▽レス始▼レス末
「喪った体と得た体(GS)(GS)」ヴルド (2004.10.03 03:05)
空を見上げる。
この体に上も下も存在しないから、いつも俺は空を見れる。
その先にある月が白く輝いているのが見えた。
今日、やろう。そう決心し、その遠い世界に手を伸ばそうと思っても、俺にはもう手が無い。
彼女を生かす為に。

自分の体を文殊の形に凝縮・封印し、残りの全てを蛍に入れた時からそれらは無くなっていたから。

あの時、俺の頭にあったのは彼女が消えてしまう可能性を無くす事だけだった。
俺の所為で死んでしまった彼女に恨まれているのかもしれない。
彼女が言ったコトバも信じられず、俺はただ自暴自棄のまま小竜姫様とワルキューレの調査の結果も気にとめる事すらできずに決断してしまった。
それが多くの人の悲しみを造ると知っていたなら、俺は辞めていたのに……
それ以上にいい方法があったっていうのに……
彼女が守った世界をこんな風に人の感情の中で青色に見える悲しみに満たしたくないから。
彼女たちの存在が好きだから。
「あの時には戻れない……か」
いつになく、思考にあの時。過去を振り返る言葉が多いのに気付いて、俺はそう心の中で呟いた。
銀髪に赤いメッシュの入った少女。
シロがその呟きに気付かなくて良かった。
こんな事を呟いていたのを聞いたら、こいつは絶対に怒る。
ったく、俺、一応師匠なのになぁ……何で俺の方ばっか怒られるようになっちまったんだろ。体が無いからか?
一つ一つのコトバが嬉しくて、俺は顔があったならきっと笑顔になっていただろう。
でも、もうその表現は出来ないはず。けれど、できるようになるはず。
いや、その未来を作ってみせる。
そうして、体があった頃の感覚を思い出しながら蓄えていた霊力の一部を放出すると同時にそれを凝縮、複雑な魔方陣を使ってようやくできる魔術の技を応用して、文殊を短期間に高い霊力を持った状態で安定させると共に、思考によって印を刻む!!
「体」
そう色を変えていく文殊に刻むと後はその色をじっと見詰める。
赤。
青。
黄。
三原色を越えていき、複雑な色が作られ始める。
この文殊は文殊の中に入っている俺の霊力へ加速を促すただの促進剤に過ぎない。
ただ、その加速が頂点に達した時、俺はもう一度体を作り出す力を得れるはず!!
もう一度、失ってしまった構造を取り戻し、霊力を補う事で彼女がいない状態でも生きていける体を作る。そうして彼女がいなくても大丈夫な体を作ること、それが俺が体を捨てて、文殊へと変わった理由なのだ。
徐々に徐々に霊力が加速していき、それが真っ白になり、それが真っ黒になり
二つの色が重なり合わさろうとした瞬間!!
俺はその霊力を解放した。
それはどんどん人の形へと変わっていき、その霊力の塊の形を整えた後、自分の全ての情報が入った文殊をその中へと飛び込ませる。
皮膚が、肉が、神経が形成されていく最初にして最後だろう感覚を味わいながら匂い、音、そして余りにも薄い空気の味を知覚する。
そうして、俺は体を取り戻した。しっかりと凍えるような寒さを実感しながら。
「寒っ!!服!服!!」

いっつも思うんだが……俺って何かを決意しても、最後まで格好良く決まらないのは何故なんだろう……

「んっ、やっぱりこれだよな!」
事務所に通っていた頃ではいつも通りの、文殊へと変わった時からは懐かしかったそのジーンズやシャツを着て、落ち着いた後。
足音を忍ばせて、シロに近寄り、その頭を撫でる。
気持ちいい。
触感がいつのまにかしっかりと手入れされるようになった髪の艶を感じている。
「んっ……」
気持ち良さそうに顎を摺り寄せるシロ。だが、その希望に答えると気持ちよさがこいつをすぐに起こそうとするだろう。
「よっと」
そう思い、彼女の体を座っていた椅子に戻して辞めておいた。
正直、俺自身もかなり久しぶりに触れるシロの感覚をしっかりと味わいたかったりした。
「守ってくれてたんだよな……」
俺はまた月を見上げながら、時折シロと。
そして、奥に居る皆へ。そして、その中にいる愛しい彼女へと語りかけていく。
「守らなくちゃな…」
その覚悟の元はお礼と感謝。そして、嬉しいという感情。
「だから、今度は俺が」
久しぶりの悪霊の気配は独特で、すぐにわかってしまう。その無粋な気配へ体の方向を変え、以前より断然巡りの良くなったチャクラに霊力を注ぎ込んで霊破刀を作る。
「戦うから……」

彼は久しぶりに思う。
こんなにも体があるから感じれる事がある。
友達の、彼女たちの、人々のぬくもり。
風に吹かれ、重なった音をたてる葉っぱたちの合奏。
そして、人に害をなす・なさない妖怪の気配。

さて、彼、横島は何を得て、何を失ったのか。

それはまだわからない……。


意味不明?もしくは余りに意味深;;
あ、どうも。初めまして。
ヴルドというしばらく書く事から離れていた阿呆です;;
あまりにお目汚しな作品かもしれませんが、これはあの大戦の後、文殊へとその姿を変えた横島君の物語です。
久しぶりという事もあって、かなり腕が落ちているのですが、GSで思いついたネタをもう腕が落ちていようが、なんだろうがやりたい!!
そう押さえきれないくらいに創作意欲が湧いてしまったので、思い切って書かせていただきました。
これからよろしくお願いします。
ちなみにこの作品はちょちょいと続けるつもりなので、良ければ見てください。
受け、悪かったら消します(苦笑)
何と言うか完璧主義なところがあるので、では!失礼致しました。
ジャンルは未定です。あんまり激しくするつもりはないので;;

>NEXT


△記事頭
  1. 何か独特の雰囲気を感じますね。今後に期待します。

    追伸
    文殊×
    文珠○
    HN未定(2004.10.03 03:32)】
  2. 最後まで格好良く決まらないってとこがすごく横島らしくて速攻で好きになりました!
    横島が体がない状態だった間何があったか非常に興味深いです。横島特有の文珠を使っての解決策ってのも魅力的ですし(逆行ものより納得できそう)。
    受けが悪ければ消すというなら、俺は大絶賛します!ぜひ続きを!
    九尾(2004.10.03 09:22)】
  3.  文珠による自己のデータか及び完全保存ですか・・・・・
     もどったは良いけれど、『本当に自分であるか』の証明に苦しみそうですねぇ・・・・・実は自分はコピーなのではないか・・・・とか・・・
    D,(2004.10.03 17:21)】

▲記事頭


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