その一つ。四角い舞台の上で対峙する2人の男達。彼らはGSのタマゴであり、そのタマゴの文字を取り払い、一人前のGSとなる為に今戦っている…
「がっはははは!お前サンの恥ずかしい秘密を暴露されたくなかったら、大人しく降参するんですノー!!」
「ぐっ…くぅぅっ…!」
………はずである。多分。
「早く降参せんと、まずは…そーですノー。最後におねしょをしたのは何歳の時かをここで発表…」
「ゴメンナサイ!ボクの負けです!降参しまっす!!」
…そのはずだ。うん。
え〜っと…
そうだ、こういう時は基本に戻ろう。
まずこれはGSこと、ゴーストスイーパーの資格試験の第2次試験。受験者同士で霊能バトルを行い2回勝ち進めば合格、と。
で…
「タイガー…君、魔理さんには絶対に来ないでくれって頼んだのは…このためか…?」
「ふふふ、勝てば官軍ですケェ……ジャが、くれぐれも魔理しゃんには…」
「ああ、解ってる。他の女性陣にも言わないさ……でも、なぁ…」
どーゆーわけか、あまりに勝てない虎男が非常手段に訴えたんだったな。うん。
「言わんでツカーさい。自分でもホントはわかっとるんですジャ…こんなのは卑怯でしかない、と…」
「解ってるんなら…」
「仕方ないジャーないですカー!?ワッシは…ワッシだって…」
何やら魂から叫びだす虎男。
「妙神山にまでパワーアップに行って、命がけで覚えたのがサイコメトリーだったのに、他にどう戦えと!?」
まぁ、つまりはそーゆー事だ。
虎男、本名タイガー寅吉。偽名くさいが本名。どっちが姓かも解らんが。
彼は精神感応という使い勝手のいい能力を持ち、2メートルはあろうかという恵まれた体躯と体格の持ち主で霊力も強く、普通ならとっくにGS免許を取得できている人材なのだ。
そう。普通なら。
が、彼には一つ致命的な欠点があったのだ。
運が、悪いのだ。
絶対に公平かつ他からの操作が不能ゆえに、運命そのままの結果が出ると言われるラプラスのダイスで2次試験の試合の組み合わせは決まるのだが…
何故だか。どーゆーわけだか彼の相手には毎回トップを争う強豪か、特殊能力持ち、もしくは相性の悪い相手が回ってくるのだ。
まるで、運命に嫌われているかのように……
今回、思い余って妙神山に2回ほど修行に出かけて、命がけで潜在能力を引き出したのだがその結果出てきたのがサイコメトリー。そしてその能力は…
「まぁ…サイコメトリーじゃ確かに戦闘の役には立ちませんけど…」
「だったら敵の弱みを握って、どうこうするしかないジャーないですカー!?卑怯と呼ばれよーと、ワッシはもー試験に落ちてエミさんにシバかれるのも、魔理さんに可哀想なモノを見る眼で見られるのもイヤなんジャー!!」
さっぱり戦闘の役には立たなかった。
サイコメトリーとは物品から、過去何があったのかを読み取る能力。対戦相手やその持ち物のプロフィールを詳しく知ってどうしようというのだ?
確かに相手の戦法や道具の能力を読めば、楽に戦えるだろう。しかし、それだけで勝てるような相手だったなら彼はここまで追い詰められていない。
そもそも、戦法や能力なら受験常連のタイガーの方は既に相手にバレバレであるし、それで互角だ。
「解りました!解りましたよ…もう何も言いませんから。だから…せめて次も勝って、今度こそ資格を取って下さい」
そんな哀れな虎男に同情したのだろう。今回、セコンドとして付いて来ていたパツキン半吸血鬼の友人は、敬虔なクリスチャンとして言いたい事、言っておくべき事を抑えて応援することにした。
「まかせてツカーサイ!今のワッシなら陰念にだって勝てますケン!!」
今まで勝てなかったんかい!
心優しい友人は、そのツッコミを喉のあたりで必死に食い止めた。
そして…後日。
「ねぇ、タイガー。アンタこないだの試験、霊能にカンケーない勝ち方したからやっぱ無効だって通知来てるんだけど…何やったワケェ!?オタク!!」
「そ、そんな…ああっ!?スイマセッン…スイマセンですジャー!!ワラ人形の呪いで折檻するのだけはやめてーー!!」
自らの雇い主からオシオキされる虎男の姿があったというが…
ま、自業自得だろう。多分。
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