概して、暗く、埃臭く、ジメジメした場所で連想する場所は、『地下室』。
さらに、鎖や鉄格子があれば、それは『地下牢』へとグレードアップする。
「よ、よこしまさぁん・・・・」
そして、この舞台はちょうど地下牢。
東京都心、とある特殊な物件の地下が、幕引きとなる。
地下牢の主は、一人の女性。
艶やかな黒髪、透き通るような白い肌、そして、申し訳程度にしかその本来の使用理由を発揮しないピンク色のノースリーブ・・・・いやもはや布きれと言ってもいいもの。
・・・・彼女は、もう何年もここから出ることを望み、叶わぬ状態にある。
そう・・・・ここは『魂の牢獄』
彼女の魂は、鉄格子という非常なる囲いにがんじがらめにされ、身動き一つさえ取らせてくれなかった。
そんな彼女にとって、一つのライフライン・・・・
新鮮なエネルギーが彼女に流れ込んでいる。
そんな彼女にとって、一つのメンタルライフライン・・・・
そのエネルギーの源泉の、ほんの近くにいる、暖かな存在。
彼女は、彼に恋をしていた。
実際に見た事はない、実際に声を聞いた事はない、実際にそれの匂いをかいだことはない。
ただ、感じるだけ。
けれども、今まで生きていく中で『感じる』ことしかしてこなかった彼女にとって、それだけで恋をするのは造作もないことであり。
「うっ・・・・くうぅ。 よ、よこしまさん・・・・」
細い腕、細い指、動かすのは辛い。
けれども、彼を感じられる今だからこそ、動かなければならなくて・・・・
ヌプっ
女性にとって一番大切な場所に、彼女の感情の揺れを表した粘液が分泌し、指を動かすたびに音を立てる。
「あっ・・・・ぁ・・・・かはっ・・・・」
とめどなくなく溢れる、液体。
彼女の恋の味がするそれは、地下牢の床を濡らし、冷え切った彼女の心を濡らす。
「よ、よこしま・・・・さはぁん・・・・」
彼女は、この家において万能だ。
地下牢にいつつも、地上のことはなんでも出来る。
家具を動かす事も、家人の手伝いをすることも、勿論、木端微塵に吹き飛ばすことだって出来る。
たった二つの例外は、人の心を動かすことと、自分の解放のみ。
彼女は、どう頑張っても出来ない。
だが、彼ならば出来る。
・・・・少なくとも、そう信じて、彼女は彼に恋したのである。
「うっく、うっくぅぅ・・・・」
秘めやかな裂を、激しく、情熱的に、官能的に擦る指。
稚拙ながらも、彼女にとっては至上の快楽であり、今の彼女にとっては世界の全てである。
やがて、片方の手が動く。
既に自分で自分に撒いた液によってベタベタとなってしまった指とは違い、こちらはうっすらと桃色になっているが繊細で渇いている。
それを・・・・
「く・・・・くぅぅ・・・・」
女性としての象徴に添える。
前述のわずかに彼女を覆っていたピンクの『布きれ』は、それによってはだけ、彼女は産まれたままの姿・・・・否、産まれたときの羊水ほどの膜もない状態へと変化する。
胸部に置かれた手は、クネクネと蠢き、まるで虫のようにそこを刺激する。
肉体だけでなく、魂をも剥き出しにし、一人きりの求愛活動を行う彼女。
「よ・・・よこしまさんッ!! 来て、来てくださいッ!!!」
やがて、それも終わる。
段々と激しくなるからだの動き。
分泌される愛液も増え、体の色も血色が良くなる。
自分で自分を慰める行為も・・・・ピークを過ぎれば、ほぼ終わったも同然。
美しくも、悲しげな彼女の動きも、それとともに止まる。
「よ、よこしまさん・・・・待ってますから・・・・いつかかならず、あなたは来てくれますよね・・・・」
・・・・淡い期待だけは、残る。
ここは、魂の牢獄。
あるのは、鉄格子と鎖と『魂』だけ。
魂は鎖につながれ、鎖は鉄格子につながれ、鉄格子は魂につながられている。
終わらぬいたちごっこ。
どれか一つを絶てば、全ては消える。
鉄格子が消え、鎖が消え、魂が消え・・・・
たった一つの希望があるとするならば、
それはやはり・・・・然らば・・・・
「じゃ、美神さん、また明日も来るっすよ」
「あ〜、じゃ〜ね。 気をつけて帰りなさいよ」
青年が、とある建物から出ていく。
フランクで、人好きのよさそうな風貌で、笑みを浮かべている。
「横島さん・・・・」
そこに響く無機質な声。
どこから聞こえてくるのかは不明。
「ん? なんだ? 人口幽霊?」
そんな声も別段普通のことといわんばかりに返答する。
「また・・・・来るのをお待ちしております」
「ああ、じゃーな」
もうそろそろ本格的な冬が迫ってくる。
明日は雪が降ると、天気予報は報じ、恐らく外れることはない温度。
・・・・冬来れば、春近るらし・・・・
彼女に春が来るのは、いつになることか。
カーテンフォールのときは近い。
後書き
と、いうわけでzokutoです。
自慰です。
手淫です。
オナニーです。
セルフラブです。
マスターベーションです。
まぁ、呼び方はどうでもいいですが、そういうことです。
ちょっとわかり難いと思ったので、裏設定をば。
『渋鮫人口幽霊』を作成した、渋鮫男爵。
彼は鬼畜だったのだ!!
自分で製造した人口霊魂。
仮初ながらも、肉の器を彼の技術力を持って創造し、封入した。
それが、オナニーに耽っていた彼女。(下品
人間嫌いなのは、『過去に人間に手ひどく騙されたから』とい経験を、もっとも達の悪い方向で活かし、彼女を束縛。
そして、家の管理を任せ、無理矢理にも彼の傍にいさせたのである(ちなみに、彼女の戸籍は息子だが、それも男爵がし込んだもの)
まぁ、それはともかくとして、地下牢に結ばれちゃった彼女。
いつかきっと白馬の王子様が来てくれると、ユリカなみに電波な妄想を抱きつつ、そこでひっそりと暮していたわけである。
いかに男爵であれども時の流れには勝てぬ、彼は老衰でぽっくり逝ってしまった。
それでまぁ、原作『カモナマイヘルハウス』へと進んでいったのであり、現在に至るわけである。
それにしても、全然えちくないですな。
「けッ、なんだこのヘタレは」って感じです。
まぁ、自分としては全力を尽くしました。
テーマは『悲愛』でした(どこが?
っていうか、最初、フミさん(これまたマイナー)を書こうとしていたのに、人口幽霊になってしまったというヤツですよ。
最近、変な電波受信してます。
題名も『アレも一つの魂の〇獄』にしようかなー、と思ったりしましたが、悩みに悩んだ挙句、今のにしました(笑
米田様勅命のチャットの宿題、終わらせましたからね。
あとは、天に祈るばかりでヤンス。
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