「アンタ!!アタシの弟子になりなさい!!!」
「………………………なんでさ。」
「それはそうでしょ!あんた戦闘に関して、かなり”あまい“からだわさ。」
一本指を立てて、士郎に説明をした。
(「本当だったらここで、“凝”させるのだけど…それはまだ先の話だわね。」)
「…どうしてさ。」
ビスケの言葉に反撃したが……士郎の言葉に強さはなく、嘆きが含まれていた。
………………。
…………。
…………納得できなかった。
士郎は聖杯戦争での自分の過ちに気づき、それを改めるため努力してきたつもりだ。
それが戦闘の心構えである。
養父こと衛宮切嗣の行ってきた9を救うために1を切り捨てる“正義の味方”を覆し、自分の理想とする“皆を救う正義の味方”を貫くため、戦闘において自分は相手を殺すことはない。
これが間違いであったことをあの戦争で学んだ。
“力が無いものに敵の殺生を選択する余地はないということを”
必要なことは、殺さなければならない状況において“殺す覚悟”を持つこと。
殺すとき殺さなければ、自分の守りたい者達が傷つけられる。
あの戦争で、仲間に守ってもらうしか方法がない自分は、傲慢にも“皆を救う正義の味方”という理想から他人より自分の体が傷つくことを望んだが…結果は仲間に迷惑をかけ、尚且つ傷つくことになってしまった。
守りたい人を守ろうとしても力のない未熟な自分に、敵対してきたものを殺さない余裕はないのだ。
守りたい人を守るために殺さなければならない時は殺す――
――そうして来たつもりだ。
だから士郎は、この少女の言う“あまさ”を納得できずにいたのだ。
ビスケは、先の戦闘で“自分のあまさ”があることを認めない…いや、認めたくないのだろう。
この男の行動に少しあきれつつ、“あまさ”のフォローの取り方について、ため息ながら一言で述べた。
「“残心”」
「……………。」
「アンタは、アタシに話しかけるとき周囲を怠った。」
「しかし、野犬を殲滅し終えたときの“残心”は行っていないつもりだが………。」
「あまい!それは、スポーツとしての剣道や弓道で敵の反撃に備えるときのような単機戦における残心!実戦における残心は状況を把握した上で敵からの反撃に備えることをいうの!」
「……まさかアンタこの異常な状況に気づいていないの?」
「気配の察知はよかったけど、状況判断はまだまだね。」
「アンタの殲滅した“オーグ”は昔犬とオーグルをかけあわせて作り出されたという話もあるように、人を襲う。でもね、頭は馬鹿なの。自分の命を守るために群れをなすだけのおつむはないわけ。そのかわり、馬鹿な脳みそに反比例して危機感は非常に高いの。」
「………操られていたってことか。」
「正解。やっと気づいたようね。」
「そう、“オーグ”は自分の命を捨てているかのごとく、皆殺しにされた。それは、こちらのスキを作り出すための布石。敵の反撃はまだ終わっていない!」
――――!?
ビスケに警告され、周囲を警戒しはじめた。
「………。」
「まんまと、敵の誘いに乗るところだったのか…。」
(「また、おれは守るべきものを傷つけるところだったのか…。」)
つぶやくように、士郎は嘆き言葉を発した。
「そうゆうこと、今はアタシが警戒しているから、気を抜いたとしても大丈夫だけどね。」
(警告され、周囲の警戒を始めたことはこの際おいておくとしても“警戒中に他の事を考える”のはいただけないわね………これは徹底的に“シゴク”必要があるわね…ふふ)
ビスケは、会話の一区切りを終え、状況を考察。
(「どうやら、この男の戦闘能力が敵さんに過大評価を受けたおかげで逃げ出したようね!まあ、たしかに戦闘能力は小さくはないわさ。でも、こけながら撤退するほどではないでしょうに…。」)
ビスケは、気配を察知した瞬間に自然に展開していた“円”を解除し、もうすでに自分の中では弟子であるこの男、士郎へ先の戦闘の説教を続けようとしたが…。
「へっ?!」
その弟子を見て驚いてしまった。いくら弟子にしようとしていたとはいえ、ふと状況考察を一瞬した間に、弟子たる男の態度へと変わったギャップに驚かずにはいられなかった。
頭を垂れ、足をつかせ、弟子としてというよりは騎士が、姫に対して忠誠を誓うかのように鎮座していた。
士郎は一言。
「弟子にしてください。」
―――― Side 凛、セイバー ――――
「リン、お腹がすきました。何か作っていただきたい。」
「どうして私が作らないといかないのよ!」
「そうゆうのは、士郎にまかせ・・・・て…。あっ…」
失言であった。
あわてて料理を作り、セイバーに出した。
「どっ・・どう!?おいしい?」
「おいしいことにはおいしいのですが…士郎にくらべますと…料理に対する心が足りないかと。」
ハウ!凛の心をブレイク
「はぁ…。もう士郎の心のこもった食事は口にすることはないのでしょうね…。」
黄昏終わるとすぐさま、改めろといわんばかりに半目で睨む。
ジロリ
「…………………。(冷汗)」
「……………………………。」
この似たような状況は、長く続いていた。
あの事件以来、セイバーは士郎がかかわっていること(主に食事)の話を凛にもちかけ、ネチネチと針を刺すような攻撃を加えていた。
(朝)
「リン!朝食の用意はできてないのですか?」
「う〜〜〜ちょっと待って、今目を覚ましてくるから、用事はそのあと――。」
サバーン!
「目がさめましたか?リン。」
セイバーの手には、空のバケツ、そしてそこから滴る雫。
バケツ一杯の水を凛にかけていた。
「………。」
「まだ、目が覚めないようでしたいつでもおっしゃってください」
「今度は、こちらでいきます。」
チャキ!
凛は急いで朝食の準備に向かった。
………………。
…………。
(朝10:00)
「食事の用意はまだですかリン!…「そんなこと気が付かないから言ってよ」じゃありません。士郎はもっと気を利かせてくれました。私がお腹が減ることろ見計らっていつも昼食を用意してくれたものですよ!」
………………。
…………。
(正午12:00)
「リン!食事を作っていないのですが、…「さっき作ったじゃない」ではありません、あれはおやつです。昼食とは昼すなわち12:00にたべる食事です。」
………………。
…………。
(午後01:00)
「リン!何か食べるものを作ってください。…「さっき昼食作ったばかりじゃない」ではありません、昼食の後に食べるおやつです。えっ「そんなの存在しない」そんなことありません。ちゃんとシロウは用意してくれました。」
………………。
…………。
(午後02:00)
「リン!お腹がすきました。「さっき1時間前におやつ食べたばかりじゃない」ではありません。これは運動後に消費したエネルギーを補給するための食事なのです。ゆえにおやつにすぎません」
………………。
…………。
これが”おやつ”であってよかろうか…いや、ない。
おやつの範疇を超えている、いや絶対にセイバーが言う士郎用意する食事に捏造が入っている。間違いない!
と思いつつ、凛は姑のようなセイバーの言われるがままになっていた。
もはや、騎士王の誇りなど微塵も感じさせないセイバーの所業に厭きれと恐れを懐くが、その原因を作ってしまった凛に反撃する隙間はなかった。
(「……逃げたい。」)
(「一刻もはやく、この状況から抜け出したい…。士郎をこちらの呼び戻す魔術で忙しいからここに来れないわ、とか理由つけられたらどんなにいいか…。」)
どうにかこの状況から抜け出すきっかけがないだろうか。
―――ピンポーン!
(チャンス!)
玄関のチャイムの音が鳴り、凛は幸運の女神が私に来たと思い、意気揚々と来客に向かった。
「は〜い」
ガラガラ
「おじゃまします。あっ姉さん!先輩の家にいるなんて、めずらしいですね?」
――!?
ヒク!
凛の顔が引きつる。
(終わった…かも。)
この家で士郎の話題はまずい。その状況において、士郎のことでいっぱいの桜が登場した。
「サクラではありませんか?」
――!!凛は後ろから聞こえる声に身を震わせる。
「あっセイバーさん、お邪魔してます。ところで先輩はいますか?藤村先生から伝言預かっているんですけど…」
「……シロウは、この世から消えました。」
「「…………………………。」」
あまりの突然の発言に、凛と桜の顔がみるみる青ざめていく…。
「とっ…どうゆうことですか!!セイバーさんが守ってくれたんじゃないんですか!?」
セイバーにつかみかかる桜に対して一言。
「相手が身近な存在だったため気づきませんでした。申し訳ありません」
桜は次第に黒く変色いや、雰囲気が暗く、殺意を持ち始めた。
(…先輩、先輩をやった殺したヤツは誰!)
セイバーが守れなかったことはさておき、士郎が殺されたことに怒りを感じ復讐を考える桜…殺されたことは勘違いであるが…
「だれが…せんぱいをヤッタんですか〜?セイバーさん」
桜は誰もがおぞましく思う言葉でセイバーに問いただした。
「リンがやりました。」
(―――ちょっとセイバー!)
ピキ!
硬直する凛。
ぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
「ね〜え〜さ〜ん!!!!!!先輩を殺したったってどうゆうことですか!説明してください!!いや、もう死んでください!、むしろ死ね〜!(そして自分も死にます先輩)」
「ちょっちょっと待ってサクラ!勘違いよ、士郎は殺してないわ!」
あわてて凛は、妹の暴走を食い止めようとした。
「見苦しいですね?いいわけですか?遠坂先輩!もはやあなたは私の姉ではありません。」
「殺してない!殺してない!だから、殺してないわ。士郎は異世界にいったの………あっ。」
「「「…………………………。」」」
「どうゆうことかせ・つ・め・いしてくれますよね?」
「ごっごめんなさ〜い!」
黒桜に凛は連行されていった。