俺の価値はどれくらいだろう?
1万円?10万円?それとも1億円?
金額でははかれないかもしれない。はかれるのかもしれない。
誰かが言っていた。
「男の価値は給与の額だ」
ようするに俺の価値なんて低いということだ。
ずっと考え続ける。
このままの生活を続ける。それとも新しい自分を探しに行く。それとも・・・。
「できるだろうか?」
口に出してみる。
難しい。そんなことは当然だ。可能かそうでないかが大事なのだ。
一つ目の問題。実力不足。
二つ目の問題。仲間たちの問題。
三つ目の問題。それは許されることなのだろうか。
今の俺では文珠を2個しか同時に使えない。いやそれだって必ず成功するかというと怪しいものだ。それをおこなう為には少なくとも9個は同時に使わなければならない。
文珠は同時に使うことで劇的に応用が効くようになる。だがそれと比例して制御が難しくなる。三個すら使えたことがない俺が9個も使えるようになるだろうか。
そしてなにより勝てるかどうかだ。
アシュタロス。魔族の中でもその実力はトップクラス。まともにやったら数秒で俺は殺されるだろう。それだけの実力差がある。
それでも倒せる方法がある。たった一つだけの可能性。もちろん失敗すれば死ぬだろうがチャンスがあるだけましだ。本来なら人間にはチャンスすらないはずなのだから。
ゴーストスイーパーの資格をもちながらオカルトに詳しくはないが、そういう本来の流れの中で大きく逸脱するような行為、たとえばアシュタロスがでてきた瞬間殺されるなど、があった場合その時その世界と本来の世界の人物は、同じ人物でありながらつながりが絶たれる。いわゆる並行世界になるらしい。ようするにアシュタロスが死んだことでルシオラが死ななかった世界とルシオラが死んだ、今俺のいる世界とは別々に存在するようになるということだ。
そのつながりが絶たれた状態で果たして元の世界に戻れるのかどうか。
今の仲間たちと二度と会えない。それならあの時・・・。
それにたとえ無事に帰ってこられたとしても、俺に命を与えてくれたルシオラは生き返らない。それでもおこなうのは単に俺の罪悪感を慰める為でしかないのではないか。自己満足にすぎないのでは・・・。
そしてそれは自分の為に世界を滅ぼそうとしたアシュタロスの行為と同じことじゃないのか?
・・・それは許されるのだろうか。
事務所を辞めてからの俺はこうしてずっと考え続けた。ご飯を食べながら、学校でも、風呂でも、寝る前も、いや夢の中でも。
こんなに考え続けたのは初めてだ。
だけど何が正しいかなんてわからない。
いや正しい答えなんてあるのだろうか?
それでも俺は選ばなければならない。
誰の為?
美神さん?おキヌちゃん?シロ?タマモ?
違う!
全部自分の為だ。
このままではいられない。
それはすぐにわかった。
でもいられないからといって捨てられないものがある。
大切なものがある。
俺は・・・どうしたらいいのか。
あまりに考えすぎた為か頭が痛くなる。
家に転がっていた、正露丸を3、4粒適当に飲み込む。
正露丸って頭痛に効くっけ?
まあいい、そんなことどうでもいいさ。
薬を水ものまずに唾液で飲み込んだ後、年中ひきっぱなしの布団の上にあおむけに倒れこむ。
薄っぺらい布団はぼろぼろの俺を包み込んでくれる。
何か転がり落ちる音がした。
俺はそちらへ目を向けた。
・・・それは俺の霊力の塊である文珠だった。
そこに文字を入れた覚えはない。
だがなぜかその文珠には文字が浮かびあがっている。
その文字は「断」。
うじうじしている自分をまさか文珠が戒めるためとは思わない。
おそらく無意識のうちに自分で念を込めていた、それだけのことだろう。
だが、その文字を見た瞬間・・・俺はようやく今までの迷いを断ち切れたように思った。
誰の前にもたとえ見えなくともたくさんの道がある。
そして俺が選んだ道は・・・・・・。
「今日からこの学校で霊の・・・英語を教えることになりました。横島忠夫です。
まあ三学期の間だけだけどね」
頭からバケツをかぶったまま彼の自己紹介が終わった後、沈黙していた生徒たちの爆笑がおこった。
実際これほどしかけた罠にひっかかる先生など初めてだ。
ドアを開けた瞬間黒板消しがチョークの粉をまきちらし、続いて足元のロープにつまずき二回転三回転・・・。
「へぶっぎゃふんっ、のっぴょっぴょーん」
妙に余裕のある悲鳴をあげながら水の入ったバケツをかぶり最後に教卓にぶつかって止まった。
しばらく笑いがおこっていたが、彼がバケツをかぶったまま座りこみ、黙っているのを見て、きっと怒りのあまり声が出ない状態だと思い、一人ずつ笑うのをやめていき、結局教室中が沈黙してしまう。
教卓にはバケツをかぶったずぶぬれの男。生徒たちは緊張しながら沈黙している。
そんな中バケツをかぶったまま、はずんだ声で自己紹介を始められて緊張した分よけい大きな笑いがおきた。
そしてバケツ男、横島はバケツをとり笑顔を浮かべた。
「みんなよろしく!」
あとがき
まだまだ重いな〜。横島の独白がとことん重い。
ちなみにまだ題名には反映させていませんが、これ実はクロスオーバー作品だったりします。まあ今のところほぼGS美神だけなのでわからないと思いますが、誰か元ネタわかった人はおられるでしょうか?
次回予告
横島の苦しい思いはどこへと向かうのか?
なぜ彼は教師になったのか?
次回第一章、横島うはうはハーレムの巻〜
・・・をマテ!?
・・・なわけね〜
次回はすさまじく長いです。この話の三倍くらいあるかもしれません。でもどうしても分けることができなかったのでそのままアップさせてもらいます。なんで教師というように読まれた方は疑問というより不可解、はっきりいえばなんじゃこりゃと思われているでしょうが、それに対する解も次の話であらわれているはずです。完成はしているのであとは推敲しなおし、誤字チェックをしてからアップできると思います。
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