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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者34(Fate+オリ)」

在処 (2007-03-14 23:54)
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ぼー…………
っと。
私は何をするでもなく縁側に座って空を見上げる。
時刻は8時になろうかと言う所。
朝からいろいろな事があった。
桜の事は良いにしても、セイバー……
ほんの十数分食事が遅れたからって現界が困難になるって一体如何いう事?
幾らなんでも燃費悪すぎでしょ。

「アーチャー、こんな所で如何したんですか?」

おっと。
噂をすれば影、と言う言葉通り。
そんな事を考えていたらセイバーその人が来た。

「……日向ぼっこ?」
「日向ぼっこですか。
 確かに、こう天気が良いと気持ちがいいでしょうね」
「……うん」

確かに気持ちいい。
冬なので大気は冷たいけど、陽射しは暖かく、包み込まれるような安心感を与えてくれる。
こうしてぼーっとしてるのって好き。
なんとなく幸せになれるから。

「私も、一緒に座らせてもらってもかまいませんか?」
「……うん」

セイバーが私の横に座る。
私が足を投げ出して座ってるのに対し、セイバーは何故か正座。
……疲れないのかな?
セイバーが言うには、それほどでもないみたいだけど。
……まさか、回復力を痺れの回復に使ってるのかな?
気になったけど、気にしない事にした。


Fate/黒き刃を従えし者


ぼー…………っと。
二人になっても何をするでもなく日に当たって座ってる。
冷たい、と言うよりは涼しい風が頬をなでる。
強くなってきた陽射しと相俟って、それは丁度良く気持ちいい温度に感じる。

「…………」
「…………」

鳥の鳴き声、風の音。
木々のざわめき、と。
後猫やらなにやらの鳴き声。
いろんな音が聞こえてくる。
静に、穏やかに時間が過ぎる。
それは、何て幸せな時間なんだろう。
思い返せばここ最近、柄にもなく頑張りすぎた。
たまにはこういう時間があってもいいだろう。

「…………」
「…………」

セイバーと二人、並んで空を見上げる。
雲が形を変え、様々な物を見せてくれる。
動物のように見えるとき、顔のように見えるとき。
車のように見える物もあれば、魚のように見える物もある。
ぼーっと見ているとそれは、まるで空にキャンパスが浮かんでいるかのように様々な姿を見せる。
ふと、空を見上げていた私の顔に影がかかった。

「お茶入れてきたけど、いるか?」
「……ありがと」
「ありがとうございます、シロウ」

湯飲みを私とセイバーに渡し、お茶請けを乗せた盆を床において自らはセイバーの横に座る。
……日向ぼっこにもう一人加わった。

「ふー……ふー……」

ずずず、と。
ちょっと熱いので息を吹きかけながら啜る。
うん。
美味しい。
暖かい陽射しと涼しい風。
優しい音に流れる雲。
美味しいお茶にゆったり流れる時間。
うん。
幸せ。
この時間に勝る幸せなんてそうなないだろう。

「ふー……ふー……」

もう一口。
手でずっと持ってるにはお茶の入った湯飲みは熱すぎる。
だから、ずっと一箇所を持ち続けられないから湯飲みは手の中でクルクルと廻る。
……笑わないで。
熱い物は熱いんだから。

「いや、何かそういう仕草は可愛いなぁ、ってね」
「……そう?」

士郎、それは私が子供っぽいってこと?
……まぁ、そういうところは多々あるのかもしれないけど。
一応これでもサーヴァントなんだけどな……

「そうですね……アーチャーはどこか子供のような所がありますから」

……はっきり言った人もいる。
因みにセイバーは私みたいな事はせず、右手で持って、左手を底に添えている。
呑む時には息を吹きかけているけど、それも上品に見えるのはセイバーだからだろうか?
少なくとも私がやっても上品と言う形容はされないだろう。

「……こんな所に集まって何やってるのよ?」
「……日向ぼっこ?」
「はぁ?
 サーヴァントとマスターがそろって日向ぼっこ?
 士郎とセイバー、最近アーチャーに染められてるんじゃない?」

……それはどういう意味?
つまり、私が能天気だって事?
それから、そんな事いいながらもお茶請けの饅頭を取りつつ士郎の横に腰を下ろすリンは一体何なんだ?

「……ま、私も人の事言えた義理じゃないけどね」
「いいんじゃないか?
 ここの所どたばたしてたし、偶には」
「そうですね。
 ただ座っているだけだと言うのに、とても落ち着いた気分になる。
 ……もしかしたら、アーチャーの雰囲気が伝播しているのかも知れませんね」
「……そう?」
「そうね。
 なんて言うか……蒲公英の花畑?
 みたいな空気があるのよね」

たんぽぽって……
私の認識って一体……

「ま、それがアーチャーの良い所でもあるのよ。
 傍に居て安心できるって言うか……和むって言うか」
「そうだな。
 確かにアーチャーが居ると場が和むよな」
「えぇ。
 アーチャーと一緒に居て不機嫌を通す事は難しいですね」

……リンだけじゃなくて士郎とセイバーもそういう事言うか。
まったく……私達はサーヴァント。
戦う為に召喚されたって言うのにその評価は何だろう?
聖杯戦争なんて完璧にすっぱりと忘れ去っているんじゃなかろうか?
……流石にそれはないか。

「あー……なんか。
 こうしてるのって気持ちいいわ」
「そうですね。
 陽射しは暖かいですし、風は涼しいですから」
「暑過ぎず、寒過ぎず。
 こうやって日向ぼっこするには本当に良い天気だな」
「……お茶も美味しいし」
「そうね」
「そうですね」
「そうだな」

こと、と。
まだお茶が半分以上残っている湯飲みを自分の横に置く。
お茶はまだかなり熱く、ずっと持っているのは辛い。
まぁ、温くなったら味が落ちるからいつまでもそのままという訳にも行かないんだけど。
それにしても、何時の間にか聖杯戦争に参加してる主従二組がそろって日向ぼっこに興じてるなんて。
……なんて平和なんだろう。
いっその事、このまま聖杯戦争終っちゃえばいいのに。

「……ずっと、こんな時間が続けばいいですね」
「あぁ」
「……そうね。でも」
「えぇ、判ってます。
 でもそう望む事くらいは、許されてもいいと思いませんか?」
「……そうね。
 確かにその通りだわ」
「……うん」

今の時間を尊いと感じるのは私だけではなかったみたい。
そう。
今のこの時間は一時の夢。
些細なことで崩れてしまう、遠き幻想の世界。
それは確かにこの瞬間存在しているのに、思い出そうとしてもおぼろげにしか浮かばない。
ただ、幸せだった。
その想いだけは残る。
幻想の如きこの時間も、確かに存在しているのだと想いは語る。

「あの、皆さんそろって何してるんですか?」

揃いも揃って縁側に座ってぼーっとしてるのは余程奇妙に見えたのか。
起きて来た桜がなにやら困ったような顔でたずねてきた。
言いたい事が色々あっただろうに、その全てを吹き飛ばして疑問が先に立った様だ。
……そんなに奇妙か私達?

「……おはよう、桜」
「あ、おはようございます、アーチャーさん」
「桜、もう起きていいのか?」
「は、はい。
 すみません、ご迷惑おかけしました」
「いいわよ別に。
 私達、何か特別なことした訳でもないし」
「……うん」
「え……っと。
 それから、あの……」

恥ずかしそうに頬を染め、言い辛そうに口ごもりながらも桜は。
その一言を満面の笑みで持ってはっきりと告げた。

「ありがとうございました。
 これからも、よろしくお願いします」
「……あぁ。
 これからもよろしくな、桜」
「だから、感謝されるような事してないってば。
 まぁ、ヨロシク、桜?」
「……よろしく」
「よろしく、桜」

士郎が驚き、そして笑みで返事を返す。
リンは恥ずかしそうに顔を背け、でも耳まで真っ赤なので照れてるのが丸判り。
その言葉には大分、照れ隠しが含まれていた。
セイバーは比較的あっさりしてるけど。
桜が立ち直ったようで安心した、と。
そう呟いた言葉が私だけには聞こえた。

「え、えへへ……
 何か照れますね、こういうの」
「あ、あぁ。そうだな」

士郎と桜が微妙な笑みで視線を交わす。
……良かった。
本当に立ち直ったみたい。
少なくとも、朝までどっさり背負っていた影は全て消えている。
これなら心配することもないかな。

「えへへ……えっと。
 私、今幸せです。
 我ながら現金ですけど、ここに居てもいいって言ってもらえて、すごく安心しました。
 全部割り切った訳じゃないですけど。
 全部拭える訳じゃないですけど。
 今とっても幸せなんです。
 ……でも、今割り切れない事とかでまた迷惑かけちゃうかもしれません。
 それでも、私を受け入れてもらえますか?」
「あぁ、当然だ。
 また落ち込んだときにはまた引っ張りあげてやる。
 ここは桜の家でもあるんだから、ずっとここに居たって良いんだ」
「そうよ。
 それに今まで何もしてあげられなかった姉としては、少しくらい手を煩わせてくれる方がうれしいわ。
 ほら、桜もこっち来なさい」

士郎とリンが答える。
私とセイバーは見ているだけだけど。
桜がまた落ち込んだ時には支えたいと思う。
……そのときまで私が居るかどうかは判らないけど。
ただ、私が居なくても。
士郎とリンならもう、桜を失う様な事にはならないだろう。
桜が消えようとしても、無理やり引っ張り上げる。

「……はい。
 ありがとうございます」

桜もそれが判るのだろう。
ぽろぽろと涙を流しながら。
でもその顔は、ずっと笑顔のままだった。
嬉しいから、涙がこぼれる。
涙が流れるほど嬉しいって、きっとそうは無い。
だって、見ている方が幸せになれるような、本当に嬉しそうな笑顔なんだから。


後書き
うぁ……かなり間が空いた。
風邪なんか嫌いだ(ガク

今回はほのぼの。
とってもほのぼの。
きっとアーチャー効果。
固有結界『無限の癒し空間(アンリミテッド・ヒーリング・プラネット)』いや嘘ですが。

レス返し
<<遊恵さん
今回はほのぼのです。
アーチャーは……どうなるか秘密。
でもあげませんよ?
セイバー……まぁ、セイバーですからね(ぉぃ

<<最上さん
凛は……いつまで耐えられるかな?
何か百合の花が咲くまで後一歩なきがする……
いや、咲かせる気は今のところありませんが。

セイハイセンソウって何だっけ?(核爆

<<七誌さん
半覚醒状態で出るときにはそもそもそんな事考える余裕すらないのですよ。
なので無問題。

<<シヴァやんさん
アーチャーのコンセプトは萌えと燃えの融合……だった筈なのに。
何故か萌えの方が圧倒的に強い気がします。
一成あたりはころりと落ちそうですが。
ダメットさんは出てきません。
続編書くならそっちで出したい所ですが、終ってない内から続編考えてもね……

士郎&セイバーとアーチャーの関係はちょっと複雑なんで具体的な返答は避けますが。
まぁ、親近といえない事もないです。

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