「何でこんなことになってんじゃあぁぁ〜!!!」
今、叫んでいるバンダナを巻きジージャンにジーパンを着た青年――横島忠夫――は遥か上空から落ちていた。
しかし、横島がこの程度では怪我を負う事はないだろう。なぜなら彼は大気圏を生身で突き抜け、大した怪我もなく記憶喪失だけで済み、とても人間とは「やかましいわ!!」思えない所業を成し遂げた男である。今でさえナレーションにつっこむと言う、電波ではないかと思われる行為もしている。
「ええーい!!ナレーションにつっこんでいる場合じゃねえか!出ろー!文珠ー!!」
なぜ、彼がこのような自体に陥ったかは少し時間をさかのぼる必要がある。
あれは数分前、彼が除霊作業を行ってるときのこと……。
彼は今、廃工場を歩いている。GSの仕事をするためである。
彼の上司は世界でも有数、日本ではトップと名高い、実力を持ったGS、美神令子。彼は命令で単独で依頼に出ている。
彼はついこの間まで妙神山で修業をしていたため、その修業の成果を証明するためAランクの依頼を命じられている。
本来Aランクの依頼は単独で行うものじゃないが、美神のストレスによるものか、一ヵ月以上の休暇を与え修業をさせてあげたのだからこのくらい当たり前、なそうである。
「美神さんもひでえよなー……。こんな大口の仕事を俺に任せるし。失敗したら失敗したらで何させるか分かんないしなあ……」
いくら妙神山で修業をして実力をつけたといっても、もともと弱腰の横島にとってみれば恐いものは怖いのである。
「まあ、やるしかないんだけど」
依頼の場所に着いた横島は顔は苦笑気味だが精神を統一し事態に備える。
「ん…!出やがったか」
そう言って横島は右手に霊波刀――栄光の手(ハンズ・オブ・グローリー)を出し左手にサイキックソーサーを出す。
右手に剣、左手に楯と騎士のようなスタイルで悪霊を待つ。
辺りの空気が変わり緊張が走る。
すると突然横島の周りに刺のようなものが出現し串刺しにしようと襲い掛かってくる。
「ちっ!(横は無理だから上だけか)」
舌打ちつつも冷静に状況を分析する。こういったところに以前では考えられない事が出ており、修業の成果が伺える。
横島は上に跳躍し、攻撃を避けるが敵もバカではなく既に横島の頭上におり止めを刺そうと猛攻を仕掛ける。
「くそっ!やっぱりアレは囮か!!」
悪態を吐くが悪霊の攻撃は目前まで迫ってきているため、そういった暇はあまりない。
瞬時に右足にサイキックソーサーを出し足場にして左に跳ぶ。跳ぶ際に栄光の手を伸ばし斬り付け、その箇所を狙い左手に出していたサイキックソーサーで追撃をする。
ドカン!!と小規模の爆発が起き悪霊を自分と反対側に弾き飛ばす。
「ふう、危なかったなあ」
ホッと一息吐くが先程の攻撃だけでは低級ならともかく中級以上の悪霊には大した効果はない。
ガアァァァァ!!!!
「やっぱあの程度じゃ無理か……」
改めて敵の強さを確認し次の手を相手の攻撃を避けながら模索する。
余裕とまではいかなくとも無駄なく攻撃を避ける横島に悪霊は怒り心頭したのか最初以上の猛攻が襲い掛かる。
「だあぁぁ!!そりゃ反則だろっ!!」
ビー玉のようなものを一個掌にだし、素早く【楯】と込める。横島を守る楯を展開させ、悪霊の攻撃を防ぐ。
攻撃を防いでいる間に、栄光の手を消しサイキックソーサーを複数展開させ、鎖状にまとめる。
「喰らいやがれ!!サイキックチェーンフレイル!!」
右手を振りかぶり悪霊の体に巻き付ける。それにより敵の動きを封じ連鎖爆発を生じさせる。
ドカドカドカドカーン!!!!
爆発により起きた煙が消え消滅しかかっている悪霊がそこにいた。
横島は素早く栄光の手を出し、霊波刀を出す。足に霊力を込め敵の目の前まで移動し、逆袈裟に斬り消滅させる。
「うしっ!依頼完了!!」
依頼を無事達成した横島はそのことを連絡するため美神から渡された携帯(発信機が付いており地球上ならどこでも居場所が分かる特別製)で報告を入れるためボタンを押す。
さて、突然だが今の状況を考えてみよう。霊障により辺りの磁場はかなり狂い、横島の霊力によって未知なるエネルギーが充満し、さらに携帯から出ている強力な電波。それらが巻き起こる中、悪霊を退治した際に起きた爆発があわさるとどうなるかというと……
バジッ!バジジジジッ!!
まあ、ぶっちゃけ空間に穴が開くわけで……。
プルルルルル、ピッ
「あ、おキヌちゃん?横島だけど依頼無事完了したって伝えてくれる?」
『はい、わかりました。おつかれさまです』
「ああ、おつか……れえぇぇ!!な、なんだ!?す、吸い込まれるぅ!!」
『よ、横島さん!!どうしたんですか!?』
「いや、なんか穴が開いててすごい、勢いで……くっも、もうあかん……!」
『大丈夫ですかっ!?「センセーに何かあったんでござるか!?」え、なんかね「ヨコシマがどうしたの!?」だから、その…「あんた達、落ち着きなさい!おキヌちゃん、代わってくれる?」あ、はい』
ゴチャゴチャしたなか、経験の差か冷静に対処し美神が電話を代わる。
『横島クン、一体何があったの?』
「あ、美神さん!それがですねー、非常にまずい状況で……」
『どういうことよ!?ちゃんと説明を「あの、美神さん」なにっ!?「なんか穴に吸い込まれてるって」はあ?』
おキヌの言ってることが分からず聞き返す。
『それが私にもよく分からなくて……』
その反応も当然のことだろう。何しろ仕事完了の電話が掛かってきたと思ったらいきなり吸い込まれそうといってきたのだから。
「み、美神さん…!!もう……限界っす!あと頼みます!!」
それだけを言い残し携帯を耳にあてたまま、空間にある穴に吸い込まれた。
横島が吸い込まれたと同時に穴が消え去る、それと同時に電話も切れた。
「ちょっと横島クン!!横島ぁ!!返事しなさいよっ!!」
「み、美神さん!横島さんに何かあったんですか!?」
受話器を耳にあてたまま狼狽する美神の反応に何事かと思い大声で聞く。
「先生に何かあったんでござるか!?」
「ヨコシマは大丈夫なの!?」
その声に反応し傍から見てたこの二人も美神に視線を向ける。
「……多分何だけどそれでも聞く?」
真剣な顔で、しかし内心では次にする行動を考えつつおキヌ達に目をやる。おキヌ達もその言葉を聞き無言で頷く。
美神もその反応を見て自分の推測を話し始める。
「まず確認しとくけどおキヌちゃん」
「はい」
「横島クンは穴に吸い込まれそうって言ったのよね」
「はい、最初はよく分かんなかったんですけど横島さんはなんか必死みたいでしたけど……」
「やっぱり……」
「ミカミ……もしかしてヨコシマの奴……」
美神は自分の推測を確信へ、タマモは嫌な予想に二人とも冷や汗を浮かべ、おキヌも顔を暗くし「まさか……」と言葉を詰まらせる。まあシロはただ一人、頭を抱え脂汗を浮かべ目を回している。
「ど、どういうことでござるか!?」
そんな事も分からないのかとため息を吐くタマモに聞く耳持たずの美神におキヌ。
無論タマモの反応に怒りに吠える。
「タマモっ!!バカにしてるのでござるか!!」
「バカにしてるも何も事実バカじゃない、このバカ犬」
「狼でござる!!」
いつものやり取りにおキヌは苦笑し、美神は頭をかかえる。額に浮かぶ青筋は怒りの現れだとよく分かる。
「アンタ達……いい加減にしなさいっ!!」
怒りとともに神も尻尾を巻いて逃げ出すほどの殺気を放ち黙らせる。
「くぅーん」
「きゅーん」
二人とも文字通り尻尾を巻いて机の下に隠れ怯えている。
「まったく…」
「ま、まあまあ…」
今だに怒りが納まらない美神に冷や汗を浮かべながらも抑えようとしているおキヌ。
「あ、話の途中だったわね。おそらく横島クンは何らかの原因で開いた穴に吸い込まれたようね」
「そ、それじゃあ横島さんは……」
戻ってくるか分からない、という推測に顔を青ざめる。
「ま、確証はないけどね。ママ達に連絡して調べに行きましょ」
美神の言葉に多少不安が取れたのか青ざめていた顔は戻り、怯えていた二人は今にもこの場を飛び出そうとしていた。
「それじゃ美神除霊事務所、出動よ!!」
みんなの顔には決意が表れていた。
ただあいつを助けたい、という決意が。
突如開いた穴に吸い込まれた横島は異空間を彷徨っていた。
「くっ…!どうすりゃいいんだ!?」
これからどうするか、必死に頭を働かせこの状態を打破する方法を考える。
「やっぱこれしかねえか」
そう言い、掌に出したのは二個の丸いビー玉のようなもの。そう、現代では横島にしか扱うことが出来ない、歴史上でも片手に数えるしか現れなかった宝貝や神器に並び称される物、【文珠】である。
横島は素早く文珠に【転】【移】と念を込める。
横島を文珠の光りが覆いその場から【転】【移】する。すると辺りには夕暮れ時の空と赤い雲があり下は肉眼では見ることすら出来ない。
そして冒頭にいたる。
横島は悩んでいた。文珠を出したのはいいが、なんと念を込めるかと。【転】【移】にするか?いやどこに飛ばされるか分かったもんではない。ならば【飛】【翔】は?飛んでいられる時間が分からないから却下となった。
横島の考えた手は不確定要素が多すぎるため使えない。しかし、悩んでいる時間も余りない。刻一刻と地面に向っているからだ。
結局横島は【浮】【遊】と込める事にした。瞬間的でも浮かんでしまえば大怪我を負うまでには至らないと考えたからだ。
すぐには発動させずに地面が見えてきたら発動させることにした。
横島は落下の中必死に恐怖と闘っていた。それも仕方がないことだろう。かなり上空から落下してるから当たり前の反応だ。
「(依頼は成功したけど文珠かなり使っちまったしなあ。かなりの折檻を受けるかもしれん)」
どうやら美神による折檻の事を考え恐怖していたようだ。
そんなことを考えるうちに地面が見えはじめたので文珠を発動させる。
先程と同様に光が横島を覆い、落下は止まらないがゆっくりとしたスピードで下りる。
しかし、無事に横島は下りることはできないだろう。なぜなら彼は、ギャグキャラなのだから。
手頃な木を見付けそこに下りようとする。枝に右足を置いた瞬間にツルッと滑らせ頭から地面へと落ちていった。
「なんでじゃあああ!!」
余りの理不尽さに叫んでいるが案外余裕が有るのかもしれない。
夕暮れの時間、彼――衛宮士郎――は林道を歩いていた。その道は所々にベンチが置いてある。その一つに士郎は腰を掛け何かに焼かれたように黒くなっている地面がある広場を見ていた。
すると、上から声が聞こえてくる。何かと思い視線を上に向ける。
「のわあああああ〜!!」
それを呆然と見つめる。そして、
「へぶし!!」
奇妙な声とともに地面に突き刺さる。頭から突っ込んでおり足は出ていてぴくぴくと動いている。
士郎は我に返り地面に突き刺さっている青年に駆け寄り声を掛ける。
「おい!!大丈夫か!?」
こうして彼らは出会ってしまった。まるで何かに導かれるように……。
人々は口を揃えこう言うだろう、その導くものの名前はFate(運命)と……
あとがきという名の言い訳
皆様初めましてさくらと申します。
前々からやりたかったクロスをとうとう実現しちゃいました。
Fateは私の別の小説でもネタとしては使いましたが話を書くのは初めてですから矛盾する点があるかもしれません。なにせFateはアニメと他サイトにあるSSを読んだだけですべてを把握してるわけじゃないないので(おい!
まあ、こんな未熟な私のことは知ってらっしゃる方がいるなら大変有り難いですね。
第三者の目線で書くのも初めてでおかしな点があるかもしれないですし。
最後に、こんな未熟な作品を読んで頂きありがとうございます。