物事というのはどうして造るより壊す方が簡単なんでしょうね?
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アシュタロスの乱から二年。
三界は歴史上時たま訪れる僅かばかりの平和を満喫していた。
デタント派はこの動きを良しとして、活発な運動を展開、
さらにデタントを推進すようとしていた。
魔界の反デタント派は反デタントの象徴でもあったアシュタロスの消失に伴う
政治的混乱から立ち直ることができておらず、組織的な活動はしばらく無理であった。
神界の反デタント派も、今は身を潜め機を伺うということで活発な運動を控えた。
これにより後数千年は黙示録の日が遠のいたと思われていたが、
神でも魔でもない存在。
すなわち人間が聖書級戦争の引き金を引いた。
だが、古来より結局のところ歴史を動かしてきたのは人であったことを考えるなら、
これもまた自然の摂理と言えるのかもしれない。
それと意図せずして火蓋を切ったのは北東アジアの雄、中国であった。
中国政府は国連に対して、世界を救った英雄である、さる文珠使いを本人の国籍に縛り、
その国のみでGS活動を行うのは国際社会に対する大いなる損失であり、国籍を無くし、
国際社会で活躍してもらうことが望ましいと提案。
ようは母国だけでなく世界で働いてもらおうと言う事であるが、それは真実ではない。
中国はその共産主義により公式に宗教関係のGSを認める、
もしくは育てることができないためGS協会との仲は良くない。
ゆえに活動するのはもぐりのGSばかり、もぐりのGSであるから質は良くない。
質が良い者は公式に活躍を認めてもらえる海外に出てしまうので国内には教育者が残らない。
それにより、経験豊富なGSがいなくなり、もぐりのGSしかいなくなる。
この悪循環により霊障は深刻な内政問題となりつつあった。
中国政府上層部は霊障問題に無策ではないことを、不満を持つ大衆に示し、
なおかつ宗教関係者でないGSを確保しなければいけなかった。
そのための国連に対する提案であった。
もっとも上層部は我らはこう言ったけど国連がダメと言ったということを
大衆に示せれば良かった、それにより大衆の感情の矛先は逸れるはずだからである。
国連はもとより、その文珠使いを擁する日本はこの提案を拒否。
もっとも彼らもこれが中国の嫌がらせに近いものであることは承知していた。
提案を拒否した場合中国の一般市民に恨まれるかもしれないが、
自国で選挙権を持っているわけではないので気にしなかった。
国連も中国もこれが茶番であることを認識していたが、
あるグループはその茶番を容認しなかった。
反政府宗教組織であったそのグループは、
今回の提案は見せ掛けであり、政府は国民にを裏切っていると主張。
独自のルートで集めたもぐりのGSを大衆への旗頭に、
やはり政府に不信感を抱いていた一部軍人を抱き込み地方で反乱を起こした。
世界にとって寝耳に水の出来事であったが、
所詮はユーラシア大陸の一国家の出来事、すぐに鎮圧され、
また何時もの日常になると誰もが考えていた。
しかしそれは、あるモノの介入により間違った認識となった。
あるモノは反乱起こした宗教組織の背後につき、
人民解放軍と互角、否、凌駕する力を組織に与えた。
あるモノの名は蚩尤(しゆう)。
古代中国において最高神、黄帝へ反逆を行った牛頭人身の魔神である。
蚩尤は自らの血族を組織へ貸し与え、霊的能力に劣る、人民解放軍を蹂躙した。
蚩尤としては混沌とした現状に乗じ、一掃された自らの勢力を地上に再び現すための行動であったのだが、
この蚩尤の行動を真似るものが多数現れたことにより、事態は複雑化した。
中東、アフリカ、南アメリカ、俗に言う第三世界において、
神の座から落とされた悪魔が神を名乗り降臨。
かつて自分を祀った部族の子孫の中で、主に、先進国や現在の政府へ不満を持つ一団へ対し力を貸し与えた。
これに対抗すかのように一部の能天使が地上に降臨し、やはり信奉者へ力を与えた。
力を得た両勢力の争いは激化し、先進国が介入を躊躇っている間に夥しい死者を出していた。
先進国が介入を躊躇ったのはこの争いが今までのような貧富の差の他に、
見て取れる神と悪魔の出現による、宗教戦争とかしていたことがある。
うかつに手を出せば、国内の宗教問題にも飛び火しかねなかった。
いや、既に、一部の国では宗教右翼とも呼べる存在が神の恩寵を知らしめるべきとしてその声色を高くしていた。
実際の冷戦のように、人が神と悪魔の代理戦争の当事者になろうとしている間、
神魔界の上層部では必死とも言える懸命さで事態の収集を図ろうとしていた。
魔界では毎日のように七魔王が会合を行い、神界では三大宗教のトップが頭を捻っていた。
戦っているのはあくまで両陣営に操られた人間であることが事態を難しくしていた。
だが、両陣営上層部の秘密会談で、一週間以内に神魔は人の争いから手を引くという約定が交わされた。
この際アルマゲドンは絶対回避するため、貸し与えた力を回収した後は全て人に任せることにしたのである。
しかしながらそれはいささか遅すぎた。
地球最大の国力を持つ国で、原理主義団体の意向を受けた男がトップになると、
彼らは堂々と神の錦のもとに武力介入を開始した。
それは欧州、北欧にも広がり、精神的柱であるヴァチカン、東方正教会の戦争回避の説得も、
目に見える天使の勅令には及ばず、現代に十字軍が復活した。
国内に一定のキリスト教信者を持たなかった日本は十字軍には参加しなかったが、
何時のまにか中国南部の大半を支配下に置いた蚩尤のグループが、
強力な中華思想を持つことが分かったため、緊張のレベルを高めていた。
そして地球全土で争いが起こり、人々がこれが第三次世界大戦であることを認識しだしたころ、
北極に悪徳の王にして七大罪、嫉妬の支配者、魔界海軍司令官、リヴァイアサンが顕現。
その行いがデタントに逆らうものであるとして南極に反デタント派の天使の一団が降臨。
両陣営の兵士が大西洋上で直接戦闘を開始した瞬間、破滅の扉が開かれた。
物事ちゅーのはどううして造るより壊す方が簡単なんやろね?
カフェシリーズとは関係ないですよ。
念のため。
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