東京の郊外に一軒の喫茶店がある。
急ぎの用がない人はそこに行ってみるといい。
ちょっと背の小さなマスターがおいしいコーヒーを入れてくれる。
カフェ
カララン
ドアに付けられたベルが鳴り来客を知らせる。
「いらっしゃいませ〜」
その音を捉えた小さな人影。
かつてHMX−12のナンバーを持っていた少女、
マルチは朗らかな声で出迎えた。
「やぁ、これはマルチさん」
「Rさん、お久しぶりです」
入ってきたのは黒い学ランを着込んだ、
ぼやっとした雰囲気の少年。
カウンター越しの席に案内し、マルチは内から対面する。
「あ、さんごさんもお久しぶりです」
そう言ってマルチはRが右手にはめている
少女を模した人形にも挨拶する。
手作りのようで、随分昔のものなのかあちらこちらにほつれた痕がある。
「お米は見つかりましたか?」
「ええ、東北の方で作ってる人が僅かに、ありがたいことです」
そう言って拝むようなポーズをするR。
何か米に思い入れでもあるらしい。
「それはよかったですね」
マルチはそれを自分のことのように喜び祝福する。
旧知の間柄らしい二人はそのまま世間話を続けていたのだが、
そこへ再びベルの音。
カララン
「マルチ・さん・おはよう・ございます」
「マリアさんおはようございます」
「おや、マリアさんではないですか」
「R・さん・も・おはよう・ございます」
「今日は・東地区・で・インスタント・コーヒー・見つかり・ました」
入ってきたのは黒い服に身を包んだ女性。
赤い髪に少々変わった形のカチューシャをつけている。
マリアと呼ばれたその女性は抱えていた袋をマルチに渡し、
変わりにマルチが持ってきたコードと自身から伸ばしたコードを繋げる。
「席を・お借り・します」
「はい、どうぞ」
そのままRの隣の席に座ると目を瞑り動きを止めた。
その間に何故か米をといでいたRも自身から伸ばしたコードと
何処から取り出したか不明な炊飯器を繋げる。
ぐつぐつ
米が炊ける音が喫茶店内に木霊する。
マリアとRは身じろぎせず、マルチはカップを磨く。
ぐつぐつ
第三者がいれば異様な空気を感じる空間でマルチは割と幸せだった。
(明日はセリオさん、ノエルさんに会えるといいな〜)
オチも何もかもなし。
通し番号を付けてない件に関してはまったくもってその通りということで、
一旦全作品を削除、誤字脱字、及び本編を修正し後日再投稿させていただきます。
感想はありがたく保存させていただいております。
では。
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