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▽レス始

「例外なる使い魔 1−1 (ゼロの使い魔)」

伊上 (2006-11-29 18:33)
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 頭が痛い……

 少年はぼんやりとしていた。
 なぜか周りが暗い。しかし人の気配はする。
 冷静に考えて、眼を閉じていることに気がつき、
 ゆっくりと眼をあけたところで、

「あんた誰?」

 少女の声が、聞こえた。


 例外なる使い魔 1−1


 空は青く周りは草原が広がり、遠くには立派な城がいくつも見える。
 少年は上半身を起こして、頭痛を耐えながら少女の声に答えを返した。

「誰って……、俺は平賀才人だ」
「どこの平民?」
「は? 平民!?」

 頭痛を堪えて頭を振り、もう一度周りをよく見る。
 周りには、魔法使いの格好をした奴等がたくさんいた。

「……ちょっと待って、ココ、何処?」
「……? ここはトリステインよ。トリステイン魔法学院」
「…………マホウガクイン?」

 少年――才人――はそこまで聞いてブツブツとなにやら言い出した。
 しかし少女はそれを聞いてなく、中年の魔法使いを呼んだ。

「ミスタ・コルベール!」
「ふむ、なんだね? ミス・ヴァリエール」
「あの! もう一回召喚させてください!」

 しかし、コルベールと呼ばれた魔法使いは首を横に振った。

「それはだめだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!?」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君達は『使い魔』を召喚する。今、やっている通りだ。
 それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。
 一度呼び出した『使い魔』は変更することは出来ない。なぜなら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。
 好むと好まざるに係わらず、彼を使い魔にするしかない」
「でも! 平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
「ミス・ヴァリエール、これは伝統なんだ。例外は認められない。彼は……」

 コルベールは才人に指を差して、

「ただの平民かもしれないが呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。
 古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールにはあらゆるルールに優先する
 彼には君の使い魔になってもらわなくてはな。では、儀式を続けなさい」

 少女は肩を落として才人に近づき声をかけたが、才人は気づかない。
 しかし、少女はそれを気にかけずに杖を振って、呪文を唱え始める。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔なせ」

 そして少女――ルイズ――は、才人の額に杖を置き、顔を近づけてそのままキスをした。

「………? ――――ッッ??!?」
「終わりました」

 そういって、ルイズが立ち上がろうとしたところで、

「まてまてまてちょっと待て! いまナニをした!?」

 顔を真っ赤にして才人は正気に戻った。
 そのまま問い詰めようとしたところで、ルイズに顔面を思いっきり本気で殴られた。
 そして才人が気絶する前にルイズの声が聞こえた。

「ファーストキスだったのよ! このばかッッ!!」


 時刻は夜。

 気絶から目覚めた才人は無理やり起こされ、ルイズの部屋に連れてこられた。
 そして、どこの平民と改めて問われたところで、才人は事情を説明。

 自分はこの世界の住人ではない。
 日本と言うところにいた。
 そこには、貴族も魔法使いもいない。 

 と、才人は説明したが、

「アンタ、寝ぼけてるの?」

 ルイズに一蹴された。

 鞄の中にあったノートパソコンでどうにか信用してもらった。


「で、アンタには使い魔をやってもらうわ」
「……は?」
「心配しなくても、衣食住は保障するわ」

 違う、そーじゃねぇ。 才人は心の中で叫ぶ。

「……なんで俺が、使い魔しなきゃならないんだ」
「契約をしたから。手の甲のルーンが何よりの証拠よ」
「手の甲?」

 才人は手の甲を見る。
 手の甲にはなにやら文字みたいなのが刻まれていた。

「これが……証拠?」
「そうよ。『使い魔のルーン』といって、それが使い魔の証よ」
「…………これは消せんのか?」
「無理よ。消すには死ななくちゃならないわ」

 嫌な予感が広がってくる。
 しかし、ここまではあまりよくはないが、まだよかった。

「じゃあ、一つ聞くけど俺を元の世界に帰せる?」
「それも無理よ。アンタの世界とこっちの世界を繋ぐ魔法なんてないもの」
「呼び出せたのにか?」
「ほんとにそんな魔法はないの。それに別の世界なんて聞いたこともないし」

 才人は現時点で帰れないことが解った。
 この時点で絶望感が襲ってきたが、何とか頭を働かせる。

(現時点じゃあ帰ることは無理。つーか、不可能。
 ネットワーク関係かと思ったけど、事前に通告かしてくるし。
 どう考えても、このルイズって呼ばれたらしいな。
 ……どーする? 情報はないし誰かに連絡もとれない。
 しかたねぇ、使い魔になるしかねーか。)

「わかった。一応使い魔になってやる」
「使い魔のくせに、口の聞き方がなってないわよ」
「一応だ。帰る方法見つかったら直に帰るからな」 
「別にいいわよ。帰ってくれたら、新しい使い魔召喚できるしね」
「……? 別に気にせずに召喚すりゃいいじゃねーか」
「……新しい使い魔を召喚するには、今いる使い魔が死ななくてはいけないの」
「…………」
「それとも何? 死にたいの?」
「死にたくないんで、断る」

 才人はこれからのことについて考えたが、
 使い魔について何も知らないことに気が付く。

「つーかさ、使い魔って何をするんだ?」
「ああ、教えてなかったわね。まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力が与えられるわ」
「ふーん、使い魔の見ている物が主人にも見えるってわけだ」
「そうよ。でも、アンタじゃ無理みたいね。わたし、何も見えないもん」
「俺のせいにはするなよ」
「しないわよ。それから、使い魔は主人の望む物を見つけてくるのよ。例えば秘薬とかね」
「秘薬……? ああ、痩せたり若返ったり女性の胸が大きくなるやつか」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!? 今なんて言ったの!? 特に最後のやつ!!」
「ん? ああ、豊胸薬ね。つーか、今存在してないぞ」
「な!? なんでよ!?」
「いや、作った人等が身の危険を感じて一切合財を処分したらしい」
「ううぅ〜〜〜〜」

 それを聞いて、ルイズは唸りだした。
 才人は、少し昔のことを思い出す。
 確か、『女』という存在であれば誰にでも効くという話だった。
 そして、九郎さんに会ったときに聞いたんだったな。
 その時の話の内容は――――――

『………という薬なんだ、なにか知っていないか?』
『えーと、九郎さん? 性転換でもするんですか?』
『誰がするかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
『じゃあ何でそんな薬を?』
『…………頼む、聞かないでくれ』
『……えーと、今、後ろから凄い気を放っている方の為ですか?』
『……………頼む、察してくれ』

 そこで、会話をやめて後ろを振り向いて―――――――


 あれ? 思い出せない。それに、なぜか思い出そうとすると体が震えて冷や汗が出る。
 そこで才人は思い出すことを止めた。
 そして、ルイズの話を聞くことに集中する。
 ルイズはまだ唸っていたが、諦めたのか、ため息を吐いて話の続きを始めた。

「……少し脱線しちゃったけど、これが一番重要で敵から主人を守ることよ。……でも、これも無理ね。アンタ弱そうだし」
「やかまし」
「だから、アンタに出来そうなことをやらせてあげる。掃除、洗濯、その他雑用」
「はぁ……。わかりましたよ」
「さてと、そろそろ眠くなっちゃったわ」
「ふぅん、で、俺はどこで寝ればいいの」

 才人の質問にルイズは簡単に一言。

「床」
「………」
「だって、ベッドは一つしかないんだから」
「いや、もーいから毛布か何か頂戴」

 ルイズは才人に毛布を一枚投げ渡す。
 才人が毛布を受け取って、そしてルイズを見て――――固まった。
 理由は、ルイズのブラウスのボタンが外れていて下着が見えたから。

「ちょっとまて!? なにしてんの!?」
「着替えているのよ」
「8文字!? いや違う! 俺のいないところできがえろよ!」
「なんでよ?」
「少し嬉しいけどさ、まずいだろ!? 色々と」
「まずくないわよ」
「え? ここの魔法使いって男に見られても平気なの?」
「男? 誰が? 使い魔に見られたってなんとも思わないわ」

 少し本音を漏らしてしまった才人だが、段々と冷めてきた。
 自分を完全に男として見ていない事を理解した。
 だから、これから何があろうと興奮しないで置こうと決意した―――――が、

 ルイズの方から何か飛んできた。
 才人が訝しげに思い、飛んできた何かを掴んで見る。

 ――――――白のパンティー。後、白のキャミソール。

 いきなり決意が崩れそうになった。

「ソレ、明日に洗濯しておいてね」
「…………下着も洗濯しないといけないのか?」
「当たり前よ。アンタ、私の使い魔でしょ」
「もーいい。明日にする。つーか、寝る」

 なんとか、興奮はしなかったが本当に疲れ果てた。
 ルイズが指を鳴らして部屋のランプを消したが、才人は気にしなかった。
 そして、そのまま眠りに落ちていった。

 どこで洗濯すればいいのかと、考えながら。

 こうして、最初に召喚された一日は終わった。




 伊上です。前回厳しい意見もありましたが、頑張っていきますので
 どうか見守ってください。

 それでは、また。
 

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