので。
逆行モノですがス−パ−シンジにはしません。
あと、LASは嫌いなのでアスカは少々可哀相な立場になってもらうと思います。
それにしても雷句センセ・・・あんなSSに使い辛そうな・・・使いこなせたら
ドてらく面白そうなキャラをこの期に及んで出すなんて・・・
ヒドいです。
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