『………………………』
女性は少し虚ろな表情をしつつも鳥篭の中から出てきた。落下の衝撃で鍵が外れたのだ。
「横島さん!!横島さん!!?」
「うぅ………一瞬地獄に居る親父と出会ってしまった」
親父さんは又も妻の撲殺拳で死に掛けていた様子。
またも首に鈍い痛みを感じつつ、横島は身体を起こした。
そして、鳥篭から出てきた女性と目が合った。
『ラ…………リュ………デラ?』
女性の言葉は横島の耳には意味不明な言葉にしか聞き取れなかった。
外国語を聞いているような感覚に陥るが、外国の言葉でも無い。
どちらかというと……異世界。
その表現のほうがシックリ来た。
「が……外人さんでしょうか?」
横島の肩にしがみつきながらおキヌがオドオドしている。
とりあえず横島は笑顔を浮かべ。
「は、ハロー?」
外人を目の前にしたらまずは挨拶、横島は軽く手を振りながら笑う事しか出来なかった。
『?』
やはり通じていない。
だが横島は身振り手振りで話を始める。
「君も……ここに生贄で連れてこられたのかい?」
『?』
女性を指差したり、床を指差したりする横島を訝しげに女性は見つめていた。
普段ならばそれなりに煩悩が炸裂する横島なのだが……何故かそれらは反応しなかった。
何処か横島におキヌ同様、守ってあげたい……そんな印象を与えているのだ。
「ん〜〜〜」
何と言えば分かって貰えるのだろう?そう必死になって考える横島とおキヌ。
そんな二人を見つめ、女性は軽く首を傾げていた。
霧の城 第三話 ―影―
二人が考え込んでいる時、ゆっくりと何かが近寄ってきていた。
『っ!!』
「?」
言葉は分からないが、女性の小さい悲鳴が聞こえて来た。
驚いて顔を上げると……そこには大きな影が立っていた。
「なっ!?」
影の肩には女性が乗せられ、必死で逃げようとしていた。
しかしどんなに身体を動かそうとしても、影の太い腕が腰に巻きついているので逃げる事は出来なかった。
そしてゆっくりと泉のように湧き上がっている影の中へと入ろうとしていた。
「横島さん!!あの人が!!」
「おキヌちゃんは下がってて!!!」
慌てて手に霊気を溜めようとするのだが……栄光の手は出現しなかった。
「ちっ!!!」
武器である栄光の手がすぐに出ないのならば違うモノで代用するしか無く、横島は近くに落ちていた木材を手に取った。
先程鳥篭が落下した時に何処からか落ちてきたものだ。
「その人を放しやがれ!!!!」
思いっきり影の頭を殴りつけ、横島は女性の手を取った。
『ラ……レ!!!』
手を取る横島に女性は何か叫ぶ。その意味は分からなかったが……その怯えた表情から助けを求めていると判断した。
必死に影の中から出そうと足と腕に力を込める横島、だがその後ろには先程殴った影が立っていた。
「危ない!横島さん!!」
「うわっ!?」
影は女性を引っ張り出そうとしている横島の頭目掛けて手を伸ばしていた。
それに気がついたおキヌは持っていたお札を発動させた。
しかし、普段ならば札の中に吸引されるのだが……相手は全く平然としていた。
横島はどうにか首を逸らして攻撃を避けた。
「あ……あれ?」
「もしかして……そいつ、霊じゃない!?」
どうにか影から女性を出す事に成功した横島は木材を構え、影を睨み付けた。
対峙している影からは霊気を何も感じない。
「………どうしよう……」
何故か今栄光の手を発動させる事が出来ない。
こんな状態で訳の分からない相手と戦うのは嫌だった。
しかし……女性をこのままにしておく事も出来ない。
「うらぁ!!!」
影の動きが鈍いので横島の攻撃は簡単に当たった。
数回程木材が当たった影は後ろへと倒れ、そのままゆっくりと……空気に溶けていった。
ようやく目の前から危険が去った気がした横島はその場に座り込んだ。
腰が抜けたと言っても良いだろう。
「何なんだ……?ここは……」
「大丈夫ですか!?横島さん!!!」
『リュ……デワ?』
女性二人が近づいてきて横島を不安げに見つめていた。
全身に震えが走ったが……だが横島は懸命に笑顔を浮かべた。
「へへっ……平気だよ」
必死に隠そうとする笑顔を見た二人は小さく笑顔を返してくれる。
女性の方はまだ曖昧で分からないがおキヌには横島の考えている事が手に取るように分かっていた。
「とにかく……前に進みましょう?」
「……だな、それしか無いし」
『ミュ……』
まだ軽く震えている足で必死に立ち上がり、横島は女性の方に視線を向けた。
言葉が通じていないのでただ女性は戸惑いの表情を向けている。
「えっと……」
木材を持っていない方の手を伸ばす。
『?』
「ここは危ないし……君も一緒に行こう?」
差し出された手をじっと見つめ、女性は沈黙していた。
凝視される手。
「……あう」
元々人にジッと凝視される事が苦手な横島は何か悪い事をしている様な錯覚に陥っていた。
『………ラ…』
その後、ゆっくりと女性は横島の手を取った。
小さな笑顔を浮かべつつ。
「むぅ」
おキヌは小さく唸り、横島の肩に手を置いた。
「けど……一体どうするかなぁ……?」
手を軽く引きつつ横島は石造のドアの前に立った。
先程懸命に開けようとしたのだが、全く開かなかったドア。
一体どうすれば開くのだろうか?
思案する二人。
『ヨラ……シュ?』
「ん?」
女性が首を傾げて問いかけてくる。
言葉が通じないので横島はドアを指差す。
「これ、開かなくて困ってるの」
まだ持っている木材で石造を軽く叩いた。
『マ、シ……』
一同が石造を見ているので女性が何気なく石造へと手を伸ばした。
その瞬間、石造と女性が眩い閃光を放った。
反射的に手を引っ込めるが、閃光は止まらない。
「「っ!!!?」」
『ラッ!!?』
驚く一同、女性も目をパチクリさせている。
眩い閃光が収まってから数秒、目の前の石造はゆっくりと横へと移動を始めた。
「えっ!!?」
今まで開かなかったドアは……簡単に口を開けたのだった。
「…………何をしたんだ??」
『??』
女性も自分の両手を見つめたり横島を見たりしていた。
自分でも分かっていないのだろう。
「けど、これで先に進めますね!!」
「あっ…そういやそうだね!!んじゃ先に行こうか!!」
難しい事は分からない、だが今道が開けたのは間違いない。
横島はまだ戸惑っている女性に声をかけ、歩き出した。
手は……離されていた。
それを女性は残念そうにしつつも横島の後を追いかけていった。
誰も居なくなった部屋。
そこには大きな鳥篭しか残されていなかった…………
久しぶりな感じで……もう忘れられているかもしれませんね。
途中でPCが壊れたりしたりしてましたから……
たった一人でも待っていて下さったらありがたくて涙が出そうになります。
最近ブラックおキヌばかり見ているのに作品中は何処までも白いおキヌちゃん……
少しは面白くなる様に頑張ります!!
D様>ビームサーベルは手を繋いでいないと絶妙に使いにくいアイテムな気がします。(先日二度目クリアをした人)
個人的には一回目のアイテムの方が好きです。(いかにも攻撃力高そうで)
武者丸様>もしかしたら式神を持っている子かもしれませんがね。(黒髪つながりで)
ここの横島はおキヌちゃんから分かる様にかなり前で情けなさが前に出されてる時代なので……結構書きにくいです。
なのでそれっぽさが少しでも出せたら嬉しいです!
こ……今回もそれっぽさが出ていれば嬉しいですが……どうでしょう?
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