「ちょっ、オキヌちゃん?・・・学校じゃあ・・・・」
横島はポカンと口を開き、ストレートロングの髪がたなびくシルエットに問いかけた。
「人違いだよ横島君」
西条でした。
「ちょっと、令子ちゃんの顔を見に来ただけのつもりだったんだが・・・・どういうことだ?」
今や、はっきりと解るほど肩を震わせて静かに、極めて静かに問いかける。
「人口幽霊は挙動不審、押し入れば事務所は賊のあと・・・・そして」
西条が視線を滑らせた先、ドアから伸びる光の先端には黒い布、そして目の前の少年の手には・・・。
「ソレは?」
「これはっ、ちがっ『うむ、睡眠薬だ』」
そして静寂。
「「・・・・・・」」
『・・・・ふむ・・・何か?』
その声に弾かれる様にして懐の拳銃を抜き取り、鬼は吼えた。
「強姦の現行犯で逮捕だ横島――!!!手を挙げろ!!動いたら撃―――つ!!!!」
殺気に押されてサッと手を挙げた横島にニヤリとダーティーハリーの様な邪笑を浮かべ、彼は確認した。
「動いたな?警告はしたぞ?」
響く銃声は三発。転がるように避け『逃げろ』というバンダナの警告と共にシャッ、バタン、と人口幽霊が開いた窓に身を捨て「誤解やーーーー!!」という台詞を残して横島は遁走した。
「君には黙秘権がある!しかし、尊重するつもりはない!!」
窓から身を乗り出し、逃げる横島に叫びながら発砲する西条に人口幽霊は語りかけた。
『・・・・一応、合意の上です。・・・・その、きわめて強引でしたが』
「それがどうした?・・・ふっふっふっ横島君、キミはボクを本気で怒らせてしまったようだね・・・・許さん、許さんぞー!!」
カチリ、カチリと、とっくの昔に弾切れした拳銃の引き金を気の済むまで横島の去った方へ向け引いたあと、彼は携帯を取り出しこう告げた。
「日本支部か?僕だ、西条だ・・・・事件発生、場所は美神除霊事務所・・・・容疑?もちろん婦女暴『違います』チッ・・・オカルト犯罪防止法違反だ、恣意的に悪質かつ凶悪な霊障を発生させた馬鹿がいる、年の頃は高校生前後、外見的特長はTシャツ、ジーンズにデニムの上着・・・名前は横島忠夫・・GS登録されている・・・そうだ、顔か?よく聞け、アホ面に・・・そう・・・
アホ面に赤いバンダナだ!!
待ってろ横島君、いや、“被疑者”横島―!地獄の苦しみの中で殺してやるぞーーー!!!」
『・・・・悪質ですか・・・』
呟く人口幽霊を無視し、とどろく銃声の中ピクリとも動かずグースカいい笑顔で眠りこけていた裸の美神令子に沈痛な面持ちで西条は囁いた。
「令子ちゃん・・・すまない、変わり果てた姿になってしまって・・・・くっ、僕がもっと早く駆けつけていれば・・・」
『出て行ってください、セクハラです。それ以前に・・・貴方、住居不法侵入じゃあ・・・』
「また会おう、令子ちゃん。その時には必ず悪漢横島の首を君に捧げてみせる。ボクとキミとの約束だ。アディオス」
『・・・・・・・無視かよ・・・・』
事務所を後にし駆けつけたパトカーに乗り込んだ西条は誰に言うともない独り言を噛み潰した、曰く
「マンハント(人狩り)だ。」
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、くそっ、西条の奴・・・・・手を挙げなければ良かった」
『どちらにせよ撃ち殺す気、満々だったがな』
人影まばらな歩道を疾走する一人とヒトツ。
「どうする、バンダナ?」
・・・当初の予定通り妙神山へ、ついでに誤解を解いてもらえば・・・いや・・・・・
『おぬしが決めろ、これも修行だ、こんな場合どうする?』
・・・もう少しだけ・・・楽しんでもバチは当たるまい・・・
「・・・・バン・・・ダナ?」
『私はおぬしのなんだ?知恵袋か?』
「うん!」
『たわけ・・・我々はいま官憲に追われている。と、おもって間違いないだろう、どうする?』
促すように優しく尋ねる。
「誤解だーー!!わいはっ、わいはっ幸せになったンやーー!!公務員どもがーーー俺の幸せをーーーー!!」
『・・・しっかりしろ・・・ふむ、官憲の誤解か・・・ならばソレを解くよう動くか?官憲の上層部に顔の効く知人は?』
息を切らせながらない知恵を絞る。
「・・・・・?・・・・エミさん・・・警察の仕事してたな・・・毎回騒ぎになって・・・」
小首をかしげる横島は自信なさげに呟いた。
『よし、それでいいのだな?・・・・それにしても、いつまで走っておる』
「んっ?」という顔で立ち止まる横島。
『文珠だ、今ならほぼ無尽蔵に使える。そもそもおぬし、窓から飛び降りる必要なかっただろうが・・・・』
「・・・・・ああ!」
『目の前で窓が開いたから?ついつい飛び降りました?・・・・・たわけ、何処の自殺志願者だ。大体、着地の時は地面を『軟』化したというのに。目に見えるものに惑わされては(以下略)』
そしてその場から消失。『瞬』『間』『移』『動』という文珠を使って・・・。
―小笠原事務所―
「横島サン、どげんしたとですか?」
「『緊急事態だ、エミさん(殿)を頼む』」
突如出現した横島にタイガー寅吉は全く動じず尋ねた、曰く。
「慣れっこですケンノー」
『おぬし、横島・・・人として如何かと思うぞ・・・』
「エミさんは今、怪しげなサバトの・・・ゲフンゲフン・・・取り込み中ジャー、いくら横島サンの頼みとはいえ取り次げんですケンノー」
ズンと仁王立ちする2mを超える巨人、相対する横島の額でおもむろにバンダナは目を閉じ一筋のスリットになり、そして一枚のポラロイド写真をはき出す。
『(これを使え)』
「(ははん)なあタイガー・・・真理さん、可愛いよな?」
身構えるタイガーにかまわず、おもむろに言葉を重ねる横島。軽く腕を組み、悪役然と微笑を浮かべて・・・。
「なっ、なに「真理さん・・・可愛いよな!?」・・・・・あ、当たり前ジャー!!」
横島は見つめていた写真を持つ手首を返していった。
「そこで、こんなものを用意してみました。」
・・・盗撮は犯罪です・・・
「そ、そんなものでワッシは、ワッシは・・・・「わかってる、解ってるさタイガー、おまえは悪くない。」」
あわてず騒がず
「俺みたいな奴に、こんな写真持たせとくわけには・・・いかないよな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・
「許せタイガー、俺の幸せのためだ・・・・チョロイな。ところでこんな能力持ってたのか?バンダナ」
小笠原事務所、エミの呪いの部屋(はーと)と書かれたドアを目指しながら・・・
『言わなかったか?文珠には無限の可能性が「『盗』『撮』『写』『真』が?」・・・・(怒)』
そして、そこにたどり着いた。
あとがき
遅まきながら、修正し忘れてしまって申し訳なく思います。
なんか、言い分け過多な性格が出てますね、今までのあとがき。
今回はシンプルに
読んで下さってくれてありがとう、これからも頑張って逝きたいです。
レスがつく限り。
さて、レス返しです。
>古人様
ありがとうございます、嬉しいです。
続き書きますた。
お暇な時で結構ですのでよろしければ読んでやってください。
>レイトニングサン様
御指摘、ありがとうございます。
刺されちゃいそうなことしてくつもりです、はい。
予定として多分4人くらいでまとめようと思ってます、現状では。
>九尾様
・・・・ゴメンナサイ・・・横島の幸せ、長続きしなくて・・・
>片やマン様
女性じゃないです。
引っかかってくれたひとがいてよかった、と思ってしまったことをお詫びいたします。
ホントは、ぼんやりと平安直後ぐらいにしようと思ってたんですが・・・ストーリー構成上、破棄で。そのため、初めの方と微妙にずれが生じてくるかもなー、と怯えております。
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