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「Tales of the Negima! 第十六節(TOA+魔法先生ネギま!)」

ローレ雷 (2007-03-15 20:49)
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 仮面の少年―ペルソナが床を蹴ると、姿が消えた。刹那は気配を捉える前に、彼女の顔をペルソナが鷲掴みにして床に叩きつけた。

「か……!」
「刹那さ……!?」

 ネギが声を上げた瞬間、ペルソナは杖を突き出す。杖の先端はネギの肩に決まり、壁に押し付けた。

「うぁ……!」
「ネギ先せかはっ!」

 ネギを助けようと立ち上がる刹那だが、ペルソナが彼女の後頭部を踏みつけ、再び床に叩き伏せられる。そして、壁に張り付けられているネギの肩に埋まっている杖を押すと、更なる痛みでネギは表情を歪める。

「君達、この程度かい? それで良くお嬢様を守るとか、マギステル・マギを目指すなんて言ってるね」
「(な、何だよ、コイツ。デタラメな強さだ……!)」

 カモはネギと刹那に一切、攻撃させる暇を与えず、目にも留まらぬスピードで2人を圧倒するペルソナに怯えていた。

「く……! この!」

 刹那は倒れながらも夕凪を振るってペルソナからの拘束を抜け出し、倒れそうになったネギを抱える。

「ネギ先生、大丈夫ですか!?」
「は、はい……肩をやられましたが脱臼程度です」

 肩を押さえながら答えるネギ。2人はペルソナに対して構えるが、相手は笑みを崩さない。

「斬空閃!!」

 刹那が夕凪を振り、気の力を用いた遠距離用の技を放つ。気の刃がペルソナに襲い掛かる。しかし、ペルソナは杖を突き出すと、気は一瞬で弾け飛んだ。

「そんな!?」
「君達には少々ガッカリしたよ」

 そう言うとペルソナは、再びネギと刹那に向かって突っ込んで行った。


「あぅ!」
「アリちゃん!」

 アリエッタは吹き飛んで壁に叩きつけられる。
 お風呂場では明日菜とアリエッタが白髪の少年と戦っていた。お風呂場には、あちこちにアリエッタの召喚した魔獣が石にされていた。
 明日菜は、白髪の少年を警戒し、木乃香を自分の後ろにやって守る。

「君じゃあお姫様を守るのは役不足だよ」

 そう言って少年が何か呟くと、明日菜を中心に煙が噴いた。すると、彼女の浴衣が見る見る内に石になっていく。

「あ、きゃああっ!?」

 悲鳴を上げる明日菜。しかし、石化の進行は途中で止まり、浴衣と下着だけが石となって砕け散った。

「!?」

 少年は一瞬、驚くが、素っ裸になって恥ずかしがっている明日菜の隙を突き、式神を呼び出して木乃香を拘束する。

「じゃあ、お姫様はもらっていくね」
「キャ! アスナ! アリちゃん!」
「こ、このか!」
「ま、待ちなさい。このかは渡さないわよ!!」

 よろめきながらも魔獣のカードを出すアリエッタと、片手で上手く身体を隠し、少年にハリセンを向ける明日菜。

「行って」

 が、少年は2人には意に介さず、式神に命令すると、木乃香を連れてドコかへと飛び立った。

「このか!」
「待ちなさい!」

 アリエッタと明日菜は慌てて追いかけようとしたが、少年が札を取り出す。

「ヴァーリ・ヴァンダナ、『水妖陣』」

 少年が呪文を唱えると、お風呂からお湯が手の形となって伸びてきて、明日菜を捕える。アリエッタは咄嗟に後ろに下がって魔獣を召喚し、湯から身を守っている。

「あははは!!!」

 明日菜を掴んだ湯の手は、唐突に彼女の身体をくすぐり始めた。それを見て少年は不思議そうに本を開いて見る。

「あれ? こんな呪文だったかな? 今……僕の石化魔法を抵抗(レジスト)、いや無効化したよね? アーティファクトの力だけじゃない。どうやったの?」
「へ? な、何? 知らないわよ、そんなの! スケベ!」
「そう……じゃあ死ぬまで笑っていてもらうね」
「あはははは!!!!」

 少年がパチン、と指を鳴らすと再びくすぐり攻撃が始まる。アリエッタは明日菜を助けようと、豹型の魔獣に突っ込ませるが、少年が煙を放つと、その魔獣までも石にされた。

「!?」
「君の力は魔獣を召喚して初めて脅威となる。なら、魔獣を封じてしまえば、君は敵じゃない」
「っ!」
「悪いが君も石になって貰うよ」

 少年が何かを呟くと、アリエッタはギュッと目を閉じる。

「待った」

 しかし、そこで別の者の声が割って入った。

「君か」
「! ネギ先生! 刹那!」

 声の主はペルソナだった。彼の足下には、傷だらけのネギと刹那が転がっており、アリエッタが悲鳴のように声を上げる。明日菜も2人の惨状に目を見開いて絶句する。

「ネギ……刹那さん……」

 ザワリ、と明日菜の身の毛がよだつ。すると、彼女を掴んでいた湯の手が弾け飛び、ハリセンが巨大な剣へと変貌し、2人に向かって突っ込んで来た。
 白髪の少年は、ソレに驚くが、ペルソナが杖で明日菜の大剣を受け止める。そして、彼女の鳩尾に蹴りを入れて吹っ飛ばした。

「どうして止めたんだい?」
「お姫様はこっちの手に入った。彼女まで石化する必要は無い。それに……もう、まともな戦力は残っていないよ」

 足許で呻き声を上げているネギと刹那の頭を蹴って言うペルソナ。白髪の少年は、何も言わず湯に溶けるように消えた。
 ペルソナは、ゆっくりとアリエッタの元へ歩み寄り、濡れている髪をかき上げる。

「フフ……良かったね。石にされないで」
「っっ!」

 アリエッタは親の仇を見るような目で睨み、ペルソナを殴りつけようとするが、簡単に避けられる。

「そんなに怒らないでよ」

 ペルソナは軽くアリエッタを宥めると、ネギと刹那のもとへ寄る。そして2人に向けて掌を広げると、温かい光が包み込んだ。
 見る見る内に、2人の傷が癒えていく。

「治癒……術?」
「う……」
「ん……」

 自分で傷だらけにした筈のネギと刹那に治癒術を当てるペルソナに、アリエッタは唖然となる。2人は声を上げ、目を覚ます。ペルソナは素っ裸のまま倒れている明日菜にバスタオルをかけると、アリエッタに向き直った。

「これでお姫様を追えるだろ?」
「何で……」
「さぁ、何ででしょう?」

 クスッと笑ってペルソナはお風呂場から出て行った。呆然とその後を見つめるアリエッタ。

「兄貴ーーー!!」
「ネギ君!」

 ペルソナと入れ違いに、カモとイオンが飛び込んで来た。

「イオン様……」
「アリエッタ、無事でしたか……」

 カモからネギと刹那が傷だらけにされて仮面の少年に連れて行かれたと聞かされたイオンだったが、ネギも刹那もアリエッタも怪我がないようなのでホッと安堵の溜息を吐いた。

「兄貴、刹那の姉さん、大丈夫ッスか?」
「う、うん……大丈夫」
「なぜ、あの仮面の少年が我々の傷を……」

 訳が分からないといった風に、ネギと刹那は自分達の身体を見る。服は所々、ボロボロだったが、傷は完璧に治っている。

「ネギ! 大丈夫!?」
「あ、は、はい」

 と、そこへバスタオルを身体に巻いた明日菜が駆け寄って来た。

「あの仮面、何考えてんのよ?」
「分かりません。ですが、今は一刻も早くお嬢様を助けるのが先決です」
「そうですね……イオンさん、お兄ちゃんとアッシュさんは?」
「シンクは黒獅子と戦っています。アッシュは……ドコでしょう?」
「もう! 肝心な時に役に立たないんだから! あのデコッパチで目つきが悪くて女にだらしない悪人っぽいけど辛うじてイイ人な気がしないでもないお兄さんは!」
「アスナ……名前で呼んだ方が楽じゃない?」

 何だか順を追ってアッシュの呼称が酷くなっている上に、長ったらしくなっているのでアリエッタが言うが、明日菜は「何だかこう呼ぶ方がしっくりくる」と答えたので、それ以上、何も言わなかった。

「ですが、追いかけたとしても、あの仮面の少年の戦闘力は半端ではありません」
「白い髪の男の子も強かったです……」

 あの2人がいる限り、木乃香を取り返すのは至難の業だと一同は頭を悩ませる。そこへ、カモが突然、「むむ!」と声を上げた。

「これはいける!! 名案を思い付いたぜ!!」
「えっ? 何?」
「何ですかカモさん?」

 明日菜と刹那が尋ねると、カモは卑猥に見えるような笑みを浮かべた。

「刹那の姉さんと兄貴がチュウすんだよ」
「「な゛っ……!?」」

 ネギと刹那は顔を真っ赤にして驚き、明日菜とアリエッタはステーンとこけた。イオンは頬を赤くし、話を聞いている。

「この非常時に何言ってんのよーーーーっ!!」
「ち、違うよ姐さん。仮契約だよ仮契約」

 カモを押し潰しにかかる明日菜だったが、仮契約と聞いて「あ」と納得した声を上げる。

「刹那の姉さんは気が使えるだろ? そこに兄貴の魔力を上乗せすれば一気に倍のスーパーパワーUPってわけさ」

 上手くいくかどうか分からないが、試してみる価値アリとカモは言う。しかし、やはりキスするには抵抗があるのか、明日菜、ネギ、刹那が反論するが、カモはバッサリと切り捨てた。

「いーじゃねぇか。やっちまえよ、ぶちゅーっと」
「と、とにかく話し合ってても仕方ないです! ネギ先生!」
「は、はい!」

 このまま話し合っている時間すら惜しいので、一同はまずは木乃香を追いかけるコトにした。


「アレは……」

 明日菜も服を着て外に出ると、アッシュが木にもたれ掛かっているのを見つけた。

「アッシュ……」
「ちょっと、そこの人生の裏街道を爆進しつつも堕ちる所まで堕ちて挙句の果てに女を泣かせて後悔しまくって結局、破局になったけど諦めずに前向きに生きようとしてるお兄さん!」

 ガン、と、とんでもないコトを言われてアッシュは後ろに木に頭をぶつけた。

「アッシュだと言ってるだろうが!」
「じゃあ、アッシュっぽい不良なお兄さん」
「…………」
「こんな所で何してんのよ?」

 かなり理不尽な感が否めないアッシュだったが、明日菜の質問に対し、屋根の上を指差した。皆、屋根の上を見ると、驚愕する。屋根の上ではシンクと黒獅子が戦っていた。

「しっ!」

 シンクの拳が黒獅子の鳩尾に決まる。敵は顔を歪めながらも鎌を振り下ろす。シンクは身体を反らして避けたが、そこは黒獅子の豪腕が顔面に決まった。
 互いに顔や腕から血を流しており、ボロボロになっていながらも対峙し合う。

「お兄ちゃん!」
「ん?」

 傷だらけのシンクは、ネギの声に反応し、下を見る。その中に木乃香がいないので眉を寄せた。

「おい、木乃香は?」
「連れて行かれました」
「ちっ……だったら、こんな所でボーっとしてないで、とっとと追いかけな!」

 シンクは舌打ちし、皆に怒鳴る。しかし、ネギや明日菜は、先程の自分達よりも酷い傷を負っているシンクを見過ごせなかった。

「待ってて、お兄ちゃん! 僕も加勢……」
「必要ない!」
「で、でも……」
「行け」

 そう言って、シンクはネギを見る。その彼の瞳にネギはハッとなると、強く頷いて、皆に向き直った。

「行きましょう」
「え? ちょ、ちょっとネギ……!」
「お兄ちゃんなら大丈夫です!」

 ネギが真っ先に走り出すと、ソレに続いて明日菜、刹那、アッシュ、アリエッタが追いかける。残ったイオンは屋根の上のシンクを見ると、彼は振り返り笑みを浮かべた。
 ソレを見てイオンは微笑むと、ネギ達の後に続いた。離れていくネギ達を見送り、シンクは黒獅子の方へと向き直る。

「いいのか? 折角の加勢を……」
「あのバカは、大局が見えず目先のことばかり考える。あいつ等が優先すべきは、木乃香を助けるコト。僕を手伝うなんてお門違いもイイとこさ」
「だが、お前の考えは奴らを死地へと追いやること。俺の仲間である2人……奴らでは到底、敵うまい」
「アンタ、何も分かってないね」
「何?」

 シンクの言葉に眉を寄せる黒獅子。シンクは笑みを浮かべ、顔を上げた。

「アイツは僕の弟だ。これぐらい、乗り越えて当然なんだよ」


「おおっ! やるやないか新入り! どうやって本山の結界を抜いたんや!? 最初からお前らに任せておけば良かったわ!」

 川辺にて、木乃香を拉致してきたコトに、天ヶ崎千草は上機嫌で笑った。木乃香は猿鬼に抱かれ、口にお札を貼られ、手足を縄で拘束されている。

「ふふ……これでこのかお嬢様は手に入った。後はお嬢様を連れて、あの場所まで行けばウチらの勝ちやな」
「そう上手くいくかな……」
「何や?」

 悦に浸る千草だったが、ペルソナの呟きに振り返る。ペルソナは、ある方角を見て、杖を伸ばした。千草もそちらを見ると、6人の人影が見えた。

「アレは……」
「天ヶ崎 千草!!」

 刹那を先頭に、ネギ、明日菜、アリエッタ、アッシュ、イオンの6人がやって来た。

「なぜ……」
「おやおや? 中々、丈夫な子達だね〜」

 白髪の少年は怪我が完治しているネギと刹那に眉を寄せる。その横でペルソナは棒読み口調で言うと、白髪の少年が睨む。

「そこまでだ! お嬢様を放せ!」
「またアンタらか」
「明日の朝にはお前を捕えに応援が来るぞ! 無駄な抵抗はやめ、大人しく投降するがイイ!」
「ふふん。応援が何ぼのもんや。あの場所まで行きさえすれば……」

 既に勝利を確信している千草は、川の上に立った。

「それよりも、アンタらにもお嬢様の力の一端を見せたるわ」

 本山で震えていた方が良かったと後悔する、と言って千草は木乃香にお札を貼った。すると、木乃香の身体から光が発し、川に幾つかの光の円と文字が浮かび上がった。

「オン・キリ・キリ・ヴァジャラ・ウーンハッタ」
「ん゛んっ!?」

 苦しそうに声を上げる木乃香。彼女の身体から発している光は更に強くなる。すると、光の円の中から何かが出て来た。
 一言で言い表すならば化け物。
 鬼、烏の化け物、狐の化け物……様々な物の怪が現れ、ネギ達を取り囲んだ。

「ちょっとちょっと、こんなのアリー!?」
「どうやら、このかさんの力を利用して手当たり次第に召喚したようですね」

 イオンが杖を強く握り締めて言うと、皆も戦闘態勢に入る。

「アンタらには、その鬼と遊んでてもらおか。ま、ガキやし殺さんよーにだけは言っとくわ。安心ときぃ」
「フン。小娘の力を借りなければ何も出来ない屑が偉そうに言うんじゃねぇ」
「…………何やて?」

 本人は情けをかけたつもりなのだろうが、アッシュの言葉により表情が変わった。アッシュは笑みを浮かべ、剣を千草に突きつける。

「聞こえなかった? ならもう一度言ってやる。そんな小娘の力が無ければ何も出来ない臆病者の屑が偉そうにするんじゃねぇ。反吐が出る」
「い、言わせておけば……!」

 千草は怒りでワナワナと震え、アッシュを睨む。しかし、彼女の肩にペルソナが手を置いて宥めた。

「落ち着いて。これはアナタを挑発する罠だ」
「挑発やて?」
「そう。アナタをこの場に引き止めておいて彼女の力を使わせないつもりだよ……相変わらず他人を怒らせるのが上手いんだから」
「何ぃ?」

 逆に挑発するような口ぶりのペルソナに、アッシュは睨み返す。しかし、イオンは、彼の口調に眉間に皺を寄せた。

「(相変わらず……?)」

 ペルソナは自分を不思議そうにジッと見ているイオンの視線に気づき、唇を歪める。

「さ、予定通り例の場所へ行こうか」
「せ、せやな……」

 言われて千草はペルソナと白髪の少年と共に木乃香を連れて、その場から離脱した。刹那は追いかけようとしたが、鬼達に邪魔されてしまった。

「おい、アリエッタ。お前の能力でこいつ等、倒せねぇか?」
「…………アリエッタのお友達、皆、お風呂で石にされちゃったです」

 残ったカードは移動用の大きな怪鳥だけだ、とアリエッタは顔を俯かせて答えた。

「何や何や。久々に呼ばれた思ったら……相手はおぼこい嬢ちゃん坊ちゃんかいな」
「悪いな、嬢ちゃん達。呼ばれたからには手加減できんのや。恨まんといてな」

 人の姿をしていない化け物100体近くと初めて対峙する明日菜は、顔を真っ青にし、ガタガタと震えながら刹那に言った。

「せ、刹那さん。こ、こんなの流石に私……」
「(人間じゃない相手に幻術は利かないし……そうなると)」

 イオンは、敵を一掃する為、自身の力を使おうと掌に魔力を集約させる。が、いきなりアッシュがその手を掴んで来た。

「? アッシュ?」
「お前は無闇に力を使うな……おい、子供教師」
「ハイ!」

 アッシュに言われ、ネギはカモから指示されていた呪文を発動させた。

「逆巻け、春の嵐、我らに風の加護を(ウェルタートゥル・テンペスタース・ウェーリス・ノービス・プロテクティオーナネム・アエリアーレム)  風花旋風 風障壁(フランス・パリエース・ウェンティ・ウェルテンティス)!!」

 すると、ネギ達を囲むように竜巻が発生した。

「こ、これって……」
「風の障壁です! ただし2、3分しか持ちません!!」
「よし! 手短に作戦立てようぜ! どうする? コイツはかなりマズい状況だ!!」
「二手に分かれるしかないだろう」

 アッシュの意見に刹那も頷いた。誰かがココで鬼達を引き付け、残りは木乃香救出に向かうというものだ。

「の、残るって誰が……」
「決まってる。俺だ」

 剣を振るってアッシュが言うと、刹那も自分も残ると言って来た。

「ちょ、ちょっと2人とも……!?」
「任せてください。ああいう化け物を退治調伏するのが私の元々の仕事ですから」
「多人数相手の戦闘には慣れている」
「じゃ、じゃあ私も残る!!」
「私も……」
「「ええーーーー!?」」

 いきなり残る発言した明日菜とアリエッタに、ネギと刹那が驚きの声を上げる。

「ア、アスナさん、アリエッタさん!?」
「だって、刹那さんをこんな鬼と、ヤクザ顔負けの口の悪さと態度のデカい人生という名の坂道をスキーのジャンプみたいに猛スピードで滑り落ちてるっぽいお兄さんと一緒に残しておけないよ!」
「おい待て、コラ!!」
「アリエッタは、お友達呼べないと余り力になれないです」

 アッシュは、またもや自分の呼称についてツッコミを入れるが、アリエッタにサラリと流された。

「で、でも……」
「いや、待てよ。案外イイ手かもしれねぇ。どうやら姐さんのハリセンは、ハタくだけで、召喚された化け物を送り返しちまう代物だ! あの鬼たちを相手にするにゃ最適だぜ!?」

 アリエッタに関しても、前衛がいれば魔法でサポートできるというカモの意見に、刹那は納得する。そして、更に作戦を立てた。

「現状、無理にあの白髪の少年と戦う必要はねぇんだ。このか姉さんを取り返せば充分! よし! 鬼どもは姐さんと刹那の姉さんとアリエッタの嬢ちゃん、そしてアッシュの兄貴が引き付けておく!
 兄貴とイオンの……姉さんは、一撃離脱でこのか姉さんを奪取!
 後は全力で逃げて、本山に向かってる援軍を待てばイイって寸法だ! どうだ!?」

 分の悪い賭けではあるが、この状況でソレ以外にイイ手立てはないので、皆、同意する。

「決まりだな! そうとなったらアレもやっとこうぜ! ズバッとブチュッとよぉ!」
「アレって?」
「キッスだよキス♪ 仮契約!」
「「えええ!?」」
「緊急事態だ! 手札は多い方がイイだろう!?」
「では、アリエッタもどうですか!?」
「!?」
「ナイスアイディア!!」

 ココで仮契約と言われて驚愕するネギ達。更にイオンの一言が加わって、アリエッタは表情を変えた。しかし、カモは妙案とばかりにグッと親指を立てる。

「イ、イオン様……」
「ひょっとしたら仮契約で、強力なアイテムが手に入るかもしれないじゃないですか?」
「で、でも……」
「相手は10歳だ。恥ずかしがる必要ねぇだろ?」
「そうだ! それに早くしないと障壁が消えるぜ!」

 乗り気じゃないアリエッタだったが、カモに急かされる。まず、刹那から仮契約することになった。

「す、すいません、ネギ先生」
「いえ、あの、こちらこそ……」

 互いに頬を赤らめて見詰め合う2人。そして、刹那が「いきます」と妙に意気込んでネギと唇を合わせると、カモの描いた魔法陣が光り輝いた。

「よっしゃ! 次は嬢ちゃんだ!」
「う、うぅ……」

 巻き込まれるような形で魔法陣の中に入るアリエッタ。彼女は頬を染め、チラッとアッシュを見る。

「アッシュ……恥ずかしいから目、閉じてて欲しいです」
「ったく……何恥ずかしがってんだ」

 呆れた口調で目を閉じるアッシュ。アリエッタは瞳を潤ませ、ネギの頬に手を添えて、唇を寄せる。ネギもゆっくりと目を閉じた。その瞬間、アリエッタの目が怪しく光る。
 アリエッタは、目を閉じているアッシュの服を掴むと、引っ張り寄せてネギの前に突き出した。
 そして両者の唇が触れ合う。

「「「「あ………」」」」

 明日菜、刹那、イオン、カモが揃って声を上げる。

「ん?」

 アッシュは目を開けると、驚いて目を見開いているネギの顔が間近にあった。そして、自分の唇に柔らかい感触が当たっていたので、現状を理解し、絶句する。

「っっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!?」
「手札は多い方がイイです」

 悲鳴にならない悲鳴を上げるアッシュを捨てて、呆然となってるネギにアリエッタは自分の唇を重ねた。

「と、とにかく仮契約成立ーーー!!!」


「ハァ……ハァ……!」
「ゼェ……ゼェ……!」

 一方、本山の屋敷の屋根の上では、シンクと黒獅子の激闘が続いていた。互いに激しく息を切らせているが、攻撃の手は止めない。
 シンクが腰を落として力を溜め、黒獅子に突っ込んで行く。その際、拳に炎が纏った。

「昂龍礫破!!」
「紫光雷牙閃!!」

 対して黒獅子は、鎌に電流を纏わせて大きく横に薙ぎ払う。シンクは笑みを浮かべると、拳の炎を消し、鎌に向かって腕を振った。

「何!?」

 電撃を帯びた鎌は、シンクの手甲を貫き、腕に突き刺さる。しかし、振り抜けなかった為、力が上手く流れておらず、切断にまでは至っていない。ポタポタ、と腕から血を垂らしながらも、シンクは笑みを浮かべ、黒獅子を蹴り上げた。

「ぬお!?」

 上空に吹き飛ばされる黒獅子。シンクも鎌を抜くと、地面を蹴って跳躍した。あっという間にシンクは黒獅子を抜いて、手に魔力を集中させる。

「ぬ! 生半可な攻撃は通用せんぞ!」

 黒獅子は手を交差させ、シンクの攻撃に備える。

「ああ、なら導師の術を喰らうがイイさ!!!」

 シンクが黒獅子に向かって掌を突き出すと、巨大な陣が空中に浮かび上がって光り輝いた。

「アカシック・トーメント!!!!」
「ぬおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 陣から発生する衝撃をモロに喰らう黒獅子。そして、シンクは拳を握り締め、一気に振り下ろした。2人は屋根を突き破り、屋敷の中へと落下する。
 畳を割り、シンクは激しく息を切らし、倒れている黒獅子を見下ろした。

「…………ラルゴ……」
「…………負けた。完敗だ、シンク」
「!?」

 大の字になって倒れながら満足そうに言った黒獅子の言葉に、シンクは驚愕する。

「ラルゴ? アンタ、記憶が……」
「いや……さっきまで無かったのは確かだ。封じられていた」
「封じられ……」
「ああ……封じられていた。あの仮面の男に」
「仮面?」
「恐ろしい力を持った男だ。この俺ですら手も足も出なかった……総長以上かもしれん、あの男は」

 黒獅子がそこまで言う相手、シンクは想像できず冷や汗を浮かべる。そして、仮面、という言葉を聞いて、昔の自分を思い出す。

「ネギ達が……危ない」
「そうだ。早く……行ってやれ」

 黒獅子は立ち上がろうとするが、ダメージが大きく起き上がれない。が、そこへシンクが彼の体を引っ張り、背中に手を回して立たせてやった。黒獅子は驚いた顔でシンクを見る。

「シンク?」
「とっとと行くよ。アンタを、そこまでする相手だったら手負いでもいた方がマシだ」
「………………お前、変わったな」
「かもね」

 素直に自分が変わったことを認めるシンク。黒獅子にとって、それは今まで見たことのない彼の姿だったが、良い傾向なので「はっはっは!」と愉快そうに笑った。


「そろそろか」
「ふふん、待たせよってからに」

 鬼達はネギ達を守る竜巻の威力が弱まったので、そろそろ出て来るかと思い、待ち構えている。そして、竜巻が晴れ、ネギ達の姿が見えた。
 しかし、ネギは自分達に向けて掌を広げていたので、鬼達は驚愕する。

「雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)!!」

 そして、雷を纏った竜巻が駆け抜けた。ネギの魔法は鬼達を飲み込み、空の彼方へと消えていく。その隙にネギは杖に、イオンはアリエッタの残された魔獣に乗って、空に飛んで行った。

「オヤビン、逃がしちまった!」
「20体は喰われたか。やーれやれ、西洋魔術師は、ワビサビってもんがなくてアカン」

 果たして一般人の女子中学生を拉致する東洋の陰陽術師にワビサビがあるのか不明だが、飛び去って行った2人に文句を垂れる鬼達。

「アッシュさん、しっかりしてくださーーーい!!!」
「ん?」

 その時、何やら悲鳴みたいな叫び声が聞こえたので振り返ると、そこには名前通り灰の塊となって膝をつき、茫然自失となっているアッシュがいた。

「何や、あの兄ちゃん、戦う前から落ち込んでのかい?」
「竜巻の中で何ぞあったんかいな〜?」

 まさか、男とキスしたなど誰も想像つくまい。

「すまんナタリア……俺はお前を差し置いて10歳の……しかも男なんかと……」
「アッシュさん、お気持ちは痛いほど分かりますけど、ココは戦ってくださーーーい!!」
「ほんっっっっっっとに役立たずね! その…………………………………懲役37年っぽいお兄さん!」
「そろそろネタなくなって来た?」
「あの〜……何や色々大変そうやけど、攻撃してエエか?」

 とりあえず、どうしたらイイのか分からない鬼達が尋ねる。アリエッタはため息を吐くと、奇妙なツギハギの人形を持った自分の描かれたカードを出す。

「よりによってこんな…………酷く不快な気分になるけど、ココはコレで戦うです」


 後書き
 アッシュ、ネギと仮契約。でもアリエッタの所為。ラルゴも記憶が復活しました。これで六神将は、1名を除いて、残り1人です。アッシュは、本当に戦闘じゃ活躍してないっぽい。
 一時、ラルゴとネギの仮契約なんて想像しちゃった為、酷く脱力してしまいました…………やめとこ。


 レス返し

 >コロ介さん
 はい、もう『あの方』です。今回の修学旅行編でもボスっぽいです。


 >龍さん
 今回もアリエッタが黒いです。根暗ッタ街道突っ走ってるっぽいです。
 そうですよね〜……イオン様女性化だとルークに絡ませたいですよね。


 >コージさん
 今回も余り目立っていない主人公ことシンク。
 アッシュは今回もヘタレ……いや、不幸でした。でも強いんですよね。超振動使えるし。ちなみに総長と明日菜のオジサマ好きはやりますよ。でも、あの人、27歳で、しずな先生より年下だったり……。


 >覇邪丸さん
 私もイオンが女性だったら喜んで抱きしめたいです。
 アッシュの場合、イオンを女として意識していません。


 >エのさん
 まだ魔弾さんが出てませんからね。
 イオン様の入浴シーン……いずれ!
 仮面の人、残酷です。ちなみに、預言は、ただの実力差を分からせるための皮肉です。

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