インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「BALDR FORCE RETURNER(BALDR FORCE)」

気分屋 (2006-10-10 20:45/2006-10-15 15:27)
>NEXT


           BALDR FORCE RETURNER  プロローグ


「ゴメンな、燐。
 やっぱり俺は生きている限り現実世界に戻る努力をしないといけないと思うんだ」
「…ぐすっ……」
燐は悲しそうな顔で黙って俺の顔を見つめる。
「……そうだよね、……燐もほんとはわかってたよ」
苦労して泣き顔に笑顔を浮かべようとしながら燐がつぶやく
「ごめん、燐……本当にごめんな、燐」
「ううん……燐こそごめんね…つい、わがまま言っちゃって」
ごしごしと眼をこする燐を俺はぎゅっと強く抱きしめる
「燐は大丈夫…燐はお兄ちゃんのこと、誰よりもよく分かっているから」
「……燐」
「燐はお兄ちゃんのことが大好きだよ……」
「ああ、俺だって」
燐が俺にぎゅっと頬を押し付ける。
すべすべとした感触が心地よく俺の頬を擦りつける。
「じゃあ、俺はもう行くよ……」
「うん…気をつけて…って言うのもヘンだよね」
燐が悲しい気持ちをごまかすように、舌をペロッと突き出してみせる。
「…いってらっしゃい、お兄ちゃん」
「ああ、燐……」
名残惜しく思いながらも俺はチャットルームから足を踏み出した。


「ようやく決心がついたか」
「ああ、折角、お前にかばってもらった命だ。 意地でも生き返らないと、お前に申し訳ないからな……」
チャットルームから路地裏に移動すると優哉が待っていた。
「ははっ、『俺の分まで頑張ってくれ』っていうのが、こんな場面の定番なのかな?」
俺たちは懐かしい街並みを、しばらくいっしょに歩いていく…。
「しかしお前、俺の仇討とうとしてたんだって? よせよせ、お前にそんなのは似合わないよ」
「ちぇっ、誰のおかげでそこまで思いつめたと思ってるんだよ?」
「お前は『草原の狼(ステッペンウルフ)』なんだ…復讐や後悔なんかで立ち止まってちゃもったいないよ」
「立ち止まらずにうろつきか回れか……いったい行き着く果てはどこなんだろうな?」
……優哉からの返事はない、横を見ると、いつの間にか優哉の姿は消えていた。
「……まぁ、人の行き着く果てはただ一つか」
俺はため息をつくと、道端に腰掛け、一気に手首をナイフで切り裂く。
「ふぅ……」
どくどくとあふれる血を俺は下水溝に垂れ流す…夕日がひどく眩しく、俺は薄めで街の光景をうつろに見つめる……。
……やがて眠気がこみ上げ、俺はうつらうつらと道端にもたれて眠りにつく。
「……眠い…それになんか寒いや……」
…意識がやみに包まれる寸前
誰かの懐かしい手が
俺を導くように包み込んだ……


「うわーーーーーーーーー!?!!??!」
脳が焼き切れそうな灼熱感が突如透を襲った。
「透! すぐにそこから動くんだ!!」
(誰かの声が聞こえる……さっきも聞いたような懐かしいような声)
頭の片隅でそんなこと思いつつ身体を動かそうとするが襲い来る苦痛のせいでまったく動いてくれない。
「くそっ!」
一瞬か数分かわからない苦痛の時間は突如背後から襲った衝撃で終わりを告げた。
「…う…ぁ……」
「大丈夫か、透!? しっかりしろ!!」
(身体は…痛い……けど動かないところはないみたいだな)
「あ…ぁ」
いまだ衝撃の抜けきらない頭で隣から聞こえてくる声に、かろうじて返事といえるか言えないかといったものを返す。
(ここはどこなんだ。さっきまでリヴァイアサンの中にいてそれで確か自殺して現実世界に戻ろうとしてたんだよな。とするとさっきの灼熱感はリヴァイアサンからの攻撃か?)
「おい! 意識があるなら返事をしろ、透!!」
「大丈夫だよ、優哉―――って何で優哉がここにいるんだ!?
 ここはどこだよ!? まさかあの世ってやつか?!」
ハッキリしだした意識に長年聞きなれ、そして先ほども会話していた人物の声が聞こえて反射的に返事をしたが透はおかしなことに気付いた。
優哉は彩音に殺されてその魂の欠片がかろうじてリヴァイアサンの中にいただけの存在だったはず。
自殺をして現実世界へ復帰しようとした透と会うことは、あの世があるとすればそこを除いてないはずだった。
「何を言ってやがる! 今日は俺といっしょに軍のデータベースに侵入して、今は軍とテロリストから逃げているところだろうが!!
 ついでに言うとさっきお前が感じていた苦痛は軍の攻性防壁に引っかかったからだ」
「は? 軍――侵入――テロリスト―攻性防壁―――――ってまさか」
透は自分の顔が引き攣っているのがはっきりとわかった。
自分はこの状況に酷似している場面を知っている、しかしそれはありえないだろう。
もう過ぎてしまった過去がもう一度訪れるなんて。だがそれ以外でこの状況はどう説明するすればいいのか。
現状を把握しようとすればするほど思考は混乱のループに陥っていく。
「おい! しっかりしろ透!!
 ちっ! 月菜、周囲の状況はどうだ?」
攻性防壁の影響か、反応が鈍い透を一時休ませるために優哉は月菜に現状を確認する。
『え!? えっと大丈夫周囲に機影は―――っ! ジャミングしながらそっちに移動している戦闘中の機影が二機!
 もうすぐ来るから二人とも物陰に隠れて!!』
「おい、聞いたか透。
 見つからないように隠れるぞ」
月菜の報告を受けると優哉は徹に確認をとると同時に、透のシュミクラムを抱えながら物陰に移動した。


それから程なく激しい戦闘をしながら透たちの方向に移動してくる二体のシュミクラムが現れた。
片方は、白いがっしりとしたフォルムの軍の標準型のシュミクラムで接近・遠距離をこなせるように左手は銃器を装備し、右手は無手で肘の辺りにシールドらしきものを装備している。
もう一方は全身を黒で染めた高出力のカスタムメイド機種。シャープな外見が高速戦闘を得意としていることをうかがわせ、銃器らしきものを装備していないことから接近戦を得意としていることが見て取れた。
(――うそ―だろ――――あの黒い機体はゲンハ、白いのは彩音じゃないか
 それにこの場所―――まさか本当に過去に飛ばされたって言うのか!?)
優哉になすがままにされて物陰から混乱しながらも眺めていた透の瞳に徐々に理解の色が出てきた。それでしか説明できない、しかし本当にそうなのかという疑念がどうも払拭できないでいた。
此方に移動してくる二機の戦闘は、透達のいるフロアまで来る前にうまく懐に入り込んだ黒い機体のクローによって白い機体は吹き飛ばされ勝負がついた。
そのまま黒い機体は止めを刺すべく白い機体に近づき、これで最後だとばかりにクローを振り上げる。
しかしその瞬間、機をうかがっていたのか白い機体が閃光と共に変形して黒い機体を弾き飛ばした。


変形した白いシュミクラムは、先ほどまでのがっしりとしたフォルムからは程遠い線の細い胴体部を持ち、飛び道具はなく長い両腕に大きな三爪のクローを装備していた。
「外見を変形!? 冗談だろ!」
“前回”この戦闘を見たとき自分も驚いたのだから隣で優哉が驚いているがソレもそうだろうなと未だ混乱している頭の片隅で透は思った。
しかし、専門的なネットワークの知識を持っていれば驚いても無理はない。
ネットワーク上で操縦しているシュミクラムは感覚で言えば自分自身だ。ネットワーク上、しかもシュミクラムの状態であるからこそ変形が可能になっているが、自分自身の身体が変形しているような感覚は受けなければならないのだ。イメージとしては、両腕を背中のほうに折りたたみ身体をえびぞり状にして頭を股の間を舐められるような位置に持ってくるといった感じだろうか。誰が好んでそんな方法をとるだろうか。少なくとも二人はそんな感覚はごめんだった。
変形の甲斐があったか白いシュミクラムは先ほどとは違った高速接近戦等を仕掛けていた。その実力は一般レベルからは頭ひとつ抜きん出ており、エースパイロットといえるレベルだった。
「エースパイロット同士の戦闘か……決闘といったところか」
物陰から戦闘をうかがっていた優哉が誰ともなしにつぶやく。
その瞳には冷静に状況を判断しようとする理性と、ばれずに過ぎ去ってくれという焦燥が浮かんでいた。
「あぁ、けどあのままじゃゲン…テロリストのほうが勝つな」
「! 透、もう大丈夫なのか?」
「あぁ、さっきは悪かった。少し混乱していたみたいだ」
「気にするな、お前が無事でないよりだ」
反応を期待せず出した言葉を返されていささか驚きながら優哉は透の調子が戻ってきたことに安堵する。
優哉が安心している一方で、透はこれからすぐに起こることについての対策を考えていた。
(“前回”はここで優哉が死んでしまった。
これが過去だって言うのはまだ信じられないけど二度も優哉を死なせるなんて嫌だ!)
透は何故自分がこのような状況に置かれているのか疑問に思うが、もしこれが過去ならこれから起こる悲劇は回避したかった。
(思い出せ! このあとどうなったか!!
確か……“前回”は彩音がゲンハにやられて意識が朦朧としているうちに…近くにいたシュミクラムを無自覚に攻撃……したんだったよな。
防ぐ手段は彩音を勝たせること……だめだ、俺も優哉も攻性防壁を無理やり通過した影響でボロボロ、あの戦闘に横槍を入れることのできる状態じゃない。入ったところで瞬殺されるのがおちだ。
なら、彩音からの攻撃を防ぐしかない……これも今の状態じゃできるかどうか微妙だ。できてもそれほど長くは持たない。
他に、他に何か策は――)
「おい、そろそろ戦闘が終わりそうだぞ」
優哉の声に反応して戦闘を見てみると、透が一人思考の中に沈んでいる間に決着がつくほどの間がたったようだ。不安定な体勢で白いシュミクラムが黒いシュミクラムの攻撃を防いでいる。
次の瞬間、一か八かの賭けに出た白いシュミクラムが僅かに開いた間合いを利用して突進しながら右のクローを突き出した。
しかし黒いシュミクラムはその攻撃を見切り後退してかわすと、相手の動きが止まった瞬間に懐に飛び込に、下から巻き上げるよう刃物で切りあげながら空中に浮かし地面に叩き落とす。さらに追い討ちとばかりに落下エネルギーを加えた一撃を地面に叩き付けられて動きの止まった相手に叩き込んだ。
白いシュミクラムは最後の一撃を受けて機体のあちこちからスパークを出しながら動かなくなった。
その様子を黒いシュミクラムは一瞥して、撤退していった。


「……ふぅ、ようやく引いてくれたか」
黒い機体が完全に見えなくなってから優哉は安堵の息を吐いた。
相手は高出力のカスタムメイド機種、見つかったら命はなかっただろう。
しかし、安全な状況になっても透の表情は晴れなかった。
(くそっ! 結局策が思いつかないうちに決着がついたか。
 こうなったら彩音が立ち上がるより早く脱出するしかない!)
「急ごう優哉! このままここにいても仕方がない!
 月菜は俺たちが脱出可能になったらすぐにログアウトさせてくれ!」
「あ、あぁ。そうだな」
「わ、わかったわ」
優哉の返事は後回しだとばかりに透はすぐに行動を開始した。
そして何か鬼気迫るものを透から感じた優哉と月菜も戸惑いつつも行動を開始した。
(ごめんな彩音、怪我してるのに無視するようなまねをして。
 でもこれが、優哉がお前に殺されない、お前がテロリスト以外を殺さなくてすむ方法なんだ。
 もうすぐ軍の連中が助けに来るから、それまで待っていてくれ)
未だスパークの止まらない彩音の機体の横を進みながら心の中で謝罪を告げる。
リヴァイアサンの中で見た、あの有りえたかもしれない未来は今でも鮮明に思い出せる。
力を合わせてゲンハの魔の手から逃れ、幸せを勝ち取ったあの瞬間も覚えている。
そんな自分の“愛する”女性が瀕死の状態にあるのに無視することしかできない状況に歯噛みしながら透は脱出ゲートに辿り着いた。
「さぁ、さっさとこのゲートを解析して脱出するぞ優哉」
「………」
「優哉? どうしたんだ?」
先ほどまで自分の後についてきていたはずの相棒からの反応がないことにいぶかしむ。
「ワイアード…ゴースト」
「っ!」
優哉の漏らした言葉に反応して、優哉の目線の先をたどる。
そして其処には、透の予想どおりの水色の髪を大きなリボンで結んだ白い少女が浮かんでいた。
「憐!」
「!?」
透は思わず叫んでしまった。
先ほどまでいた世界とは違うと思われる場所でまた愛する少女に会うことができたのだ。喜びが先走って大きなリアクションをしてしまっても仕方がない。

しかし、それは少女にとって見ればいきなり過ぎた。
過去に一度会った後ずっと兄の様子を影から見ていたのに自分を思い出した様子はなかった。つい先日どこかの会社の屋上で姿を見せたときも、目の前の兄は戸惑いと驚愕の表情を浮かべるだけで思い出した様子はなかった。それが今日になっていきなり名前で呼ばれた。突然のことに憐は戸惑いの表情を浮かべるしかなかった。

憐の表情から怖がらせてしまったと思った透は自分の行動に後悔した。
最愛の少女を怖がらせてしまったという自己嫌悪が透の胸中を苛む。
だが、視界の隅に動く影を見つけた瞬間後悔の渦から浮上した。
「優哉、気をつけろ! さっきのシュミクラムが動くぞ!」
「! あぁ、だが軍のシュミクラムだろ? 
戦闘の意思がないことを示せば殺されることはないさ」
「それだけじゃ安心できない!
あのシュミクラムはさっきテロリストに大ダメージを受けて気絶していたんだ!
この短時間でまともな判断ができるほど回復したとは思えない。
だとすれば見かけない機体なら敵をみなして問答無用で攻撃してくる可能性がある!」
「なるほど、そういう可能性があったか」
透の言葉に納得し優哉は前方にいるシュミクラムに対しての警戒を強める。
優哉が彩音に対して警戒をはじめたことを確認し透は現状を脱却する策を考える。
(今の装備と機体の状況じゃ攻撃はできるかどうか不明。仮にできたとしてもうまく扱える可能性は低い、となればダメージの大きい彩音の機体にもし直撃すれば彩音が脳死する可能性もあるから却下。
 回避運動だけなら何とかなる。彩音は意識混濁中、まともな判断はできないだろう。
だからといって優哉がプロテクトを解くまで攻撃してこないとは限らない。
 更にこの場には憐もいる、電子体のままで戦闘区域にいるのは―――そうだ! 憐がいる! 憐が協力してくれたら無事に脱出できるはずだ!)
これからの行動を思い浮かべ、優哉に黙っておくようにジェスチャーをしつつ憐に話しかけた。
「憐、さっきは叫んでごめんな。それと今まで憐のことを忘れててごめん。
 理由とかはあとで話すから今からお兄ちゃんが言うことに協力してくれないか? 頼む!」
『ちょっと二人とも何してるの! はやく脱し「月菜、悪いけどすこしだまっていてくれ」……』
月菜はなにもレーダに反応のない場所を見て動かないでいる二人を急かそうとしたが、透の真剣な表情と言葉に思わず黙ってしまった。
一方憐は先ほどまで浮かべていた戸惑いが消え、満面の笑みを浮かべていた。
大好きな兄がやっと自分のことを思い出し必要としてくれたのだ。なぜ、と思うところはあるが思い出してくれた喜びに比べればほんの些細なことだった。
「いいよ、お兄ちゃん! なにをすればいいの?」
「ありがとう、憐! じゃあ早速で悪いけど、この扉を―――「透!」っ!」
開けてくれないか、と続けようとした言葉は優哉の警告で口から出ることはなかった。
目の前には迫りくる三爪のクロー、透は反射的に左に飛んでいた。
次の瞬間、いままで透がいた場所は彩音の攻撃によって陥没していた。
今の透の機体では耐え切ることが絶望的な攻撃力だった。
だが、そこから連続攻撃は来ない。
無自覚な操縦に加え、先の戦闘のダメージで機体がうまく制御できないのだ。
「憐! 今のうちに目の前にある扉を開けてくれ!」
「で、でも、お兄ちゃんが危ないよ!」
「俺のことは大丈夫だ。次の一撃を避けたら憐が開けてくれた扉から脱出できる。だからはやく!」
「…わかった、すぐに開ける」
彩音の機体の動きが止まっているうちに先ほどいい損ねたお願いを憐に伝える。
憐は危険な状態にある兄のことが心配ではあるが、自分が扉を開けないと兄が脱出できないと思い、すぐに扉に向かっていった。
それを見送りつつ視界の隅に映していた彩音の機体が体勢を整えるのを確認すると、透も構えていつでも避けられる体勢をとった。
しかし次の瞬間透の目は驚愕に見開かれた。
此方に攻撃してくると思っていた彩音の機体が、逆方向――優哉の方向に向いて突進していったのだ。
それと同時に脳内にフラッシュバックする光景――

――――やめろ! 俺たちはテロリストじゃない!!――――

「やめろぉーーー!!」
思わず叫び無意識のうちにバーニアを全開にし加速する。
しかし無情にも先の攻性防壁の影響でいつもの半分も出力が出ない。
(また優哉が死んでしまうのか!? 俺は助けられないのか!?)
いくつもの叫びが透の心の中で荒れ狂う。けれどそれで現実が変わることはない。
そして透の目の前で優哉に向かってクローが突き出された。
その瞬間爆発する優哉のシュミクラムが“視えた”。
だがその攻撃が優哉に当たることはなかった。
“前回”は不意打ちに近い形で攻撃された透をかばって死んだ優哉だが、その実力はかのVSSの橘社長に天才と評された透と同レベルなのだ。今の彩音を相手に、警戒していた状態で、しかも自分を狙われた攻撃を避けることはなんでもないことだった。
「…は……ははは…」
「なんであんなに取り乱したかわからんが早く脱出するぞ。
 あの娘の方はしっかりお前のお願いを聞いてくれたみたいだ」
言われて扉のほうを見てみると憐がこちらを振り返り笑顔で早く来るように催促していた。
それに笑みを浮かべ彩音がまだ行動できないことを確認するとようやく返事を返す。
「そうだな、時間もないしすぐに脱出しよう。
 月菜、もうすぐ脱出可能エリアに入るからよろしく頼む」
『わかったわ、任せておい―――きゃ! あんたたち誰よ!
 ―――やめて! ちょっと、乱暴しないでよ!!』
「どうしたんだ、月菜!? おい、返事をしろ!」
月菜が笑顔と共にサポートに入ろうとしたが突然誰かの介入らしきものがあった。
突然の事態に優哉は月菜に確認を取るが透はそれがなんなのかすぐにわかった。
(あぁ、そういえば警察に捕まるんだった。優哉のことで頭が回らなかったな)
苦笑しながら、今現実で自分達がどのような状況に置かれているか思い描きながら憐のことを思い出した。
「さっきはありがとう、憐。
 これからお礼に色々話したかったんだけど、現実世界で警察に捕まったみたいなんだ。
 しばらくの間ネット空間に入れないと思うけどすぐに会いに行くからチャットルームで待っていてくれ」
「え、お兄ちゃんつかまっ」
――強制終了――
憐が悲しそうにしていたがその話を全部聞く前に強制的にネット空間から現実に戻されてしまった。


「今自分のおかれている状況がわかるかね?」
現実世界に戻ってきて聞いた第一声は嘲笑を含んだ役人達の声だった。
「えぇ、程よく理解していますよ」
だが今の透にはそんな嘲笑は気にならなかった。
無事優哉を助けることができて、彩音もテロリスト以外の人を殺すこともなかった。
これから暫く豚箱生活が待っているが、おそらく八木澤隊長がまたスカウトに来るだろう。それ以降は多少交渉して月菜と優哉を自由、もしくは仮釈放ぐらいにしてもらうように頼めばいいだけだ。八木澤との交渉はかなり不利になるだろうが、いざとなればまとめて全員第一小隊に入れるように言ってみてもいいかもしれない。最悪豚箱生活がのびてしまうかもしれないが、VSSに入るよりはましだ。
などと思考を展開しつつ、透はおとなしい優哉とわめく月菜と共に役人達に連行されていった。


語句説明
○ネット空間
近未来において超巨大コンピュータを複数組み合わせることによって作り上げた仮想の世界。利用者は脳内に専用のチップを取り付けることによってダイブ(ログイン)が可能になる。
ネット空間内において見聞きした情報は、ダイブしている現実世界本人にも記憶され、ときには肉体に受けたダメージが現実世界においてもフィードバックされることもある。
○シュミクラム
ネット空間内で荒事を起こす、鎮圧するためにあるロボットのようなもの。
その感覚はガン○ムのように人がコックピットに乗るものではなく、人がシュミクラムになるといったもの。大きなダメージを受けると強制的に除装され、生身の状態になってしまうこともある。
○攻性防壁
軍や企業で重要な情報の保存箇所や侵入者の入出経路に設置されているトラップ。
強さは様々で身体がしびれて動けなくなる程度から脳死状態するものまである。
○VSS
ハッカーなどから情報を守るために民間で作られたネット空間でのセキュリティ会社。セキュリティ関連会社ではダントツの最大手で、大手チップ製造会社とも提携を結ぶなどその経営体系は広がっている。

あとがき

初めまして、初めて投稿させてていただく気分屋です。
名は体をあらわす、と言うように更新スピードも気分です。
誰かに感想を書くのもその時々の気分です。故に出現回数は極少です。因みに此方では0回です。

そんな私ですが、初めてSSを投稿することにしました。
お題は『バルドフォース』の逆行物。
今後の展開はある程度決まっていますがもしかしたら変わるかもしれません。(といっても予定を公言しなければ変わったかどうかわかりませんがw)
未熟者ですが、読者様からの意見を糧にして頑張っていきたいを思います。
ほどほどにご指導ください。


10/15  改定

>NEXT

△記事頭

▲記事頭

PCpylg}Wz O~yz Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W NWbgJ[h COiq [ COsI COze