インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

!警告!男女の絡み有り
18禁注意

「新たなる物語 その4 (まぶらほ?)」

タケ (2006-08-06 10:43/2006-08-06 10:45)
BACK<

はじめに:この話は10〜12話の投稿ですが、10話はノーマル、11話が15禁、12話が18禁です。


作者注:小隊の規模が原作では明記されていなかった筈ですので、15人単位としました。
    小隊長は現在5人居て、残り1小隊はリーラ直属という事にします。
    今回の話に出てくるメイド達は、本編で名前が挙がったメイドが対象ですが、
    メイド編の2冊だけで書いてますので、殆ど私の妄想が生み出したオリキャラです。
    その他いくつか原作と違うかもしれません。それでも怒らない方は本編へどうぞ。


夏休みが始まった。

全寮制である葵学園の学生寮は、昨日までの光景が嘘のように静まりかえっている。
全国から魔法の才能が優秀な生徒達を集めている為、長期休みになると実家に帰る生徒は多い。
しかしここまで人が居ないのも珍しい。受験を控えた3年生ですら、実家に戻るほどだ。

勿論、数週間前に起こった『迷宮の魔道書』による騒動の影響である。
あの『事件』は生徒達の価値観を覆した。魔法エリート候補の誇りは粉々に砕け散った。
紅尉兄妹の洗脳………もといカウンセリングでも、根幹の恐怖までは拭いきれなかった。

悩める者にとって尤も縋りたいのは、やはり親兄弟であった。
殆どの生徒が終業式が終わると同時に帰省した。2年B組でさえ例外ではなかった。
尤も病院のベットで動けない生徒が数人居たが。

そして『事件』を解決した我らが和樹君も、メイド達を連れて実家へと向かう。
自分が100人近いメイドを従える御主人様になった事を伝える為に。2泊3日の予定だ。
今までそれを思いつかなかった彼は、やはり大物かもしれない。


まぶらほ 新たなる物語

第10話


日本で電車に乗るのは初めてですが、中々しっかりした作りです。
新幹線も快適でしたが、普通の電車も綺麗にしてますし、時間通りに運行するのが凄いです。
私達は2つのグループに分かれ、不本意ながら2両貸切の状態で座っています。
乗り込んだ時は他にも人が居たのですが、何故か私達を見ると他の車両へ移ってしまいました。
一体何が悪かったのでしょう?銃器類はちゃんと隠して、素人には判らない様にしたはずなのに。

「どうしたの、ネリー?」

考え事をしていた私に、和樹様が御声を掛けて下さりました。
因みにジャンケンで勝った私が和樹様の隣、和樹様の向かいにリーラ隊長、その隣がセレン先輩です。

「申し訳ありません。ちょっと考え事をしておりました。」

「御主人の両親への挨拶でも考えていたんだろ?」(セレン)

「それは重要だ。曖昧な態度では我々の忠誠を疑われてしまう。
 我々が身も心も和樹様に捧げている事を御理解して頂かなくては。」(リーラ)

「その発言の方が誤解を招くよ。僕が経緯を説明するから、その後にしてくれない?」

「あのー、御挨拶の方は既に考えておりますが。」

「なんだ、それじゃ何を考えていたんだい?」(セレン)

「先程車両に入った時に、座っていた方々が慌てて移動したように思えて。」

「そりゃ、数十人の綺麗な外国の娘達が完全装備のメイド服で乗り込んでくればね………。
 日本じゃ、まず有り得ないから。しかし、僕も慣れちゃったな………。」

和樹様が苦笑しながら説明して下さりました。そんなに目立つのでしょうか?
私は自分の服装に目を遣ります。隊長ほどではありませんが、中々の着こなしだと自負できます。
メイドにとって、メイド服とは神聖なる戦装束。誇りの結晶と言うべき物です。
増してや今日は和樹様の御両親に挨拶に行くのです。正装で行くのは当然です。

「和樹様も大分メイ度を上げられましたね。実に喜ばしい事です。」(リーラ)

「………あのセクハラ爺さんまでは逝きたくないけどね。」

それは私も見たくないですね。


「和樹様、どうぞ。」

何時の間にやら冷凍ミカンの皮を剥き終えた隊長が、和樹様の口元に1房持って行きました。
こ、これは、あの有名な『はい、あ〜ん♪』でしょうか!?
見事です。白い筋が全て取ってあります。それに何時もよりも三割増の笑顔です。
和樹様は照れくさそうに口を開き、ミカンを食べます。照れた笑顔もまた素敵です。

「うん、美味しいよ。」

「ありがとうございます。もっと召し上がりますか?」

「じゃあ、もう少し。」

………うらやましいです。私もやりましょうか?
隊長の横のミカン網から1つ取り出し、丁寧に剥いていきます。

「な、なんか楽しそうだね。あたしもやってみるかな。」

これまた何時の間にか、セレン先輩が隊長の剥いたミカンを三房ほど手に取っていました。
ま。まさか!?

「ほ、ほら、あーん………なんてね。」

冗談でやっているつもりなのでしょうが、あんなに顔が赤ければバレバレです。
隊長も赤くなっていますが、あれは怒っているのでしょうね。

パク

「ひゃあっっ!!」

「セレンから手渡しなんて珍しいね。これも中々美味いかも。」

セレン先輩が、凄く女性らしい悲鳴を上げました。周りの娘達も驚いて見ています。
和樹様がセレン先輩の手からミカンを食べた時に指を舐められたのでしょうが、驚き過ぎです。

「あ、ひゃ、う、でば………。」

口調が支離滅裂です、セレン先輩。
ライバルがこれ以上増えるのは困りますが、何か可愛いですね。

「和樹様、あーん。」(リーラ)

「あ、ありがとう。」

セレン先輩が慌てふためいている間にミカンを取り返した隊長が続きを始めます。
………ふう、やっと私も剥き終りました。完璧です。筋は1つもありません。

「か、和樹様。私のもいかがですか?」

「うーん、でも充分食べたしな………。」

そんなー!よく見たら隊長の膝にミカンの皮が2つ置かれています。ず、ずるいです!

「あ、そうだ。」

和樹様は、ひょいっと私が剥いたミカンを全部手に取りました。そして、

「僕だけじゃ悪いしね。はい、ネリー。あーん。」

わ、私に手ずから食べさせて下さるというのですか!嬉しいですが恥ずかしいですピンチです!

混乱しながら半ば条件反射で開いた私の口の中に、和樹様がミカンを1房入れて下さりました。
………………甘いです。普段の倍の甘さを感じます。美味しさは10倍です。感激です。

「もっと食べる?」

「は、はい!」

素敵です。素敵過ぎです。
頭を撫でられたりキスして頂いたり抱きしめられるのも嬉しいですが、これも凄くいいです。
ドラマでこういう光景を見て笑っていましたが、撤回します。幸せ過ぎです。
ベットの中で愛されている時とは少し違います。心が充足感で満たされていきます。

半分ほど頂いた所で、ふと我に返りました。向かいの隊長が凄い笑顔で私を見ています。
美人なだけにかなり怖いです。和樹様の恋人という点では同格ですが、怒らせたく無い人ですし。

「ご、御馳走様です。」

もう少し頂きたかったのですが、泣く泣く断ります。

「そう?それじゃ、リーラも食べる?僕が剥いたわけじゃないけど。」

「喜んで頂きます。」

「はい、あーん。」

先程感じた殺気を瞬時に消し去って、素敵な笑顔で口を開きます。五割増の笑顔です。
私もさっきはこのような顔をしていたのでしょうか。写真に撮りたいくらいですね。
………今度、夜の当番の時に御摘みを作って持っていくのもいいですね。
出来れば愛して頂いた後で一緒に食べるのが1番ですが、先に私がダウンしちゃうんですよね。
和樹様ってば激しいから………2人がかりでも先にイカされちゃったし。

そんな恥ずかしい事を考えている私をよそに、電車は順調に和樹様の御実家へと向かいます。
まあ和樹様の御両親に逢う時までずっと緊張しているのに比べれば、いいのかもしれません。


◆◇◆◇


素晴らしい事に、到着時間通りに目的の駅へと着きました。日本の電車は凄いです。
和樹様の御実家はこの駅から15分ほど歩いた所にある大きな神社です。
その直ぐ近くに御実家で管理している合宿所があるそうで、私達は其処にお世話になります。

通行の邪魔にならない様、各小隊毎に分かれて、30秒おきに出発します。
和樹様とは離れてしまいました。ルイーゼ少尉率いる小隊が和樹様を先頭に出発します。
小隊毎でくじを引いて決めたのですが、確率1/6は辛いです。私の小隊は2番手です。
それでも和樹様の姿を目で追えるだけ、最後尾の隊長よりはましですしね。

ルイーゼ少尉が和樹様に話しかけています。和樹様も楽しそうに応じています。
他の隊員も失礼が無い程度に話しかけていきます。あまり話しかける機会は無いものね。
でも、和樹様。そのような笑顔を見せては駄目です。皆の目が危険です。

あの『騒動』の夢を見てから、皆の和樹様へ接する態度は大きく変わりました。
戦う和樹様の姿は皆を魅了しました。強さとは美しさなのだと始めて理解しました。
和樹様はあの時は例外だと言いますが、あの忍者姿でも充分過ぎるくらい素敵ですし。
元々の優しさに加え、あの強さは反則です。更に普段の可愛らしい表情が拍車を掛けてます。
私も頑張らないといけません。皆のアプローチはエスカレートする一方ですし。

「ほら、もうすぐ到着だよ。」

何時の間にか家が少なくなり、背の高い木々が見えてきました。森になっているようです。
近づくと木が生い茂った森の中に石畳の道があり、その先に赤い鳥居が見えてます。
先程の町並みとは隔絶したような雰囲気です。聖域という感じがします。
鳥居の脇の石柱に『風守神社』と刻まれていました。

「風守神社………と書かれていますが。式森ではないのですか?」(ルイーゼ)

「別に神社の名前と神主の名前が一緒という事は無いよ。2代前までは分家が管理していたんだ。」

数分ほど待つと、全員揃いました。和樹様は横の道を指差して、提案します。

「この道の先が広場になっているんだ。丁度いい時間だから、そこで弁当にしようよ。
 涼しいから気持ちいいと思うよ。」

「畏まりました。」(リーラ)


用意してきた御弁当は、あっという間に無くなってしまいました。
ピクニック気分だった所為か、つい食が進みました。本当にいい所ですね。
これ程に気持ちがいい所で育ったからこそ、和樹様は御優しい心の持ち主なのでしょうか。

「皆、片付け終わったね。それじゃ行こうか。」

鳥居の前まで戻り、今度は鳥居をくぐって参道を歩いていきます。
参道の向こうに建物が見えてきました。案内板によると、あれが本殿ですか?

「そうだよ、合宿所は本殿の向こう側にあるんだ。」

何時の間にか声に出していたようで、隣に居た和樹様が説明してくださいました。
因みに隊長は私と反対側の、和樹様の右手側に居ます。
更に和樹様の右腕を取って、恋人らしく寄り添っています。私も真似してみましょうか?

「あ………。全く、本当に勘がいいね、2人とも。」

和樹様の嬉しそうな声に前を見ると、何時の間にか20代半ばくらいの男女が立っていました。
男性は和樹様の未来を思わせる凛々しい方ですし、女性の優しそうな眼差しは和樹様に似ています。
でも、和樹様に御兄弟は居られませんでしたよね?親戚の方でしょうか?

「久し振り、和樹。だが、何とも壮観だな。俺でもここまでもてた事は流石に無いぞ。」

「元気そうね、和樹ちゃん。本当、可愛い娘達ばかりね。メイドさんなんて始めて見たわ。
 それと和正君。貴方には私が居れば充分でしょ?」

「勿論ですよ、美樹さん。」

「和正さん、美樹さん、久し振り。2人とも元気そうで良かった。
 今日は大切な仲間達とかけがえの無い恋人2人を連れて来ました。リーラとネリーです。」

隊長と私の肩に手を添えながら、和樹様はしっかりと私達を恋人と紹介して下さいました。
嬉しいです、和樹様。貴方とならば、例え地獄ですら喜んで堕ちましょう。

「あらあら、随分積極的になったわね。」(美樹)

「おいおい、日本では一夫一妻だぞ。」(和正)

「その辺はどうにかなるよ。厳密には僕は存在していないんだし。」(和樹)

「まあ、詳しい話は後でじっくりと聞かせてもらおうか。電話だけじゃよく解らんしな。」(和正)

そう言うと、和正様?と美樹様?は私たちの方へ向き直り、こう仰いました。

「和樹がお世話になっています。和樹の父の和正です。」

「母の美樹です。名前で呼んで下さって構いませんよ。」

………………頭が真っ白になっています。今、何と?

「ちなみに正真正銘、実の親だから。」

「「「「「「「「「「………………ええぇぇぇっっっ!!!!!」」」」」」」」」」

は、はしたないですが、思わず皆で叫んでしまいました。隊長ですら呆然としています。
だって、いくら日本人が童顔だと言っても、限度がありますよ!?

「後、僕を生んだのは美樹さんが20歳、和正さんが18歳の時だから。」

おかしいです。絶対10年以上サバを読んでいます。反則です。
特に美樹様、37歳でその若さと美貌ですか!?顔に小皺すら無いなんて!

「気持ちは解るよ。何せ、平凡な僕の唯一のサプライズネタだったからね。」

貴方が平凡という時点で既に前提が間違っていますよ、和樹様。


◆◇◆◇


「………ほう、随分と大変だったんだな。」(和正)

「あらあら、まあまあ。」(美樹)

和樹様がこれまでの説明を終えた後の第1声がこれでした。
当事者だった私達でも今一信じきれない話だというのに、納得されています。
尋常ではないのは外見だけではないようです。流石は和樹様の御両親です。

あれから私達は合宿所に移動し、そこで改めて和正様と美樹様に御挨拶を致しました。
その後、和樹様が今までの経緯を御説明されました。
同じ人間と思いたくない3家の魔女の来訪から始まったトラブルの数々。
魔女の巻き添えで、危険な組織に命を狙われる事になった事。
遂には魔法回数を使い尽くし幽霊となられ、その後も尽きぬトラブル。
やっと生き返った事。守護者の皆様と契約された事。私達と出逢った事。
何度聞いても御気の毒だと思います。波乱万丈にも限度があります。
ですが、私達と出逢った事が救いだと言われたのは非常に嬉しかったです。

「毎度の事ながら、和正さんは説明が楽でいいよ。」

「俺は相手の瞳の色を見れば、嘘を言ってるかどうか解るからな。お前のは明るく輝いていた。
 お前が嘘を言っていない以上、どんなに無茶苦茶な話でも真実なんだろう。」(和正)

「私は和樹ちゃんも和正君も信じてるから。でも良く頑張ったわね。」(美樹)

美樹様は和樹様の頭を優しく撫でます。その表情は和樹様と同じく優しさに満ちています。
やはり母親なのですね。

「所で、メイドさん達に支払う給料は大丈夫なのか?」(和正)

「まあ色々あってね、財産が300億円くらいあるんだ。」(和樹)

「仕送りはしなくても平気そうだな。」(和正)

「あらあら、少し寄進してくれない?」(美樹)

「一応共有財産なんで勝手には使えないし………5000万円でいいかな?」(和樹)

「充分よ!」(美樹)

「しかし、幽霊になったり生き返ったりというのは流石に自分の眼を疑ったがな。」(和正)

「それに私達の血筋に有名な魔術師が何十人も居るというのもね。」(美樹)

「やっぱり知らなかったんだ?」(和樹)

「当たり前だ。だがそう考えると、色々納得できるな。通りで書庫に魔術書が沢山あるわけだ。
 俺の『眼』や美樹さんの『完全記憶』もその影響かな。まあどうでもいい事だがな。
 でも、お前が変わらずに居てくれて良かったよ。」(和正)

「和樹ちゃん、貴方はずっと私達の自慢の息子だったわ。とてもいい子に育ってくれた。
 力なんかどうでもいいの。貴方の優しさこそが何にも代えがたい価値があるのだから。
 だから心配なんてしないわ。貴方が信じる道を貫きなさい。」(美樹)

「解った、ありがとう。」(和樹)

それから和正様と美樹様は私達の方へ向き直られました。

「リーラちゃんにネリーちゃん、そして皆さん。和樹ちゃんをよろしくお願いします。」(美樹)

「和樹の支えになって下さい。貴方達が居れば、和樹は道を間違えたりしないでしょう。」(和正)

そう言って、御2人は深々と頭を下げられました。なんと恐れ多い。そしてなんと素晴らしい。
それを見た私達は慌てて正座し、頭を床にこすり付けます。

「どうか御顔を御上げください。私は身も心も和樹様に捧げております。
 和樹様と共に在る事が私の望みです。何が起きようと和樹様と離れたりは致しません。」(リーラ)

「私もです。和樹様の居ない生活などに何の価値もございません。
 和樹様に尽くす事こそが私の生きがいなのです。」(ネリー)

「この2人はちと大げさだが、あたし達は御主人以外に仕える気はさらさら無いよ。
 嫌だと言われるまで側を離れちゃやらないさ。」(セレン)

漸く御2人は頭を上げて下さったようですが、私達はそのまま頭を下げ続けていました。
周りから嗚咽が聞こえます。私も涙が溢れるのをじっと堪えていました。
私達の事を和正様と美樹様が認めて下さったのが、たまらなく嬉しかったのです。

「皆、頭を上げて。感謝の気持ちは行動で示そうよ。
 リーラ、飛び切り美味しい夕食を2人に御馳走して欲しい。僕は境内を掃除するから。」

和樹様の御言葉に、皆が頭を上げます。そうですね、その方がいいですよね。

「セレンとルイーゼの小隊は敷地内の掃除に取り掛かれ。ネリーとゲルダはこの建物の掃除だ。
 マルグリットは台所の掃除、及び調理を任せる。私は買出しに出かける。
 和樹様、掃除は私達にお任せ下さい。出来れば、お店の案内をお願いします。」(リーラ)

隊長の指示に敬礼で答え、私達は言われた仕事に取り掛かり始めました。


◆◇◆◇


合宿所は建物は古いのですが、造りはしっかりしていました。
どうやら定期的に手入れをされていたようで、掃除も比較的楽に済みました。
台所も広いので、大人数で調理に取り掛かれます。

隊長達が行ったお店も新鮮な食材が多く揃っており、出来上がった夕食は好評でした。
和正様は三度も御代わりをされてましたし、美樹様にも気に入って頂けたようです。
食事をしながら、御2人から和樹様の子供の頃の御話を色々と聞かせて頂きました。
和樹様は照れておられましたが、懐かしそうに聞いています。
そして食事が終わると和正様と美樹様は、母屋へと御戻りになりました。


和樹様も久し振りに自分の御部屋で寝るそうで、10時頃になると合宿所を出ました。
私と隊長は和樹様に付いて行きます。何となく、もう少し御側に居たかったのです。

「綺麗な星空ですね。」(ネリー)

「星空ってこんなに綺麗なんだな。忘れていたよ。昔は当たり前のように見ていた筈なのに。」

「本当に綺麗です。ですが私達は和樹様とこうして居られる事が何よりも嬉しいです。」(リーラ)

「………良かったよ。和正さんも美樹さんも賛成してくれて。安心して君達にこれを渡せるから。」

和樹様は手に持っていた鞄から、小さな箱を2つ取り出しました。
あの箱はもしかして………。

「けじめと言うか、お願いだね。これからもずっと僕の側に居て欲しい。絶対に守って見せるから。
 安物で悪いけれど、前にバイトして貯めたお金を全部つぎ込んだ。自分の金で買いたかったからね。」

私達は震える手で、ブルーベルベットの箱………指輪ケースを受け取ります。
蓋を開けると其処にあったのは………小さな宝石の付いた白銀の指輪でした。
私のはサファイヤ、隊長のはルビーです。和樹様の胸の勾玉と同じ色の宝石。
あの『事件』の際に託された勾玉と同じ色の宝石。

「わ、私達は只のメイドです。受け取っても宜しいのですか?後悔されませんか?」(リーラ)

「受け取ってくれないと困るな。誕生石とか良く知らないけど、きっと似合うと思ったんだ。」

「嫌だといっても付き纏いますよ?私、結構しつこいですよ?」(ネリー)

「その為の絆だよ。リーラ、ネリー、左手を出して。」

和樹様はそれぞれの手で、ケースから指輪を取り出します。
私達は同時に左手を和樹様へと差し出します。涙が止まってくれません。

「愛してるよ。」

和樹様は微笑みながら、そっと私達の薬指に誓いの印をはめてくださいました。


合宿所に戻る前に火照った顔を冷まし、隊長とお互いに挙動に不自然が無いかを確認したのですが、
指輪の件はあっさりと皆にばれてしまいました。何故解ったのかは教えてくれませんでしたが。
皆冷やかしていましたが、かなり目が据わっていました。それでも諦める娘は居ないみたいです。
時折「夜這いを………」とか「愛人でも………」とか不穏な言葉も聞こえてきました。
和樹様は浮気をする方ではありませんから大丈夫でしょうが、どうしましょうか?


◆◇◆◇


次の日は全員総出で神社内の掃除を行なった後、和樹様と町の散策に出かけました。
和樹様は特に観光スポットは無いと言っていましたが、そんな事はありません。

「和樹様の通っていた学校とか思い出の場所に行きたいんです。駄目でしょうか?」

「そんな事は無いよ。ちょっと恥ずかしいけどね。」

それから私達は和樹様を先頭に町の中を歩き回りました。
和樹様が通った学校、よく遊んだ公園、お気に入りだった裏山、釣りを楽しんだ川など。
他の人達から見れば大して面白くないものかもしれません。
ですが和樹様の御話を聞きながら案内された、それらの場所は、数多の観光地よりも魅力的でした。
それは皆も同じです。セレン先輩も和樹様をからかいつつも話に聞き入っていましたし、
隊長はきっと子供の頃の和樹様を想像していたのでしょう、夢見るように景色を見ていました。

夕食の後、美樹様に和樹様のアルバムを見せて頂きました。
子供の頃の和樹様は凄く可愛らしくて、美樹様に焼き増しをお願いしてしまいました。
最初に言い出したのは隊長ですが。尤も結局全員が欲しがって、美樹様は笑っておりましたが。


◆◇◆◇


そして次の日、私達は予定通りに帰る事にしました。
和正様や美樹様とはすっかり仲良くなったので名残惜しいのですが、私達も予定があります。

「いつでも遊びに来てね。」(美樹)

「和樹の事をよろしく頼むよ。」(和正)

「はい。我々の全力を挙げて、御守り致します。」(リーラ)

「和樹ちゃん、私は30代でお婆ちゃんと呼ばれるのが夢なの。頑張ってね。」(美樹)

「………………善処するよ。」(和樹)

和樹様の子供、きっと可愛いでしょうね。私は左手の指輪をそっと撫でます。
隊長と私、どちらが先になるのかは解りませんが、早く抱いてみたいです。
本当に素敵な方だから、私で繋ぎ止めれるかは解らないけど、それでも側に居させて欲しい。
私、我侭でしょうか?

「絶対に恋人を悲しませるなよ。それだけは約束しろ。」(和正)

「解った。約束するよ。絶対に悲しませたりはしない。全て守り抜いてみせる。」(和樹)

はい、信じています。

出発の時間になり、電車がゆっくりと動き出しました。
笑いながら手を振る和正様と美樹様の姿がどんどん小さくなっていきます。

「凄く素敵な御両親ですね。」(ネリー)

「初日に言ったろ?平凡な僕の唯一のサプライズネタだったって。
 ………あの人達の子供として生まれた事は、僕の中で多分2番目に幸せな事だよ。」

「それでは1番目は何でしょうか?」(リーラ)

私も気になります。すると和樹様は何時もの優しい笑顔で、こう仰りました。

「きっと、君達と出逢えた事だと思うよ。」


私達の夏は最高のスタートを切りました。でも、夏はまだ始まったばかりです。
きっと色々な事が起きるのでしょう。忘れられない思い出になるのでしょう。
でも、まずは1度帰りましょう。私達の家へ。今夜はうんと甘えさせて下さいね、和樹様♪


無事、両親への紹介を終えた和樹君。リーラとネリーとの絆は更に深まっています。
でも、和樹君を想う女性はその2人だけではありません。夏は恋の季節です。
彼女達もオンリーワンが無理なのは覚悟済み。それでも諦めないのが恋と言うもの。
次回は慰安旅行です。キーワードはメイド、温泉、宴会でどうでしょう?

続く。


        


実家から戻って1週間が過ぎた。もう8月である。
家に戻ってからは、宿題をしたり魔術の勉強をしたりと結構真面目に過ごしている。
また、せっかく時間があるので、トレーニングも基礎鍛錬に比重を置いている。
身体強化はベースとなる肉体の状態が良ければ、より効果も上がるのだ。
体術訓練は、身体強化無しでメイドの訓練に混じって行なっている。
今も訓練を終えたばかりだ。大分、動きに無駄が無くなって来たのが解る。

「お疲れ様です。もうセレンでも相手は厳しそうですね。」(リーラ)

「嫌になるぜ。たった1週間で、あたしに追いついちまうんだから。」(セレン)

「式森様、お飲み物をお持ちしました。」(ネリー)

休息を取る僕達を、他のメイドが熱い視線で見ている。
リーラもセレンもネリーも面倒見がいいから、皆に慕われているなあ。

「………所でさ、今は夏休みなんだ。君達も骨休みしないのかい?」

ふと思いついた事があったので、彼女達に聞いてみる。

「交代で休息は充分に取っておりますが。」(リーラ)

「そうじゃなくてさ。皆で慰安旅行でもどうかな、って思ったんだ。」

「何処へ行こうってんだい?」(セレン)

「観光地では皆の希望がまちまちだし、山や海は日差しが強いから嫌な子も見るだろう。
 でも女の子って好みに差があっても、綺麗になりたいって言うのは共通すると思うんだ。
 その所為か日本ではね、慰安旅行と言えば温泉という方程式があるのさ。
肌への効能がいい温泉に行って、実も心もリフレッシュって訳。どうかな?」

「楽しそうですね。」(ネリー)

「ゆったりと湯に浸かって、米の酒を飲んで………いいじゃないか。
 あたしも日本の風呂は結構気に入ったしね。」(セレン)

「では、予約の取れそうな所を当たってみましょう。」(リーラ)

「あ、私がやりますよ。隊長はお忙しいんですし。」(ネリー)

それからトントン拍子に話は進み、来週1泊2日で温泉旅行に行く事になった。
皆が楽しんでくれるといいけど。


まぶらほ 新たなる物語

第11話


「13番、エルミーラ、歌いまーす!」

「おーい、エーファ!ビールがもうねえぞ!」

「勝負!ダイヤのフラッシュ!」

「負けたわ、エースのスリーカード!」

「ふっふっふっ、私の勝ちね!フルハウスよ!」

「ホテルの中の温泉は美肌の湯だって!それに周りには後4つの温泉に入れるそうよ!」

「日本っていい文化があるわね。温泉で病気を治したりもできるそうよ。」

「仲居というのは和風のメイドらしいな。それ関連の団体の情報はあるか?」

「いえ、日本の愛好団体で尤も有力なのは『世界セーラー服着用機構』ですね。
 日本が発祥ですし。それと最近は『ネコ耳激萌え隊』の行動が活発になっています。」

「『ネコ耳激萌え隊』は我々とは友好関係にあります。1部の過激派に気をつければ大丈夫です。」

「15番!ヘルガ!式森様とデュエットいきます!」

「何!」

………楽しんでくれているのはいいんだけど、はっちゃけ過ぎじゃないかな?
後、ヘルガ。僕は音痴なんだけど。


突然だが、ここは今回の慰安旅行の移動バスの中である。

ネリーが調べた所、温泉を満喫できるバスツアーが見つかった。行程は単純移動で3時間かかる。
途中観光地見学も出来るし、休憩地の1つでも温泉に入れる所があるそうだ。
目的地のホテルは源泉をひいてあり、宿泊時に借りられる札で他の温泉にも格安で入れるらしい。
予約の状況を確認した所、発見が早かった所為か全員の予約が取れた。
旅行会社のバス3台の内、2台を僕達が占領する事になったが、些細な事だ。

晴れてメイドと認められた杜崎さんと柴崎さんだが、今回の旅行には参加していない。
本格的な訓練への参加はお盆を過ぎてからとし、今の内に夏休みを満喫してもらう事になった。
片野坂さんと春永さんは、リーラから訓練の詳しい説明を聞くと辞退したそうだ。

折角なので慰安旅行には2人も参加してもらってもいいと思ったが、リーラに止められた。

「最初から慰安旅行に参加されて気が緩んでしまうと、後の訓練で大怪我する可能性があります。
 理由がどうあれ、メイドの道を選ぶ以上は覚悟を決めてもらわねばなりません。」

「それじゃ、直ぐに辞めちゃわない?」

「私達はプロフェッショナルなのです。甘い考えでこの仕事に就いて欲しくはありません。
 それに彼女達は大丈夫です。」

リーラがどう説得したかは知らないけど、2人とも納得してくれたので良かった。
その代わり、今度遊園地と映画を見に行く時に付き合う約束になったが。
しかし2人とも美人だから、僕だけが浮いてしまいそうだな。

それと、紫乃先生も結局メイドになるのは断ったそうだ。
本人の予想よりも拘束時間が長いため、自分の研究が出来ないかららしい。
その代わりに魔術の家庭教師として、週2回、僕の部屋に来るようになった。
講義を4回受けたが、教え方が上手いので、普段の授業よりも面白い。
ただ、直ぐに抱きついてくるのは勘弁して欲しい。僕も健全な高校生なのだし。
ちなみに8月いっぱいは日本に居ないらしい。紅尉先生と中南米に行くそうだ。
目的が想像できる自分が嫌になる。

まあ、そういうわけで今はバスで移動中なのだが。


「中々上手かったぜ、御主人。ほら、飲みな。」

何とか音程を外さずに歌い終わった僕にセレンが差し出したのは、日本酒のワンカップだった。

「セレン、僕はまだ未成年………。」

「あんだってえ………あたしの酒が飲めねえってのかよ!」

「………頂きます。」

うう、何か久し振りにヘタレな感じ。酔っ払いは怖いよ。
そう言えば僕、お酒は飲んだ事無かったな。美味しいのかな?
まあ不味かったら、セレンもあんなに飲んだりしないだろう。

思い切って、飲んでみる。あ、甘くて美味しい。
口当たりが良かったので、そのまま一気に飲んでしまった。

「なんだ、いけるじゃねえか。ほら、もう一杯。」

更に手渡されたワンカップの蓋を開け、一気にあおる。
うーん、美味い!もう一杯!

「あれっ?」

3本目を飲み干した所で体から急に力が抜けて、僕は背もたれに身体を倒した。
何か凄く気持ちいい。それに眠いや………。

「お休みなさい………。」

襲ってくる睡魔に耐え切れず、僕はあっさりと意識を手放した。


◆◇◆◇


どこからか聞こえてくる鳥の鳴き声に、僕の意識はゆっくりと眠りの世界から目覚めようとする。
ここまで意識が起きれば、普段なら身体も起きるのに、今日に限っては何故か思うように動かない。
頭も少し痛いような。それに右腕が重い。これは一体?もしかして、風邪でも引いたかな?
しかし、思い当たるような節はない。大体ここは僕の部屋じゃないし。

ん?なんかいい匂いがするな。それに右腕に当たる、この柔らかい感触は何だ?
僕は無意識に左腕を動かし、右腕に乗っかかっているものを抱きしめる。
程良い温もりを持つそれを抱きしめていると、心が落ち着くのを感じる。
ずっとこのままでも良いかも。そこまで考えたとき、その抱いているものから声が聞こえてくる。

「ん……、んんっ……あっ」

妙に艶かしいその声を聞き、徐々に僕の意識がはっきりとしてくる。これは、もしかして……。
いや、もしかしなくても、この感触にこのいい匂いは、僕が慣れ親しんでいるものだ。
僕はそれを確認すべくゆっくりと目を開け、抱きしめているそれを見る。

「和樹様、お目覚めになられましたか?」

やっぱり、リーラだった。因みに服は身に付けていない。

「お酒の飲み過ぎのようですね。大丈夫ですか?」

その言葉に僕の記憶が蘇る。
そうだ、バスで移動中にセレンに勧められた日本酒を飲んで、そのまま寝ちゃったのか。

「御免、皆は?」

「自由行動です。チェックインしてから………今が4時ですから、2時間は経っていますね。
 急性アルコール中毒ではなく只眠っていただけでしたので、和樹様をお部屋に運びました。
 セレンは後できつく叱って置きますので。」

「いや、僕も調子に乗って飲んだのが悪いから。ああ、それと………。」

「何でしょうか?」

「どうして君が裸で僕の布団にいるのかな?」

「やはりお忘れですか?」

くすっと微笑むリーラの綺麗な顔を見ていると、急にもう1つの記憶が蘇って来た。

リーラとゲルダが酔っ払った僕の両肩をそれぞれ支えながら、運んでくれた。
その後ろからセレンが心配そうに僕の荷物を持って付いてきた。
僕を布団に寝かせてから、リーラがセレンに「減給だ!」と叫び、セレンが必死に謝っていた。
少し落ち着いたリーラが「私が和樹様の看病をする。」と言って、2人を帰した。
それから僕は半分寝ぼけながら「お水を頂戴。」と言って、喜んだリーラが水を汲んで来て。
水を飲んだ後、傍に居たリーラを抱きしめて舌を絡ませて、そのままリーラを押し倒して………。

「あ、あはは………。」

確かにさっきは酔っていた所為か、理性がほとんど無かったな。
その時は殆ど意識が無かったはずなのに、今ははっきりと思い出せる。
僕の下で激しく乱れるリーラの荒い息遣い、顔を真っ赤にして僕を求める彼女の濡れた瞳。
その口から紡がれる、夜にしか聞かせてくれない、僕の理性を溶かすかのような嬌声。
それらを思い返す内に顔が赤くなる。悲しいかな、同時に身体の方も反応してしまう。

「思い出して頂けたようですね。和樹様は普段も凄いのですが、酔うと更に凄くなるようです。
 私、2度もイカされてしまいました。」

そう言いながら、俯いていた僕の顔を悪戯っぽい笑みを浮かべながら下から覗き込む。
………可愛すぎるよ。さっきの事を思い出していた今の状態でそんな顔を見せられたら………。

僕はリーラの肩を掴み、正面を向かせるとそのまま唇を塞ぐ。
突然の事に驚き、目を見開いていたリーラだったが、すぐに目を閉じ、僕に身を任せてくる。
リーラの少し開けた口に舌を入れ、彼女のそれと絡ませる。
しばらく、部屋の中にお互いの舌を絡み合わせ唾液を交換し合う湿った音が響く。
リーラが僕の首に両腕を巻きつけ、更に貪欲に舌を求めてくるのに応えながら、彼女を押し倒す。
やがて唇を離すと、そこにさっきまでのキスの名残である糸ができる。

「リーラ………。」

自分でもこれ以上ないと言うぐらい優しく、リーラの名前を呼ぶ。
それに答えるように頬を上気させ、瞳を潤ませながら、リーラもその綺麗な声で僕の名を紡ぐ。

「和樹様………。」

そして、お互いに顔を近づけ、またキスを交わす。
同時に僕は左手でリーラの銀髪を優しく梳きながら、右手をリーラの首から下へと徐々に這わす。
そして、右手が胸の膨らみに届くかという時………。

「和樹様、御気分はどうですか………?」

珍しくノックもせずにネリーが入って来た。突然の事に僕達は固まってしまう。

「失礼します………!?」

襖を開けたネリーも固まってしまった。因みにこの部屋は和室である。
ネリーは何時ものカチューシャは付けたままだが、浴衣姿であった。
既に温泉を堪能したのだろう、少し湿った髪と上気した頬が色っぽい。
………なんて、冷静に判定している場合じゃないか。どうしよう?

「………まだ、夕飯まで2時間あります。汗を流す時間は充分にありますよ。」

ネリーがピシャンと襖を閉める。

「ここの温泉、凄く気持ち良かったんですよ。私の肌も何時もよりスベスベです………。
 それに充分に温まったら、カラダも火照って来ちゃって………。」

ゆっくりと浴衣の帯を緩め、胸元をはだけさせる。更にフロントホックのブラを外す。
リーラほどの巨乳ではないが、バランスの良い美乳が露になる。

「隊長だけなんてずるいですよ。私だって和樹様の女なんですから。」

ネリーが僕の背中に抱きつく。彼女の柔らかい胸が背中で潰れているのが解る。
それに湯上りのいい匂いが僕の理性を麻痺させる。ついでにお酒の匂いもする。
………ネリー、君も酒に弱かったのか。一体誰に飲まされたんだ?

「確かに抜け駆けだったな、すまない。和樹様もいいですよね?」

リーラも、にこやかに僕に微笑む。恋人達に裸で誘われて拒絶など出来ない。
ファイナル・フュージョン承認だ!

「どうぞ、お召し上がり下さい………………………あん♪」


◆◇◆◇


………30分後。

『運動』というか『食事』というか、満足した僕達は部屋に備え付けのシャワーで汗を流す。
先にリーラとネリーがシャワーを浴び、次に僕がシャワーを浴びる。
それから備え付けの浴衣に着替える。すると時計を見たネリーが話を切り出した。

「和樹様。大浴場も良かったのですが、家族風呂もあるそうなんですよ。」

「家族風呂?」

「少人数用の小さな露天風呂らしいです。混浴なんですよ。さっき、予約したんです。
 3人で行きませんか?」

「ちょっと恥ずかしいぞ。」

「じゃあ、隊長は大浴場に行きますか?」

「行かないとは言っていない。それに今回は慰安旅行だ。階級で呼ぶ必要は無い。」

「解りました、リーラ先輩。それじゃ、行きましょう♪」


家族風呂は3人で入ると丁度良い大きさだった。あー、気持ちいい。それに眼福、眼福♪
本当に来て良かった。身も心もリフレッシュされていく感じだ。
温泉で温まり、疲れた身体を湯に委ねながら、寄り添って来る彼女達の温もりを堪能する。
正に、この世の極楽である。

のぼせる前に湯から出て、身体を洗い始める。
するとリーラの手が僕の手を押さえ、泡立てたスポンジを取り上げる。
ネリーも別のスポンジを泡立てていた。

「和樹様は座ってて下さい。私達が御身体を洗って差し上げます。」

そして僕は2人がかりで、身体の隅々まで洗われてしまった。まるで王様になった気分だ。

その後、お礼として2人の背中を流してあげる。
綺麗な肌が赤く染まり、恐ろしく色っぽいが、僕もお腹が空いた。倒れたくは無い。
今日はかなりレッドゾーンな理性を総動員して、誘惑を何とか乗り切った。


家族風呂から上がると、6時10分前だった。

「大広間へ行きましょう。皆、待ちくたびれているかもしれません。」

「ああ、お腹空いた。よく考えたら、昼食べてないし。」

「いっぱい食べてください。でも食べ過ぎちゃ駄目ですからね。」

他愛の無い話をしながら、僕達は皆の待つ大広間へと歩き出した。


◆◇◆◇


僕達が大広間に入ると、既に全員が席についていた。皆、浴衣姿なので凄く新鮮だ。
もう温泉に入った所為か、顔が上気している。

「御免御免、待たせちゃったね。」

「い、いや、別に謝る必要は無いさ。………昼間は悪かったね。」(セレン)

「調子に乗って酒を飲んだ僕も悪かった。お相子でいいよ。」

上座に席が2つ空いている。僕が一方に座ると、もう一方にリーラが座る。
ネリーは少し離れた席に座った。

「それじゃ、皆、乾杯しようか。リーラ、僕は烏龍茶をもらえるかな?」

「酒以外はジュースだけですね。今から頼みます。」(リーラ)

「御主人様。お酒はお召し上がりにならないのですか?」(ルイーゼ)

「確かに美味しかったけどね。バスの中では迷惑を掛けたから、止めとくよ。まだ未成年だしね。」

「それは残念ですわ………………可愛かったのに。」(ゲルダ)

「え?何か言った?」

「いえ、何でもありません。」(ゲルダ)

「和樹様、どうぞ。」(リーラ)

「皆、準備OKです。御主人様、乾杯の音頭を。」(マルグリット)

やっぱりそう来たか。一応考えておいて良かったよ。

「………コホン。君達と出会えた事、こうして皆で旅行できる事が何よりも嬉しいです。
 せっかくの旅行ですから、精一杯楽しみましょう。乾杯!」

「「「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」」」」


ああ、御飯が美味しい。昼御飯抜きで、昼間から『運動』しちゃったしな。

「和樹様、お代わりはどうですか?」(リーラ)

「うん、お願い。」

「御膳が足りなければ追加しますが、食べ過ぎちゃ駄目ですよ。」(ネリー)

「大丈夫、大丈夫。」

皆楽しそうで良かった。女の子だから、僕みたいにがつがつとは食べないけど、
嬉しそうな表情から料理に満足しているのが解る。
ネリーが予め、食べられない物のリストをホテルに送っておいたそうだ。名幹事だね。
ビールを飲む子も居るけど、日本酒も結構気に入ったみたいだ。
ある一角では、一升瓶が3本特別注文されている。流石に多過ぎると思うけど。
しかし、床を汚したり、騒ぎ出す娘がいないのは感心だ。

「ところで、未成年の子も居るんじゃなかったっけ?」

「問題ありません。自己管理はメイドの務めの基本です。
 それに以前検査した時に、アルコールに弱い者は居ませんでした。」(リーラ)

僕は腹八分目という辺りで箸を置く。丁度、御膳は空になっていた。
後で軽く夜食を注文してもいいかも。

リーラもネリーも酔いが回ったらしく、白い顔がほんのりと紅く染まっている。
ううん、色っぽいな。

「御主人様。食べてばかりでなく、少し飲みましょうよ。」(ルイーゼ)

「いや、遠慮しとく。」

「素晴らしいですよ、この日本酒って。口辺りはいいし、この料理とよく合います。
 これで飲まないなんて、つまんないですよ。」(ルイーゼ)

「確かにそうですね、今度から日本酒用の貯蔵庫も作りますか?」(ネリー)

「大賛成だ!なっ、なっ、いいだろ、リーラ!」(セレン)

「私も賛成………美味しいです。」(マルグリット)

「いいですよねえ、御主人様ー。」(ゲルダ)

何時の間にか、僕の前には小隊長全員が集まって来ていた。
それ以外の娘達も酒宴に移行している。既に御膳は空のようだ。

しかし、何時見ても皆美人ぞろいだな。

少し大雑把な所があるけど、姉御肌で面倒見のいいセレン。
間違いなく美人だし、彼女のはっきりした物言いは親しみやすくていい。

穏やかな口調で笑みを絶やさないルイーゼ。落ち着いた雰囲気の美人だ。
貴族の御令嬢と言う感じだが、意志が強い。その誠実さから部下にも好かれている。
ネリーに告白された際にも助言をしてくれた。ある意味、恩人と言える。

太陽のように明るくて、よく変わる表情が魅力的なゲルダ。頭が凄くいいそうだ。
僕の印象は悪戯好きの美女である。騒動の中心には大抵セレンか彼女が居るし。
よく部下で遊んでいるとネリーが言っていたが、部下の信用は尤も厚い。

いつも冷静なマルグリット。口数は少なく、必要以上にしゃべらない。
整った容貌という点では、リーラに次ぐ美人だ。何か問題が起きた時は一番頼りになる。
一見無感情だが、表現するのが苦手なだけみたいだ。偶に見る笑みにドキリとさせられる。

メイドの入隊試験には絶対美人である事が必須項目で入っていると、僕は確信した。
傍に居る小隊長全員が、今すぐモデルや女優に転進できそうな美人だし。
こんなにも魅力的な彼女達は、どんな人と付き合うのだろうか?


酔いが回って饒舌になった彼女達の話に付き合うのは楽しかった。
時計を見ると、もう8時になる。そろそろお開きかな?

「僕はもう御馳走様。これ以上は入らないよ。」

「残念ですわね。結局飲んで下さりませんでした。」(ルイーゼ)

「大体、何で僕に酒を勧めるんだい?」

「可愛かったからです!」(ゲルダ)

「………はい?」

「いやね。行きのバスでさ、御主人があたしの酒を飲んで眠っちまったろ。
 マルグリットとゲルダが眠ってる御主人の面倒を見てたんだけど………。」(セレン)

「御主人様の寝顔が、もう可愛らしくて。思わず抱き寄せたら、甘えてくるし。
 まるで子猫みたいでした。」(ゲルダ)

「………理性がとぶかと思いました。あれは反則です。」(マルグリット)

「いや、本当に可愛かったよ。現像が楽しみだね。」(セレン)

「私はもう予約しています、楽しみです。」(ルイーゼ)

「「セレン(先輩)!私にも焼き増しを!」」(リーラ&ネリー)

「それじゃ、酒の貯蔵庫の増築、認めてくれるかい?」

「モノ次第だ!」(リーラ)

リーラ、君も充分酔っているね………。
しかしこのままだと、酒を飲まされて撮影会に突入してしまう!

「そ、それじゃ、皆食事も終わったみたいだし、解散!後は各自で2次会ね!
 各部屋で酒や摘みを注文できるから!僕は温泉に行って来る!」

そう告げると、僕はその場から逃げ去った。


◆◇◆◇


大浴場は殆ど人がいなくて、ゆったりと温泉を楽しめた。偶には1人になる時間も必要だ。
昔はそれが普通だったのに、どうも最近は常に女性が傍に居るようになったし。
それはそれで嬉しいのだが、どんな御馳走でも続くと辛いものだ。
夕菜達が居た時の100倍は気が楽だが、こういう時間は絶対に必要である。

温泉の後はマッサージチェアに座り、体の凝りを解す。堪らなく気持ちがいい。
以前に比べると遥かに運動量が増えた。その反動が身体に来ていた様だ。
ストレッチは入念に行なっているが、それでも解消されない所があったらしい。
今度から定期的に整体マッサージを受けた方がいいかな?


20分ほど楽しんで、部屋へと戻る。………あれ?何か人の気配が多いな。
まあ敵意は感じないので、あまり気にせずに部屋に入ると………逃げたくなった。

「何処に行くんですかあ、御主人様。」(ゲルダ)

「主人たる者、部下とのコミュニケーションは重要ですよ。」(ルイーゼ)

が、敢え無く捕まった。流石に力ずくで振り払う気にはならない。
観念して部屋に入る。其処にはリーラとネリー、セレンにマルグリットも居る。

「やっぱ、皆も上司が一緒だと充分に楽しめないだろ?」(セレン)

「私達と一緒では駄目ですか?」(ネリー)

ネリー、その目は反則だ。リーラに目で助けを求めるが、微笑で拒絶された。
ああ、やっぱり君も酔っていたのか。

観念して座布団に腰を下ろす。僕の前に赤い飲み物が出された。

「何これ?」

「トマトジュースのカクテルです。1杯くらいなら平気ですよ♪」(ルイーゼ)

確かに美味しそうだ。カクテルというと酒なんだろうが、日本酒よりは良いか。

「一気に飲むのではなく、2回くらいに分けるといいですよ。」(ゲルダ)

「では、乾杯しましょう。」(リーラ)

各自様々な酒?の入ったグラスを掲げ、乾杯する。ゲルダの勧めに従って、飲んでみる。
1口目で身体が熱くなってきたが、美味しいな。そのまま、2口目で飲み干す。

「ふう、美味いね。何ていう飲み物なの?」

「………ブラッティ・シーザーです。」(マルグリット)

「へえ………。」

目の前がふわふわしてくる。何となくいい気分だな…………………。


◆◇◆◇


―――??視点

和樹は体を左右にゆらゆらとさせ始める。かなり酔いが回ってきているようだ。

「流石に効くみたいですね。」(ゲルダ)

「どれ………こら、トマトジュースと混ぜ合わせた酒は80度以上だぞ!限度を考えろ!
 和樹様、大丈夫………あ!」(リーラ)

和樹は隣にやって来たリーラに擦り寄ると、肩に頭をもたれさせる。

『ああっ!』

リーラ以外が羨ましそうに和樹を見る。
一人、リーラは嬉しそうに笑いながら、和樹の頭を優しく撫でる。

「和樹様、どうされました?」

「ん〜、何でもない。」

そう言いながら、リーラの首筋に頬を摺り寄せる。

「和樹様、御戯れは止めて下さい。皆見てますよ。」

口ではそう言いながら、リーラは嬉しそうに和樹の背中を撫でる。
それに気を良くしたのか、和樹はリーラの正面に回ると胸元へと抱きつく。

「ん〜、気持ちいい〜♪いい匂いがする〜♪」

「和樹様、可愛い過ぎです♪」

リーラは和樹をぎゅっと抱きしめる。それを羨ましそうに見ながら、

「和樹様、子供みたいです。美樹様に貰った小学生頃の寝姿そっくりです。」(ネリー)

「本当ですね。あれは最高の1枚でしたわ。」(ルイーゼ)

「幼児退行って奴かしら?」(ゲルダ)

「とにかく……可愛い♪」(マルグリット)

「リーラ、1人占めはずるいぜ!」(セレン)

全員が和樹に群がる。

「和樹様、膝枕は如何ですか?」(マルグリット)

「は〜い♪」

和樹はマルグリットの膝に頭を乗せ、甘えるように頬を摺り寄せる。
それを見ながら頬を朱に染め、マルグリットは珍しく微笑みながら和樹の頭を撫でる。

「気持ち良いですか?」(マルグリット)

「はい♪」

和樹は目を細め、マルグリットの手をそっと握り、頬擦りする。

「………これはかなり危険です。最早、凶器です。」(マルグリット)

「うんうん、分かるわ。夢で見た和樹様とのギャップが更に拍車をかけてるし。」(ゲルダ)

「マルグリット、次は私と交代してください」(ルイーゼ)

次から次へと和樹に膝枕をしていく。そして、和樹は誰に対しても甘えて来る。

「セレン先輩、子守もこのくらい熱心だといいのに。」(ネリー)

「これくらい可愛いんだったら、是が非でもやるけどな。」(セレン)

それから一時間近く、和樹は全員に何度も可愛がられた。


「僕、何か飲みたい。」

「はい、どうぞ。美味しいわよ♪」(ゲルダ)

一通り楽しんだ後、飲み物を求めてきた和樹に、ゲルダは日本酒を入れたグラスを差し出す。
こくこくと飲んでしまうと、やがて小さく肩を震わせ、鼻を啜り始める。

「ぐす………グスグス。」

両目の端に徐々に涙を溜める。

「うぅ〜。」

「ああ、可愛すぎです。我慢できません!」(ネリー)

そう叫びながら、ネリーは和樹を抱きしめる。ネリーは和樹の頭を軽く撫でながら、

「どうしました、和樹様?」

「グス……うぅ〜……グスン」

『ああ〜私も!』

それを見た全員が和樹の頭を撫でようとする。それに怯え、和樹はネリーにしがみ付く。

「うぅ〜。」

「よしよし。」

ネリーは全員の手から和樹を庇うように抱きしめる。

「ほら、皆さん。和樹様が怖がっています!撫でるなら順番にして下さい!
 和樹様、もう大丈夫ですからね。」

「うん、ぐしゅ…ぐしゅ…。」

それから順番に全員が和樹を堪能したのだった。


「なあ、あの状態から更に飲ませたらどうなると思う?」(セレン)

「幾らなんでも、これ以上飲ませては駄目だ。」(リーラ)

「でも、ちょっと見てみたいですよね。と、言う訳で…。」(ルイーゼ)

ルイーゼはどこに隠し持っていたのか、ワインを取り出す。
それを見てセレンも笑みを浮かべ、リーラを羽交い絞めにする。

「離せ、セレン!これ以上は危険だ!」(リーラ)

「まあ、いいじゃないか。ゲルダ!」(セレン)

セレンの言葉を聞いて、ゲルダはネリーを羽交い絞めにする。

「何するんですか!?」(ネリー)

「気にしない、気にしない。」(ゲルダ)

ルイーゼはグラスにワインを注ぐと、漸く泣き止んだ和樹に手渡す。
それを一気に飲み干す和樹。

「うーん、一杯だけじゃ変化無しですね。」(ルイーゼ)

「それなら………。」(マルグリット)

近づいて来たマルグリットが、和樹に瓶ごとワインを渡す。

「さあ、和樹様。一気に飲んで下さい。」(マルグリット)

「お前達、いい加減にしろ!」(リーラ)

和樹は頷くと一気に中身を呷る。リーラの言葉は届かなかったようだ。
飲み干した和樹は、ゆっくりと袖で口元を拭ってリーラ達を見る。
その目はどこか虚ろで焦点があっていないようにも見える。

「はははは、流石に飲ませ過ぎだな………。」(セレン)

「セレン、いい加減に離せ!」(リーラ)

リーラの言葉に、セレンは漸く拘束を解いた。

「マルグリット!和樹様をアルコール中毒にする気か!」(リーラ)

「………申し訳ありません。」(マルグリット)

漸く皆が正気に戻ったようだ。今更だが。

「それよりも和樹様を寝かせた方が良いのでは?」(ネリー)

「確かにそうね。」(ゲルダ)

ルイーゼの言葉に全員が頷く。リーラがあっという間に布団を敷いた。
ネリーは更に2つの布団を敷き並べる。その意図は言うまでもない。

「では、和樹様を其処に寝かせましょう。マルグリット、手伝って。」(ルイーゼ)

「はい。」(マルグリット)

ルイーゼとマルグリットが、一緒に和樹の元へと行く。
と、それまで虚ろだった和樹の目に力が戻り、ルイーゼを見ると笑顔になる。
それは普段の優しい笑みでも、先程の無邪気な笑みでもない。彼に似合わぬ妖艶な笑み。

「か、和樹様?」(ルイーゼ)

それを直視したルイーゼは、顔を赤くしながら和樹に呼びかける。
だが和樹はそれに答えず、ルイーゼの腕を掴んで抱き寄せると、その唇を奪う。

「んっ!……んん」

突然の事に抵抗するルイーゼだったが、和樹の舌が割って口内に侵入してくると、
途端に力が抜け落ちたかのようにぐったりとして、されるがままになる。
その両手はしっかりと和樹の背に回されていたりする。

「んん……ン………フ……ンン」

クチュクチュと湿った音が辺りに響く。やがて和樹はゆっくりとルイーゼから顔を離す。
ルイーゼはそのままその場に崩れ落ちる。

「ルイーゼ、大丈夫!?」

ルイーゼの近くにいたマルグリットが、崩れ落ちた音で正気を取り戻した。
が、駆け寄る前に和樹によって腕を掴まれ、その胸に引き寄せられる。
そして、ルイーゼと同じ様に唇を塞がれる。

「んん………ぷはぁー、和樹様、一体何を、んん………んん。」

マルグリットの体からも徐々に力が抜けていく。
やがて和樹の唇が離れると、縋る様に崩れ落ちる。

「あの微笑みは、さっき私を押し倒した時と同じだな。」(リーラ)

「どうしましょう、リーラ先輩………。」(ネリー)

二人が話している間に三人目の犠牲者が出る。セレンが掴まり、同じ様に口内を蹂躙される。
その頬は上気しており、両手が和樹の背中を行き来している。

「もう、手遅れだな。」(リーラ)

残ったゲルダも、和樹のキスで崩れ落ちた。
リーラとネリーに抗う気は無い。彼女達の心は既に堕ちているのだから。

しばしの後、和樹の前には6人の美女達が恍惚とした表情で、ぐったりと横たわっていた。
和樹は彼女達に再び近づくと、ゆっくりと浴衣を剥がしていく。
そうして全員を全裸にすると、和樹は手や舌を動かし、彼女達を愛撫し始める。
時には繊細に、時には激しく。その和樹の絶技に全員から甘い声が漏れる。
誰かの漏らす甘い声が更なる興奮を生み、それに負けじと声が上がる。
その声に惹かれるように、和樹の愛撫も激しくなる。彼女達は楽器、和樹は奏者。
しばらくの間、複数の甲高い嬌声が絶える事を知らぬように部屋に響いていた。

やがて声が途切れると、力が入らない彼女達を前に、笑みを浮かべた和樹が立っていた。
和樹は最も近くにいた女性を軽々と抱き上げ、用意された布団へと運び、寝かせる。
そして、軽く口付けをすると、そのまま覆い被さっていく。
女性の口から再び漏れ出す甘い声……。和樹は指を………………。


◆◇◆◇


明けて翌日。少し痛む頭を押さえて起きた僕の目に、凄まじい光景が入ってきた。

「これは…………一体どうなってんの?」

全員が重なり合うように寝ているが、浴衣が肌蹴て、あられもない姿を晒している。
まるで、裸の上に申し訳程度に浴衣を毛布代わりに被っているといった感じだ。
というか、僕も浴衣を着ていないな。何処だろ?

「一体、何があったんだ?」

何故か痛む頭を押さえながら、昨日の記憶をゆっくりと思い返してみる。

(赤いカクテルを飲んだら、身体が熱くなって………。皆に膝枕とかされた記憶が………。
 その後、泣きついていたような気がする。それから………………。)

思い出すにつれ、顔から血の気が引いていくのが解った。

(な、何て事を………!)

完全に昨日の行動を思い出し、自己嫌悪に陥ってしまう。
言い訳出来る状況じゃない!酔ったとはいえ、恋人の前で何て事を!

混乱する僕を白い腕が引き寄せる。背中に柔らかい二つの膨らみが当たっている。

「和樹様、凄すぎです。普段は手加減して頂いてたんですね。」(リーラ)

リーラが蕩ける様な声で僕に囁く。その声からは特に怒りは感じない。

「本当ですよ。これが毎日だったら、身体が持ちません。」(ネリー)

何時の間にか、ネリーも僕の前にやって来て、潤んだ目で見上げてくる。

何かリアクションがおかしいが、ちゃんと謝罪しなければならない。
僕はリーラの腕をゆっくりと解き、服を調え正座して彼女達に向き直り、頭を下げる。

「………御免なさい。僕は君達を裏切ってしまった………。」

しばし、沈黙が続く。顔を上げると、2人とも真剣な表情で僕を見つめてくる。

「和樹様。貴方は私を、私とネリーをまだ必要として下さいますか。」(リーラ)

「必要だよ。身勝手だけど、僕はリーラやネリーと絶対離れたくない。」

「それでしたら、眼を閉じてください。」(ネリー)

言われた通りに目を瞑る。殴られるのかな?
すっと2人の気配が近づく。痛みが訪れるのを予感して、反射的に身体に力が入る。

だが………僕に待っていたのは痛みではなく、唇への柔らかい感触だった。
10秒ほどで離れると、再び唇がふさがれる。さっきのはリーラ、今のはネリー?
目を開けると、にこやかに微笑んだ2人の姿があった。

「私達は貴方のものです。貴方が求めて下さるのに、何故拒絶しましょうか。」(リーラ)

「もっと傲慢でもいいくらいです。でも、そんな貴方を愛しています。」(ネリー)

思わず身体の力が抜け、横に倒れそうになる。やはり彼女達には勝てないな。

「今回の件をどうするかは、私達で話し合います。」(リーラ)

「それまで温泉に行って、さっぱりしてきて下さい。」(ネリー)

「………解った。」


大浴場へ行き、洗い場で汗と汚れを落とす。やっと冷静に考えられるようになった。
まずはセレン達に謝罪しなければならない。罵られても殴られてもいい。
愛想を付かされても仕方の無い事をしたのだから。


30分程して部屋に戻ると、寝ていた皆が並んで座っていた。
既に身嗜みも整え、部屋も片付いている。何処までもプロだな。

「まずは申し訳ありません。無理矢理、お酒を飲ませたのは私達の罪です。」(リーラ)

「すま………すみません。つい、はしゃぎすぎちまいました。」(セレン)

「お許し下さい。」(ゲルダ)

「どんな罰でも受ける覚悟です。」(ルイーゼ)

「申し訳ありません。」(マルグリット)

………何故、僕が謝られているんだ?責められると思ったのに。

「いや、酔った勢いで君達を襲った僕の方が悪いんだから。御免なさい。」

「和樹様は、セレン先輩達を許されますか?」(ネリー)

「僕が彼女達を傷つけたのであって、謝られる事じゃないし。リーラとネリーが良ければ。」

「………和樹様。実はその………皆、偶にでいいから抱いて欲しいと………。」(リーラ)

「はあっ!?」

僕はまだ寝ているのか!?白昼夢か!?空耳か!?

「以前より、御主人様の事は素敵な男性として見ていましたし。」

ルイーゼが幸せそうな笑みを浮かべつつ、僕を見る。

「抱かれたいと思った事も何度もあるしな。」

顔を赤らめたセレンが、上目遣いに僕を見つめてくる。

「私、あんなに気持ち良かったの初めてです。優しくピンポイントで攻められ……。
 それに太くて硬いのが何度も何度も……壊れちゃうかと思いました。」

うっとりとした表情のゲルダが、何やら危険な台詞を呟く。

「素敵でした………。」

マルグリットが、艶かしい吐息を漏らす。

何なんだ皆、その恍惚とした表情は!絶対おかしいぞ、その反応は!
そうだ………これは夢なんだ。ふふふ、寝直そう。早く目覚めなくちゃ………。

「落ち着いてください、和樹様。これは現実です。」(ネリー)

布団に潜り込もうとした所で、ネリーが背中に抱きついて来た。
現実か………どうしよう?

「今回の事で和樹様の凄さを再認識しましたので、偶に夜伽の補佐をと…。」(リーラ)

「皆、和樹様が本気で好きなんです。私達の事さえ忘れてしまわないのであれば、
 その想いを蔑ろにはしたくないのですが…。」(ネリー)

ふう………酔っていたとは言え、襲ったのは事実だし。楽しんでいた記憶もある………。
もう僕にB組の連中を攻める資格は無いな。僕も充分外道だよ。

「………こんな美女達に求められて、拒絶できる人は聖人だけだよ。」

次の瞬間、4人の歓声が上がった。


◆◇◆◇


その後、いくつかの観光地を周って、無事?に慰安旅行は終わった。

今回の慰安旅行は、皆には大好評であった。
すっかり温泉が気に入り、温泉の元を土産に買った者達が多かったらしい。
数日間は、お茶請けは温泉饅頭であった。
慰安旅行以来、各小隊の隊長の機嫌が良く、訓練にも力が入っているそうだ。

慰安旅行の2日後、僕の寝室にネリーと一緒にゲルダも入って来た。
2人とも期待のこもった目で見つめてくる。勿論、僕に抵抗の余地は無かった。
2人を何度も絶頂に導いた後、両側から甘える彼女達を抱き寄せて、眠りについた。

そんなアブノーマルな夜を迎えるようになって、2週間が経とうとしている。
と言うか、先々週は2泊3日のサバイバル訓練、先週は日本アルプス縦断訓練があり、
夜を楽しむ機会が各週2日ずつしか無かったので、全部3人でヤる事になったのだが。

多少は抵抗があった。だが所詮、僕も男………この状況で燃えないわけが無い。
ハーレムは漢の夢だと誰かが言ったが、最近否定できなくなってきたのが悲しい。
既にメイドハーレムという言葉が現実になりつつあるのだ。
避妊については彼女達が気にしているし、僕も勿論ナマではヤらないが。

とにかく2度と宴会で酒を飲まない事を誓いつつ、隣に寝ているネリーを抱き寄せた。


とうとう動き出したハーレムへの道!気にしては駄目だ、和樹君!
とりあえず金と力と優しさがあるから大丈夫さ。何故か君には女殺しが良く似合う。
今回はちょっと追い詰められていたけど、何処から見ても不幸には見えないぞ、多分。
フォローが辛いので、ここで終わろう。次回は決着の時!答えてこそ漢だ!

続く。


        


慰安旅行以来、僕はリーラとネリー以外の女性達を抱く様になった。
酔いに任せて襲ってしまったセレン、ルイーゼ、ゲルダ、マルグリットの4人である。
勿論、不服なわけではない。彼女達は非常に魅力的であり、身に余る光栄と言える。
またリーラやネリーも文句は全く言わないし、前よりも甘えてくるのが愛おしい。
信じられないが、彼女達6人の関係は以前よりも良好なのだ。連帯感だろうか?
今の状況が不満だと言ったら、間違い無く地獄に落ちると思う。

だが、ずっと気になっている事がある。杜崎さんと柴崎さんの事だ。
僕にとっての大切な友人であり、恋人が居るのを知っていて告白してくれた彼女達。
勿論嬉しかったし、彼女達は間違いなく好きだと言える。友人じゃなく女性として。
愛人としてでもいいと言われたが、それは失礼過ぎるだと思って、答えを保留していた。
しかし恋人以外の女性と関係を持つようになった今、誤魔化したままでは失礼だ。
常識的には殴られても可笑しくないし、もう友人としても居られないだろう。
それでも………正直な思いを伝えてみよう。どんなに愚かな答えでも。


夕食後、リーラとネリーを部屋に呼び、考えていた事を話す。

「和樹様が御望みならば、私達は構いません。」(ネリー)

「確かにあの2人は和樹様に本気ですし、分別は弁えているようですから。」(リーラ)

「………御免ね、馬鹿な主人で。」

「私達は和樹様を信じています。悩んだ末の答えでしょう。」(リーラ)

「出来れば、これ以上は増やさないで欲しかったのですが………。」(ネリー)

「そうだね、君達を愛する時間を減らしたくは無いし。」


まぶらほ 新たなる物語

第11話


それから2日後。

一応僕がオーナーとなっているメイド喫茶で、杜崎さんと柴崎さんを待っていた。
明日から2人とも正式に第五装甲猟兵侍女中隊に入隊する事になっている。
その前に話したい事があると電話して、今日此処に来てもらうようにお願いしたのだ。
因みに今日は臨時休業にした。僕とリーラとネリーに、セレン達4人以外は居ない。

「あ、もう来て………いらっしゃったのですか、御主人様。」(杜崎)

「………遅くなって申し訳ありません。」(柴崎)

「まだ5分前だよ。それにまだ普通に話してくれていいよ。」

これからは多分親しく話す事も無くなってしまうのだろうが。

「ありがとう、それで話って何?」(杜崎)

「態々臨時休業の店に呼び出して、しかも周りは偉い人達ばかりだし。」(柴崎)

ルイーゼが僕達3人に冷水を運んでくる。
暑い中をやって来た2人は、直ぐに飲み干した。御代わりをゲルダが注いでくれる。

「これから話す事を良く聞いて欲しいんだ………。」

リーラとネリーにプロポーズをした事。慰安旅行で酔いに任せて、セレン達を襲った事。
彼女達を愛人として、今も関係を持っている事。全てを話した。
話が進む内に、2人が僕を睨んで来たのは、決して見間違いではない。

「何があったのかは、よく解ったわ。それを言う為だけに私達を呼び出したの!?」(杜崎)

杜崎さんが怒りを堪えつつ、僕に問いかける。柴崎さんも同じ表情で頷いている。

「………『迷宮の魔道書』の事件の後、君達は僕に告白してくれた。
 そして、メイドになってまで僕の傍に居たいと言ってくれた。
 凄く嬉しかったよ。僕も君達の事が好きだったから………。」

僕の言葉に2人は目を丸くした。

「でも、僕はリーラとネリーを既に選んでいたから。彼女達が1番大切だから。
 愛人なんて関係を強いるのは失礼だ。そう思って、今まで態度を保留させてしまった。
 でも他の女性と関係を持った僕をリーラもネリーも納得して、受け入れてくれたんだ。
 だから、もう常識なんてのは棚上げして、君達に正直な気持ちを伝えたい。」

コップの冷水を飲み干し、一息ついて、言葉を続ける。

「杜崎さん、柴崎さん。僕は君達の事が好きだ。ここに居る皆と同じく、君達を守りたい。
 ずっと僕の側に居て欲しい。想いを向ける相手が複数でも、この想いに偽りは無い。」

何時の間にか、2人とも顔を下に向けてしまったので、表情が見えない。
そのまま、しばらく沈黙がこの場を支配した。

「………随分と最低な告白ね。それが式森君の答えなの?」(柴崎)

「そう。最低だけど、偽りは無いよ。………返事を聞いてもいいかな?」

拒否されるのは解り切った事だ。それでもこのままでは良くないと思ったから。
だから後悔はしない。ゆっくりと席から立ち上がり、彼女達の手が届く位置に移動する。
杜崎さんが左手を、柴崎さんが右手を振り上げる。最初は平手打ちらしいな。
勿論、今の状態でもかわす事は容易い。だが甘んじて受けねばならない。

パシッ
パシッ

乾いた音が僕の両頬から発せられる。予想よりも痛みは少なかった。
杜崎さんが僕の右腕を掴む。今度は拳が来るかと思ったが、彼女は僕の腕を抱きしめた。

ムニュ

「ふぇっ?」

杜崎さんの大きくて柔らかい胸の感触が、僕に襲い掛かる。拳よりも遥かに強力だ。
残った左腕に柴崎さんが抱きついてくる。そして………、

チュッ
チュッ

両頬に柔らかいモノが触れる。2人が僕にキスをした、と理解するのに数秒必要だった。

「今まで誤魔化していた罰は、さっきの一発で許してあげる♪」(杜崎)

「悪いと思うなら、ちゃんと可愛がってよね♪」(柴崎)

そう言いながら抱き付いてくる2人は、とても幸せそうだった。

まさか、本当に了解してくれるとは思わなかった。最近はいい意味で裏切られてばかりだ。
予想外の答えと彼女達の甘い匂いと柔らかい感触を受けて、頭の中が真っ白になってしまう。

「予想したとおりの展開になりましたね。」(ネリー)

「いい加減、和樹様には御自分がどれほど魅力的なのかを理解してもらわねばな。」(リーラ)

「あれは天然の強みだね。どうせ言っても信じやしないぜ。」(セレン)

「では、やはり彼女達には護衛任務を?」(ゲルダ)

「そうですわね。他の娘達は私達で何とか抑えていくとしまして。」(ルイーゼ)

「虫除けは必要です。」(マルグリット)


漸く混乱から戻った僕を余所に、リーラ達は既に2人と面談を始めていた。

「では改めて聞きますが、和樹様のメイドとなるのに異存は無いのですね?」(リーラ)

「「はい。」」

「では、二人の階級は伍長と致します。当面の任務は和樹様の護衛です。」(リーラ)

「最初は二等兵だって聞いてましたけど………。」(柴崎)

「貴方達の才能と魔法を使えるというアドバンテージからすれば妥当でしょう。」(ゲルダ)

「それに護衛って………ご、御主人様に必要なんですか?」(杜崎)

「確かに和樹様なら、2個中隊ですら相手にもならないでしょう。そちらは大丈夫です。
 ただ、和樹様は御自分の魅力に未だに気付いてないんです。」(ネリー)

「ですから貴方達の任務は、御主人様がこれ以上女性を落とさない様に監視する事です。
 2人が何時でも傍に居れば、きっと近づく女性は減るでしょうし。」(ルイーゼ)

「「成程!!」」

皆と気が合っているのはいいんだけど、何故それで納得するかな?

「重要な任務ですよ。」(マルグリット)

「「はい!!」」

「まあ、覚悟すんだね。ここに居る全員が身持ちが固いので有名だったんだぜ。」(セレン)

セレンの一言で皆が笑い出す。その光景を見て、嬉しくなった。
こんなにも多くの娘達が僕の傍に居てくれるのだ。ならば期待に答えられる男になろう。
前にセレンが僕に言ってくれた言葉を思い出しながら、胸元の勾玉を掌に載せる。
5つの勾玉は僕の誓いに答えるように、淡い輝きを返してきた。


◆◇◆◇


その次の日。杜崎さんと柴崎さんの第五装甲猟兵侍女中隊への入隊式が行なわれた。

片付けられた大会議室に、二手に分かれたメイド達が壁を背に列を作っている。
僕とリーラはその列の先で、2つの新しいカチューシャを持って、2人を待っていた。
其処へ付き添いのネリーに連れられて、メイド姿の杜崎さんと柴崎さんが入ってくる。
幾分緊張した様子で僕達の前に歩み寄ると、膝をついて祈るような姿勢をとる。
2人の前に僕とリーラが歩み寄り、僕は1つ目のカチューシャをリーラに手渡す。
受け取ったリーラは、カチューシャを杜崎さんに手渡す。
同じようにして、柴崎さんもカチューシャを受け取った。
2人がカチューシャをつけて立ち上がると、全員が拍手で新たな仲間を歓迎する。

「新学期までは沙弓はネリーの小隊で、玲子は私の小隊で基礎訓練に参加する様に。
 その後は御主人様のクラスメートとして、余計な虫が来ないように護衛する事。
 訓練の参加は放課後からだ。解らない事があれば、直ぐに質問する様に。」(リーラ)

「「はい。」」

「おっしゃ、新しい仲間の歓迎会だ。全員食堂へ急げ!」

セレンの号令に皆も食堂へ移動し、歓迎パーティが始まった。


バイキング形式のパーティは、とても楽しかった。
調理は皆で交互に料理を作ったもので、多少冷めてもいいように工夫がされていた。
普段は僕だけ先に食事をするので、皆と一緒に食事をする事は少ない。
それだけに、普段はあまり話せない下士官の娘達との話は楽しかった。
勿論、主役は杜崎さんと柴崎さんだ。2人と談笑しながら席を移動し、皆に紹介していく。
僕は乾杯以外は酒は飲んでいない。また暴走する羽目になったら、舌を噛みそうだし。
杜崎さんと柴崎さんもカクテルを少し飲んだだけだった。


◆◇◆◇


パーティの後。

自分の部屋のリビングで魔術書を呼んでいると、ノックの音がした。

「どうぞ。」

「失礼します。」(リーラ)

「「失礼します。」」

ドアを開けて、リーラが杜崎さんと柴崎さんを連れて、部屋に入ってきた。
2人とも顔を赤くして、思い詰めた表情をしている。

「2人を連れて来ました。勿論、彼女達がそれを望んだからですが。」

リーラの言葉に2人は頷く。ならば否とは言えないね。

「2人とも経験が無いそうですから、先程飲ませた紅茶に媚薬を混ぜておきました。
 MMM特製の一品で、痛みを消してそれ以外の感度を高める効果があります。
 その分、興奮作用は低いですが、和樹様なら問題ありません。」

いたせりつくせりだ。ベットの中以外でリーラに勝てる気はしないよ。

「………それでは失礼します。」

リーラは最後に2人に何か囁いた後、一礼して退出した。

僕は杜崎さんと柴崎さんに目を向ける。視線が合うと、互いに恥ずかしそうに目を逸らした。
踏ん切りがつかないのだろう。恥らう姿が可愛らしい。

「こっちにおいで。」

僕の言葉に2人が顔を上げる。躊躇いがちに近づいて来た2人の手を取り、胸に引き寄せる。
そのまま彼女達を抱きしめる。しばらくすると、2人とも僕の背中に手を回してきた。

「いいんだね?」

最後の確認。すると2人は、しっかりと頷いてくれた。腕を解き、寝室のドアを開ける。
最初に柴崎さん、次に杜崎さんの手を引いて、ベットに座らせる。

「見せて欲しいな。君達の一番綺麗な姿を。」

僕の言葉に2人は顔を真っ赤にさせながら、ゆっくりとメイド服の白い前掛けを外す。
それから首のタイを外し、靴下、スカート、ブラウスの順に外していく。
そして、カチューシャとブラジャーとショーツだけを身に付けた2人が僕の目に映る。

綺麗だ。そうとしか表現できない自分の頭の貧弱さが嫌になるが、それに尽きる。
リーラ達とは似て異なる、彼女達が持つ魅力。いや、魔力かもしれない。
女は魔性、そんな言葉が頭によぎる。既に僕は彼女達に魅入られているのか。
とても豊かな胸と、まるでモデルのようなすらりとした体型を両立させている杜崎さん。
「女子高生のコスプレをした美人秘書」という風評を裏切らない、大人びた雰囲気の柴崎さん。
そんな2人が怯えるように、期待するように僕を見つめてくるのだ。

「2人とも、すごい綺麗だよ……。」

そんな僕の言葉に微笑んでくれる彼女達が愛おしかった。


「式森君、最初は私………優しくしてね。」

「こういう時は名前で呼ばない?………玲子。」

「………か、和樹…君…。」

ベットに座って恐々と僕を見上げてくる玲子の唇に優しくキスをする。
更に顔を赤らめた玲子を抱き上げると、隣のベットに運ぶ。

「2度目だね、お姫様?」

「馬鹿………。」

僕の軽口で少しは緊張が解れたのか、玲子はぎゅっと抱きついてきた。

「私、おかしくなっちゃったの。」

「えっ?」

「か、和樹君に抱かれているとドキドキしてきて、身体の中が熱くなって………。」

玲子は僕の手を取ると、そっと自分の胸に押し当てる。

「ほら、こんなにドキドキしているの。」

紫のブラジャーの上から、玲子の胸の鼓動を感じる。
そして、やさしく玲子の胸を包み込むように、手のひらで愛撫していく。

「はあぁ…和樹君…あぁ…。」

愛撫を休めずに、再び玲子にキスをする。たっぷりと舌を差し入れて、絡ませあう。
眼鏡が当たらない様にするのが少し面倒だが、そんなもどかしさも悪くない。
濃厚なディープキスの繰り返しに、玲子は興奮を隠せない様だ。

「眼鏡、外さなくていいの?」

「………和樹君の顔が、見えなくなるの、嫌だから…いいの。」

手早くブラジャーを外すと、露になった美しい胸に啄ばむようなキスをする。
もう片方には指を使って、薄桃色の乳首に丹念に刺激を加えていく。

「あん………ねえ、和樹君も脱いでよ。」

着ていたガウンを脱ぎ捨て、トランクスを下ろし、全裸になった。
隣では沙弓が何時の間にかブラジャーの上から胸を弄りつつ、ショーツの上から指で擦っている。
僕達を見て興奮しているようだ。その姿からは、普段の寡黙でクールな印象を想像出来ない。

玲子のビショビショで用を成していない紫のショーツを脱がし、ベットの上で抱き合う。
深いキスを繰り返しつつ、玲子の秘部に慎重に手を伸ばす。
既に其処からは愛液が溢れるようにトロトロと零れ出し、指に絡みつくようだった。
ピンク色の可愛い豆を親指と人差し指でつまみ、優しく揉みこむ。

「ああっ。駄目、和樹君、それ…凄く感じちゃう。ああ………あああん!」

軽くイってしまったようだ。
脱力した玲子の手が、硬く勃ち上がった僕のモノに触れる。
一瞬驚いたように離れたが、恐る恐る細い指が絡まってきた。

「あ…これが和樹君の…熱い…それに先っぽが濡れてる。」

「玲子が可愛すぎるから、我慢できなくなってきたんだ。」

「私の中に入りたいの?」

「うん。」

「ああ…私も駄目…切ないの。和樹君、来て…私の膣を貴方のものでいっぱいにして。」

媚薬で痛みは抑えられるとはいえ、初めてなのだ。優しくしないとね。
僕は玲子の両足を左右に大きく開かせ、濡れた秘所に僕のモノを沈めていく。

「大丈夫?痛くない?」

「平気…初めてなのに、痛くないの、気持ちいいの、続けて和樹君………んっ。ああ、いい!」

リーラ推薦の媚薬の効果は凄いな。処女でも痛くないなんて、需要が多そうだ。

玲子の膣に僕のモノが根元まで入ったのを確認し、ゆっくりと抽送運動を開始する。
僕の腰が動く度に、身を反らし、首を振り、口を開けて玲子が喘ぐ。

「ああ、いい、いいの…和樹君、気持ちいい。すごい………こんなの初めて!
 お願い、和樹君…もっと、もっと強く抱いて!私の事しっかり抱いて離さないで!」

何時の間にか自分から腰を降り始めた玲子の膣が、僕のモノを思いっきり締め付けてくる。
そのたまらない気持ち良さに、僕の動きも激しくなる。

「う………僕もそろそろ…。」

「来て、和樹君…私、なんだか飛んでっちゃいそう。………ああん、早く私の中に頂戴。
 薬貰ったの、妊娠しないから、頂戴!和樹君のを………はああぁん!」

「玲子…いく、いくよ…。」

「ああっ!あん、あん、あん…いい、いいの………あはぁぁっ!!」

「………くうっ!」

「ああ…熱い………お腹の中が…熱いの…。」

玲子は腰をビクンと反らせて硬直する。絶頂に達したようだ。
玲子の身体を強く抱きしめ、僕は彼女の膣内にたっぷりと熱い精液を注ぎ込む。
僕の下で荒く短い息を繰り返しながら、汗ばんだ乳房を上下させている。
玲子の中から僕のモノを引き抜くと、彼女をぎゅっと抱きしめ、キスをする。

「凄く可愛かったよ、玲子。それに気持ち良かった。」

「ん………私も………。」

ぼうっとした目でそう呟くと、玲子は瞼を閉じた。


リーラが枕元に置いておいた濡れタオルで、玲子の秘部を丁寧に拭う。
乾いたバスタオルで汗を拭き、抱き上げて、もう一つのベットへそっと下ろす。

「待たせて御免ね………沙弓。」

「あ…あん…。………はあ…かず、き…君…。」

其処には荒い息で豊かな胸を上下させ、熱く濡れた瞳で僕を見つめる沙弓が座っていた。
その神秘の扉を覆う白いショーツは、自慰によって溢れた愛液の染みが広がっている。
沙弓の長く艶やかな髪を左手で梳き、右手で彼女を上向かせて、キスをする。
すると沙弓は僕の首に両手を巻きつけ、何度もキスを求めてくる。
ちょっとじらせ過ぎたようだ。僕は舌を割り込ませ、沙弓の舌に絡めていく。

「ん、んん、ん………。」

舌を絡めたまま、左手で沙弓の背中を支え、右手で両足を持って抱き上げる。
そっと沙弓を空のベットに寝かせると、名残惜しそうに唇を離す。
沙弓を安心させるように微笑んだ後、ブラジャーとショーツを脱がす。
手で隠しきれない沙弓の豊かな乳房へと、吸い寄せられる様に両手を伸ばす。
手のひらに吸い付く感じで、スベスベしていて柔らかい。軽く握るだけで形を変える。
掴んでも手から乳肉が零れてしまうほど大きな沙弓の胸を、夢中で揉んでいく。

「ん…はあ…あん…はあ、はあ…ああ………。」

右手を乳房から離し、唇で薄桃色の乳首をはさみ、舌先で丸く転がすように刺激する。
沙弓の乳首が口の中でふくらんでくるのを確かめ、そろそろと右手を股間へと伸ばす。
沙弓の秘所は熱くて柔らかく、もう蕩け出しそうに濡れていた。
僕の指先がヒダをなぞる度に、沙弓の身体は打ち震える。

「ああっ…駄目…そこは…。くぅん。いやっ、いやぁぁぁ!」

白い喉を見せて、切なそうに沙弓が喘ぐ。もう愛撫の必要は無さそうだ。
沙弓の両足を左右に大きく開かせ、濡れた秘所に僕のモノを沈めていく。

「はあん!」

背中を大きく波打たせ、沙弓が喘ぎながら、頭を何度も横に振る。
遂に僕のモノが、沙弓の膣に収まりきった。

「ああっ…和樹君…凄い…。私、感じてるの。初めてなのに、もの凄く感じる。」

「沙弓のナカも凄く気持ちいいよ。動いても、平気?」

「うん…ああ…待って、和樹君。あ、駄目…ああん。そんな、ああぁぁぁん!」

少しも腰を動かしていないのに、沙弓は僕の下で身体を小刻みに震わせる。
どうやら、軽い絶頂に達したようだ。

「御免なさい。私だけ1人で………。」

「感じ易いんだね、沙弓は。ますます可愛いよ。」

「意地悪………。」

ホッとしたように笑みを浮かべてから、拗ねたように僕を睨む。
その仕草がたまらなく可愛いのを、知っていてやっているんだろうか?
沙弓のナカにまだ僕のモノが入ったままの状態で、優しく彼女の髪を撫でる。
そして沙弓を抱え上げ、僕の上に来る様な体位にした。ゆっくりと腰を動かす。

「ああ、和樹君…。和樹君の熱いのが、下から、私のアソコを突き上げてくるの…。
 いい、凄くいい。ああ、ああぁん。」

騎乗位の格好で、沙弓は大きな乳房を揺らしながら、夢中で喘ぐ。
僕は下から手を伸ばして、沙弓の乳房を揉みしだきながら、腰を突き上げる。

「ねえ、抱きしめて!貴方に抱きしめられてイキたいの!」

その言葉に身体を起こし、お互いに向き合って座るような形で抱き合い、激しく腰を動かす。
僕達の肌を汗が伝い、結合部分から、クチュ、クチャという音が響いてくる。

「和樹君…いい…。凄くいいの。貴方のモノと私のが擦れて、いやらしい音を立てて…。
 あ、ああ…もう…駄目。我慢できない!和樹君、もっと突き上げて!」

完全に快楽の虜になった沙弓の要望に答え、腰の動きを3速に上げる。

「ああん!激しい!また、またくる。くるの、和樹君。ああ、ああん!」

「沙弓、僕もそろそろ………。」

「来て、来て頂戴!一緒に、ああん!一緒にいって!いく、いっちゃう!あああぁぁっ!!」

縋る様に僕の身体を抱きしめ、弾む乳房を押し付けたまま、
沙弓は身体を弓なりに反らし、絶頂に達した。
その直後、僕は沙弓の身体を強く抱き返し、彼女の膣内にたっぷりと熱い精液を注ぎ込む。

「あああぁぁ!また、またいっちゃう!!」

僕の射精を受けて、連続で達したらしい。高く叫んだ後、力なく僕に寄りかかってくる。
失神してしまった沙弓の満足そうな寝顔に、優しくキスをした。


その後、浴室で汗とその他諸々で汚れた身体を洗い、洗面器に温かい湯を汲み、
タオル4枚とバスローブを持って、寝室に戻る。勿論僕もガウンに身を包んでいる。
何時もの様に彼女達の身体を綺麗にした後、バスローブを着せて、2人を寝かせる。

「和樹君、ありがとう………。」

「起きたんだ、玲子。シャワーを浴びにいく?」

「駄目、動けないの。………ねえ。こっちに来て、一緒に寝ましょう?」

玲子は身体を横にずらし、2人の間に僕が入れる隙間を作った。

「貴方に抱かれて眠りたいの………駄目?」

「そんなわけ無いよ。」

沙弓を起こさないように気をつけながら、慎重に隙間に身体を収める。
玲子が嬉しそうに僕に抱きついてくる。反対の手で沙弓を引き寄せると、彼女も擦り寄ってきた。

「いい夢が見られそう。」

玲子の言葉に微笑みながら、僕は目を閉じて、ゆっくりとまどろんでいった。


◆◇◆◇


いろいろあった夏休みも明日で終わりだ。明後日から、2学期が始まる。
体術の修業や魔術の勉強、戦闘訓練などを充実した環境で充分に打ち込めた。
それ以外にも色々な所に出かけた。両親への挨拶の為の帰省から始まって、
花火大会、慰安旅行、無人島でのサバイバル訓練、体力作りの日本アルプス縦断。
お祭りにも行ったし遊園地にも行った。よく遊び、よく学んだ日々だった。
人間関係がかなり複雑なものになってしまったが、問題は起きていない。
充実した休みだった。色々な思い出が出来た。名残惜しさを感じるほどに。

コンコン

扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ。」

「………失礼します。」

リーラがカートを押して、ゆっくりと入ってくる。
その上には冷えたワインとグラスが2つ、数種類のチーズの乗った皿がある。

「今日は月がとても綺麗です。月を見ながら一緒に飲みませんか?」

「一応未成年だし、禁酒してるんだけど。」

「和樹様は酒に弱いわけではないですし、グラス2杯くらいなら大丈夫ですよ。
 それに、このワインは取って置きです。セレンなら土下座しても欲しがりますよ。」

珍しく自分の意見を曲げないリーラが可愛いと思った。
確かに自分がどのくらいまで意識を保ったままで居られるかは知っておきたい。

「それじゃあ、頂こうか。」

リビングのカーテンを開けると、綺麗な月夜だった。
御月見と言うと満月と思いがちだが、今日のように空が綺麗ならば半月でも趣がある。
月明かりに照らされたリーラは凄く綺麗だった。銀髪が淡く輝いて、神々しく見える。
リーラが注いでくれたワインを手に取り、乾杯の姿勢を取る。

「何に乾杯しましょうか?」

「今宵の綺麗な月と銀の女神に………乾杯。」

顔を真っ赤にしたリーラのグラスに、僕のグラスを軽く当てる。
芳醇な香りを楽しみつつ、一口飲んだ。確かに素晴らしく美味しかった。


「和樹様………。」

「………何?」

チーズとの相性を楽しみつつ2杯目を飲み終わると、リーラが僕に声を掛けてきた。
真剣な目で僕を見つめてくる。

「和樹様は今、御幸せですか?」

「凄く幸せだよ。毎朝起きる度に夢じゃない事を確認しているくらいね。リーラ達は?」

「私達も幸せです。貴方に御仕え出来る事、巡り会えた事をメイドの神に感謝します。」

リーラは優しく微笑んでくれた。その微笑だけで、僕は幸せだと実感できる。

前に『管理人』に告げた言葉は僕の本心だ。僕の幸せは君達が幸せである事。
もしも君達もそう思ってくれているのならば、僕は世界一の幸せ者だと言えるだろう。
僕を護ってくれる仲間がいる。守りたい人達がいる。愛する人達がいる。
この先何が起ころうとも、僕は1人じゃない。ならば全てを乗り越えられるだろう。

「リーラ、もう一度乾杯しない?」

「構いませんが、何に乾杯しますか?」

「君達に出会えた事と、これからも続いていく幸せな日々に………。」

リーラも嬉しそうにグラスを掲げる。

「そして君と過ごす、この一時に………。」

「「乾杯!!」」


過ぎ去りし昨日。まだ見ぬ明日。それを繋ぐ、かけがえの無い今。
昨日を変える事は出来ない。明日は未定。今を生きる事こそが幸せを作っていく。
彼らの紡いでいく新たなる物語が明るい日々である事を願いつつ、終幕としよう。

第一部 完  第二部へと続く………………といいな


後書き

御久し振りです。タケでございます。「新たなる物語」第一部完結です。
思いつきのままに書き始めた初長編。プロローグと合わせて13話です。
連作短編形式なので、結構好き勝手に書きましたが。

ハーレムに関しては賛否両論あるでしょうが、私の趣味ですね。
11話は強引でしょうが、このくらいしないと一線を越える事は無いですし。
この話がかなり暴走したので、メイド増員計画を取り止めにしました。
その分、12話は18禁に挑戦しましたが、どうですかね?

一応自分なりに和樹君を幸せには出来たかな、と思っています。

勿論これでもう書かないと言うわけではありません。
紫乃や雪江や那穂が、和樹を簡単に諦めたりはしないでしょうし、
B組の連中がこのまま大人しくしている筈もありません。
夕菜や玖里子、凛もこのまま出番無く終わるほど甘くないですし、
水銀旅団や賢人会議も、和樹を放って置くとは思えません。
それにゲイル達をもっと暴れさせたいですしね。

ですが第二部の前に新しい話を書くつもりです。
元ネタはまぶらほ、ヒロインは千早でいこうと考えています。
あくまで予定ですし、神が降りて来て別の話になるかもしれませんが、
今後も書く事は止めずにいこうと思います。

その3.5(修正版)のレス返しです。

>ショウ様。
修正版を気に入って頂き、ありがとうございます。
今回はメイドメインで夕菜は欠片も出ませんでした。
第二部でも出す予定は無いです。静かでいいですし。
>斬穿月様。
メイドをオリキャラにしてみました。原作と違ってもスルーして下さい。
>ゆん様。
メイドはロングエプロンドレスだからこそ、萌えなのです。同志と呼ばせて下さい!
>西手様。
あの呼び方は畏怖の方が強いですね。これ以上のハーレムはどうしましょうか?
メイドハーレムは現在進行中です。あと、その3は再投稿しました。
>D,様。
ありがとうございます。前のは黒すぎたんですよ。
>陣様。
機嫌を直す為にじっくりやってますから、6,7回はイカせたでしょうね。
ウチの和樹君は、夜はフェンリルです。
キシャーの呼び方は無難な所で夕菜か宮間。私は爆弾娘を推奨します。
とりあえず、和樹の相手は8人です。当番を決めて頑張っています。勿論、無敵です。
>夢喰彦様。
今回の和樹君は夜はフェンリルですが、どうでしょうか?
今回はメイドがメインです。オリキャラも出しましたし。
>弦様。
熱い要望にお答えして、18禁に挑戦です。難しいですね。
紫乃は外しましたが、沙弓は頑張りました。

それでは、次の話で会えます様に。

BACK<

△記事頭

▲記事頭

e[NECir Yahoo yV LINEf[^[z500~`I
z[y[W NWbgJ[h COiq@COsI COze