「愛子ちゃん、さよならー」
「さよならー」
クラスメートは全員教室から出ていった。
ここに居るのは私だけ。
17時。
スピーカーから流れる、ドボルザークの曲。
この曲を聴く度に淋しい気持になるのは私だけだろうか?。
先生も生徒もいない学校に、私は独りきり。
机の中で青春してた頃の私は、「独りぼっち」を知らなかった。
登校も下校もない、無限ループのような学園生活を謳歌していた。
紛い物の青春である事に薄々気付いてはいたが、本物は高嶺の花と諦めていた。
今ここにある青春は本物。だからこそ、つかの間の独りぼっちを甘んじて受ける事が出来る。
それでも、やはり独りぼっちは淋しい。
「あ・い・こ・ちゃ〜ん♪」
「な、何かなぁ……その邪悪な笑顔は」
「じゃじゃ〜ん」
「キャッ!?」
「きゃはははは。愛子ちゃんたら、本当に純情なんだからぁ」
「か、からかわないでよぅ…」
女の子向けのえっちぃな雑誌を見せ、私の反応を楽しむクラスメート達。
このクラスの一員となってから今時の女の子らしい青春を謳歌するようになった私だけど、Y談だけはダメ。どうしても、羞恥心が先に立ってしまう。
これが世代のギャップなのだろうか? そう思うと、気分は少しブルーになる。
「という訳で、大げさに驚いて私達を楽しませてくれた愛子嬢にこれを進呈〜☆」
「私、白ポストじゃないんだけどなぁ…」
「いいからいいから。これさえ読めば、意中の彼もイチコロよん♪」
「『意中の彼』って、一体誰の事よ」
「言って欲しい? 私の口から」
「……遠慮します」
言うまでもない事だけど、羞恥心と好奇心は次元の違う問題。
顔は真っ赤だが、耳だけは正直だったりする。
友達もそれに気付いているから、何度でも同じ事を繰り返す。
かくして、私の本体の中には『学校では教えてくれない保健体育』オンリーの書架が出来上がる。まるで、横島君の部屋のように。
パラッ
放課後。誰もいなくなった教室で、私は戦利品の雑誌を読み耽る。
パラッ
読み終わった雑誌を私の所に持って来るのは女の子だけではない。
パラッ
男子が持って来るのは専らマンガ雑誌。
パラッ
捨てるのは勿体無いが持ち帰るのは面倒、という理由で私に預けるんだけど……
パラッ
どの雑誌にも必ず、えっちぃなマンガが載っている。ある意味これもまた青春。
パラッ
あっ、これちょっと凄いかな……。
パラッ
………。
パラッ
……。
パラッ
…。
「もう、誰も来ないわよね…」
『家路』が聞こえなくなると、私は本体を横島君の机の右隣へと運び、ぴたりと密着させる。傍目には単に机をくっ付けているだけにしか見えないたわいのない行為だけど、これがある種の見立てである事は、私が机妖怪である事を抜きにしても容易に理解し得るだろう。
私は横島君の机の前方に立つと、両手をその上に乗せ身体を支えながら、
右脚を上げ、
彼の机を半分跨ぐような格好で、
大事な部分を縁に擦り付ける。
スッ、スッ、スッ…
「あ……あっ………あっ」
彼に大事な所を弄られるのを想像しながら、ただひたすらそこを擦り続ける。
もはや日課となってしまった淫らな行為。次第に下着越しに淫液が分泌される。
当然の事ながら、液は彼の机の上にも溢れる。独特の匂いが立ち込める。
でも、事が終っても私はそれを拭き取らず、自然乾燥のままに任せる。
所謂マーキング。彼はこの事実を知らない。
きっかけは雑誌の体験記事。学校の備品で自慰を繰り返す内気な女の子の話。
興味本位で試した所、記事の彼女と同様すっかり嵌ってしまった。
ちなみにその彼女は、彼とするようになってからは1度もしていないそうだ。
出来れば私も彼女のようなエンドを迎えたい所だけど、それは期待薄。
だって、彼は……
多分、私を異性とは認識していないから。
じわぁ…
下着がかなり湿ってきた。
私は彼の机で慰めるのを止め、脚を元に戻す。
そして、スカートの中に両手を入れ、下着を少し下へ下げる。
スルッ。
布を大事な部分から引き離すと、右手をそのままその部分へと動かし、
ちゅぽ♪
中指を少し溝へと挿し込む。そのまま前後に往復。
クチュ、クチュ、クチュ…
「横島君…」
ガタッ。
「え?」
顔を上げ、前方を見る。
そこに、彼はいた。
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………あ、あのね」
「す、すまんっ!」
最敬礼で謝ると、彼は踵を返し立ち去ろうとする。
「あっ、待ってっ!」
急いで彼を追いかけようとする私。
しかし、私は失念していた。
下着が両足の途中に引っ掛かっていたという事を……。
スッテン!!
「はうっ!!!」
私は顔面から床にダイブし、そのまま失神した。
「……い起きろ」
誰? 私を呼んでるのは。
「愛子、起きろ」
あ、横島君か。何で彼が……
「参ったな。どうすれば起きるんだろう」
そうか、私気絶してたんだ。
「白雪姫は王子様のキスで目覚めたけど、この場合は…」
おっ、これは美味しい展開になりそうだわ♪
「やはりお尻にネギを突き刺して」
「何でそーなるのよっ!!!」
ペシッ。
「あうっ」
「やはり途中から狸寝入りだったか」
「何で分ったのよ」
「第六感だ」
「要するに当てずっぽでしょ」
「そうとも言うな」
「そうとしか言わないでしょ」
あれ、今気が付いたけど途中まで脱げてた筈の下着が元に……
「あの、横島君もしかして私の下着「言うな。それ以上は言うな」
彼はバツが悪い表情をしている。
恐らく、私が気を失っている間に私の………を見てしまった事を済まないと思ってるのだろう。或いは、何か後ろめたい事でもしてしまったのだろうか? もしそうだとすれば、意識を失ってた事がかなり悔やまれる。本当に勿体無い。
彼は自分の身体のある一部分をしきりに気にしている。
……あ、今少し動いた。
スクッ
私はやおら立ち上がる。彼はしゃがんだままだ。
私は彼の前に立つ。彼の顔面と私の大事な部分を向い合せにする形で。
そして勇気を振り絞り、
スカートを吊り上げ、見せる。
「え゛?」
彼は一言にも満たない声を発し、ただ呆然としている。
これは賭けだ。
果して、彼はいかなる選択をするのか……。
そして、この後どうなったかについては……
私の口からは言えません(〃▽〃)
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