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▽レス始

「Fate/黒き刃を従えし者15(Fate+オリ)」

在処 (2007-02-20 00:09/2007-02-21 00:55)
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ふと、目が覚める。
目が覚める、と言う事は眠っていたんだろうか?
……眠っていたんだろう。
何時の間にかデフォルメされたひよこの絵が描かれたパジャマに着替えてるし……
と、いう事は、リンに髪を乾かされてる時に眠ってしまったのか……
って言うか、何でひよこ?
これも兄弟子からの贈り物とか言うのだろうか?
時計を見ると、今は12時より少し前。
昼の、という事は無いだろうから、三時間弱眠っていたのか。
眠る程疲れていたとも思えないし、髪を乾かされるのが気持ちよかったのかもしれない。
……うん。気持ちよかった。

「……」

どうやら皆寝ているらしい。
屋敷に解析をかけたけど、誰も動いている様子は無い。
リンはこの隣の部屋。
士郎は本館の二階、セイバーはその隣。
……ん?
士郎だけは寝ていなのかな?
かすかに動いているように感じる。
……寝返りを打ってるだけかも知れないけど。

「…………」

そういえば、と。
この屋敷の魔術的防御力を見てみる。
要するにどの程度の結界が張ってあるか、を。
結果。
……敵意を持った物が近付くと警告を発す。
ただそれだけ。
まぁ、問題ないのかもしれないけど。
長距離から広範囲破壊の宝具でも撃ちこまれれば一撃で終ってしまうだろう。
少し補強しておいた方がいいかもしれない。
……と、いっても。
私に使える魔術なんて『風王結界』を除いたら『解析』『強化』『変化』『投影』くらいなんだけど。
後、リンに教えてもらって少し『転換』『流動』を使えるくらい。
『転換』はまだ実践で使うには心もとないけど。
『強化』の魔術を『流動』させれば屋敷自体の強度を継続的に上げ続ける事もできる。
……うん。
やってみる価値はあるかもしれない。
私は屋敷を『解析』する。
……その存在意義を特化するのではなく、今回必要なのは敵の攻撃に耐え抜く剛性。
もっとも単純な高度強化で事足りる。
基本となる骨子を想定し、構造上の弱点を見出し、その弱点を克服する。
私は屋敷の造りを完全に理解し、構造的に脆い箇所に魔力を送り込み、『強化』する。
その『強化』が失われないうちに、再度魔力を流し込み『流動』させ、ここに全ての術式を完了する。

「……ふぅ」

それほど魔力を使った訳ではない。
『流動』させた魔力にしても、マナにまぎれてかなり判り辛いものである。
例えリン程の魔術師でも、集中して注意しなければ気づく事もないと思う。
もう一度屋敷を『解析』する。
うん。
見た目は変わらないが、その実強度は比べ物にならないほど上がっている。
材質は木なのに、実際の強度は鋼で作られているような物だ。
と、言っても弾性は木材のそれなので普通に暮らすだけなら気づかれる事もない。
これなら滅多な事では壊れはしないだろう。
……最も、サーヴァント相手にどの程度持つかは謎だけど。

「……あれ?」

解析して気付いたけど、部屋にいたはずの士郎が土蔵に移っている。
……さっきのは気のせいではなく、実際に起きていたらしい。

「……」

まぁ、するべき事がある訳でもないので、一寸様子を見に行ってみようか。


Fate/黒き刃を従える者


どれ程集中しているのだろうか?
私が扉を開けた事にも気付かず。
彼は目を半目にし、手に持った鉄の棒に魔力を通している。
……私が今行った魔術と同じ、『強化』。
その精度は私の比ではないけれど、その意志の強さは伝わってくる。
しかし。

――パキン

鉄の棒は音を立てて折れた。
自分以外の物に魔力を送り込む『強化』は、下手をすればその存在を壊す毒となりかねない。
さっきの私の『強化』も、失敗していたら屋敷その物を壊していた可能性がある。
……失敗するつもりは無かったとは言え、相談せず独断で行ったのは拙かったかもしれない。

「あっちゃ〜」

士郎が声を上げる。
失敗した棒を残念そうに見下ろす。

「……残念」
「っ! ……っと、アーチャーか。
 いきなりで一寸驚いたぞ」
「……気付いてなかっただけ」
「まぁ、そうかも知れないけど」

……ここは士郎の工房だろうか?
リンは『魔術師は他人に工房を見られるのを嫌う』といっていた。
出て行ったほうがいいかもしれない。

「ん? 帰るのか?」
「……工房は、他人に見られたくないって聞いた?」
「いや、工房って言ってもそんな大した物置いてあるわけじゃないし、別に構わないぞ?」

……許しが出たのなら、このまま立ち去るのも変かも知れない。
私は踵を返し、士郎の近くに行く。

「……さっきのは、『強化』?」
「あぁ。昨日ランサーに襲われた時数年振りに成功したから、
 感覚を忘れないうちに確実にモノにしておこうと思ってな」
「……基本となる骨子を解明し……構造上の弱点を見出し、それを克服する」

私は辺りに転がっていた鉄くずの一つを手に取り、『強化』を施す。
……本来私が彼に魔術を教える必要はないし、そもそも私は魔術師じゃない。
でも、少なくとも彼に教える分には困らない程度の知識があるし……
何より彼は気付いてないけど、今さっき屋敷を崩壊させかけたのだ。
いや、崩壊させる気は無かったけど。
その対価としてこの程度の事はしておいた方がいいだろう。
私は『強化』の成功した鉄くずを彼に渡す。

「……どう?」
「凄いな……俺の強化とは比べ物にもならない。
 いや、比べたら失礼か……」

そんな事はないと思う。
魔術の腕は今は私の方が上だけど、彼がこの先磨いていくのなら私の位置を越える可能性は高い。

「……いい。やってみて」
「あぁ。
 ――同調、開始」

それから彼は……驚いた事にその場で魔術回路を作り上げ、強化を開始した。
本来一度作ったらスイッチによって切り替えるべき魔術回路。
故に、彼の異常性がよく判った。

――パキン

先ほどと同じ音と共に鉄くずが砕けたのはそれから10分が経過した時。
魔術回路を作るのに5分、強化に5分。
時間を掛け過ぎとも言えるが、今はそれはいい。
問題は。

「っ……また失敗か。
 お手本まで見せてもらって失敗なんて……って、アーチャー?」
「……何?」

士郎の身体を『解析』して判った事がある。
士郎の魔術回路は独特。
神経と魔術回路が完全に融合している。
数は27。
そのうち一本だけ開きやすくなっているようだった。
……恐らくさっき作った物もこれなのだろう。
そして、やはりスイッチが出来ていない。
少ないにせよ魔力を汲み上げた魔術回路であるなら、その場で固定されてもおかしくないのに。

「いや、お手本見せてもらって失敗したって言っても、そこまで怒らなくても……」
「……違う」

どうやら私が彼を『解析』している事を、怒ったと思っているようだ。
それに答えて、私は原因を探る。
しかし……

「……駄目」
「な、なにがだ?」
「……原因がわからない」
「は? なんでさ?」

彼は彼の異常性が判っていない。
魔術回路を毎回作る事などしないのに。
それすらも知らないのだろう。
私は『解析』する方向性を変える。
即ち、私がスイッチを作る事は可能かどうか。
……これは程なく解決策が出た。
私の魔力で持って彼の魔術回路を開き、開ききったところでスイッチを作る。
そうすれば魔術回路を固定し彼の意思でオンオフを切り替えることが出来るだろう。

「……士郎、今から魔術回路を開く」
「は?」

……彼は全然判ってなかった。
まぁ、説明した事は省こう。

「つまり、アーチャーが俺の中の魔術回路を開いて固定してくれるって事か?」
「……まぁ、有体に言えばそう」
「いいのか? 魔術師の行動の基本は等価交換。
 俺にはそれに対する対価なんか払えないぞ?」
「……私は魔術師じゃない」

この事自体対価みたいなものだし。
それに、意識を保てなければ彼は死ぬ。

「判った。
 それじゃあ頼む」
「……いいの?
 死ぬかもしれない」
「それは俺が魔術使うたびに起ってるんだろ?
 ここで耐えられなきゃその内死ぬし、後の危険がなくなるならぜひ頼む」
「……判った」

私はシロウに上着を脱がせる。
別に服を着たままでも出来ない事も無いけど、成功率は下がるだろう。
間に何かを挟めば、それだけ魔力の調節が難しくなるのだから。
背中から直に士郎に触れ、魔力を回路に流し込む。

「―――っ!!」
「……意識を失わないように、回路を落ち着けるの」

士郎が悲鳴を……それでも上げなかった。
奥歯が砕けるのではないのかと言うほど噛み締め、身体を貫く激痛に耐える。
それは、普段彼が魔術回路を作り出すときの比ではない痛み。
……他人の魔力によって無理やり回路を開かれる痛み。
私は慎重に魔力を流しこみ、その回路を安定させようと試みる。
後は、士郎の身体が自力でスイッチを切り替えることが出来れば終わり。

――
―――
――――

暫くたって、漸く魔力回路がオフになった。
どれ程時間が経ったか。
ただの一つ、スイッチを作るだけで1、2時間は軽く持っていかれた。

「――っぁ」
「……終わり」

士郎は必死で息を整えている。
如何だろうか?
少なくとも今、魔力回路は閉じられている。

「……開いて」
「あぁ――同調、開始」

回路に魔力が満たされる。
うん。
彼の意思で制御できているようだ。
暫くは私の魔力が邪魔になって上手く練れないかも知れないが。
今日一日魔力を使わなければ問題ないだろう。
他の魔力回路は追々開いていけばいいだろう。
一つスイッチが付いているのならその感覚を彼自身の身体が覚え、次からは自動的に作れるはず。

「……今日は、魔術を使っちゃ駄目」
「そうなのか? さっそく試してみたいんだけど……」
「……私の魔力が回路を塞いでるから、暴発する」

何故か判らないけど、私の魔力は霧散せず、何故か士郎の回路に居座り続けてる。
それも一日も経てば消えるだろうけど……
無用な刺激は避けた方がいいと思う。
……暴発するかどうかは私自身判らないけど。

「そ、そうか。判った、今日は使わないよ」
「……うん。朝は私が作るから、少し寝た方がいい」

私は土蔵から出る。
その直ぐ後に、士郎も動き出す。

「なぁ、もし良かったらこれから魔術教えてもらえないか?」

後ろからかかったのは、予想外の問いだった。
……まぁ、私自身は特に問題は無い。
彼の使える魔術を見る限り、私との相性はいいだろう。
でも、私はリンのサーヴァント。
だから。

「……リンに訊かないと判らない」
「そっか。それもそうだな」
「……でも、私は別に構わない」
「あぁ。ありがとう」

それから、士郎は一度寝る為に部屋に戻った。
……時間は、3時を少し過ぎたところだった。
今から眠れば、3時間は寝る事ができるだろう。


後書き
勘違いされると拙いので言っておきます。
アーチャーは固有結界『無限の剣製』は持ってません。
よって『投影』は固有結界から零れ落ちた物ではなく、基本的には普通の魔術の『投影』と同じ物です。
時間がたつと世界の修正受けて魔力の気化と共に薄れて消えるアレです。
普通に魔力を注ぎ込んで1〜2分、全力で作って30分と言ったところです。
そういう理由から剣を持たせた訳ですし。

<<九頭竜さん
戦闘は暫くなさそうですねー。
まだほのぼのが続いていくと思いますよ。
学校行ったりはしますが。


次回はやっと某虎&士郎殺害回数癸韻療仂譴任后
……なんて紹介だ。

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