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「新たなる物語 その3.5(修正版) (まぶらほ+クリス・クロス)」

タケ (2006-07-18 15:55)
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お詫び:以前の3.5では夕菜のキシャー度が強すぎました。
    また和樹君の原型が無いという意見も出ました。
    そこで修正版を投稿させて頂きます。


作者注:原作は季節感が解らないのですが、此のSSではプロローグを6月初めにしました。
    『迷宮の魔道書』との戦いは7月初めに起きています。原作が違っても大目に見てください。


『迷宮の魔道書』との戦い以来、葵学園の生徒達はすっかり元気を失ってしまった。
命に関わる事件だったし、エリートのプライドを砕かれたのだから当然と言えるだろう。
特に2年B組は、それが顕著であった。あれから3日間、騒ぎが1度も起こらなかったのだ。
伊庭かおりは喜んでいたが、他の教師達はそうも言って居られない。
葵学園は魔術師の養成学校であり、卒業後の進路は学園の運営に影響を与える。
生徒達に自信を喪失してもらっては困るのだ、自分達の飯のタネの為にも。

藁をも縋る様に、保健室の紅尉兄妹に集団カウンセリング?を依頼したところ、
「処置に関しては口出し無用」を条件に嬉々として引き受けた。
彼らは生徒達を体育館へ招集した。教師達は入れなかったので内容は不明だ。
案の定、カウンセリング?後の3日間は、生徒全員の様子が変だった。
眠り続ける者、幼児退行する者、踊りだす者、壁に話しかける者等が続出した。
しかし、4日目には全員正気を取り戻し、更には以前の元気を取り戻した。

後で紅尉は、和樹に簡単に処置の内容を説明した。

「手段は企業秘密だが、あの日の記憶の中から恐怖を連想する内容を封じた。
 それから『君達はエリートだ』と暗示をかけたというところかな。
 ただし完全な記憶操作など人間には不可能だ。再発した場合はどうするかだね。」

記憶操作は上位存在が下位存在に対して行なうもの。
即ち人間が人間の記憶を完全に操作する事は不可能だ。
夕菜達が和樹への想いを失ったのは、『管理人』による契約の代償としてだ。

2年B組は、伊庭かおりとその他多くの先生の同意で、カウンセリング?対象から外した。
これを機会に更正させようという意見が満場一致で可決したのだ。
しかし甘かった。悪名高き2年B組の生徒達はそんなに上手く行かなかった。
確かに一旦は2年F組近くまで大人しくなったが、彼らの溢れる欲望は恐怖を克服した。
自分達が落ち込んでいるのに周りが元に戻ったのが相当妬ましかったのか、
数多のSSの夕菜に匹敵しそうな記憶の書き換えを各々が行い、都合の悪い事は全て忘れ、
殆どの生徒が元に戻ったのだ。それは僅か10日間の短い平和だった。
その日、教師総出で自棄酒を呷ったという噂だ。


そして夏休みを1週間後に控えた日、とうとう大きな事件が起こった。
この事件は後に『魔王の宴』と呼ばれ、学園の歴史に名を刻む事になる。


まぶらほ 新たなる物語

第9話


その日、僕が普段通りに登校すると、校庭から教室の窓に暗幕が下がっているのに気付いた。

「まさか………アレか。」

前に1度巻き込まれた経験がある、『B組法廷』。
クラスメート全員が民主主義という御題目の元に1人を糾弾し、
反論の機会すら無く一方的に奴等の判決をゴリ押しする、自己正当化の儀式。
何故か生贄は自分だと勘が告げている。さて、何が原因だろうか?

教室の前に行くと、5人の友人達と伊庭先生が待っていた。
駒野と伊庭先生は普通の顔だが、他の女子達は何故か剥れているように見える。

「ええと………法廷に捧げられる生贄は僕かな?」

全員が頷く。

「どうせ入らないわけにはいかないんだけど、先に理由が知りたいな。」

「………1週間前の騒ぎの時。式森君、メイドを恋人にしているって言ったわよね。」(杜崎)

「それも2人………いえ、宮間さんの話だと100人以上居るとか。」(片野坂)

「寮を出たのもメイドを囲う為だったんでしょ………。」(柴崎)

そう言えば、迷宮の中で彼等と仲丸達の前で話したんだっけ。まずったな。
なんか夕菜の妄想が混じって、凄い状況になってるけど。

「………やっぱ、それか。でも恋人はあの2人だけなんだけど。
 それにメイドは90人だし、彼女達がメイドに誇りを持っているだけで………。」

「どうして教えてくれなかったの!?」(杜崎)

「多分騒ぎになると思ったからね。案の定………。」

「そうよ、メイドとしてならOKって事なんでしょ!」(柴崎)

「………………はい!?」

「「私もメイドになるわ!よろしくお願いします、御主人様!!」」

森崎さんと柴崎さんが僕に迫ってくる。
あの突然の告白の後、何も言ってこなかったので考え直したのかと思ったんだけど………。

「でも式森君。90人のメイドを雇うような大金があるんですか?」(片野坂)

「巻き込まれた際に前の主人から結構な財産を貰ったし、この前の騒動で報酬も出たから。
 別に彼女達も高い報酬は望まないしね。」

『迷宮の魔道書』との戦いでは、管理人から時価20億円の宝石類を貰った。
加えて、今後3年間の有益な株式や投資情報の入ったデータROMも貰ったのだ。
リーラに運用を全て任せた所、予想以上の利益を生み出し、財産が一気に増大した。
今後も増えていくだろう。既に就職する必要すら無いくらいだ。

「式森、さっさと入れ。早く終わらせないと、私が上に文句を言われる。」(伊庭)

「先生なら止めてくださいよ。」

「嫌だ、面倒くさい。大体お前にあいつ等が勝てるわけ無いしな。
 私としてはあの静かな日々が望ましいから、やっちまえ。でも殺すなよ。」(伊庭)

「俺達はここで待っている。結果は見えているしな。程々にしろよ。」(駒野)

「了解ー。」

溜息を1つつき、糾弾者達の待つ教室へと足を踏み入れた。


◆◇◆◇


「式森!監禁しているメイドさんを即刻解放し、俺達に土下座して詫びろ!
 そして以後、俺達の命令に服従しろ!」(仲丸)

「なんだいそりゃ?最早、法廷ですら無いじゃないか………前より酷いぞ。」

「黙れ!お前風情に恋人が居るだけでも腸が煮えくり返るのに、メイドハーレムだと!
 そんな漢の浪漫………いや非道が認められるものか!否!断じて否!」(仲丸)

「そうだ!許すまじ!」

「人間じゃねえ!!」

「天に代わってお仕置きよ!じゃなくて、成敗よ!」

「女に持てる奴は犯罪者だ!」

「落ち零れの分際で!」

「土下座じゃ生温い!死んで償え!」

「メイドは敵です!それを庇う貴方も悪です!」(夕菜)

………本当に以前と変わりないな。何てステキな脳みそを持っているのだろう。
経験を生かすという発想は出てこないのか、君達には?

暗幕で薄暗い教室の中、僕だけがスポットで照らされ、周りから非難の嵐が襲う。
別に君達に迷惑をかけた記憶は無いが。いつ非難が攻撃魔法に変わってもおかしくない。
コレだけ騒いでいるのに邪魔が入らない所を見ると、防音結界でも張っているのだろう。

僕は喚いている奴等の顔を見ていく。男子は数名を除いてほぼ全員。女子は半分くらいか。
その中に夕菜も居る。朱に混じったのか、これが地なのか。

「君達、前に僕が言った事を忘れたの?それとも数が揃えば何とかなると思っているの?」

僕のこの言葉を聞いて、今まで喚いていた連中が一瞬押し黙る。一応忘れてはいないらしい。

「だ、黙れ!お前が多少腕が立つとは言え、此の人数を相手にするのは不可能だ!
 俺達の言う通りにすれば、命くらいは助けてやる!これが精一杯の譲歩だ!」(仲丸)

「いい気になるなよ!」

「俺達が本気で掛かれば、お前みたいな落ち零れに負けるかよ!」

「鬼畜!」

「売国奴!」

「悪魔!」

「人でなし!」

「全ての犯人はお前だ!」(六車)

「その魂、サタン様に捧げてやるわ!」(諏訪園)

………生憎、僕は聖人ではない。右の頬を殴られて左の頬を差し出す気にはならない。
罵られれば、腹が立ってきても不思議じゃない。変身した時とよく似た感覚が僕を襲う。
穏便に事が進むわけは無いか。

「そうだね………確かに僕はメイド達の御主人様として、多くのメイド達と生活している。
 周りから見ればメイド達を囲っていると思われてもおかしくないし、君達が妬む気持ちも解る。」

「はっ!やっと認めやがったか!」(浮氣)

「解るけど、君達の言う事は聞けないね。大勢で私刑にしようとする奴等には従えないよ。」

「式森君!貴方、自分の立場が解ってるの!」(中田)

「今すぐメイドの主を辞めれば、痛い思いは少しで済みますよ!」(夕菜)

「彼女達は僕に忠誠を誓ってくれた。僕は彼女達を守ると誓った。この程度で裏切る気は無い。
 ………あの『事件』は君達にとってトラウマに成っていたから、刺激したく無かった。
 全て忘れる事で心の平穏を図っている君達には悪いけど、全て思い出してもらうよ!」

こんな理由で来てくれるか少し不安だったが、ゲイルは僕の呼びかけに答えてくれた。
僕の姿が変わる。黒の忍者装束を纏い、腰に『村正』を挿した姿へと。
そして、全身のチャクラを廻して存在圧を高め、殺気を開放する。
ついでにダメ押しとばかりに村正を抜き放つ。刃から紅尉先生すら怯む妖気が発される。

「ギャー!」
「うわー!」
「い、嫌だ、死にたくねえ!」
「い、イヤァァァッッッ!!!」

誰かが悲鳴を上げた。悲鳴は連鎖的に広がり、混乱を生み出す。
この非日常な姿と殺気は『迷宮の魔道書』の事件の記憶を否応無く引き摺り出した。
麻痺を許さぬ強烈な痛みを。肉を斬り斬られる嫌な感触を。死が迫る恐怖を。
何よりも自分達が全く無力な狩られる側の存在であった事実を呼び戻す。

女子の殆どは顔を真っ青にして、抱き合って震えている。
あの仲丸や松田さんでさえ、怯えが隠せない。物音1つで身を震わせる。
泣き叫んでいる者も居る。嘗て『斬られた』場所を押さえて蹲る者も居る。
流石に罪悪感で心が痛いが、けじめはつけなければならない。そのまま威圧を続ける。

そして全員の顔を見て、戦意を失っているのを確認し、村正を納刀して殺気を抑える。
皆がまだ怯えつつも少し落ち着いた所で、言葉を続ける。

「僕達の事は、もう放って置いてほしい。別に君達に迷惑をかける訳ではない筈だ。
 この『法廷』の事は気にしない。さっきの悪口も聞かなかった事にする。恨みはしない。
 でも、本気で僕に害を加えようとするのなら………それ相応の苦痛で対応する!」

大半のクラスメートは、激しく頷く事で了承してくれた。
しかし、まだ懲りない連中が居た。鶏よりも忘れっぽい頭だな。

「………!?ひ、怯むな!あ、あんなもん、只のハッタリだ!数はこっちが多いんだ!
 やっちまえ!!!」(仲丸)

「「「「「「し、死ねぇ、式森!!!」」」」」」

仲丸の号令に12人の男子生徒が従い、攻撃魔法を発動させる。まだこりないのか。
僕が居た所に幾重にも魔法が炸裂する。まともに食らえば、確実に死人が出るだろう。
自分達の遣っている事が犯罪だと、いい加減気付いて欲しいな。

「やったか………って何処行きやがった!?」(仲丸)

魔法の余波が落ち着いた時、僕は其処に居なかった。
僕は全員の目が1点に集中していたのを上手く利用して、丁度死角になった所に移動していた。

勿論、いくら人狼並の身体能力があっても、魔法や銃弾より速く動くのは不可能だ。
だが、所詮扱うのは人間である。以前にも言ったが、魔法は発動までに時間がかかる。
そして僕が強化しているのは身体能力だけではない。そうでなければ、高速で動けはしない。
今の僕の感覚速度は人間を遥かに超える。集中すれば、常人の動きなどスローモーションだ。
殺気や気配を感じる事で予兆を捉え、発動と同時に『縮地』に入る事も容易い。

「戦闘オプション、『非殺戦闘』選択!」

叫ぶと同時に『縮地』を発動。壁と天井を経由して、裁判席の仲丸の傍へ移動する。
そのまま村正を抜刀し、仲丸の胴を薙ぐ。更に刃を返して袈裟懸けに斬る。

「ぐぎゃぁぁぁっっっ!!!」

仲丸は凄まじい悲鳴を上げながら、床を転げ回る。正に七転八倒。
もの凄い痛がり様だ。まあ、本当に斬っていたら致命傷だから当然か。
仲丸の悲鳴に驚いたのか、誰かが教室の電気を点けた。

「ど、どうしたの仲丸君!?え、式森君?何時の間に…って、刀!?斬ったの!?」(松田)

「て、手前!?なんて事しやがる!?」(浮氣)

僕が村正を持っているのを見て、松田さんと浮氣が糾弾する。

「お前が僕に放った魔法の方がよっぽど凶悪だよ。かわさなけりゃ普通死んでるぞ。
 よく見なよ、出血が全く無いだろう?峰打ちみたいなものだ。命に別状は無いよ。」

使うたびに思うけど、本当にこれは便利だ。
過失で殺してしまう事が無いし、態々手加減する必要も無い。尋問にも使えそうだ。

「普通は強い衝撃で気絶させるのだけど、代わりに強烈な痛みを与える事も出来る。
 脳に直接、激痛を受けたと伝えるんだ。この間の『迷宮』で『斬られた』みたいね。」

普通日本刀で斬られれば、その切れ味ゆえに痛みは少ないと言う。
だが、今の仲丸に与えたのは、鋸状の刃で肉を抉る様に斬り裂かれる痛みにした。
ホラー映画でお馴染みの、チェーンソーで解体される役を実際に体験している事だろう。
現実ならば、脳内麻薬が分泌され痛みを麻痺させるが、そんな恩恵など無い純粋な痛み。

僕はまだ喚いている浮氣へと一瞬で距離を詰め、その心臓に村正を突き立てる。
そして腹を蹴って刀を引き抜くと跳躍し、呆然としている御厨を逆袈裟で倒す。
勿論、こいつ等は僕に魔法を使ってきた連中だ。松田さんは使わなかったので何もしない。

「………………!!!(悶絶中)」(浮氣)

「ぶぎゃじゃぁぁぁっっっ!!!」(御厨)

第二装甲猟兵侍女中隊を相手にした時は、気絶させての無力化を目的としていた。
だからなるべく急所を外し、1撃で薙ぎ倒してきた。だが今回の目的はお仕置きだ。
なるべく致命傷を与えたり複数回攻撃する方が、効果があるだろう。
与えた激痛は丸1日続く。リリスかミナが『治癒』の魔法を使わない限り。

「痛みを知らないと、人は傲慢になってしまう。だから平気で人に魔法が使えるんだ。
 残り10人、きっちりと教育してあげるよ。安心して、絶対死ぬ事は無いから。」

其処に居た全員の顔が恐怖で引き攣った。


それから5分後。

教室に居る大半は、隅の方で震えながら「許して」「助けて」と呟き続けている。
壁を向いたまま、こちらを見ようとしない。必死で耳を塞いでいる。
斬撃の音と苦悶の悲鳴が更なる恐怖を生み出し、現実逃避に入ってしまったらしい。
残りは時々呻き声をあげながら、断末魔のような痙攣を繰り返している者が7人。
それに焦げて蹲っている者が3名居る。立っているのは僕を含め4人だけだ。
僕以外の全員が恐慌状態で、正気とは言い難い。残り3人も冷静とは言えない。
知らない誰かが教室に入ってきたら、腰を抜かすかもしれないな。

そんな事を考えつつ、僕に向かって飛んできた雷撃魔法をひょいとかわす。
それは丁度僕の後ろに周った佐野に直撃した。無論そうなるように誘導したのだが。
僕も前に夕菜の魔法を食らって生きていたのだから、まあ大丈夫だろう。

「ぎゃぁぁぁ!!!」(佐野)

「ち、畜生!捉えたと思ったのに!」(大黒)

しかし素人とはいえ、全く連携がなってなかったな。
大体僕の動きを目で追う事が出来ないのに、魔法を放つ馬鹿がこうも居るとは。
これで同士討ちだけで4人が倒れた。夏休み前に入院とは哀れ過ぎるな。
その全員が今の様に、僕に向けて放った魔法の流れ弾を受けて倒れたのだ。
ちょっと隙を見せただけで、周りを見ずに魔法を放つんだから呆れてしまう。
魔術師も魔法使いも常に冷静で居る事が求められるというのに。

残り3人。もう少し苦労するかと思ったが、拍子抜けだ。
床を蹴り、こいつ等の眼に映らない速さで移動、更に壁や天井も経由して撹乱。
そしてあらぬ方向を向いたままの六車の背中に、2度斬撃を放つ。
その頭を蹴り飛ばして着地する。床で鈍い音がしたが気にしない。
動揺している大黒の懐に潜り込み、頭頂から正中線に沿って、村正を振り下ろす。

「#$%&@:¥<?>!!」

人間の言葉とも思えない奇声と共に仰向けに倒れた。時折痙攣をしている。
変身を解いて、座り込んで震えている夕菜に話しかける。

「宮間さん。」

小動物のように怯えながら、彼女は恐る恐る顔を上げた。

「宮間さん、彼女達の事は前に謝罪した筈だ。それにやった事はお互い様だろう?
 今更友人で居ようなんて言わないし、僕を憎んでも構わない。話し掛けもしない。
 でも、彼女達を憎むのだけは終わりにして欲しい。」

僕の視線が夕菜の眼を捕らえる。彼女は僕の視線に怯えた様に、更に身を震わせる。
慌てて何度も頷く彼女から視線を外し、教室を見回す。

「ふう………やり過ぎたかな?」

自分が作り出した惨状に少し後悔した。


◆◇◆◇


教室のドアを開けて入ってきた友人達と伊庭先生は、目の前の光景に絶句していた。
しばらくして状況を把握した伊庭先生は乾いた笑いを浮かべ、
人手を確保する為に職員室に応援を求めに行った。
僕は紅尉先生と紫乃先生に怪我人の対応を頼む為、保健室に向かった。

その後の2時間ほどは授業にならなかった。
怯えるクラスメートに鎮静剤を打ち、落ち着いたら寮の部屋へ運ぶ。
痙攣する者達も彼らと一緒に各自の部屋に運び、魔法を受けた連中は保健室で治療。
保健室のベットは10人が限度らしく、痙攣する者達の分は無かったのだ。
紅尉先生が僕を見て苦笑していたが、『治癒』の話は僕の胸に仕舞って置いた。
紅尉先生も紫乃先生も嬉々として注射を打っていた。御厨だったら喜んだろうが。
ほんとに鎮静剤だったのかは聞いてないし、聞きたくもない。知らぬが仏というものだ。

放課後、教務主任に事情の説明を求められたので、

「クラスメートに因縁をつけられ、魔法で攻撃されたので応戦した。」

と正直に告げた所、溜息と共に解放された。教室にあった爆発の痕で納得したらしい。
メイドの件については、何一つ触れてこなかった。風紀関連で注意されると思ったが。
部屋から出る際に礼を言われた。何かと思ったが『迷宮の魔道書』の件らしい。
どうやら、メイドの件は黙認してもらえたようだ。


◆◇◆◇


あの騒ぎから、1週間後。今日は1学期の終業式である。
2年生に進級して夕菜達と出会って様々な騒動に巻き込まれた上に幽霊になって。
『管理人』に呼ばれ、ゲイル達と出会い、リーラ達と再会して、幸せを手に入れた。
僅か3,4ヶ月だと言うのに、今までの人生から想像出来ない位、波乱に満ちた日々だった。


怯えていたクラスメート達は、次の日には普通に登校して来た。
僕に会うなり深々と頭を何度も下げて謝ってきたので、僕も驚かせた事を謝る。
約束したので、法廷の事を蒸し返したりはしなかった。
ただし僕に対して必ず敬語でしゃべるようになったので、どうも居心地が良くない。
しかも女子の殆どが僕の事を『式森様』と呼ぶ様になったのには参った。
脅しすぎたのか?それとも嫌がらせか?

僕の攻撃を受けた連中はまだ登校してこない。とっくに痛みは治まった筈だけど。
先生は何も言わないが、このまま夏休みに突入してしまってもいいのだろうか?
ちなみに魔法で怪我した連中は、今も入院中である。可哀想に。

騒ぎの事は他のクラスや学年にも広まったらしく、
廊下を歩いていた時に強面の3年男子に直立不動で挨拶されたのには参った。

杜崎さんと柴崎さんはどうも本気だったらしく、
次の日に履歴書を持ってきて、正式にメイドになりたいと言ってきた。
断りきれずに受け取ると、春永さんと片野坂さんも微笑みながら履歴書を僕に差し出す。

リーラに話したところ、複雑な表情で溜息をついた。

「紫乃さんの他にも出るとは思っておりました………私の方で面接の手配を行います。
 この方達に、メイドの修業は甘くありませんと伝えて頂けますか?」

そう言った後、恨めしそうに睨まれた。
その日の夕飯が、僕の苦手なピーマン料理ばかりだったのは報復だろうか?
話を聞いたネリーも拗ねてしまい、2人の機嫌を直すのにえらく苦労した。


理事長の退屈な話の後、教室で通知表を貰い、校舎を出る。
校門から少し離れた所に車が止まっており、リーラとネリー、そしてセレンが待っていた。

「お疲れ様です、御主人様。」(ネリー)

「ありがとう。セレンも来るなんて珍しいね。」

「たまにゃーいいだろ。お疲れさん。」(セレン)

「御主人様、今夜はパーティを開く予定です。皆、張り切って準備しております。
 何か皆への御言葉をお願い致します。」(リーラ)

「えー!そういうのは、もっと前に教えてよ。」

これから40日間の夏休みが始まるのだ。やりたい事、やるべき事も山ほどある。
両親に彼女達を紹介しなければならないし、本格的に体術の訓練を始めたい。
それに紅尉先生に借りた魔術書で勉強したいし、皆で旅行も考えている。

退屈だけには縁の無さそうだと思いつつ、僕はクーラーの効いた車の後部座席で目を閉じた。


次回からは夏休み。和樹君にはどんな騒動が待ち構えているのか。
不幸には成らずとも騒動を引き寄せるのは、主人公の宿命。
まったりと刺激に満ちた夏休みが始まろうとしている。
メイド万歳で繰り広げる夏休み篇、乞うご期待………といきたいな。


後書き

まず土下座でお詫びしたいです。タケです。
キシャーと和樹君の不幸が嫌いなので書き始めたのに、失敗してしまいました。
いくつか気になった所を変更しました修正版を投稿させて頂きます。
B組連中が弱すぎて見えるかもしれませんが、どうか御了承ください。
前の話は頂いたレスもありますので、残したいと思います。後は戒めですね。
あと、こういう方法が駄目な場合は、すみませんが対処方法を教えてください。

その3.5のレス返しです。

>陣様。
すみません。キシャーは見るだけでうんざりしますものね。
お目汚しでした。どうか見捨てないでください。
>ショウ様。
必要以上に夕菜を悪く書く必要はありませんでした。
その3でのメイドへの逆恨み発言で、ちょっと暴走しました。
ですので逆恨みはしません。というか近づく気持ちも無くなっているでしょう。
>D,様。
最新刊が見つからないんです(涙)。キシャーにはしない事にしました。
その3のは、あくまで気合を入れただけです。
私の趣味では、出番が無くなる事こそ最大のヘイトです。千早は違いますが。
>ゆん様。
元婚約者発言は撤回しました。メイド増加は結構読める展開でしょうね。
リーラ、ネリーにセレンが加わるとバランスがいいのです。
従順なだけでは物足りません。上手く対比させながら距離を近づけたいです。
>斬穿月様。
ありがとうございます。舞穂は出しません。
原作の彼女は、夕菜のキシャーへの布石でしたし。
うちの和樹君は、炉利属性は無いです。
>夢喰彦様。
レスを読んで、ショックでした。直ちに修正しました。
危うく初心を忘れる所でした。ありがとうございます。
>弦様。
うう、エロは無理です。私はエロが書ける人を尊敬します。
>ルビス?様。
メイドは確実に100人を超えます。1番初めは当たりですが、それ以外もいい案ですね。

それでは今度こそ、次の話で会えます様に。

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