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「機動戦士ガンダムSEED DESTINY IF STORY (SEED)」

ダヌ (2006-10-13 00:41/2006-10-13 18:33)
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「やあ、これは姫。遠路お越し頂き誠に申し訳ありません。」
「いや、デュランダル議長もご多忙のところをお時間をとってくれて、ありがたく思う。」

長い黒髪をなびかせる男の言葉が合図となり、プラント・オーブ首脳会談が始まる。
非公式の会談であり、場所もプラント首都『アプリリウス』ではなく、軍事工業プラント『アーモリーワン』にあるザフト基地の一室である。

部屋の中には3人の男女。
一人はプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル。
戦後、疲弊したプラントを驚くほどの早さで建て直し、各国と円滑な関係を結びつつあるプラントの主導者である。
その実績を背景に、卓越した識見を持つ有能な政治家として高い名声を誇っている。
彼と向かい合う形で席についている女性の名はカガリ・ユラ・アスハ。
弱冠18歳ながら、オーブ連合首長国の代表首長である。
先の大戦において大きな被害を受け、大西洋連邦の庇護下となったオーブであったが、持ち前の技術力を基盤に急速な復興を遂げ、現在は大西洋連邦からも独立を果たし、かつてのような存在感を徐々に持ち始めている。
彼女自身とアスハ家は国民からの絶大な人気を誇ってはいたが、その政策能力に関してはこれからの行動次第、というのが大方の評価である。
そして、最後の一人はデュランダルの補佐官である。
その身を包む赤い軍服から、彼がザフトからの出向者であるということがわかる。
胸元には翼のような形をした勲章が光っている。
ザフトにおいて、エリートの中のエリートにしか許されることのない『フェイス』の勲章。
通常の命令系統には属さず、軍功、人格、共に優れた者しか選ばれない、議長直属の特務隊の象徴である。
歳の頃は、10代後半。プラントの実力主義を考慮しても、議長付きの武官としては過去に例を見ない若さであるが、それだけ彼が有能だということであろう。
この場に同伴しているのが彼一人ということからもデュランダルの信頼の程が伺えた。


機動戦士SEED DESTINY IF STORY


デュランダルの言葉を皮切りに、会談は始まった。
形式的な挨拶を簡単に済ませ、カガリは今回の議題について早速切り出す。
早急すぎるその話しぶりに、デュランダルは若さを感じるが、そのようなことは一切顔には出さず、受け答えていく。

「さて、今回は緊急かつ、複雑な案件のご相談とお聞きしていますが、その案件とはどのようなものなのでしょうか?」
「私にはそう複雑とも思えぬのだがな。」

デュランダルの言葉にカガリは挑戦的に応える。

「かのオーブ戦の折に流出した我がオーブの技術と人的資源の、プラントでの軍事利用を即座にやめて頂きたい。我々オーブは以前から同様の要請を申し入れ続けているはずだ。」

デュランダルはその言葉に柔らかな笑みを浮かべながら応える。

「確かにそのような申し入れはお聞きしています。しかし、これは非常に複雑な問題なのですよ。」
「何が複雑な問題だ!あれほどの大戦を経験しながら、まだなお力を求める必要があるのか!」
「しかし姫。我々プラントは先の大戦から、多くの同胞を向かえ入れました。確かにその中にはオーブのモルゲンレーテで勤めていた者たちもいます。そして、彼らには彼らの持つ技術を我がプラントに役立ててもらっています。」
「やはり…」
「しかし、それは一部の者たちです。他の技術を持った者にはまた違った分野で活躍してもらっている。宇宙空間という極めて特異な地域に住む我々にとって、一人一人の持つ技術、能力は大切な資源なのです。残念ながら我々プラントに住む者の9割は工場労働者、もしくは技術者として生計をたてています。私には彼らから生きる術を奪うことはできません。」
「しかし…」
「彼らは既にプラントの国民です。私は何よりも彼らの幸せを考えなければなりません。ですから、今回の案件は検討させて頂きますが、やはり難しいと私は考えます。もちろんこれは私の私見ですから、評議会の返答はまた後日お伝えすることになりますが。」

自分の無力さに打ち震えるカガリを、その場にいるフェイスの青年は痛ましそうな表情で見守っている。
カガリは搾り出すように、声を出す。

「だが!強すぎる力はまた争いを呼ぶ!」

その純粋な叫びを受け止めながら、デュランダルは静かに応える。

「いいえ、姫。争いがなくならぬから力が必要なのです。」

どこか達観したような目でデュランダルは言葉を紡ぐ。
さらに彼が言葉を続けようとした瞬間、突然の爆発音が辺りを包みこんだ。


爆発音を契機に、プラント内は警報音に包まれていた。
フェイスの青年も慌てたように備え付けの通信機を用いて連絡を始める。

「なに!襲撃者にMSが奪われただと!ああ、そうだな。シンは出せるんだな。すぐに向かわせてくれ。ああ。俺もすぐにいく。」

手短に通信を終わらせ、青年はデュランダルとカガリに状況を説明する。

「議長、カオス、ガイア、アビスの三機が奪取されました。賊の正体は不明。現在シン・アスカのインパルスがこれらを追っています。ここは危険ですので、お二方はミネルバの方にお移りください。私はこれよりザクで奪還を試みたいと思います。よろしいでしょうか?」
「ああ。よろしく頼むよ。」

デュランダルが即座に了承すると、青年はすぐに警護の者を集める。
慌しい中、カガリがその青年に声をかけようとするが、カガリが言葉を発する前にその青年の方から話しかける。

「大丈夫です。議長も代表も、私が必ずお守りします。」

その言葉に込められた真摯な想いを受け止めながら、カガリはその背中を黙って見つめていた。


デュランダルとカガリを送り出した青年はすぐに自分の仕事に取り掛かる。
最近配備されたばかりのザクをフェイス権限で譲り受け、慌しくOSをチェックする。

「強すぎる力は争いを呼ぶ…か。確かにそうなのかもしれないが…力がなくば、誰も守れやしない!」

青年はカガリの顔を思い出しながら、ザクを発進させる。

「認識番号285002特務隊フェイス所属、アスラン・ザラ、ザク出る!」

心地よい加速を感じながら、アスラン・ザラは新たな戦場へとその身を向かわせていった。


〜つづく〜

あとがき
最近SEEDのマンガを読んで、書きたくなってしまい、やってしまいました。再構成、もしアスランがザフトに残ってたら、というお話しです。責任感が強い(というイメージのある)アスランだったら残るんじゃないかな、と思ったのが切欠です。次回は来週くらいになりますが、読んで頂けたら嬉しいです。それでは、失礼いたします。

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