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「霊能格闘DEN乱魔二分の一 プロローグ(GS×らんま)」

アブナイ刑事 (2007-03-17 08:01/2007-03-17 14:10)
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 砂浜に流れ込んでくる音の涼しさは年中無休だ。晴れの日も、曇りの日も、嵐の日でさえ、目を瞑って聞いてみれば、その涼しさを容易に知ることが出来る。潮風を心地よいと感じられるのは晴れの日ぐらいだが、音だけは、変わらない何かを持って耳を刺激した。
 砂に沁み込んだ冷たい塩水が、足を湿らせている。ただそれだけであるのに、砂浜に佇む少女の表情は悲しみに討ちくれていて、ノスタルジックな一枚の絵を彩るように俯いていた。

「海が嫌いなの?」

 藍色の綺麗な髪をした少女が問いかけるも、佇む少女は暗いまま。『普段の彼女』ならもっと別の行動を起こしそうなものだが、藍色の少女にとって、そんなことは知る由もないだろう。

「……嫌いになりとうなかったのに、結局、嫌いになってもうたんよ。ホンマ、世知辛い世の中やね」

 ほおっておけば泣き出してしまいそうな程に弱々しい声が、藍色の少女の母性をほのかに刺激する。守ってあげたい、支えてあげたいと、そんな女性らしい思いが浮かんでくるのを止められはせず、少女は、赤みがかった可憐な髪を後ろでおさげにしている少女の隣にゆっくりと座り込んだ。

「何でやろな?」
「何が?」

 おさげの少女の目じりから、雫が一粒、零れ落ちる。それは太陽の光に反射して、一瞬の小さな虹を見せた。

「何で海水は……こんなに冷たいんやろな?」
「……冷たいけど、気持ちいいわ」

「ボクも、気持ちいいとは思うんよ。でも、それだとあかんねん」
「どうして?」

 関西人らしい喋り方には不似合いな、ボクという一人称を不思議だと感じながらも、それは指摘せずに優しく、短く問えば、少女は涙をこらえるように強く瞳を閉じて、言った。

「女に……女になってしまうんよ」
「? それって、どういう意味?」

「君、お湯持ってる?」

 途端にその目蓋が開かれたと思えば、少女はきりっとした視線を向けて言った。弱さが少し抜けて、男らしいとも言える感じになっている。

「ごめん。あったかいお茶なら水筒に入ってるけど――」
「ホンマ!? なら、ちょっとそのお茶くれへんか? 一滴だけでもええねん」

「え? う、うん」

 よく解らない物言いに疑問を浮かべながらも水筒を取り出して、器に湯気のたつお茶を注ぐ藍色の髪の少女と、それをワクワクと嬉しそうなうな様子で見つめる少女は、見た目からしてそれほど年は離れてないだろうと思えるも、精神面での年齢には大きく差があるのが見て取れる。
 藍色の髪の少女が、きっと喉が渇いているんだろうとか思いながら器一杯に入れたお茶を差し出すと、おさげの少女はあろうことかそれを、自分の頭にふりかけた!

「よし! これで……て、あれ? 戻ってへんなぁ……。あぁ、そやった、ここ砂浜の上やった。ごめん、君、もう一杯だけお茶くれへんか? 一滴でええから」
「……へ? えっと……うん、わかった」

 意味不明な相手の行動に戸惑いつつも、律儀にお茶を注いで渡す少女。なんとも優しい女の子である。

「濡れてへんとこ言うたら……あ! あそこや!」

 言って、近くの乾いた石段の上に腰掛た少女はやはり、受け取ったお茶を頭からかぶってしまった。が、それだけだと思っていた藍色の少女の目に、信じられない光景が写る。

「よっしゃ! やっと戻ったわ」

 それまで、綺麗な赤い髪の、恐ろしいくらい整った顔をした可愛い女の子だと思っていた少女の姿が、黒髪の少年の姿へと変貌したのだ!
 少年はこらえ切れんばかりの嬉しさを伝えようとまだ『砂浜に』座っている少女のもとにかけてくる。
 その時、藍色の髪の少女は確かに捉えた。黒い髪の少年の姿が、一歩ごとに少しずつ変化を遂げ、先程の可憐な少女に『変身』してしまった様を。

「……また変わってもうた。なんや、神様はボクになんか恨みでもあるんですか?」

 事情を把握出来るディスプレイの前の人からすれば自業自得だと言ってやりたいものだが、藍色の少女には、何がなんだかわからなかった。


 横島乱魔。それが、少女もとい少年の名だ。彼は有名な陰陽術師『横島玄魔』の一人息子であり、横島流陰陽格闘術の実の継承者である。
 三歳の頃から父親に陰陽術を叩き込まれてきた乱魔は、生活力に関してダメダメな父親に代わり炊事選択を勤め、父と共に修行の旅に明け暮れていたのだが、ある日彼の身に、彼曰く史上最悪の大事件がふりかかってしまう。
 それは中国の、呪泉郷と呼ばれる伝説の修行場で起こった出来事だ。初めは伝説というほどのもんじゃないとタカをくくっていた乱魔を、玄魔は妙に不適な笑みを浮かべてある池に突き落とした。
 その池、名を娘溺泉(ニャンニーチュアン)といい、その名の通り、過去に女が溺れ死んだという話があり、それからというもの、その池に落ちた者は全て女性に変わってしまうという呪いがかかってしまった恐ろしい池なのだ。
 結果、当たり前だが乱魔は可憐な少女に変わった。彼の父玄魔は息子の変わり果てた姿を、『さも嬉しそうに』眺めていたという。
 その日からというもの乱魔は、水またはそれと同等の温度の液体に触れると女性化し、お湯または40度以上の液体に触れることで男に戻るという、なんとも不憫な生活を強いられている。それがきっかけで少女チックな趣味が出来たり、料理をするときにエプロンを着用するようになったりと実は男をやめてしまっている面もあるにはあるが、彼自身は自分を男だと信じており、また、極度の女好きという習性を父親から受け継いでるのもあって、なんともややこしい人間に成長してしまったわけである。ちなみに関西弁は気に入っているのだが、それがより女らしさに磨きをかけている事に彼は気付いていない。ドジなのだ。
 ただ一つ乱魔にとって幸いだったのは、女でいる時の方がより高い霊力を発揮できること。これまたどこぞの二分の一キャラと違って乱魔は、女状態の時のほうが遥かに強いのである。まる。

 今ここに、新たなGSのタマゴが誕生した。


「つうわけなんよ」
「そ、そうなの……」

 再び少女の姿になり意気消沈した乱魔の話に、藍色の髪の少女、ルシオラは苦笑いを浮かべていた。
 よく海水の沁み込んだ、冷たい冷たい砂浜が素足の少女の流した雫を受け止め、ちょっとだけ湿る。


 作者です。元はGS絶チル板に置いてたのですが、まぁ内容があれなので指摘を受けこちらに移動しました。
 えっと……なんていうか、もうやっちゃった感みたいなので一杯一杯です。前々から考えては暖めてきたネタを遂に放出。いやぁなんともバカらしいこと限りない……。
 横島が横島らしくないですが、もともとGSの世界観とらんまの設定を絡ませるのが目的なので気にしない事にしてます。なんか関西弁じゃないと読むときに声が男っぽく聞こえると思ったのと、これならば『萌えられる』と思ったので。あと、原作乱魔と比べて理不尽なほどに女性化しやすいです。
 そしてルシオラの登場ですが、カンのいい方ならその意図に気付いてくれるのではないかと。まぁ簡単に言えば、らんまで言う天道姉妹をGS側の三姉妹に置き換えただけです。ルシオラ、ベスパ、パピリオの三人ですね。

 今作でも横島もとい乱魔は許婚として三人の家にお世話になります。こうご期待。

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