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「宇宙への道プロローグ(宇宙のステルヴィア)」

ヨシ (2006-10-04 20:05)
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※いまさらステルヴィアかよ!とか言われてしま
いそうですが、とりあえず書いてみます。


(西暦2356年8月9日、東京新武道館)

西暦2167年は、地球にとって最悪の年であっ
た。
地球から遠く離れた、みずへび座ベータ星の超新
星爆発によって引き起こされた強力な電磁パルス
と放射線の衝撃波「ファーストウェーブ」によっ
て世界中が壊滅的な打撃を受け、多くの死者とそ
の後の混乱を巻き起こしたからだ。
だが人類はそれにもめげずに、そこから見違える
ほどの復興を遂げた。
そして、かつての災厄より189年後に訪れると
わかっていた第2の災厄、すなわち超新星からの
衝撃波「セカンドウェーブ」の到来に対し、全人
類を挙げての防御体制を築きあげていったのであ
る。
今年は遂に衝撃波「セカンドウェーブ」が太陽系
に到達する年であり、人類の生活圏を守る大計画
グレート・ミッションのため作られたファウンデ
ーション(宇宙ステーション)を中心として、そ
の準備が着々と進められていた。
このお話は、その年に16歳になったある少年の
物語である。


人類は189年前に大きな被害を受け、その復興
のために様々な国家間の垣根が取り払われたが、
1つだけ無くならなかった物があった。
それは、オリンピックである。
あの大災害の後に、1回が中止になり2回は小数
の国しか参加出来なかったのだが、現在では昔と
変わらない数の国と地域の他に、太陽系内に移住
した人々の代表も参加して、以前にも増して大き
く盛り上がっていた。
来たる「セカンドウェーブ」の到来に対応すべく
、国家間の様々な争いが行われなくなった現在で
は、この大会で自分の国の代表が活躍する事のみ
が、自国のプライドを保てるイベントであったの
だ。
今年は「セカンドウェーブ」が到来するので、「
中止にしてはどうか?」という意見も少しはあっ
たのだが、世論がそれを許さず、今年は四回目の
開催となる東京で各種競技が行われていた。 

 「一本!それまで!」

ここ新武道館では、柔道の試合が行われていたが
、今大会で大きく注目を集める選手がいた。
若干16歳で73キロ以下級をオール一本勝ちで
制した厚木孝一郎その人である。
身長178cm、体重69kgで短めの髪を真ん
中で分け、どこにでもいそうな普通の少年、これ
が彼の特徴であったが、彼の成し遂げた事は偉大
の一言であった。
決勝までの全試合を全て1分以内で終了させて、
決勝戦も開始47秒で体落としで一本勝ちしたの
だ。
日本中は、この新しいスターに注目していた。

 「やったな!孝一郎!金メダルだぜ!金メダル
  !」

 「父さん、大げさだって」

 「そんな事はないさ。きっと亜美も天国で喜ん
  でいるさ」

 「そうかな?」

 「ああ。お前はちゃんと約束を守ったんだ。俺
  はお前を誇りに思うよ」

 「ありがとう。父さん」

 「亜美、お兄ちゃんが約束を果たしたわよ。お
  めでとう。孝一郎」

 「ありがとう。母さん」

試合終了後、俺は母さんに預けていた腕時計を手
にとって眺めた。
これは一年半前に病死した妹の形見で、彼女がこ
ん睡状態になる前に貰った物であった。
女性物なので、自分では付けないのだが、常に持
ち歩いていたのだ。

 「もう一年半も経つんだよな・・・」

 「そうだな・・・」

俺達は観客の喧騒をバックに、昔の事を思い出し
ていた。


(西暦2354年2月上旬、某病院内の個室)

 「お兄ちゃん、個人戦で優勝したんだって」

 「ああ。中学生の全国大会だけどな」

 「団体戦は?」

 「二回戦負け」

 「お兄ちゃんだけ勝ってもねぇ」

 「言えてる」

俺は部活での練習を終えた後、妹が入院している
病院にお見舞いに来ていた。
西暦も2300年を超え、人類に治せない病気は
存在しないと言われていたが、彼女は死の淵に立
たされていた。
一年ほど前から、原因不明の発熱と意識の混濁を
繰り返すようになり、この病院に入院していたの
だ。
病名は不明で、患者も世界中で妹が一人だけあり
、体中の臓器や機能が徐々に衰弱していき、緩や
かに死を迎えるらしい。
現在、世界中で主流になっている人口臓器への移
植も行われたが、なぜかその人口臓器すら衰弱し
ていくという、医者ですら匙を投げる状態になっ
ていた。

 「お兄ちゃん、私また変な機械を繋げられちゃ
  った」

 「病気を治すためだ。仕方がないよ・・・」

 「私、自分でわかっているから。もう助からな
  いって・・・」

 「そんなデマに流されてどうすんだ。ちゃんと
  治療をすれば治るんだから」

俺は表面上は笑っていたが、心では泣いていた。
実際には妹の言う通りで、彼女の体の機能は徐々
に低下していき、現時点では、新しい人口臓器の
移植すら困難な状態であった。
無理矢理生かしてあと1年、これが医者の告げた
事実であった。

 「お兄ちゃん、お願いがあるんだ」

 「何だい?出来る事にしてくれよ」

 「金メダルが見てみたい」

 「それはまた唐突だな」

 「テレビを見ていたら、自分のメダルを持って
  きていたゲストがいたから。私も直接見てみ
  たいなと思って・・・。お兄ちゃんなら柔道
  で貰えそうだから・・・」

 「今から頑張れば、次の次のオリンピックに間
  に合うかな?」

 「次にしてよ。そこまで私が持たないから」

 「次か?」

俺は妹の言葉に驚いてしまう。
確かに、俺は柔道の選手としては若手一番の有望
株であったが、オリンピックの最終選考は一年半
後であり、それまでに多くの国際大会を含む、多
くの大会に出場して実績をあげなけれならないの
だ。
俺はまだ中学二年生で、小学校・中学校と同年代
の選手を相手にするのであれば負け無しであった
が、オリンピックの日本代表ともなれば、数多の
強豪を倒さねばならない。

 「ごめんね。無理を言って・・・」

 「いや・・・。それは・・・」

妹は申し訳なさそうに謝るが、俺が素直に返事を
出来ないのは、もう一つ理由があったからだ。
「ステルヴィア」に行き、「ケイティー」のパイ
ロットになる。
これが俺の子供の頃からの夢で、柔道は体を鍛え
るためだけのものだったからだ。

 「(俺はどうしたら良いんだろう?ステルヴィ
  アには来年の9月に入学出来るが、オリンピ
  ックは再来年の8月だ。一年遅らせて、ギリ
  ギリまで柔道に専念して平行してステルヴィ
  アの試験をパスする・・・。これだと、どち
  らも逃すかもしれないし・・・・・・)」

 「お兄ちゃん、無理しなくても良いよ。ごめん
  ね。我侭言って」

既にベッドから起き上がれなくなっていた妹の、
申し訳なさそうな表情を見た俺は、全ての迷いを
断ち切って決断をする事にした。

 「安心しろ!次の柔道のゴールドメダリストは
  厚木孝一郎様だ!メダルをちゃんと見せてあ
  げるから、しっかりと病気を治すんだぞ!」

 「わかった。私も頑張るよ」

 「お互いに頑張ろうな」

俺は妹の手を握りながら、彼女の願いに応える決
断をした。
だが俺の願いも空しく、その一年後、妹は意識を
失う前に、俺に形見となる腕時計を渡してから、
眠るように息を引き取ったのであった。


それからの俺は、全てを投げ打って目標に向かっ
て努力をした。
「ステルヴィア」に行くための勉強と、柔道の練
習を平行して行い、多くの試合に出場して、オリ
ンピックの代表入りへの実績を作った。
おかげで俺は、若過ぎると言われながらも日本代
表に選抜され、この新武道館で73kg以下級を
制したのであった。


 
(翌日、新武道館内試合場)

 「えっ!俺が無差別級に出るんですか?」

 「そうだ。万が一の事を考えて予備選手として
  登録しておいたんだ。大崎の怪我は骨折だっ
  た。あれでは、出場は不可能だ」

翌日、関係者なのでアリーナ席で試合を観戦して
いた俺は、柔道チームのコーチに衝撃の事実を告
げられた。
無差別級の選手である、大崎選手が練習中に骨折
してしまったので、代わりに試合に出るように言
われたのだ。

 「登録したのなら先に言ってくださいよ。しか
  も、俺は69kgしかありませんし・・・」

無差別級とは、100kg超級の上に設置された
階級で、遠い昔に存在していたものを復活させた
物である。
基本的には、何kgの選手が出場して良い事にな
っていたのだが、ほとんどの国の選手は、100
kg超級と兼任で出場しているか、100kg超
級の候補者を分けて出場させていて、俺のように
体重の軽い男は一人も出場していなかった。

 「100kg超級の高山さんが出れば良いと思
  いますが・・・」

 「予備選手としては、お前しか登録してないか
  らな」

 「どうしてそんな事をしたんです?」

 「大崎を除くと、お前しか勝ち目がないからだ
  」

 「俺がですか?」

 「平均体重128kgの無差別級に、105k
  gの高山が出ても勝ち目はないからな。それ
  に、無差別級の優勝候補であるグレッグ・オ
  ースチンに、高山が勝てるとも思えない・・
  ・・・・」

 「俺はもっと軽くて非力ですけど」

 「お前なら、何とかしてくれるような気がする
  」

 「またそんな適当な事を・・・。そう言えば、
  グレッグ・オースチンってオースチン財団の
  一族ですよね?」

 「ああ。あのインテリ一族の中の唯一のスポー
  ツマンだ。弟も(ステルヴィア)で優秀な成
  績をあげていて、彼を次期社長にという声が
  強いらしい。だから彼は焦っているし、最強
  でもある」

オースチン財団は、「ファーストウェーブ」後に
大被害を受けたアメリカで設立された財閥で、「
グレートミッション」関係の仕事を多く受け持っ
ている、世界有数の財団であった。
そして、現当主の長男がオリンピック選手として
、次男がエリートの集まりである「ステルヴィア
」で優秀さを発揮していた。
何でも、彼は「ビック4」と呼ばれているらしい

 「登録されたのならやりますけど、一回戦で負
  けても恨まないで下さいよ」

 「大丈夫だ。お前なら勝てるさ」

俺は予備の柔道着に着替え、急遽試合場に向かう
のであった。


 「久しぶりだね。孝一郎」

 「えーと、どちら様で?」

 「何よ。忘れちゃったの?」

無差別級に急遽出場する事になった俺は、体重の
計測と登録を済ませて、競技場の廊下の自動販売
機でジュースを購入していた。
すると、後ろから二十代半ばくらいの綺麗なお姉
さんと、同年代の少年に呼び止められる。

 「あーーー!(泣き虫光太)だ」

 「泣き虫は酷いな」

 「事実じゃないの。昔は孝一郎君に助けて貰っ
  てばかりでさ」

 「今は、違うじゃないか」

 「お姉さんもお美しくなって」

 「あら。お世辞なんて言えるようになったのね
  」

 「俺も16歳ですから」

俺を呼び止めたのは、子供の頃の親友である音山
光太と、彼のお姉さんである陽子さんであった。
両親を亡くして親戚の家に引き取られた光太が、
7歳になるくらいまでは毎日のように一緒に遊ん
でいたのだが、20歳になったお姉さんが、いき
なり光太を連れて引っ越してしまったので、音信
不通になっていたのだ。
当時の俺は、両親を亡くして気が弱くなっていた
光太をからかったり苛めたりする連中から、彼を
守るべく奮闘していて、彼の兄のような役割をし
ていた。

 「お2人は、オリンピック観戦?」

 「昔、カエルのお尻にストローを刺して膨らま
  せていた少年が、オリンピックに出場すると
  テレビで言っていたから、様子を見に来たの
  よ。それと、光太の準備もかな。色々と物入
  りだから」

 「人のお茶目な過去を暴露しないで下さいよ。
  何の準備ですか?」

 「うん。(ステルヴィア)に入学するから必要
  な物をね」

 「えっ!光太も(ステルヴィア)に入学するの
  か?」

 「孝一郎もなの?」

 「俺は一年遅れだけどね」

 「オリンピックに出るためなんでしょう?」

 「亜美との約束を果たすためです」

 「亜美ちゃんか。可愛くなったでしょうね」

俺の一歳下であった亜美は、俺達によくくっ付い
て遊んでいたので、2人の記憶にも残っていたよ
うだ。

 「一年半前に亡くなりました・・・」

俺は2人に嘘をついても仕方がないと判断して、
正直に亜美が死んだ事を話す。

 「ごめんね。嫌な事を思い出させて」

 「いえ、仕方がない事ですから」

 「事故か何かだったの?」

 「いえ。病死です」

 「そう・・・・・・」

少し暗くなった俺達が、そこまで話したところで
試合時間が迫ってくる。

 「すいません!今は時間が無いので、後で会い
  ましょう」

 「そうね」

 「明日は大丈夫ですか?」

 「ええ。今日は東京に泊まるけど、孝一郎君は
  大丈夫なの?」

 「大丈夫ですよ。どうせ、急に出場させられた
  階級だから一回戦負けですよ。対戦相手も、
  倍近い体重の選手ばかりだし。それじゃあ!
  」

俺は2人に連絡先を教えると、試合会場に急いで
向かうのであった。


 「一本!それまで!」

 「また勝ってしまった・・・・・・」

無差別級の試合が始まり、さっさと試合に負けて
早く終わらせようと考えていた俺であったが、自
分の予想すら裏切って、とんとん拍子に決勝まで
コマを進めていた。

 「やっぱりな」

 「コーチ!」

 「俺は、お前ほど受けと見切りが強い選手を見
  た事が無いからな。一回戦大外返し、二回戦
  内股空かし、三回戦跳腰返し、四回戦大内返
  し、五回戦つばめ返し、準決勝大外返しと、
  全試合で小さいお前に油断した相手の大技を
  返しているからな」

 「孝一郎、これで最低でも銀メダルだぞ」

 「2つもなんて凄いじゃないの」

俺と観戦に来ていた、父さんと母さんも大喜びの
ようだ。

 「緊急で出場した助っ人にしてはやるでしょう
  ?」

 「まあな。これで、もう1つ金メダルは頂いた
  な」

 「決勝はグレッグ・オースチンなんですけど・
  ・・」

俺とはトナーメントの反対側にいたグレッグ・オ
ースチンは、決勝までの全ての試合を一本勝ちで
制していて、その迫力に体が震えそうであった。

 「大丈夫だから、普通に試合をして来い」

 「わかりました」

俺が先に行われている3位決定戦を観戦しながら
準備体操をしていると、噂のグレッグ・オースチ
ンが取り巻きを連れて登場する。

 「こんなチビなら楽勝だな」

 「チビはないと思いますけど・・・・・・(お
  前は金髪ゴリラじゃないか)」

身長が2mを超え、体重も130kg近い彼にし
たら俺はチビに見えるのだろうが、同じ柔道をや
る者として、最低限の礼儀くらいはわきまえて欲
しかった。

 「妹の死で世間の同情を誘い、相手の油断も誘
  って勝利を掴むか。ジャップらしいセコイ手
  だな」

 「どういう事ですか?」

 「そのままの意味だ。うちの会社も、あのガキ
  のせいで酷い目にあったからな。特殊な病気
  だったのに、人口臓器が不良品ではないかと
  疑われて売り上げが落ちてしまったんだよ。
  うちは財閥だからな。様々な企業がグループ
  に入っているのさ」

 「それで?」

 「俺には、そんな卑怯な手は通じないという事
  だ。精々、頑張ってくれよ。数秒で負けてし
  まったら、観客が可哀想だからな」

グレッグ・オースチンとその取り巻きの男達は、
俺を嘲笑しながら自分達のコーナーに戻って行っ
た。

 「(初対面の俺にそこまで言うか!お前こそ、
  赤っ恥をかかせてやる!)」

俺は近年まれにみる怒りを内に秘めながら、決勝
戦が始まるのを待っていた。
俺に妹の話をするのは禁句だ。
オリンピック選手である事も手伝って、様々なマ
スコミに取材を受ける事も多かったのだが、妹の
事を聞いてきた記者には、俺は二度と口を聞かな
かったし、雑誌などにも一切記事を書かせなかっ
た。
軽々しく妹の事を話されると、彼女の死を愚弄し
ているような感覚に陥るからだ。
それをあのグレッグ・オースチンは、名指しで死
者を批判したのだ。
俺がそれを許せるはずがなかった。

 「(絶対に倒す!)」

決勝戦が始まり、俺とグレッグが対峙をする。
審判の合図で形だけの礼をしてから、「始め!」
の宣告と共に試合が始まる。

 「(チビめ!投げ飛ばしてくれるわ!)」

グレッグは強引に俺と組んだ後、払い腰を仕掛け
てきた。
だが、最高潮に怒りつつも冷静さを失っていなか
った俺は、彼を裏投げで後ろに放り投げた。

 「何っ!」

 「一本!それまで!」

俺の裏投げは見事に決まり、グレッグ・オースチ
ンは後頭部を強打して脳震盪を起こしていた。
後で聞いた話だが、彼が目を覚ましたのは翌日で
、彼は試合前後の事を覚えていなかったそうであ
る。
こうして、俺の長いようで短い選手生活は終了し
たのであった。


 「それでは!金メダル2つという孝一郎の幸運
  を祝して乾杯!」

 「「「「乾杯!」」」」

翌日、俺と両親は自宅に光太と陽子さんを招いて
、祝賀パーティーを開いていた。
世間的常識で言えば、金メダルを取った俺は色々
と忙しくなるらしいのだが、事前に「ステルヴィ
ア」に出発する準備も終えていたし、今日くらい
は外の連中に付き合うつもりも無かったからだ。

 「陽子ちゃんも綺麗になったなあ」

 「そうですね。昔も綺麗でしたけど」

うちの両親は、両親を亡くして親戚の家に引き取
られていた光太達の事を覚えていたようだ。

 「でも、音信不通は酷いと思うけど・・・」

 「すいません。小さい光太を連れて、無人島に
  引っ越すなんて話をしたら、反対されると思
  いましたので・・・」

 「無人島かぁ。確かに反対していただろうな」

 「その島に両親が天文台を建設していたので、
  そこを管理しています」

 「それで生活ができるのかい?」

 「それなりの規模なので、太陽系連盟などから
  補助金を貰っています。だから、生活は十分
  に成り立っています」

 「そうか。それなら良いんだ」

 「ところで、亜美ちゃんの事なんですが・・・
  」

 「病気だったからね。仕方が無かったんだよ・
  ・・」

父さんが仏壇を見ると、そこには元気な頃の亜美
と俺のツーショットの写真が飾られていて、俺が
獲得した金メダルが供えられていた。

 「孝一郎は、(ステルヴィア)に入学するんで
  しょう?」

 「ああ。試験に受かるか不安だったけど、どう
  にか合格したらしい」

 「なら僕と同級生だね」

 「一年留年したみたいだな」

 「そんな事はないわよ。これだけの事を成し遂
  げたのだから」

 「お姉さんは優しいですね。好きになってしま
  いそう」

 「こら!大人をからかうな!」

 「すいませ〜ん」

久しぶりの友との再会で、祝賀会はとても楽しい
ものとなったのであった。


 「部屋に何も無いね」

 「全部荷造りをして送り出しているからな」

ひとしきり祝賀会が終了した後、俺は光太を連れ
て自分の部屋で話をしていた。

 「随分、準備が早いんだね」

 「これから忙しくなるから」

 「だろうね・・・」

俺がナスカにある宇宙港に出発するまでの約半月
の期間は、色々と予定が詰まっていた。
ゴールドメダルリストというのは、それなりに忙
しいようで、政治家に報告に行ったり、パーティ
ーやイベントに出席したりと分刻みで予定が詰ま
っていた。
更に俺は中学を卒業してから、高校に進学もしな
いで柔道と「ステルヴィア」に行くための勉強を
していたので、今後の進路を無駄に心配する人達
が沢山存在していたのだ。

 「(ステルヴィア)に行く事は秘密なんだね」

 「ああ。関係者には、緘口令を敷いて貰ってい
  る。また大騒ぎになるから」

 「大変だね」

 「上がってしまえば、平穏な日々に戻るさ。し
  かし、光太は変なものが好きなんだな」

ウーロン茶を飲んでいる俺の隣で、光太は「麦茶
のコーラ割り」という奇妙な飲み物を飲んでいた

 「慣れると美味しいよ」

 「慣れたくないな・・・」

 「暫くは会えなくなるけど、ナスカの宇宙港で
  再会できるからね」

 「そうだな。これからは長い付き合いになりそ
  うだな」

 「よろしくね」

 「ああ。よろしくな」

翌日、光太達は「天文島音山天文所」に帰り、俺
も8月一杯は、日本柔道連盟への義理を果たして
いた。
こうして、忙しかった8月は終了して、俺は「ス
テルヴィア」に旅立つために、ナスカ宇宙港へと
降り立つのであった。


(9月1日、ナスカ宇宙港内)

 「どうだ?これから宇宙に上がる気分は?」

 「楽しみだな」

 「そうか。それは良かったな」

見送りに来た両親と共に「フジヤマ」の発着ゲー
トに向かっていた俺は、家族と最後のお別れをし
ていた。
周りを見ると、同じような家族連れが多く見られ
る。
多分、俺と同じように「ステルヴィア」に旅立つ
予科生達とその家族なのであろう。

 「1年も寄り道をさせてすまなかったな」

 「別に、寄り道とは思っていないさ。俺は自分
  の意思で柔道を続けたんだ」

 「そうか。なら、これからはお前の好きにやり
  なさい」

 「私の意見も同じよ。私達の事は気にしないで
  ね」

 「でもさ・・・」

俺は、2人きりになってしまう両親を心配してし
まう。

 「大丈夫だ!お前にはまだ言ってなかったが・
  ・・」

 「弟かしらね?妹かしらね?」

 「えっ!」

 「母さんは、妊娠2ヵ月なんだよ」

妹が亡くなった事は悲しい事だが、その悲しみを
上回る嬉しい出来事があった。
どうやら、俺には新しい兄弟が出来るらしい。

 「そうか。おめでとう。母さん」

 「ありがとう。私達は寂しくないから、安心し
  て宇宙に行きなさい。でも、ちゃんと休みに
  は帰ってくるのよ。彼女連れでも大歓迎よ」

 「そいつはどうも・・・」

 「無理っぽいよな・・・」

 「それはないのと違う?」

俺は、父さんのツッコミに冷静に反応してしまう

 「そろそろ時間のようだな」

 「ああ。じゃあ、元気で」

 「お前も元気でな」

 「風邪を引かないようにね」

俺は両親と別れてから、「フジヤマ」の搭乗ゲー
トに向かっていた。
すると、突然背中に衝撃を感じる。
どうやら、誰かがぶつかってきたようだ。

 「すいません!」

俺が後ろを振り返ると、一人の少女が尻餅をつき
ながら俺に懸命に謝っていた。

 「えっ!亜美?」

俺は衝撃を隠せなかった。
俺に謝っている少女は髪型こそ違っていたが、俺
の亡くなった妹に瓜二つであったからだ。

 「本当にすいません!前をよく見ていなかった
  のもで」

 「・・・・・・・・・。いや、君こそ大丈夫?
  俺はほら、別になんともないし」

俺の「亜美」という独り言は、目の前の少女には
聞こえなかったようで、彼女は何回も俺に謝って
いた。

 「(そうだ。亜美は死んだんだ!彼女は良く似
  ているけど別人なんだ!)」

俺は頭の中で自分の感情を整理してから、手を差
し出して彼女を立たせてあげる。

 「俺は鍛えているから大丈夫だよ。君こそ怪我
  でもしていないかい?」

 「はい!大丈夫です。あの・・・。あなたも(
  ステルヴィア)に?」

 「ああ。1年遅れの落ちこぼれだけどね。俺の
  名前は厚木孝一郎だ」

 「あーーーっ!金メダリストだ!」

 「しぃーーー!」

俺は、大声をあげた少女の口を思わず塞いでしま
う。

 「ごめんね。俺は静かなのが好きだから」

 「すいません。大きな声をあげてしまって。私
  の名前は片瀬志麻です」

 「よろしくね。片瀬さん」

 「こちらこそ。よろしくおねがいします。厚木
  さん」

 「孝一郎で良いよ」

 「はい。孝一郎さん」

こうして俺は新しい出発の日に、亡くなった妹に
そっくりな少女と出会うのであった。


(30分後、重力船「フジヤマ」内部)

 「席が近くで良かったですね」

 「俺もラッキーだったな」

あの後、二人は一緒に「フジヤマ」に搭乗したの
だが、席割りは片瀬さんの真後ろであった。

 「そう言えば、その大事そうに抱えているプレ
  ゼントは誰から貰ったの?」

 「弟からです」

 「へえ。餞別を渡すなんて、気が利く弟さんだ
  ね」

 「でも、生意気ですよ」

 「それは仕方が無いな。俺も生意気だからさ」

 「孝一郎さんは、優しいじゃないですか」

 「さあて、それはどうかな?ところで、中身は
  何だろうね?」

 「開けてみようかな」

片瀬さんがプレゼントの包みを開けると、中から
は沢山の金平糖が入った瓶が出てくる。 

 「ほお。変わったお菓子ですね。何という名前
  のお菓子ですか?」

突然、隣にいた老人が、片瀬さんにお菓子の名前
を聞いてくる。

 「金平糖と言います」

 「日本のお菓子ですか?」

 「はい。あの、食べますか?」

 「いえいえ。大切なプレゼントなのですから、
  大切に食べてください」

 「(あれ?この人をどこかで見たような・・・
  ?)」

俺は、片瀬さん隣の席にいる老人に見覚えがあっ
たのだが、誰なのかを思い出せないでいた。  

「うひゃぁーーー!待って!待って!」

 「何だ?」

俺が目の前の老人の事を思い出していると、急に
1人の少女が物凄いスピードでこちらに飛び込ん
でくる。

 「悪かった!私が悪かったですよぉ!」

遅刻寸前であった赤い髪の少女が席に座ると同時
に、座席の安全ロックが降りてくる。
そして、重力船「フジヤマ」はゆっくりと動き出
すのであった。


 「これより(ステルヴィア)まで、3時間30
  分の空の旅をお楽しみ下さい」

ガイドアナウンスと共に座席のロックが外れ、席
を立てるようになった俺は、まだ再会を果たして
いない光太を探すべく「フジヤマ」を探索する事
にする。

 「孝一郎さん、どこに行くんですか?」

 「ああ。昔の友達を探しにね。同じく(ステル
  ヴィア)に入学する事になったから」

 「私も一緒に良いですか?」

 「大歓迎さ。俺の友達は、結構良い男だよ」

 「いえ!あの、そういう事ではなくて・・・・
  ・・」

片瀬さんは、顔を赤くしながらモジモジとしてい
たが、その声といい、動作といい、死んだ妹が帰
ってきたような錯覚にみまわれる。

 「さてと。お隣さんは、気持ちよさそうに寝て
  いるようだし、俺達は邪魔をしないように出
  かけるとしますか」

 「はい」

俺と片瀬さんは光太を探すべく、「フジヤマ」の
探索を開始するのであった。


 「光太!お前は相変わらずマイペースなんだな
  」

 「ああ。孝一郎か」

 「これだからな・・・」

光太は意外と早く見つかった。
彼は休憩室のソファーで、のんびりと音楽を聴い
ていたからだ。

 「お前も探しに来いよ」

 「でもさ。お互いに動いていると、すれ違う可
  能性があるから」

 「正論だけに、ムカつくな」

 「それよりも、隣の可愛い子は孝一郎の彼女?
  」

 「違うよ。今日知り合ったばかりの友達だ」

俺は光太の爆弾発言に少し驚いてしまったが、冷
静に返事をする。
だが横を見ると、片瀬さんは再び顔を真っ赤にし
ていた。

 「ええと、片瀬志麻です」

 「音山光太です。よろしくね。片瀬さん」

 「こちらこそ。音山君」

 「光太、展望デッキに行こうぜ」

 「そうだね。せっかく宇宙を飛んでいるんだか
  らね」

 「片瀬さんもそれで良いよね?」

 「はい」

俺達が3人で展望デッキに向かうと、そこには先
ほどの暴走少女が待ち構えていた。

 「せっかく隣や近所の席の人達と語り合って、
  友達になるチャンスだってのに、目を覚まし
  たら誰もいないし!」

 「理不尽だ・・・。君、寝てたじゃないか」

 「それはそれ。これはこれ。私はアリサ・グレ
  ンノース。アリサって呼んで」

 「音山光太です」

 「片瀬志麻です」

 「厚木孝一郎です」

 「いいねーーー!男二人と女二人のグループで
  友情を育む。青春だね!」

 「(面白い娘だな)」

目の前の少女はとても明るくて、どこにいてもム
ードメーカーのような役割を果たしているのであ
ろう。
俺は彼女に非常に好感を持った。

 「そうだ。これ、食べます?」

自己紹介を終えると、片瀬さんは抱えていた金平
糖の瓶を俺達に差し出した。

 「せっかくだから」

 「頂きますか」

 「友情の印に、同じ物を分け合って食べる。こ
  れで4人は親友同士に昇格だぁーーー!」

 「大げさだね」

 「面白くて良いじゃないか。光太」

 「それもそうだね」

その後、俺達は展望デッキから眼下に広がる地球
を眺めながら、片瀬さんから貰った金平糖を食べ
ていると、アリサの目から涙が流れていた。
どうやら、眼下の地球の光景に感動しているよう
だ。

 「はい。ハンカチ」

 「ありがとう」

俺はアリサにそっとハンカチを差し出す。

 「おーーーい! (ステルヴィア)が見えてき
  たぞ!」

 「本当か?」

 「うわーーー!すごーーーい!」

急に俺達がいるデッキとは違う方向から歓声があ
がった。
そちらを見ると、何人もの生徒が張り付いていて
一点を凝視している。
緑に染まる宇宙の遥か彼方に、タツノオトシゴの
ような小さくて白い物体が見えてきたからだ。

 「(ステルヴィア)が見えてきたぞ!」

 「本当だ!」

 「「やったーーー!」」

俺達も大喜びで歓声をあげていると、目の前のイ
ンフォメーション用のモニターの映像が切り替わ
り、1人の男性が映し出される。
紺色の本科生の制服を着た、「ビック4」の一人
であるケント・オースチンであった。

 「予科生の諸君!(ステルヴィア)にようこそ
  !これより西暦2356年度の宇宙学園新入
  生歓迎会を開催いたします!」

 「あれがケント・オースチンか・・・」

 「知ってるの?」

 「兄貴の方とは因縁があってね・・・」

 「孝一郎さんは、決勝で戦ったんですよね」

 「まあね・・・・・・」

 「決勝?」

 「アリサ、名前で気が付かない?」

 「厚木孝一郎・・・。ああっ!金メダリストの
  か!あんたのせいで、アメリカの柔道での金
  メダル獲得数はゼロだったからね」

 「今頃、気が付いたの?」

 「アリサさんは忙しい人だったから、テレビを
  あまり見ません!」

 「なるほど」

アリサの言葉を聞いて、俺は心から宇宙に上がっ
て来て良かったと思っていた。
ここ半月は、日本国内では1人で街も出歩けなか
った俺であったが、「フジヤマ」の内部では、俺
の事を気にする人もあまりいなかったので、開放
感に浸れていたからだ。
外国人が多く、柔道というあまり馴染みのない競
技でのゴールドメダリストなので、知らない人も
多いのであろう。

 「わぁーーー!(ケイティー)が出て来た」

 「本当だ!」

 「すげえ!」

俺達が話をしている間に、「ステルヴィア」の外
周ハッチが次々と開き、そこから数えきれない程
の「ケイティー」が発進していく。
それらの機体は華麗なアクロバット飛行を続けな
がら、後部テールのノズルから光が軌跡を残して
鮮やかな文字を作り始める。


 「WelcoMe to Stellvia!
  」


続いて沢山の「ケイティー」が、様々な飛行テク
ニックを駆使しながら「フジヤマ」の周りを飛び
回り、予科生達を感動の渦に巻き込んでいた。

 「こちらは総合リーダーの本科2年生の町田初
  佳です。新入生の皆さん、ようこそ(ステル
  ヴィア)へ」

再びモニターが切り替わり、パイロットスーツに
身を包んだ、紫色のショートカットの綺麗な女性
が映し出された。
彼女も有名人であり、飛び級で本科生となった、
同じく「ビック4」の一人でもあった。

 「私達はあなた方を歓迎します!」

 「へえ、綺麗な人だな」

 「怖そうだけどね」

 「こら!目の前に美少女が二人もいるのに、他
  の女性を褒めるな!」

 「それはそれ、これはこれですよ。アリサさん
  」

 「孝一郎め!減らず口を」

 「それはこちらに置いといて、俺達4人は、こ
  れから友達として仲良くやっていこうぜ!」

 「うん」

 「賛成!」

 「僕も賛成だ」


 
 「星の道のりは長い・・・」

4人で握手をしながら外の景色を眺めていると、
後ろから男性の声が聞こえてくる。
先ほど片瀬さんの席の隣に座っていた老人だ。
彼は優しそうな表情を浮かべながら、宇宙を飛び
回る「ケイティー」を見つめている。

 「星への道のりは長い。オーバビスマシン(ケ
  イティー)。あれに君達が乗るようになるま
  で、あと何年かかるのか・・・」

その老人の、まるで「ステルヴィア」の関係者の
ような口ぶりに、俺達は不思議な表情をしていた

 「はっはっは。どうやら覚えていないようだね
  。受験番号B−3043の片瀬志麻君、A−
  4927のアリサ・グレンノース君、B−1
  854の音山光太君、そしてB−112の厚
  木孝一郎君」

俺はやっとこの老人の正体を思い出す事に成功し
ていた。
彼は自分達の面接を行った面接官であったのだ。


 「厚木孝一郎君、なぜ一年遅れで(ステルヴィ
  ア)の受験をしたのかね?」

 「先に成し遂げねばならない事があるからです
  。だから、それを優先しました」

 「それは何かね?」

 「いくら面接官殿にでも言えない事です。でも
  それを成し遂げたら、私は宇宙を眺めながら
  (ケイティー)に乗ってみたいのです」

 「そうか。私にも話せないのか」

 「すいません」


俺は妹の事を話したくないばかりに、かなり生意
気な事を言ってしまった過去を思い出してしまう

 「あの時は、失礼な事を言ってしまって・・・
  ・・・」

 「いやいや。職業上あとで事情を知ったのだが
  、そう軽々しく話したくないのは仕方がない
  と思ったからね」

 「ありがとうございます」

 「君は強い意志を持っている。だから、私は君
  の事をよく覚えていていたのだよ。それに、
  ちゃんと目標を成し遂げたではないか」

 「はい。でも、これからですよ」 

俺が横を見ると、アリサと片瀬さんも、彼が自分
の面接官である事を思い出したようで、驚いた表
情をしている。
ちなみに光太は常にマイペースなので、特に表情
を変えていなかった。

 「私の名前は、リチャード・ジェームス。(ス
  テルヴィア)の主任教授です。ようこそ(ス
  テルヴィア)に」

こうして、俺達の学園生活は幕を開けたのであっ
た。


        あとがき

どうも。駄目な種SS書きのヨシです。
何でステルヴィアなのかと言えば、こんな事があ
ったんです(若井おさむ風)。

 「お前、種のss書いてるんだって?」

 「内緒だけどね」

 「ならさ。俺が最近はまったステルヴィアのs
  sを書いてくれない?」

 「忙しいからやだ。他の人の書いた物を読め!
  検索しろ」

 「数が少ないから困ってるんだよ。お前も好き 
  だろう?ステルヴィア」

 「・・・・・・」

 「これが原案ね」

汚い紙を俺に渡す。

 「オリキャラ男主人公。カップリングはお好き
  にどうぞ・・・。こういうのは原案とは言わ 
  ない・・・」

 「適当に考えてくれよ。自分が考えた話をあと
  で読んでもつまらない」

 「反応が無かったらすぐに止めるからな。それ
  でなくても、俺の作品には推定で20名ほど
  の読者しかいないんだから」

 「そんな事は無いさ!30人はいるさ!」

 「・・・・・・」

 「とりあえず一話書いたら、PS2のソフトを
  あげるからさ」

 「サンクス」

(全部実話) 


          主人公紹介


厚木孝一郎(16歳) 出身地 日本 
身長179cm 体重69kg
好きな食べ物 和食全般 カップ麺
しーぽん達より1学年上でお嬢より1学年下。 
音山光太の幼馴染。
家族 父 母 妹(死亡)
           

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