人々はその城を『霧の城』と呼ぶ。
その城には古くから何者かが住みつき、人間を拒絶し続ける。
だが、数年に一度だけ人間を招き入れる。
その日とは……『生贄』を差し出す日。
-GS+ICO 第一話 生贄-
美神除霊事務所、本日の仕事はある城に住み着き……生贄を要求する存在を退治する事だった。
だが、美神の目的はその近くにある美味しい地酒だった……(ハッキリ言って除霊はついで)
「ギャラ安いしねぇ……」
車を運転しつつ、美神はそう小さく呟いた。
依頼人の話ではその城は普段は霧に閉ざされ、見えないのだが……数年に一度姿を現す事がある。
その城の出現と同時に辺りに住まう者達は生贄を差し出す。
「ふーん?けど何で生贄を?」
「はい……私の曾爺さんの代の記録を見ますと……城から真っ黒な影がやってきまして、生贄を出さないと天変地異を起こすと……」
依頼人はかなりの年寄りで、入れ歯が合っていないのか。少し喋り難そうだった。
この年寄りの曾爺さんの代、それはかなり昔の頃なのだろう。
話を聞いた美神は不思議そうな表情を浮かべた。
「どうしたんですか?」
大量の荷物を部屋に下ろしつつ横島が首を傾げる。
隣でふよふよ浮いているおキヌも何処か不思議そうな表情。
「変なのよ、その城を前もって見て来たんだけど……霊気を感じなかったのよ」
「私も……何も感じません」
「はぁ」
横島はとりあえず返事を返したが、あまり理解はしていなかった。
「それに……数年に一度とはいえ長い間生贄を要求してるってのに、何で今までこの城の事がGS達に知られていないのか……それも気になるわね」
依頼人の方を美神は横目で見つめた。依頼人は不安げな表情を浮かべるだけ。
長い間霊的存在が住む場所、そこの情報はGS達に耳に入りやすい。
だが……美神はこの依頼が来るまでこの城の存在を知らなかったのだ。
「それは…他言無用と…されていたし……ワシの孫が……今年の生贄に選ばれたからじゃよ」
「……まぁいいわ、ギャラを貰った以上しっかりやるわ」
そう言って美神は不適に微笑んだ。
「それで、一体どうするんですか?」
美神の浮かべる不適な笑みを見つめ、横島はかなり嫌な予感がしていた。
結構この予感は命中するのだ。
「えぇ……とりあえず、その城の中に入ってみないとね」
そう言いつつ、美神は横島へ札を一枚渡した。
「……」
「でね?あの依頼人の孫が……アンタと同じ位の身長でー」
もう一枚札を渡し、美神はニッコリと微笑んだ。
今まで、何度横島はこの笑顔を見て地獄を見ただろうか?
「あの……まさか……!!?」
「アンタがあの城の中に行きなさい?」
カビ臭い所とキツイ事はアンタが担当よ。
横島、生贄決定。
「いやー!!そんな殺生なぁ!!」
「み、美神さん!?横島さん一人って!!」
涙ながらに叫ぶ横島、慌てふためくおキヌ。だが美神は全く取りあわない。
「だって、あの城からは全然霊気を感じないんだもの。行くだけ無駄じゃないの?」
「け、けど、さっきあの人にはしっかりやるって!!」
「後で水晶玉で見てあげるし、このトランシーバーも貸してあげる。何かあったら連絡しなさい?
それにアンタも一応はGS見習いになったんだし」
そう言って美神は横島の腹へと思いっきり拳を向けた。
「ぐっ!?」
「生贄になりなさいなv」
そして世界は真っ暗になった。
「み、美神さん!!横島さんがー!」
おキヌは気を失った横島から魂が抜け出そうになっているのを見て悲鳴を上げた。
「平気よ、どうせすぐに復活するんだし。それまでに城の中に入れちゃえばOKv
もしも出てこれたら何も無し!で良いじゃない」
既に美神の視点は地酒へと向かってる。
「美神さんの馬鹿ー!!私も憑いて行きます!!」
「好きになさいな」
そう答え、美神は部屋を出て行ってしまった。
その場に残されたのは……魂が半分抜け出ている横島と、泣いているおキヌだった。
それから数分後、男達が気を失っている横島を城へと運び始めた。
その隣には……おキヌが。
こうして……横島は生贄として城へと向かわされてしまっていた。
「ぷびゃー!!やっぱりお酒が美味しいわね!!」
始めまして!LUNAと申します。
今回は何となく思いついた話を書いてみようと思いまして、投稿しました。
これからよろしくお付き合いお願い致します!
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