「……ありがとうございました。続きまして……」
なんとか詩織を落ち着かせる事に成功した僕は体育館で入学式に参加していた。
幸いな事にクラスが同じといっても、席があいうえお順だったので詩織と離れる事ができた。
あれだけ浴びていた大量の視線も現在は舞台で喋っているPTA会長とやらに注がれていた。
「……ありがとうございました。続きまして、新入生代表の挨拶です。
新入生代表、藤崎詩織さんお願いします」
「はい」
そういってすっと立ち上がる詩織。
………まあ、詩織だからな。おかしくはないか。
中学時代、学年1位の成績でこの学校の入試でもトップの成績をとったらしい(自分で言ってた)
詩織が新入生代表になっても別におかしくはないだろう。
………周りを軽く見渡してみると、男達が鼻を伸ばして前を見ている。詩織に見とれているのだろう。
お前らは朝の騒ぎを知らんのか。僕は声を大にして言いたかった。
中学時代もそうだった。
詩織はあの頃からすでにおかしかった。
具体的にいうとイロボケだった。
クラスが別だからか登校する時や休み時間、下校の時まで僕にべったりだった。
それなのになんでだろう、詩織はみんなの人気者だった。
部活でもバスケットボールで学校を始めての全国へ導く原動力になって
全国のベスト5にも選ばれたりしてたし、
クラスでもその外面の良さでみんなに慕われてた(らしい)
上の3行だけ見ると詩織の人気もわかるよ。だけどね。
僕に対する態度を見ただろうが!どう見てもキチ(ry
詩織ファンの間では僕のせいで詩織が狂ってしまったらしい。
あいつは敵だ!みんなで協力して主人公(ぬしびとこう)をヤル(殺る)ぞ!!!
ジークしお(ry
なんでやねん。
「以上で新入生代表の挨拶を終わらせていただきます」
詩織の挨拶がいつの間にか終わってた。
一礼して自分の席に戻る姿は優雅の一言。
周りの男もそれに釣られて視線を動かしていく。限りなく目じりが下がっている。
……あれが本来の詩織の姿なのかもな……なんで壊れた(失礼)んだろう……
………本当に僕のせいなのかもな……変なフェロモンでも付いてるのだろうか、僕には………
後々になって僕はわかるのだろう、僕の考えが間違ってなかった事を…………(泣
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愛すべきは幼なじみ?
2話
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ようやく入学式も終わり僕はその他大勢の生徒と共に自分のクラスへと向かった。
教室に入り、みんな適当なグループになって喋っている。
中学の時の知り合いなのだろうか。
一つ大きなグループがあった。女の子が大量にいてその中心を見る事はできなかったが
女の子全員が中心にいるであろう人物に注目し、喋りかけてるのがここからでもわかった。
どんな人なのか興味はあったが僕はそれを確かめようとは思わなかった。なぜなら………
「公君!他の女の子を見てデレデレしちゃだめ!」
「……別にデレデレなんかしてないよ。」
隣にいる詩織が怖いからね。
「公君がデレデレしていいのは私だけなんだからね!」
そういって腕をとる。やめんかい。
「ちょ、詩織やめてよ。こんな所で……」
「もう、公君ったら照れ屋なんだから。でもそんな所も好き!」
そう言って頬擦り。いかん、逆効果だ。
状況は極めてまずい。徐々にクラスメイトの視線を集めだした。
黒い視線の割合も高くなってきた、なんとかしなければまずい!!
「もうっ!いい加減にしてよ!」
「あん……」
強引に離れました。なんか色っぽい声を出す詩織。
やめてくれ、その切ない目線を僕に向けるのは。
まるで僕が悪者じゃないか。周りも責めるような視線を止めろ。
段々空気が悪くなってきた教室だったがドアが開く音で一掃された。
「はい、みなさん席に座って下さい。席順は黒板に書いてある通りです。」
そう言いながら壇上に上がる女性。
このクラスの担任の様だが結構若く見える。後、かなりの美人。
僕は密かにガッツポーズ、あくまで密かにだ。
露骨にすると詩織が怖い。
「え~っと、私がこのクラスの担任をする事になりました雛山といいます。みなさんよろしくお願いしますね。」
そういって微笑む先生。なんかのんびりした雰囲気の人だが僕的にはツボ。
周りの男達もにやにやしている。どうやら第一印象は最高のようだ。
「みなさん初対面同士の人達も多いと思いますのでぇ、自己紹介をみなさんにしてもらいますね。
それじゃあ出席番号の1番の人からお願いしますね」
1番の人が立ち上がり自己紹介を始める。
男だったのであまり興味が沸かなかった。
何人かの挨拶が終わり、次の人が立ち上がると女の子達が歓声をあげた。
「きゃあ~カッコいい!」
「うわ~モデルみたい……」
「ふ、僕の名前は伊集院レイ。女の子達は仲良くしてくれたまえ。男どもはどうでもいいよ。」
そういう伊集院とやらに女の子が更に歓声をあげる。
男達は黒くなっている。目とかオーラが怖い。
僕はというと何故かあまりムカつかなかった。
どうも彼を見ていると……違和感があった。
それが何なのかはわからないけど、ムカつくとかそういった感情は沸かなかった。
まあそれはどうでもいいのだが彼が庶民はどうたらと自己紹介なんだか喧嘩を売っているんだか
よくわからない挨拶をしている時に僕に目線があった瞬間、ビックリした様な表情をしたのが
すごく気になる。その後も僕の方をちらちらと何度も見てきたのは更に気になる。
何度も見てくる内に顔がうっすらと赤くなってるのは僕の気のせいじゃないと思う。
ふと詩織の方を見た。いや、見てしまった。
「………………」
すっごく怖かったです。
「主人公(ぬしびとこう)です。趣味特技共に特に無し。よろしくお願いします」
挨拶なんかどうでもいい。僕は適当に言ってさっさと座ろうとした。が………
「そこの席の女の子との関係は何ですか~?」
詩織の方を指しながら質問してきた奴のせいで簡単にいかなくなってしまった。
この男には見覚えがある。先生が来る前の教室で女の子にいろいろ聞きまわってた奴だ。
「んん、え~っと彼女とは家が隣同士の幼馴染で……」
なんと言うべきか困りつい詩織の方を見ると、彼女は何かを期待するような視線を僕に向けていた。
詩織……君の期待する答えはわかるけど僕にその気はないよ……
ついでに伊集院の方にも目を向けた。
何か僕を睨んでる。彼は詩織狙いなのかな?
「……それだけです、以上。」
結局僕は無難に答えそのまま座る。
もう、詩織の方は見ない。どんな表情しているかわかるから。
伊集院の方を見ると……ほっとしているようにも見える。
やはり彼は詩織狙いのようだ。
その後も自己紹介はどんどん進んでいく。
途中、少し可愛い子に僕は何度かにやけるがその度に寒気がするのですぐ正気に戻る。
原因は言わずもがな。
そうこうしている内に詩織の番がやってきた。
「藤崎詩織です。」
立ち上がり彼女が名前を告げると周りの雰囲気が変わった。
すべての視線は彼女に注がれ彼女はそれを堂々と受け止めている。
その優雅な立ち振る舞いは男女を問わず魅了する。
そう、これが藤崎詩織なのだ。圧倒的存在感とその美貌でみんなの注目を独り占めする。
この時ばかりは僕も詩織に釘付けだ。
それまでの自己紹介とは比べ物にならない程の注目を浴びながら自己紹介を続ける詩織。
「趣味はクラシック鑑賞です。クラブはバスケットボール部に入ろうと思っています。
みなさんよろしくお願いします。………後、最後にみなさんに言っておきたい事があります……」
あれ、何か空気が………
「先程、公君は私との仲をただの幼馴染と言ってましたが……違います」
そう言いながら僕の方に近づく詩織。
………嫌な……予感が……
「私と………公君は………恋人同士ですから(はーと)」
そのまま抱きついてくる詩織。しまった、こうくるとは!!
どっこーん
そんな感じ、今の教室の雰囲気は。
詩織の爆弾発言により教室は一気に騒がしくなった。
みんな僕を見てくる。うう、何とかしないと……
「ちょ、違うって、みんな俺の話を聞いて…むごっ!」
「ん………」
おおおおおおおおお!!!
弁解しようとする僕の口になんとキスをぶちかましてきた。
僕は手足をじたばたさせて抵抗するが身体能力のすべてが僕の上を行く詩織は離してくれない。
「んん、んん~~~!!」
誰か助けて~~!!
「ん、……うん、ん……」
騒がしかった教室の空気も、その妖しい雰囲気に呑まれて静まりかえっていく。
結局詩織は3分もの間僕の唇を奪い続け、僕の頭がとろけてきた所で開放してくれた。
そして、辺りを見渡しながら言い放つ。
「……というわけなんで、……公君共々よろしくお願いしますね」
その挨拶があまりにも色っぽくて…………クラスの男どもは完全に落ちた
女の子だってやばいのが何人かいるようだ。必然的に僕に対して……
神は無慈悲だ。あまりにも無慈悲だ。だって………
「ふふふ………」
………………………………………………
僕に、こんなに沢山の敵を作るのだから
ども、真空ワカメです。2話作りましたんで投稿です。
今回も詩織が絶好調です。正直キスさせるつもりはなかったのになあ。
キャラが勝手に暴走してしまいました(笑
公にはどんどん幸せな不幸を与えようと思っています。
さて、次はどうしようか……っとそれじゃあ今回はこんなもんで失礼します。でわ。
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