「クリスマスパーティー?」
「はい。 事務所でやろうって事になったんです。」
事務所からの帰り道に、俺は唯ちゃんからクリスマスの事について聞いていた。
「私、くりすますって初めてだから楽しみです♪」
「私は初めてじゃないけど、何度やっててもやっぱり楽しみですね。」
唯ちゃんも、おキヌちゃんも結構はしゃいでいるようだ。
かくいう俺も、結構楽しみである。
「私達以外では、冥子さんを呼ぶ事になっています。 でも、六道家でのパーティーに少し出た後だから、ちょっと遅くなるみたいです。」
その言葉は少し意外だったが、考えてみたら唯ちゃんは六道女学園で冥子ちゃんと交流があって、結構仲が良いらしいからな。
呼んでてもおかしくないか。
「でも、自分の家のパーティーを途中で抜け出していいのかな?」
「冥子さんは良いって言ってましたよ。 それに、理事長も、「私も唯ちゃん達のパーティーに行きたい〜。 横島君って子に会ってみたい〜。」って言ってましたよ。」
あの人なら、平気でパーティーをすっぽかしてこっちに来そうだな。
俺は、記憶の中にある冥子ちゃんのお母さんについて思い出して、そう思った。
・・・・・・・本当に来るんじゃないか?
「唯さんと私で、腕によりをかけて美味しいものを作りますからねー。」
「おっ。 そりゃあ、楽しみだな。」
その後もクリスマスの事について、なんやかんやと話しながら家まで帰ってドアを開けると、そこには、
「あっ、横島さん。 お帰りなのねー。 ・・・・・・・って、何やってんのー?」
などと、ほざきやがるヒャクメが居た。
セリフの後半の疑問は、俺が豪快に手無しの前受身をかました事に対してだろう。
俺は、とりあえず起きあがって、目の前のバカたれに文句を言う事にした。
「何やってんだ、は俺のセリフだ! なぜにおのれは、こんなとこでくつ「忠夫さん。 誰ですか、この方は?」・・あう。」
やっぱ、こうなるのか。
こうなったら、おキヌちゃんに望みを・・・って、おキヌちゃん、なぜに君までそんな冷たい目を!
四面楚歌か? 四面楚歌なのか? 四面楚歌なんだよ、ちきしょー!
「くすくす。 あいかわらず、もてもてなのねー、横島さんは。」
「だー! 笑ってねーで、助けろ!!」
自分が諸悪の根源だという事がわかってんのか、このバカは。
「「仲が良いんですね、忠夫(横島)さん。」」
わお、見事にはもってますよ、二人とも。
もしかしなくても、絶体絶命ですか?
「神様、助けてー!」
「神様ならここにいるのねー。」
「うるせえ! てめえは種族:神様、じゃなくて、種族:ヒャクメ、だろが!!」
「ひどいのねー。 私とのことは遊びだったのねー。 よよよよよ。」
「ちょっと待てーーー!! なんでそうなる! いやがらせか、いやがらせだな、いやがらせなんだなーー!!」
突如始まった俺達の漫才もどきに、困惑した様子の二人はこう聞いてきた。
「えーっと、結局お二人はどういうご関係なんですか?」
「ああ、それはね「横島さんの、五番目の恋人よねー」・・って、おい! ちょっ・グハッ」
いきなり変な事をほざきやがったヒャクメに反論する前に、俺の意識は刈り取られていた。
・・・・・後で覚えとけよ、ヒャクメ。
* * * * * *
その後にもいろいろあったが、なんとか二人を説得して、ヒャクメと二人で話す事になった。
「で、結局何しに来たんだ、お前は?」
「怒っちゃいやなのねー、横島さん。 ちゃんと頼まれてた事をやってきたんだから。」
「わかったよ。 で、どうだったんだ?」
ヒャクメの言葉を聞いて、とりあえずさっきの事は忘れることにした俺は、ヒャクメからの調査結果を聞くことにした。
「まず、シロちゃんとタマモちゃんのことなんだけど。 やっぱり、私達と一緒にこの世界に来ているようなのね。」
「だったら、なんでまだこっちに来ないんだ? あいつらなら、なにがあってもとっととこっちに来てそうだと思うんだが。」
「それは、シロちゃんはまだ子供の体だから、いきなりいろんな情報が入ったことで、知恵熱のような状態になってるのね。 そんでもって、タマモちゃんの方はまだ霊力がたりないから、殺生石から出て来れないだけなのね。」
「そっか、じゃあ心配はいらないんだな。」
だったら、あいつらがいつ来てもいいように近くの部屋を取っとくか。
このマンションはまだ新築だと言うだけあって、まだ結構の空き部屋があるけど、いつ部屋が埋まるかわかんねーもんな。
それに、来た後に部屋を探そうとしたら、一緒に住むからいい、とか言いそうだもんな。
「パピリオの方はやっぱわかんねーか?」
「そーねー。 やっぱり、今の時期ではまだ生まれてすらいないから、確かめようがないのね。」
あいつは俺にとっては、ルシオラの妹という事無しでも、実の妹のようなもんだからな。
無事で居て欲しい。
「まだ駄目とか決まったわけじゃないから、落ちこんじゃ駄目なのねー。」
「ん、ああ、わりいな。 大丈夫だ、可能性があるうちはそんなに沈み込むつもりはねーよ。」
そう、沈み込むにはまだ早い。
・・・・・・・・とりあえず、目の前の愚か者に、制裁を加えねばならんしな。
「さて、話しが終わった所で、・・・ヒャクメ。 弁解があるなら聞くが?」
「弁解って何のことなのねー?」
「あの、五番目の恋人ってとこだ!! おかげで滅茶苦茶怖かったんだぞ!」
なにをスットボケてくれてやがるんだ、こいつは!
「だって、一番はルシオラさんで、二番はおキヌちゃん、三番は小竜姫で、四番はタマモちゃん。 やっぱり五番目なのねー。」
「・・・はい?」
「横島さんは、来るものは拒まないって言ってたのね。 だったら、私もOKなのね。」
「ち、ちょっと待て。 つーことは、おま・ングッ!」
突然変な事を言い出したヒャクメに詰め寄ろうとしたら、いきなり口をふさがれた・・・もち、唇で。
「・・・ぷはっ。 正解♪ 私は横島さんが大好きってことなのね。」
いきなり、ディープな接吻をかましてくれたヒャクメは、そう言ってにっこりと笑った。
「・・・・・・・・・・え。」
かなり呆然としていた俺だったが、なんとか正気に返れた。
唇に残っている感触が、さっきの事が幻覚やらの類では無い事を主張する。
「は、はははははは。 ま、まさかな。 じ、冗談だよな。」
「冗談なんてひどいのね〜。 人の一世一代の告白を〜。」
冗談みたいな声の響きだが、目の前のヒャクメはマジみたいだった。
「な、なぜに?」
「ん〜。 わかんないのね。 いつのまにか、ふとそう思うようになってたのね。」
「微妙に答えになってねーぞ、それ。」
「理由なんて無いってのが答えってことなのね。 それより、横島さんの答えは?」
そう言って、ヒャクメは下から覗きこむような上目使いをしてきた。
こいつ、微妙に萌える仕草をしてくれるぜ。
「お前、自分で言ったじゃねーか、俺が来るものは拒まないって言ったって。 お前がマジで俺を好きだって言ってくれるなら、俺はお前を拒む事なんてしない。 それに、元々お前は俺にとっては、絶対に守ると誓った大切な人達の一人なんだから、拒むなんて選択肢はねーよ。」
俺は、自分の正直な気持ちを伝えた。
友達付き合いの延長から付き合い始めるってのは、こんな感じなんだろうな。
「ありがとう、嬉しいのねー。」
ヒャクメは俺の答えを聞いて、本当に嬉しそうにそう言った。
その無邪気と言っても良い笑顔を見て、俺も笑顔になっていたが、次の瞬間、
「じゃあ、次は、唯ちゃんを受け入れないとねー。」
などと言って投下された爆弾によって、それをぶち壊してくれやがった。
「・・・・ちょっと待て。 なぜにそうなる。」
「だって、あの娘も横島さんが好きでしょ。 あんなにわかりやすいのに、気が付いてないなんて言わせないのね。」
「いや、だって、あの娘はこの世界の俺だろ。 だったら、遺伝子とかの問題があるだろ。 女であること以外は、ほぼ100パー「ほぼ0%なのね。」・・・へ?」
今、なんつったんだ、こいつ。
「あの娘と横島さんの遺伝子的な一致は、ほぼ0%。 なんの問題もないのね。 あとは、横島さんとあの娘の気持ちの問題なのね。」
俺と唯ちゃんの遺伝子的な一致が無い?
唯ちゃんは、この世界の俺じゃなかったのか?
っつーか、何時の間にそんなことを調べよったんだ、こいつは?
そんな俺を尻目に、ヒャクメは立ちあがって、ベランダのほうへ行った。
「そろそろ、あの二人が痺れを切らしそうだから、帰るのね。 横島さんがどういう選択をするのか、しっかり見守っておくから、がんばってねーーー♪」
そう言って、ヒャクメは帰っていった。
思いっきり引っ掻き回してくれやがったな、あいつ。
選択か・・・。
まっ、答えはきまってるわな。
俺らしい選択をするさ。
* * * * * *
クリスマス当日
俺は、弾劾絶壁の谷の上にある小屋の前に居た
あの日から、皆へのプレゼントの用意をして、最後におキヌちゃんのプレゼントの用意ってことだ。
前より時給は格段に上がっているが、色々使ったりもしているので流石に、ん百万なんて金は用意できない、つーことで、前と同じように織姫の所に来たのだ。
ま、文珠が有るから、楽なもんだ。
「さて、そんなに長くおキヌちゃんと離れられないから、とっとと貰って帰るか。」
文珠を使えばどうとでもなるが、おキヌちゃんへの影響を考えたら、あんま使いたくないからな。
「すいませーん、厄珍の使いのもんでーす。品物を取りに来ました。」
その声に反応したようで、小屋の小窓から、目的の品の入った包みが出された。
それを受け取ろうとしたその時、いきなり小屋のドアが吹っ飛んだ。
「ああ、すべって転んでしまった。 はっ、しかも顔を見られてしまった。 これでもう役目が続けられなくなってしまった。 とゆー訳で、今宵はそなたとバーニングじゃな。」
俺は目の前の光景を否定したかった、夢だと思いたかった。
でも現実はいつも厳しく、目の前の悪夢は消える事など無い。
そして俺は叫ぶ。
「織姫は織姫でも、テメーは七夕の織姫だろ−が!!!」
「なぜおまえがそれを知っている!? まあそれは良い。 同じ織姫の名を持つもの、たまには立場を入れ替えてみようと言うわけだ。 神界の最高指導者に懇願して、了承も取ってある。 さあ、熱い一夜を過ごそうぞ、ダーリン!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キーやん、あんたもこいつが怖かったんだな。
でも、だからと言ってなんて事をしてくれやがんだよ、あんたは。
よりにもよって、こんなタイミングでかよ。
そんな事を考えている俺の手の中で、[滅/殺]と文字が浮かんだ文珠が輝いていた。
唯SIDE
忠夫さんが、ちょっと出かけてくると言って出ていってから一時間半が過ぎた。
もうパーティーの準備はできているのに、まだ帰って来ていない。
「遅いですね、横島さん。」
おキヌちゃんは、この日のために一生懸命に編んでいたマフラーを、大事そうに抱えながらそう言った。
かくいう私も、忠夫さんのために手袋を編んである。
「大丈夫よ。 彼がどうかなるような事態なんて、そう滅多に起こる訳無いんだから。 それに、あとちょっとしたら、おキヌちゃんは彼に引っ張られて行くんだから、そうしたら連れてくれば良いじゃない。」
美神さんはそう言うけど、やっぱり心配だ。
「私、少し近くを捜して来ます。」
「あっ、私も行きます。」
私とおキヌちゃんは、忠夫さんを捜しに行こうとドアに向かった。
しかし、私たちが外に出る前に、外からドアを開けられた。
そこには、
「あ、ただいま。」
なぜか、服がぼろぼろになっている忠夫さんが居た。
「た、忠夫さん。 大丈夫なんですか。」
「ん? ああ、大丈夫だよ。 服はぼろぼろだけど、怪我は無いから。」
「でも、どうしてそんな風になったんですか?」
「ああ、それはね。 ちょっとこれを取りに行ってたからだよ。」
忠夫さんはそう言うと、おキヌちゃんに持っていた包みを渡した。
おキヌちゃんがそれを開けると、中には洋服が入っていた。
「それは織姫って人が作った服でね。 幽霊でも着れる、特殊な服なんだ。」
「ええ、そんな物があったんですか!? うわー、嬉しいです。 ありがとうございます、横島さん!!」
本当に嬉しそうだな、おキヌちゃん。
あんなに一生懸命に取ってきてくれた物を貰えるんだもん、嬉しくないはずないよね。
ちょっとうらやましいな。
「じゃあ、パーティーを始めましょうか。」
このまま嬉しそうなおキヌちゃんを見ていたら、本気で嫉妬してしまいそうだった私は、そう言って場を流そうとした。
すると、
「ああ、こっちは唯ちゃんへのプレゼントね。」
と言って、何かのチケットを私に差し出した。
「これ、結構おすすめな映画なんだ。 明日、一緒に行こうね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
忠夫さんの言葉に、私は一瞬呆然としてしまった。
えと、えと、えと、これってもしかして、デデデデデ、デ、デ、デートのお誘い?
「・・・・・あ、あの、忠夫さん。」
「ん、ああ。 それから、夕食にレストランの予約もしてあるから、用意しなくてもいいよ。」
れ、レストラン。
これは、もう確実にデートのお誘いなんですよね!?
ゆ、ゆゆゆゆゆっゆっ夢じゃないですよね!?
「どうしたの、唯ちゃん? ボケっとしちゃ ムギュッ ・・・あの、痛いんですけど。」
「痛いですか? じゃあ、これは夢じゃないんですね?」
「・・・いや、そういうのって、普通自分の頬を摘むんじゃないの。」
「ああ、そうでした、うっかりしてました。 それでは ムギュッ ・・・痛いです。」
ということは、これは夢じゃない。
忠夫さんが、本当にデートに誘ってくれているんだ。
「あの〜、唯ちゃん。 どうするか返事が欲しいかな〜って思うんですけど、ど「ふ、ふ、ふ、ふえええええええええええええええええええええええええええええええええん。」 ってなぜに泣きますかね、唯ちゃん!」
「あーーーーーーー! 横島さんが、唯さんを泣かせてるーーーーーーーー!!」
「あんた、今度は何やったのよ。 とっとと謝っちゃいなさい。」
「え〜っと、なんかわかんないけど、俺が何か悪い事やったんなら謝っから。 泣き止んでくんないかな〜。」
忠夫さんが、何故か謝ってきた。
別に忠夫さんが悪い事をやったから泣いてるんじゃないのに、とっても嬉しいから泣いてるのに、なんでわかってくれないんだろう。
「違いますよ〜〜〜。 とっても嬉しいんですよ、涙が出るくらい嬉しいんですよ〜〜〜〜。 なんでわかんないんですか〜〜〜〜〜、忠夫さんの鈍感、ニブチン、朴念仁! うええええええええええええええええええええええええええええん!」
ポカ ポカ ポカ ポカ ポカ ポカ ポカ ポカ
「いたっ、ちょっ、痛いって、唯ちゃん! つ〜か、なんで俺は叩かれてるんですか〜〜〜!!」
「うえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!」
「・・・・・・・・・・・・・そーいう事ね。 はぁ、おキヌちゃん、あっち行ってましょ。」
「でも、良いんですか? ほっといて。」
「大丈夫、そのうち収まるわよ。 今は、ほっといた方がいいのよ。」
視界の隅に、美神さんとおキヌちゃんがどっかに行くのが見えた。
けど、まだ泣き足りないんで、もうちょっとこのままでいることにした。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」
「なぜだ、なぜこんな状況になるんだ!? 誰かたしけて、ヘルプミーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「びえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええん!」
忠夫さんをポカポカ叩きながら泣きつつ、私の頭の中の冷静な部分は、明日何着て行こうかなって考えていた。
後書き
ついに、ついに、ついについについについに、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・改丁版しゅーーーりょーーーーーーーーー!!!!
さあ、次回からは完全新作、やってやるぜ!!!
あ、その前に、館と竜を出すんで、11話は少し待ってください。
では次は『館いじめ』にて。
ばけらった♪
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