(注意)
これは夜に咲く話の華で操り人形様の書かれた壊れアシュのお話がベースの三次創作です。操り人形様のお返事を待っていたのですが、連絡がつかない為、取り敢えず需要があるのかどうか、皆様の反応を見る為に投稿させて頂きました。勿論、不適切であれば即刻削除致します。
お返事を頂かない内に勝手に投稿してしまった事を操り人形様にお詫び致します。そして、今更ですが、夜華時代、この様な三次創作作品を快く認めて下さった操り人形様に、改めてお礼申し上げます。
それはIF。
魔神アシュタロスという存在が、ある意味で『壊れ』ていたら。
そのアシュタロスの目的が、ただ一人の少年を手に入れる、というものだったら。
そしてそれが成就してしまっていたら。
そんな世界の、そんな話の、その後は。
へたれアシュ〜鬼道登場〜
「あううぅぅ・・」
「ふむ・・盲点だったな・・熱・・とは・・」
・・捕らえられ、囚われて、閉じ込められて──暫く。
度重なる心労と肉体の行使(爆)により熱を出して横島姫はぶっ倒れてしまっていた。
流石にこの事態は想定していなかったのか、アシュタロスも少々困惑気味だ。
「・・まぁ心配はいらん。私の手厚い看病で早々に治してやろう。そして私の献身的な看護と熱い魂の迸りを具現化させた愛情に横島クンもほだされてなし崩しにゴーだっ!!」
・・訂正。
思いっ切り張り切っていた。
ぶっちゃけ楽しんでいやがる、この魔神。
「・・そっ・・そんな事は絶対に有り得んっ・・!!」
熱に苦しみ、荒い息を吐きながらも、アシュタロスの言葉を力一杯否定する横島。
しかし、ベッドの上。顔は赤く染まり、熱のせいで瞳は潤み、弱々しい声。
幾ら憎悪だとか殺気だとかを込めた所で、この魔神に通用する筈も無く。
それどころか──
「・・横島クン・・そんな姿で吠えても何にもならないぞ・・。フフフ・・少し大人しくさせてあげよう・・そうしないと熱も下がらないだろう・・?」
「い、いやぁぁぁっ!?」
・・欲望を刺激してしまった様だ。
横島の上に圧し掛かり、手足を封じる。元々力の差がある上、熱の出ている今の状態では満足に動けない横島だ。
それを止めるなど夢のまた夢、微かな抵抗さえできず。
「やめろぉぉっ!!こっちは病人だぞコラーーーッ!!」
「暴れるとまた熱が上がるぞ?・・こういう時は熱を放出させた方が良いのだろう?マニュアルに書いてあったぞ」
「どんなマニュアルだーーー!!!」
「そんな叫んでばかりいると喉が潰れてしまうぞ。横島クンの可愛い声が聞けないのは私としても寂しいのだ。・・少し黙っていたまえ・・」
「いやーーーーーっっ!?」
舌なめずりをしながら、顔を近付けてくる。
涙と叫びを迸らせてもアシュタロスの動きは止まらず。
唇が触れ合う寸前、横島は最後の抵抗のつもりかはたまた諦めか、強く瞳を瞑り──
すぱーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!
・・何だか素晴らしく小気味良い音が鳴り響いた。
「・・?」
それと共に重みが無くなった事に不思議に思って恐る恐る瞳を開いた横島の目に飛び込んできたものは──
「病人に何さらす気やねんドアホウッ!!」
肩で息をしつつ、ハリセンを握り締めた鬼道政樹の姿だった。
鬼道の怒気に満ちた視線の先には、アシュタロスが素敵に楽しいポーズで床に転がっている。
「・・ほえ?」
呆気に取られる横島。
・・当然だ。
つい最近、GSチームは全滅したばかりなのだから。
何度も挑戦はしてくるものの、アシュタロスの卑劣で巧妙な罠に撃沈し、その都度鼻血やら萌え血やらの血の海に沈み。つい三日程前にもアッサリ全滅しているのだから。
(・・でも鬼道はそれらには参加してなかったよーな・・?)
熱のせいでぼやけた頭ながらも、今までを思い出しつつ、横島が思う。
「・・ククク、驚いたよ・・まさかあの巧妙な罠を突破して此処まで辿り着く猛者がいるとは・・。一つ聞こう・・どうやって此処まで来た?警報装置も鳴らさずに!!」
アシュタロスが何事も無かったよーに無造作に復活しつつ、格好つけて聞いてくる。
「いや、普通に玄関でチャイム鳴らして。ハニワみたいのが通してくれたで?」
「ぬおおっ!!しまった!!迂闊!!」
さらっと答えた鬼道に、頭を抱えて絶叫するアシュタロス。
(・・こんな奴に・・)
・・その眼前で繰り広げられるどこかズレた常識人と間抜けのやり取りに──というか、間抜け魔神の姿と叫びにいろんな意味での涙を流しながら果てしなく遠い目をする横島。
「・・しかし普通の廊下にも横島クンの萌え萌えラブキュンポスターは私の目の保養と癒しの為に貼ってあった筈だが・・?」
(・・ラブキュンって何さー・・)
怪訝そうなアシュタロスの台詞に新しい涙を流す横島。
「・・ボクは別に横島狙っとらんから」
疲れた様に鬼道。共に吐かれた溜め息も深くて重い。
その"横島を狙っている"連中の姿を目の当たりにしている故の反応である。
「・・それに、ボクは冥子はんのお目付け役・・もとい、保護者・・もとい、護衛要員で理事長に無理矢理・・やのうて、頼まれてやってきたからな。・・その冥子はんは撃沈してもうて輸血の真っ最中やけど」
鬼道の説明に、違う意味での涙を溢れさせる横島。不幸なのは俺だけじゃないんだなぁ、とかなんとか思いながら。
しかし、大切な事がある。どうしても聞かねばならない事が。
「・・あの・・それで、鬼道・・俺を助けに来てくれた訳じゃねーの・・?」
身を乗り出し、縋る様な瞳で鬼道を見詰める横島。
顔は赤いまま、瞳は潤み、その表情は儚く、懇願する様で。
──そんなんだから。
・・アシュタロスがその姿に嫉妬し、欲情して暴走した(爆)
「おのれ!!我が姫をたぶらかすとは小癪な!!こうなれば貴様の目の前で私と姫の愛の営みを見せつけ再起不能にしてくれるっっ!!!」
「いやぁぁぁっっ!?」
「えーかげんにさらせやボケェェッッッ!!!」
ズッパァァァァァァァァァァンッッッ!!!!!
ハリセン炸裂。
アシュタロス、遠くの床に頭から着地。
「・・何でハリセンでアシュタロス吹っ飛ぶんだ?」
思わず呆然としつつ、何だかどーでもよさげな事を尋く横島。
「ああ、何でも妙神山のトコでこさえた神器らしいで?なんや今はゴタゴタあって介入できんとかで託されてなぁ・・暫くしたら横島奪還しに来る、ちゅう事になっとるらしいけど・・」
難しい顔でそこまで言って──気遣わしげに横島を見て。
「・・人間側も神魔族側も、アシュタロスはこのまんまの方が良い言うててな・・。まぁ、トップの連中の言うとる事やから、どうせそれぞれ我が身可愛さの理由なんやろーけど・・」
「ふぇ・・?じゃあ俺・・このままなの・・?」
その言葉を受け、涙目の横島。
熱のせいか、身体が弱ってるせいか、どうにもいつもより弱々しい。
「えぅ・・俺、生贄・・?」
「ああ、えーとな、横島?泣くと目ェ痛なるから・・。ま、そのうちどうにかしたるから、今は身体治すの先にしよ、な?」
「あう・・」
やんわりと宥められ、ベッドの中に戻された。毛布を掛けられ、涙目のまま大人しく従う。
熱のせいか、リアクションにも力入らず、横島は鬼道にあやされている内に眠りに落ちた。
・・で。
「・・君はつまり、それを伝えに来たという事か?」
「・・まぁな。他のGS達は本気で横島奪還に来とるけど、"上"の連中は何するか解らんからな。このまんまが良いて判断やから、それは一応知らせとかな、横島に危険が及ぶかもしれんやろ?・・あとはまぁ・・説教しに」
「・・説教?」
不機嫌そうな(終始横島が鬼道にばかり意識を持っていかれてたので)アシュタロスの問いに答え、そして付け加えた最後の鬼道の言葉を怪訝そうに繰り返し。
首を傾げる魔神に、にっこりと笑顔で。
「オドレがどんなに相手の気持ちや事情や人権や尊厳を無視し踏みにじり蹂躙し陵辱し好き勝手やってるかっちゅう事を、オドレが少しは理解できるまで、きっちりたっぷりボクの全てを賭けて!!そうや、賭けやけど!!ボクが死ぬまで教授したるわぁぁっっっ!!!」
・・後半は凄まじい壮絶な笑みで、吐き捨てた。
「・・ワタシハマジンナノデニンゲンノホウリツトカハカンケイアリマセンヨ?」
・・魔神、思わず虚ろな瞳でカタカナ語で反論。
しかも何故か敬語になっていたりする。
「知るかボケェッ!!横島は人間やど、人間相手に魔神の理屈で相手させられとったら狂い死にしてまうわアホッ!!大体オドレ何しとるか解っとるんかああッ!?オドレのしとる事なんぞ、脳味噌腐れた性犯罪者のイカレバージョンやドアホッッ!!!」
・・教育者として色々我慢ならない事が多くあったらしい。
見事にキレている。
アシュタロス、真正面からたかが人間に、正論を交えて怒鳴られた事に少しばかりたじろいでいる。
しかし、そこは理不尽と不条理を兼ね備えた魔神、気を取り直し──
「フハハッ!!甘いぞ人間!!横島クンとて煩悩魔神の素質アリ!!ならば私の与える快楽と官能の渦に溺れ、その身を私に預けるのも時間の問題!!愛さえあれば何をしてもオッケーなのがこの世の習わしっ!!」
「どこの鬼畜陵辱調教エロゲーやボケェェェッッ!!!」
ごべずばぁぁーーーーーーーーーーーーんっっっ!!!!!
・・何だか素敵すぎる轟音と共にハリセン炸裂。
ハリセンが一瞬硬度を増してアシュタロスの頭にめり込んだ気がするのは気のせいか妙神山にいる誰か達の呪いなのか。
そんな事には頓着せず。
「座れや魔神っ!!今ので解った!!オドレを修正するには、ボクの魂全てを賭けんと無理やいう事がっ!!・・そんでも不安は残るが・・こうなったら徹底的にやったるわドアホゥッッ!!!」
壁にめり込んだ魔神にハリセンの先を突き付けながら怒鳴る。
「・・ク・・ククク・・クハハハハッ!!」
しかし、アシュタロスは笑い声を上げた。
顔には狂気と怒りを描く笑み。
「貴様の様なたかが人間が、私を修正するだとっ!?図に乗るのも大概にしたまえっ!!ここまで私と横島クンの崇高な時間を邪魔したのだ!!・・どうされたい?選ばせてやろう!!この世からの消え方をっ!!」
「・・正座」
「・・え゛?」
「正座や正座ぁっ!!何阿呆丸出しな高笑いかましとんねんっ!!そないな下品でクソなボケが横島に好かれとる思うんかああっ!?マトモな人間ならとことんまで嫌ぅとるわっ!!まぁ、相手の事なんぞ塵一つ考えてへんのやから仕方無いけどなぁ!!!」
・・魔神の威圧、怒り、狂気、恐怖、通用せず(爆)
落ち着け鬼道、相手は魔神だ。
・・しかし。
「なっ、何を言う!!横島クンだって私の事をその内身も心も全て受け入れ、更に全てを捧げる筈だっ!!諦めの名のもとにっ!!」
それに乗ってみる魔神。
・・何気に情けない事を言っている。
そして、その台詞を聞いた鬼道は。
「なんや、底辺まで嫌われとるのは自覚しとるんか」
冷淡に言い放った。
「・・げふぅ」
地味なリアクションだが、ダメージは大だった様だ。
「そんでボクを葬って、更に嫌われる訳やな。それはもう完膚なきまで、下の下の下まで。堕ち続けるんやな、オドレへの好感度やら何やらが」
「ぐっ・・ぐふっ・・。フ・・フフフ・・そうなったらそうなったで、後は愛憎渦巻く傷つけ合いながら互いの肉体に溺れてゆく昼メロ展開にっ・・!!」
・・アシュタロス、しぶとい。だがもう何言ってんだかこの魔神、な感じだ。
「・・・・・・アシュタロス・・・・・・」
「はっ!?」
微かに聴こえた声に振り返れば、ベッドから身を起こしてこちらを睨む横島の姿。
・・流石にあれだけ騒げば起きるだろう。
顔は赤いまま、瞳は潤んだまま、息は荒いまま、やはりアシュタロスの欲望を刺激するだろう姿で、しかし横島は本気の瞳で。
「・・・・鬼道になんかしやがったら・・死ぬまで・・いや、死んでも来世でも魂になっても捕らわれても何が何でも・・・・・・」
アシュタロスに絶対の決意を言い放つ。
「口きいてやんねぇ」
・・子供の喧嘩か。
しかし、今横島にできる抵抗などこれ位なのだ。
相手は魔神、逃げる事も拒絶する事もできない我が身では。
しかし、アシュタロスは真顔になって。
「・・・・・・それではこれ以降私は横島クンの可愛い声を聞けなくなると?」
内容に不満はあるものの、こくんと頷いて肯定する横島。
「・・・・・・・・・・それはやっぱり愛の営みの時も?」
青筋を額に浮かべつつ、やはり頷く横島。
「・・・・・・・・・・・・・・ふっ・・私がそんな脅しに乗るとでも・・」
汗を一筋垂らしつつも、余裕ぶって言い掛けるアシュタロスだが──
「横島、寝とかんと治らんぞ?ほれ、後で何か作ってきたるから」
「鬼道・・」
「取り敢えず他の連中来るまでは傍にいたるさかい、な?」
「・・ほんと・・?」
「ん、せやから、無理せんと・・な?」
「えぅ・・きどお〜・・」
「ああ、駄目やで泣いたら・・目ェ赤ぉなるやろ・・?」
「だって・・俺・・」
「ほれ、ええ子やから・・」
「・・きどぉ・・」
聞いちゃいなかった(爆)
「って何事だこのラブい雰囲気はーーー!?おのれ卑劣なっ!!傷ついた姫の心の隙間に入り込み思い通りにしようとはっ!!」
「傷つけたのはどこの誰や変態魔神」
「ぬう゛っ!?」
「きどぉ・・頭痛い・・」
「ん?ああ・・せやからちゃんと寝んと・・」
「・・さむい・・一緒に・・だめか?」
「・・添い寝かぁ・・せやけどそーするとメシ作ってこれへんで?」
「・・今はいいから・・腹減ってないし・・きどぉ・・」
哀願する様な瞳に、鬼道は溜め息をついて。
「しゃあないな・・そんなら、一眠りした後はちゃんと食うんやで?」
「うん・・!!」
鬼道の言葉に、横島は嬉しそうな──花の咲く様な笑みを浮かべ(アシュタロス主観)鬼道に甘える様に擦り寄った(これは事実)
で、二人して就寝(爆)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、無視され続けた恐怖の魔神は。
「・・・・・・・・・・どっ・・どちくしょーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」
・・そんな世にも情けなく悲しい絶叫と共に、その場から一時的に逃げ去ったのだった。
その後。
ハリセンによって護られながら、横島は鬼道に絶対の信頼を置きつつ。
アシュタロスの作ってあった某卵の中を転々と逃げまくったり色々と悩んだり迷ったり決めたりする事になったりするのだが──それはまた、別の話である。
──それはIF。
魔神アシュタロスという存在が、ある意味で『壊れ』ていたら。
そのアシュタロスの目的が、ただ一人の少年を手に入れる、というものだったら。
そしてそれが成就してしまっていたら。
そんな世界の、そんな話の、その後に。
その『壊れ』が、『へたれ』へと、特定の人物の登場により。そして、その世界の流れによって変化してしまったら。
これは、そんな話。
へたれアシュ〜黒銀襲来〜
──放置。
結局それが、世界──人間界の出した答えである。
アシュタロスは放っておけばいい。しかしGS達の行動も制限はしない。
どっちにしろ、手を出せば報復されるから。
・・何とも無責任な答えだが、"上"でのんべんだらりと自分達の保身しか考えていない連中など、そんなもんだ。
勿論世界を護るという名目と、一握りの常識人達の苦悩もあるのだが。
現実に魔神を倒す手段もGS達を止める手段も無いので、傍観するしか無かったりもするのだが。
因みにそれは人間界のみならず、神魔族にとっても同じであり。
下した結論は、やはり放置。・・こちらは某最高指導者達が面白がって、などと言われていたりするが、一部の──特に横島と関わりの深い者達はどうにかそれを撤回させようと奮闘している。
とにもかくにも、今日も横島姫は魔神の手の中にいた。
・・その割りに。
「何故だっ!?女性体なら良いのではないのかっ!?男性体であったとしても、私は受けで一向に構わんというのにっ!!」
「・・まだ解っとらんかこのドアホウは・・。どちらにせよ、横島の気持ち無視したオドレの独り善がりやろがっ!!力で自分の思い通りにするしか能無いんかボケッ!!魔神かなんか知らんが、相手の気持ち考えられへん生き物なんぞ、ただ本能で突っ走っとるケダモノと同じやっ!!何万年生きてて、そんな事も考えつかんかっ!!」
「ぐっ・・ううぅ〜・・」
・・魔神は今日も、たかが人間の教職者に怒鳴られていた(爆)
「・・くそぅ・・忌々しい人間め・・」
ブツクサ言いつつ廊下を歩くアシュタロス。
癒しだとか目の保養だとかの為に廊下の壁に貼られている『横島萌えポスター』も何の慰めにもならない様である。愚痴は止まる気配を見せない。
ところで──その姿は、人間そのものだった。
人間名をつけるとすれば、芦優太郎。
原作でのあの姿を想像して頂きたい。
着ている物も普通のスーツ。横島が怖がるという事で人間に変化して──いや、させられたのだ。鬼道に。
そんな見掛けの為、抱える怒りやら苛立ちやらから本来見る者が受ける筈の重圧や威圧、恐れは三割減。
・・鬼道、いい判断である。
「大体横島クンも横島クンだ・・!!私の見ている前で・・というかあの人間に不本意にも怒鳴られている前であの人間にくっつきながらあんな安らかに寝こけるなどっ・・!!」
その光景を思い出し、ギリリ、と歯を噛み締める。
・・何だか涙まで滲んでいる気がするのは気のせいだろうか。
どうにも、最近自分が不安定な状態に陥る事がある。
原因は解らない。
ただ──
横島が鬼道に微笑い掛けている所。
横島が鬼道にくっついている所や。
横島が鬼道に甘えている(アシュタロス主観)所。
横島が鬼道の傍から離れたがらない所とか。
横島が鬼道の後を付いて回っている所など。
・・それらを見ると、何かが胸に溜まる。
怒りとは違う何か。嫉妬とは違う何か。悔しささえ違う、それ。
複雑怪奇な痛みと共に。
それは、今まで言葉にしてきた、口にしてきた感情のもたらす、厄介なものなのだが──ぶっちゃけそういう経験が壊滅的に無く、知識のみだったりするこの魔神は、勿論気付いちゃいなかった(爆)
「・・横島クン・・」
・・それを言葉にするとすれば、切なさ。
それを理解するには、まだまだ時間が必要っぽい魔神様であった。
そんなある日の事。
最早日常、恒例と化したGSチームの全滅後。
・・"それ"は訪れた。
「横っちーーーーー!!!」
「ほえっ!?」
いきなり部屋に飛び込んできた男に、目を白黒させる横島。
「横っち・・ホンマに横っちなんやな・・心配したでぇ!!」
「は、はあ?」
瞳を潤ませ、いきなり自分の手を握り締めてそんな事を言ってくる男に、横島は困惑する。
知らない奴の筈だ。美形の、自分と同年代っぽい、人間の男。・・何だか見覚えはある気がするが。
ふと、気付く。
「・・横っち・・って・・何で俺の小学校の頃のアダ名を・・?」
「解らんか?俺や!!銀一や!!」
「えっ・・!?銀ちゃん!?」
・・本来ならアシュタロスを倒した後に登場する筈の、横島の幼馴染み──堂本銀一であった。
・・因みに。
「ぐ・・ぐぬおおぉ・・?」
「・・はぁ・・激しいなぁ・・」
扉の前で、相も変わらず正座で鬼道に説教受けていた人間形態の魔神は、銀一の登場の激しさに目を瞬いている鬼道の前で、開け放たれた扉と壁の狭間で呻いていた。
「・・そんで、アンタは一体?・・アイドル俳優ちゅうんは解ったけど・・どうやって此処に・・」
怪訝そうに眉を顰めてそう尋く鬼道。
当然の疑問である。
いろんな意味で、現実的に一般人には到達不可能な筈のこの場所。
しかも横島目当てであれば、撃沈するであろう罠の数々をかい潜って。
「何言うとりますか。俺は横っちの幼馴染みですよ?助けに来るのに、手段なんて選べませんやん。まぁ、番組の企画でGS達の取材と核占拠した悪魔に迫る!!・・とかいうアレで、レポーターとして此処まで連れて来てもらいまして。この寒さで機器ぶっ壊れるわGS達は撃沈してばっかりだわで番組にならへん言う事で他の連中は帰りましたけど・・GSさん等、塔の中入る時にドサクサでついてきたんです」
「・・で、他のGS達撃沈した後に・・」
「はぁ・・皆ぶっ倒れましたけど、俺は平気でしたから。進んできたら此処見付けまして」
「ぬああっ!!おかしい!!おかしいぞ人間っ!!あの横島クン萌え萌えラブキュンポスターを見て何も感じなかったと言うのかっ!?」
「・・横っちは俺の大事な幼馴染みやど。あないな格好無理矢理させられとる横っち見て、撃沈なんかしてられるか!!」
アシュタロスの叫びに、鋭い瞳で睨みながらそう返す銀一。
「銀ちゃん・・」
そんな銀一をじーんとか感動しつつ見詰める横島。
だが──
(・・ま、あのポスター群は全て回収させてもろたけどな)
・・にやり、とか腹の内では黒い笑みを浮かべていたりする銀一だった。
「くっ・・この不感症男めっ!!」
「うるせえ変態魔神っ!!」
「駄目や横っち!!近付いたら喰われるで!!」
「ああっ!!横島クンは何故私の愛を解ってくれないんだっ!!こーなったら私と横島クンのツーショット写真を撮って世界中にバラ撒いて私達の関係を不動のものにっ!!」
すぱんっ!!
「黙れや阿呆。・・しかし、何で横島抱き締めとるん?」
暴走魔神に軽くハリセンの一発をかまし、冷静に──というか投げ遣りに言い捨て、銀一に視線を向けて疑問を口にする鬼道。
「勿論護る為ですが」
簡潔な答えが返ってきた。
今、いつも横島の寝ているベッドには横島と銀一の二人が座っている。銀一が横島を背中から抱き込む様にして、横島は腕の中に抱き込まれつつ、身体を小さくして落ち着かなげにもじもじしていた。
先程の魔神の暴走時にちゃっかりと横島を抱き締め、鬼道のハリセンが炸裂した後にこの体勢に移行した様だ。
「・・いや、まぁ・・あのさ銀ちゃん・・流石に俺もこの状態なのは〜・・」
「横っち・・横っちは今、孤立無援なんやで?鬼道さんが今まで護ってくれてたらしいけど、世界は横っちを見捨てて、言わば生贄に・・くうぅっ!!俺の幼馴染みに何さらすねん!!」
「ぎ、銀ちゃん・・」
そんな悔しそうな叫びと共に、横島に頬を擦り寄せる。感極まった様なその行動に、横島も強くは言えず。
「すりすりするかそこでっ!?くそぉっ羨ましい!!」
拳を握り締めつつ、魔神が血涙を流していた(爆)横島を抱き込んでいる時点でとことん妬ましいのに、しかもすりすりである。・・仕方無いかもしれない。
因みに床に正座状態のままである。・・悲しい魔神だ。
「おのれぇっ!!ならばこれを見るがいいっ!!」
「ぬっ!?」
意識を逸らそうとでもしたのか、アシュタロスがどこから取り出したのか一枚のポスターを広げる!!
「なぁっ!?」
横島がそれを見て声を上げた。顔は何故か真っ赤に染まっている。
そのポスターには──
犬耳(垂れてます)犬尻尾、勿論首輪装備で鎖付き!!更に長袖Tシャツ一枚(だぶだぶで手なんか指先しか見えてません)真正面で座り込んで心持ち前傾姿勢で涙目上目遣い!!当然の如く顔は真っ赤!!
「どうだああっ!!これを見て平静でいられるか人間っ!!」
勝ち誇った様にそんな事を叫ぶアシュタロスだが、自身、鼻血を垂れ流している。
・・馬鹿魔神此処に極まれり。
「・・阿呆か」
そして銀一は冷淡に一言呟いた。
「何ィッ!?これも効かないというのかっ!?」
驚きの声を上げるアシュタロス。
(・・俺は俳優やで?こんなんで動揺なんぞするかいっ!!・・大体今、生の横っち抱いとるんやど?こっちの方が良いに決まっとるやろアホがっ!!)
・・銀一は表情さえアシュタロスへの侮蔑と呆れに満ちていたが、心の中ではそんな感じだった(爆)
(・・何やろか・・この男、裏があるよーにしか見えん・・。まぁ、横島に危害及ばんならいーけど・・)
鬼道は何となく気付いている様だが。
とにもかくにも、このままでは話が進まない。取り敢えずアシュタロスにハリセンチョップをぶちかまし、ポスターを奪取。
くるくる丸めてベッドの下に(アシュタロスの手に渡らない様に)放り投げ。
「・・ま、そこらはいーとして・・横島はこの塔から出られへんで?・・この魔神倒さんと。周りにはこの魔神が張った結界で囲まれとるし・・倒しても今の状況やと神魔連中に何されるか解らんし。ぶっちゃけた話、ボクでは倒せん。絶対的に強さでは負けとるし」
現実問題をさらりと提示する。
そして。
「・・教育も残っとるしなぁ・・無に還すにしても性根をマトモなもんに作り変えん事には納得いかへんわ!!」
吠えた。
・・熱血な教育者さんだ。
「き・・鬼道・・」
何だか色々と矛盾やら無茶やらの散りばめられた台詞に思わず汗ジトの横島。
「まぁ、そこらは・・外の状況が状況ですからね。俺も取り敢えずGS達がそれ倒すまで横っちの傍におるつもりです」
(・・『それ』呼ばわり・・)
憮然とするアシュタロス。
しかし、気にするべき所はそこじゃ無いだろう。
「・・えらいアッサリ言うけど・・色々無理ないか?俳優の仕事も忙しいやろ」
「銀ちゃん・・本当に無茶だって・・心配してくれんのはうれしーけどさぁ・・」
「んー?大丈夫やって。俺は横っちの為に来たんやし。・・横っち置いてく位なら俺・・」
「ぎ、銀ちゃん?」
「横っち・・」
「え?え?な、何?銀ちゃん?」
顎を横に向いた状態で固定され、顔を見合わせて。
・・真剣な顔が近付いてくるのに慌てる。
「って貴様横島クンに何をーーーっ!?」
思わずアシュタロスが叫ぶが、それに構わず顔を近付け、唇が触れ──────
ごす
──────る寸前、ハリセンの柄部分での行動阻止の一発が銀一の脳天に入った。
「・・あいたー。何すんねんー」
「横島困っとるやろが。やめいや」
「・・いや、ちっと雰囲気に流され・・」
「何者だこの痴れ者がぁーーーっ!!」
アシュタロスが銀一の弁解の言葉を遮った。
・・まぁ、気持ちは解るが。
(・・魔神か・・まぁ、話くらいしてみるか・・)
そんなアシュタロスに目を向け、値踏みするかの様に鋭い瞳でざっと見回し、睨み──笑顔を作り、横島へと話し掛ける。
「・・横っち、この魔神と少し話してきてええ?」
「へ?・・って、ここですればいーんじゃ・・?」
「いや、ここでするんは・・横っちの精神に悪いやろ、コレが何言うか解らんし」
「え・・で、でも・・」
「・・コレとは何だね、コレとは」
「黙っとき、魔神。・・まぁ、ええんやないか?何か異変あれば解るやろうし」
「で、でも鬼道・・こんなのと二人で?銀ちゃん危ねぇよぉ・・」
「・・うぅ、横島クン・・こんなのはないだろう・・」
「そんな心配せんでも平気やて。な?」
なでなでなで♪
「・・うぅ〜・・」
「ああっ無視の上横島クンの頭撫でたぁっ!?おのれぇっ!!」
「・・ちっ。さぁ来いや魔神!!」
「はっ!?今舌打ちした!!舌打ちしたぞこの人間っ!!横島クン騙されるなーーーっ!!」
「とっとと来い!!そんじゃ後でな、横っちー♪」
「おああ〜〜〜っ!?」
横島には笑顔を振り撒きつつ、アシュタロス(人間形態)の襟首引っ掴んで、どこぞに引き摺っていく銀一。
「・・だ、大丈夫かな・・」
「・・ま、夜叉丸の目から監視しとくから」
「う、うん・・」
それでも心配そうに銀一達の消えて行った方に目を向ける横島だった。
(・・どーもアシュタロスの方が大丈夫やなさそうやが・・)
・・鬼道はそんな事を思っていたりしたが。
横島達のいる部屋から、少し離れた部屋の中。
双方、面白くなさそうな顔で対峙する。
「・・で?」
「・・で、とは?」
会話は、無造作に始まった。
「オドレ、横っちの事どーするつもりや?」
「どう・・だと?それは勿論、横島クンの愛を私のものにして愛欲の日々を・・」
とぽとぽとぽ
「・・とぽとぽとぽ?」
「ふぁいやー♪」
ゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォッッッ!!!!!
「おおおおおおおおおおおっっ!!?」
・・盛大に燃え上がるアシュタロス。
しかし服は焦げたものの、本体に損傷は無い。はずみで人間形態が解け、元の魔神の姿に戻る。
「・・ちっ、やっぱ流石に魔神やなー。火ィつけただけじゃ駄目か・・ま、よく燃えるは燃えるけど、何せ量が持ち込めんかったし・・酸の方が良かったか?」
・・その事には全く目もくれず、何事か恐ろしげな呟きを漏らす銀一。
「なななななっ・・!!いきなり何をする人間っ!?」
流石に魔神もいきなりな銀一の行動には驚いたらしい。汗を垂らしつつ詰め寄る。
「・・ああ?」
だが、銀一は怯むどころか真正面から魔神を睨み。
「ボケた事抜かすからやろが・・。世界の敵が俺の横っちを自分のものにする・・!?バカも休み休み言えやアホ魔神っ!!ざっと見た所、あの鬼道とかゆー保護者くさいのにとられとるやないか。・・嫌われとるやろ、ぶっちゃけ」
「うぐあっ!?」
ズバリ言われて胸を押さえつつ膝をつく。・・やはり気にはしているらしい。
「・・オドレが滅ぶんは神魔連中には都合が悪いよーやなぁ・・。せやけど、GS達にへち倒されてそっち引き渡されたら、まぁあっちでどーにかするしかないやろ。・・てな訳で、とっとと横っち諦めてGS達にへち倒されて神魔んトコで独り寂しく膝抱えて泣いてろやぁっ!!」
・・いろんなものが込められた、鬼気迫る、狂気さえ携えた凄絶な笑みと共に吐き捨てた。
「・・ナゼソンナニクワシイノデスカ」
「GS達の方で色々やっとったらしくてなぁ・・聞き出した」
思わずカタカナ語になるアシュタロスに、にやり、と、子供が見たら泣き出す前に気を失いそうな黒い笑みで答えた。
・・そこらの魔族には到底出せないであろう、恐怖を撒き散らしそうな黒いオーラ付きで。
「・・ふっ・・ふざけないでもらおうか、たかが人間が・・!!」
汗を一筋垂らしつつも、反撃を試みるアシュタロス。
しかし、その『たかが人間』が今正に、魔神を圧倒しているという事実。大体既に『たかが人間』に説教受けてる魔神の言葉に説得力は無い(爆)
「だっ、大体GS共が此処に来れるという保証など──」
「ポスター、全部剥がしておいたで?」
「う゛っ!?」
「・・まぁ、あの連中も鬼道さんと横っちのあんな姿見たらショックやろーけど・・それらぜーんぶ、オドレに向かうで?」
「ぐっ!?」
「まぁ怒りも憎しみも悲しみもオドレに一直線やろうなぁ・・周りも見えん程に」
「ぬ゛ぅっ!!」
「存分にやればいいわ・・横っちをそれぞれ自分のモンにする為に・・俺はその隙に横っち抱えてトンズラこかせてもらうがなぁっ!!」
「ひぃっ!?」
・・アシュタロスは思った。
(人間怖ぁっ!?)
・・人間全てをこの男と同一視してもらいたくはないが。
しかし、腐っても魔神。直ぐ様気を取り直し──
「・・ふ、ふははははっ!!しかし、GS達が此処に到達したとして、私が倒されるという保証がどこにあるのかね!?」
「時間稼ぎしてもらえれば充分やないか」
「・・ど、どこへ逃げられるというのかねっ!?この世界に逃げ場など無いのだぞっ!?私が生きている限りっ!!私が倒されなければ結界も消滅しない!!塔から脱出さえできんだろう!!外からは自由に入れても出られない様になっているのだぞ!?私が許可しない限り!!」
「・・核、この塔のどっかにあるんやろ?」
「・・ハイ?」
「・・で、此処の空間はもう外と繋がっとる状態で固定しとるんやろ?そんで、結界は人、神魔・・霊気持っとる生物のみ専用、武器に対しては無効・・第一、外からにはあらゆる意味で無防備・・なら──・・」
にっこりと、笑顔で。
「此処に核ぶち込んでやれば、オドレも流石に無事やすまんよな?」
・・とても爽やかな笑みだった。
「・・ナニヲオッシャッテマスカ?」
カタカナ語でアシュタロス。動きも心なしかカクカクしている。
「核なんざハッキングでどーとでもなるんやなぁ・・全く、セキュリティ甘すぎるよなぁ?」
「・・ナニヲナサルオツモリデスカ?」
「ああ、せやからもー駄目やゆー時には核ぶち込んでオドレを潰す♪」
ステキな笑みだ。
「って!!貴様は何を考えている!?横島クンはどーするっ!?横島クンも・・貴様自身もタダではすまんぞっ!!」
「アホォッ!!オドレに好き勝手される位なら、一緒にあの世へGOや!!」
「そんなアホなーーーっ!?・・まっ待て!!落ち着け!!それはこの世も道連れにするという事だぞっ!?この世に生きる者全てが・・」
「・・横っち犠牲にせんと現存できん物体なんぞいらんわ。全て滅んでまえ!!」
・・いつの間にやら狂気の笑みに変わっていた。
「コワレテルーーーーーーー!!!」
流石に魔神もビックリだ。
「何言うてんねんドアホウがっ!!オドレが引き起こした事やろが全てっ!!」
「待て!!全てを私のせいにするな!!・・大体そんな事をしたらどうなるのか解っているのかっ!?魂は因果と共に巡る!!だがその前に、魂は語り合う事だってできる!!・・輪廻の輪に加わる前に・・貴様、横島クンを悲しませ、自身が嫌われても構わないというのかっ!!」
「そんなん全部オドレのせいにするに決まっとるやろ♪」
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「で、悲しみに暮れる横っち慰めて逃避行や!!」
「どこへだーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
・・最早何が何だか、である(爆)
一方。
(・・アイタタタ)
アシュタロス達の様子を夜叉丸の目を通して監視していた鬼道は頭を抱えていた。
・・勿論、人間の方の言動や行動やらに。
「うう・・銀ちゃん何話してんだよ〜?」
そして何も知らない横島は、銀一を純粋に心配していた。
・・何も知らないという事は幸せだ。そして、このまま何も知らないでいる方が絶対的に幸せだろう・・。
・・で。
「なんなんだ人間というのはっ!?何故そこまで言えるっ!?・・私がそうしようと思えば、今この場で、貴様をこの世から消滅させる事など造作もないのだぞ!?恐ろしくないのかっ!?」
アシュタロスが叫ぶ。
人間は解らない事だらけだ。
自分に逆らう者はそれなりにいた。しかし、結局はこの力の前に降伏する者が殆どだった。
最後まで足掻く者もいたが──それとこれとは違う気もする。
それらは、少なくとも戦う力を持つ者達だった。
しかし。
この人間は、自身は戦う力など持たない、本当に、ただの人間であるのに。
・・そんな連中より遥かにタチが悪いとはいえ。
「命惜しくて大事な奴が追えるかボケェッ!!人間一度は死ぬんや!!一度しかあらへん生で、一番したい事せんで、言いたい事言えへんで、生きとる意味があると思うんかああっ!?」
「ぐぬっ!?」
真理が迸る。少なくとも、銀一にとっては純然たる真理。
しかし、それに思考を巡らす前に、また銀一の口が開く。言葉が襲ってくる。
「さっすが無駄に生きとる魔神様やなぁっ!?オドレ、何も賭けた事無いやろ!?全部力任せに、自分の手の中落ちてくる思て!!・・オドレ、横っちの愛欲しい思うんなら足掻けや・・みっともなく足掻いてもがいて粉砕されて地の底のそのまた底まで堕ちて潰れろやあぁっ!!!」
その全てを──悪意やら何やら、負の感情全てを込め、放出された叫びに──
「どっ・・・・・・どちくしょーーーーーーーーーっっっ!!!」
・・泣いて逃げた(爆)
取り敢えず、魔神、敗走である。
「・・あ゛〜・・」
額を押さえつつ、呻く鬼道。
「ど、どーしたんだ鬼道っ!?銀ちゃんに何かあったのか!?」
心配する横島。
「・・横島、魔神より怖かったりタチ悪かったりする人間はきっちりおるよ・・」
「へ?」
疲れた様に言う鬼道に首を傾げる横島。
「・・その内戻って来るやろ。・・そっちの方は」
「???」
「横っちー♪」
「わあ!!銀ちゃん!?大丈夫だったか!?」
「おう♪・・あの魔神、付け入る隙はありそーやな♪」
「・・へ?」
「ま、自覚はしとらんけどな」
「???」
(・・あんな事言っといて俺等殺さんのは、無意識、無自覚に横っちに嫌われたくないからや・・。俺等殺した時点でどーしよーもない位、壊滅的に嫌われるんは確実やし。あの魔神も惚れた奴には甘い、そんでやっぱり両思いにはなりたいってコトやな)
「・・・・・・・・・・」
銀一が考えている事を何となく読み取りつつ、鬼道は溜め息を吐く。
「???」
そして横島は、何も解っていなかった。
・・ところでこの後。
某宇宙の卵を逃げ回る事になるのに、銀一も一枚噛んでいた・・というか、首謀者だったりした事は、まぁ・・別の話だ。
因みに、鬼道に横島を預けて逃がしたのか、自身も一緒に逃げたのか、はたまたその途中で横島をかっ攫おうと企んでいたのかは・・定かではない(爆)
まぁ暫くの間は、この四人でドタバタやる事になる様である。
オマケ♪
その暫くの間──まだ銀一も鬼道も宇宙の卵の存在を知らず、逃げ出す算段も具体的には無かったある日の事。
「ふ・・ふふふ・・今日こそはっ!!」
最近、二人の人間のせいで心の余裕が皆無なアシュタロス。
かなりテンパっているこの魔神は、素敵に無謀な企みを実行しようとしていた。
その手には、文珠らしきものが一つ。
浮かぶ文字は──────
「このボケ魔神がぁーーーーー!!!」
「何間抜けさらしとんねんドアホォッッ!!!」
「あああっこれは計算外だったーーーーーー!!!」
・・上から順に。
横島に押し倒されている鬼道。
その現実にぶち切れている銀一。
涙を迸らせ、ぶち切れた銀一に胸倉掴まれてがっくんがっくん揺さぶられながら絶叫するアシュタロス(人間形態)
・・文珠に刻まれていた文字は『淫』。
何を期待していたかは知らないが・・まぁ、現実はこんなもんだ。
すなわち──
「鬼道・・v」
「正気に戻れや横島ぁーーーっ!?」
『淫』発動により、鬼道に迫る横島、である(爆)
「このクソ魔神っ!!とっとと横っち元に戻せやボケがーーーっ!!」
「取り敢えず胸倉掴んで揺さぶるのはやめっ、ぐびゅっ!!・・ひらかんらぁっ(舌噛んだぁっ)!!」
「きどぉ・・やろぉ・・?なぁ・・?」
「落ち着けや横島ぁっ!!気をしっかり持つんやっ!!文珠の効果でしかないんやどその性衝動はぁぁっ!!」
「・・俺とじゃやだ・・?・・やっぱり俺、汚れてるから・・?」
「それは全く関係あらへんーーっ!!せやけど意に添わん行為はやるもんやないんやーーーっ!!」
「・・俺、きどぉ好きだもん・・」
「・・ッ!!はっ、早よ助けんかいっ!!!」
鬼道、涙目で切なげに訴えてくる横島から堪らず目を逸らしつつ助けを求める。
しかし──
「こんの腐れ魔神がぁぁっ!!オドレの股間に酸でもぶっかけて使い物にならんよーにしたろかああっ!?」
「酸なんて魔神には効かんっ!!・・でも痛いは痛いのでやめてくださいーーーっっ!!!」
「とっとと助けんかそこの阿呆二人ーーーーーっっ!!!」
・・何かいろんな意味で駄目駄目だった。
まぁ、何とか危機を脱した鬼道に、アシュタロスは二十時間ぶっ続けで説教された事を追記しておく。
因みに、この一連を横島が覚えていなかった事には、三者三様、それぞれの理由でホッとしていたらしい。
・・そして後日。
「・・今度こそっ!!」
魔神は懲りていなかった(爆)
「横島・・」
「ええっ!?ちょっ、ちょっと待って鬼道・・ああっでもアシュタロスにヤられるよりマシなよーなっ!?・・寧ろ望む所っ!?」
・・今度は鬼道が横島を押し倒していた(核爆)
「何言うとんねん横っちぃぃっ!!こんのド腐れ魔神がぁぁーーーっ!!ちったぁ懲りろやボケーーーッッ!!!」
「うおおっ!!二度ある事は三度あるっ!?」
「アホかっ!!二度目やろがこれでっ!!もっかいやる気なんかオドレェッ!?てか早よ止めろやーーーっっ!!!」
「・・文珠が品切れれふ・・」
「喰えっ!!この物体X喰って一度あの世行って反省してこいやオドレェェッッッ!!!!!」
「何れふかこれぇーーーっ!?くぼふぁっ!!?」
・・胸倉引っ掴まれたまま何かの物体喰わされて魔神沈黙。
「・・横島・・楽にしぃ・・」
「はわわわ・・あああっ何故だか鬼道には抵抗できないぃーーーっ!?」
「横島ぁ・・」
「あうあうっ・・ふ、服は自分で脱ぐからそのっ・・」
「横っち何てコトをーーーっ!?鬼道さん正気に戻れやぁぁっ!!悪霊退散ハリセンちょーーーーっぷ!!!」
すぱーーーーーーーーーーーーーんっっ!!!
「・・はっ!?ボクは一体!?」
「・・流石神器・・良かった良かった」
正気に戻ったらしい鬼道と、その姿に額の汗を拭う銀一。
「・・・・・・ちぇ」
・・指を咥えつつそんな声を漏らした横島を二人は意識的に無視し、沈黙したままの魔神はナチュラルに三人に無視されていた。
「・・どちくしょう!!今度こそーーーっ!!!」
当然の如く復活したアシュタロス。また性懲りもなく、今度は怪しげな液体を手にしているが・・。
「・・ええかげんにせぇや魔神・・」
「・・こんのゲスが・・」
「ノォーーーーーーーーーーーーッッッ!!?」
背後に立つ、怒りやら何やらを放出し続ける魔神さえ恐れさせる黒オーラを纏う二人により、その野望は阻止された。
そして魔神は、三日ぶっ続けで鬼道と銀一に説教されたそうな・・。
「・・こっ、今度こそっ!!」
「「えーかげんにしろやぁぁっっ!!!」」
ずっぱあぁぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!×2
・・そして今日も塔では、二人持つ事になったハリセンの音が鳴り響くのだった。
初めまして、もしくはお久し振りです、こんにちは。夜華では『匿名希望』として出没しておりました、柳野雫と申します。
夜華の閉鎖に伴い、『匿名希望』の名は夜華に置いてきました。その頃を知ってらっしゃる方々も、これからは『柳野雫』でお願いします。
で、このへたれアシュシリーズですが・・操り人形様に許可を頂いてからどうするか決めようと返事待ちしていましたら、機器のトラブルだか何だかでこのシリーズが一部(二話程ですが)消失しやがりました(泣)勿論、需要があるのかどうか、皆様の反応を見る為もあるのですが、また消えない内にと・・(汗)
冒頭にも書きました通り、不適切であれば即刻削除致します。
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