双魔伝
プロローグ(一章があるという意味ではない)
キョウは天魔鏡の精霊である。
パッと見てもそうは見えないが、一国の三種の神器、しかもその最上級として扱われる天魔鏡の精霊である。
普段の彼(?)は、天魔鏡の中に居て外には出てこない。
実体化するだけでも、結構な力を使うからだ。
その割には、原作でホイホイ実体化していたような気もするが…。
それはともかく、キョウは困惑していた。
細かい経過は省くが、耶麻台国は狗根国に滅ぼされ、三種の神器、そして火魅子となり得る可能性を持った火魅子候補も散り散りになり、その生死と所在は全く解からない。
キョウは考えた。
どうすれば耶麻台国を復興できるか?
そのためには、国の正当後継者とも言える火魅子の存在が不可欠である。
しかし、その火魅子候補達が一人前になるまで、10年以上の時間がかかる。
そもそも、彼女達が生き延びているだろうか?
狗根国は、火魅子候補達を逃がしはしないだろう。
その全てを刈り取ったと判断するまで、落ち武者狩りは続くはずだ。
第一、キョウ本人からして自由に動けない。
本体はあくまで鏡だし、基本的に作り出した実体を使って天魔鏡を持ち運ぶ事は出来ない…理由は解からないが。
だが、キョウには一人だけ火魅子候補の所在に心当たりがあった。
耶麻台国が滅び、副王・伊雅が落ち延びる際に連れられていた赤子…火魅子の直系。
彼女はどういう理由か、突然発動した時の御柱に飲まれ、何処とも知れない世界、時代に飛ばされてしまった。
だが、キョウは諦めなかった。
幸運にも、そちらの世界にも同じ天魔鏡が存在したのだ。
言う人が言えば、それは同一存在と言う事になるのだが、キョウはそんな言葉を知らない。
流石に彼女がこの時代から消え去ってしまった時は慌てたが、それはそれで好都合なのかもしれない、と思いなおす。
狗根国による火魅子狩りが続くこの世界よりも、向こうの世界の方が安全らしい。
どのような時代に飛ばされ、そこでどのような育ち方をしたのかは、これは運を天に任せるしかない。
彼女が天魔鏡に触れれば、彼女の故郷たるこの世界に呼び戻せる。
それこそ天文学的な確率の話だろうが、血の宿業を舐めてはいけない。
数奇な運命の巡り合わせが、彼女と天魔鏡を引き合わせるだろう。
そして、キョウは待った。
15年の月日を。
どういう弾みか、天魔鏡は山の中に放り出されていた。
人が滅多に来ない山の中だが、それこそ好都合というものだった。
狗根国の人間に見つかれば、そして天魔鏡だと気付かれれば完膚なきまで破壊されよう。
野に晒され、土に埋もれかけ、雨に打たれ風に吹かれ、キョウは天魔鏡の中で待ち続けた。
耶麻台国の人間が、少しでも多く生き延びられるように、来る復興の時に備えて備えている事を想像しながら。
どれほどの時間が流れただろうか。
待つのにも飽きたキョウは、天魔鏡の中でうつらうつらと眠っていた。
元々、起きている必要も理由もありはしない。
例え眠っていたとしても、天満鏡に火魅子候補が近付けばそれだけで気付く事が出来るからだ。
それが別世界の自分でも。
その日も、キョウは惰眠を貪っていた。
代わり映えの無い日々に、彼の神経も流石に参っている。
元々無機物の精霊だけあって、待つのには慣れているが…。
眠るキョウの神経に、稲妻の如き衝撃が飛び込んできた。
実体は無かったが、もしあったら奇声を発して上空300メートルまでロケットネコアルク・噴射全開の勢いで飛び上がっていた事だろう。
火魅子。
火魅子の気配だ。
この世界以外の天魔鏡に、火魅子候補が近付いている。
ついに来た。
耶麻台国復興の狼煙が、ついに上がる。
それこそ一日千秋、一瞬がこの十数年以上の時に感じられる程に焦りながら、キョウは火魅子候補との距離を測る。
火魅子候補は、中々近付いてこない。
だが、もう一息だ。
向こうの世界の天魔鏡から、キョウは呼びかける。
帰っておいで。
帰っておいで、君の故郷に。
帰っておいで、君の国を蘇えらせるために。
帰っておいで……!
キョウの呼びかけに応えるように、火魅子候補は徐々にその距離を詰めてくる。
一歩、一歩、一歩。
一歩、一歩。
一歩。
あと一息…!
「帰っておいで…!」
天魔鏡の精霊が溜め込んだ、十数年分のエネルギー。
それを起爆剤として、光の柱が立ち上る。
時の御柱が、動いた。
そして。
「…ええと、君達…誰…?」
「ひみこー」
少女が元気に右手を挙げる。
その傍らには、姫島日魅子と名札がついた小さなナップザック。
「くたにー」
少年が元気に左手を挙げる。
同じく傍らに、久峪雅比古とネームのついたナップザック。
「「ふたりはー、ぷりきゅあ〜!」」
どう見ても10歳に満たない子供が2人、鏡に映ったように同じポーズ(左右対称)で笑っていた。
と言うか、それはフュージョンのポーズだ。
…キョウが大混乱したのは、言うまでも無い。
その混乱している間に。
「あははは、ナニこの生き物〜!」
「浮いてる、浮いてる〜! ヘンな形〜!」
「えい、引っ張れ引っ張れ〜!」
「絞れ〜! 落書きしろ〜〜!」
「イヤアアァァァ、やーめーてーーー!
どこがプリティでキュアなのさー!」
「キュアっていうのは純粋って事だからー、子供の残酷さは一種の純粋さだよー?」
「そんな純粋さはイヤ〜!
小悪魔的プリティーさもイヤだ〜〜!」
「えいえいえいえいえい!」
「あっ、何か落ちてる!
鏡だー、落書きしちゃえ〜!」
「おねがいーーーヤメテーーー、へるーーぷ!」
キョウが開放されたのは、三回転するくらいに捻り挙げられ、泣きながら空中で土下座してからだったそうな。
子供は怖い。
「で、どったの? て言うか、ここ何処? ものスッゲー森の中じゃん」
「泣いてないで、説明しろよ〜」
「だ、誰のせいで泣いてると…」
まだ腰が一回転しているキョウ。
涙を流しながらも、この2人が一体何なのか考える。
少女の方が、火魅子候補である事は間違いないだろう。
何故か微妙に判り辛いが、天魔鏡のキョウがそう判断したのだ。
念の為に天魔鏡を覗いてもらったら映ったし、ならば時の御柱で別の時代に飛ばされた火魅子候補は彼女で間違い無い。
だが、どうして10歳未満のお子様なのだろうか?
確かに向こうとこちらでは時間の流れは違うし、天魔鏡が発掘され、それに彼女が触れた時に10歳未満だったとしてもおかしくない。
が、正直言ってこの事態は予想外だ。
こんな子供に何が出来る?
火魅子候補はあくまで求心力、そして要として欲しかっただけで、戦やら何やらは他の人員がやればいいのも事実ではある。
が、神輿として担ぎ上げるにしても、この年齢は無いだろう。
せめて、何らかの権力によるバックアップがあるならともかく…。
今までの十数年は何だったのか?
涙腺なんか無いのに、涙が零れそうになるキョウだった。
「さっさと説明しろってば。
今度はその鏡に、マジックペンで落書きするぞ。
油性だぞ。
しかもウ○コ色」
「ああ、待って待って、今説明するから!
実は、君達をここに連れてきたのはボクなんだ!」
「そんな事、言われなくても予想がつくよぅ。
それで、ここ何処なの?」」
小生意気な火魅子(仮)の言葉に内心で叫びながら、キョウは説明を続ける。
空中を飛んだままなのは、また捕まって玩具にされないためだ。
あれは純粋に辛い。
「三世紀の九洲だよ」
「三星旗の急襲? 三星旗ってどこの国旗? 敵は皆殺し? 武器は? 数は? 侵入経路は?」
「違うよ雅比古。
急襲じゃなくて、旧州なんだよ」
「三星旗の旧州?
なんだよそれ、意味わかんねーじゃん」
「ちーがーう!
地名はともかくとして、ここは君達が居る世界じゃないの!
よく言うパラレルワールド!
そして君達が居る時代でもないの!
西暦で言えば二百…何年なの!」
キョウの叫びに、ピタリと動きを止めてキョウを見る。
慌てて上昇するキョウ。
「…西暦…二百何年?」
「…ぱられるわーるど?」
「そ、そうさ」
内心、キョウは色々と焦っている。
十年以上かけた復興計画が水泡に帰そうとしているのもそうだが、こんな幼い子供達を、こちらの都合で強引に召喚してしまったのだ。
しかも、一人は火魅子候補だとしても、もう一人は何故ここに居るのかすら理解できない。
どれだけ怒りをぶつけられても、文句は言えない。
が、相手が相手…さっきあれだけ玩具にしてくれた子供が2人だ。
正直、また捻られたり回されたり描かれたり分解されかけたり埋められかけたり喰われかけたり、というのは勘弁してほしい。
さっきから妙に体がしんどいし、余裕で死ねそうだ。
日魅子と久峪は、顔を見合わせた。
で、
「「カッコイイーーー!!!」」
「そう来るか!?」
2人は思いっきりハシャいでいる。
どう見ても強がりではない。
「それでそれで!?
私達は何をすればいいの!?」
「ドラゴソをやっつけるの!?
ドラゴンを使って空を飛ぶの!?
ドラゴソを下僕にするの!?
ドラゴンを食べるの!?
ドラゴソ(←“ん”にあらず)を繁殖させるの!?」
「だあああぁぁ、落ち着いてー!」
捕えられないはずの高さを飛んでいた筈なのに、気がつけばまた2人の手の中に。
ガックンガックン揺さぶられて、キョウの意識は消えそうになった。
が、ここで気絶したら何をされるか解からないので、根性でレジスト。
何とか脱出し、キョウは事の次第を話した。
と言っても、正直な話、彼の状況をイマイチ把握できてない。
ずっと山の中で野晒しだったので、情勢も把握できてない。
取り敢えず、間違えて連れてきてしまったっぽい事、耶麻台国の復興を手伝ってほしい事などを話す。
そして、日魅子が火魅子の素質を持っている事も。
…日魅子が「女王様とお呼びー!」と言って大笑いしたのは、言うまでもない。
さらに、現代に帰る方法が無い事も話した。
これはあまり自分から言いたい事ではなかったが、彼にも罪の意識と言う物がある。
それが彼の口を軽くしたのだろう。
が。
「くたにー、帰れないってー。
何か困る?」
「うーん、アニメと漫画が見れないなぁ」
「ゲームも出来ないよね。
くたにの部屋に、銀色で18って書いてあるゲームがまだ転がってるし」
「…って、君達親の心配とかは!?」
「「いないよー」」
あっけらかんとしている2人。
そのお気楽さ加減に、キョウの方が唖然としてしまった。
と言うか、親が居ない?
そりゃ確かに、そう言った子供も居るが…。
「まぁ、歳幼くして人生色々って事さ」
「だから帰らなくっても問題ないよ。
国の復興、手伝ってあげるね?」
「え? …え、えぇ? 本気?」
笑顔で頷く2人。
2人に何が出来るかと言う事を差し引いても、これでいいのだろうか?
とは言え、2人を送り返す方法も無いし…。
いやいや、国の復興と言えば、理由はどうあれ物凄い血が流れるのが相場だ。
2人にトラウマを作ってしまうのではないか?
だがそもそも、この世界では流血沙汰、人死には日常茶飯事だ。
慣れなければやっていけない。
この辺は人道云々の問題ではないし…。
「じゃ、とにかく行こうよ。
ここでじーっとしてても夜になるだけだし」
「そうだね。
ご飯と寝床は確保したいな。
ねぇ、どこかに寝られる所はある?」
「え? あ、えーと…ちょっと向こうに廃れた神社があるけど」
「じゃ、そこに行こう!
くたに、荷物は持ってね。
女の子に重い物を背負わせるなんて、フェミニストの名折れよ」
「フェミニストって、男女平等っていう意味だから、楽をさせてあげるって意味じゃないのー」
何だかんだ言いつつも、九峪は小さなナップザックを持ち上げた。
天魔鏡は日魅子が持ち、二人は藪を掻き分けて走り出す。
子供は元気だ。
が、いくら元気でも子供は子供。
あまり体力は無い。
しかも、ただでさえ現代(3世紀)と比べて未来(21世紀)の人間は貧弱だ。
お堂までの道のりは、現代人にとっては近くても未来人にとってはとんでもない距離だろう。
子供であれば尚更だ。
キョウがそれを言う前に、2人は駆け出してしまった。
天魔鏡に戻る暇も無かったキョウは、慌てて2人を追いかける。
本体の位置は分かるので迷子になられる事は無いが、妙な道に迷い込まれても厄介だ。
盗賊や危険な獣が居ないとも限らない。
追う。
追う。
追う。
キョウは空を飛べるし、そのスピードも結構速い。
だが。
「て、天魔鏡がどんどん遠くなる…!?」
引き離されているのだ。
九峪はどうだか解からないが、日魅子は明らかにキョウより速い。
あんな子供が。
いくらキョウの体が妙に重いとはいえ。
「まさか、天空人の力を覚醒させてるの…!?」
火魅子は天空人の血を受け継いでいる。
天空人とは人間よりも遥かに強い体を持った種族で、今は人間界との関わりを断っていた。
その力の一部でも覚醒させているのなら、このスピードも頷ける。
ただの子供と思っていたが、認識を改めるキョウだった。
ようやくキョウが2人に追い付いた。
どうやら、九峪も日魅子にしっかりと追い付いていたらしい。
どういう運動神経だ、とキョウは思う。
が、それよりも。
「ねぇ、キョウ…どう見ても、寂れた神社じゃないよ?」
「そんな…確かにこの神社は、10年以上前に廃れたはず…。
何で人が居るの?」
到着した神社は、賑わってこそいなかったが、しっかりと人の手入れがされていた。
と言うか、掃き掃除をしている巫女らしき人物まで居る。
どう見ても廃れてない。
と、その時キョウの体からいきなり力が抜ける。
フラフラと滑空し、地面にべチャっと張り付いた。
「? 落ちちゃった」
「なんだろ? どしたの?」
「ち、力が…!?」
キョウはようやく気付いた。
神器に残っている力が、極端に少なくなっている。
さっきから体が重かったのはこの為か。
てっきり日魅子を召喚するために力を使ったためだと思っていたが、この消耗度合いはそれ以上だ。
まさか2人にオモチャにされて削り取られたのか、と思ったが…それは無さそうだ。
「そ、そうか、時の御柱を動かした上に、2人も連れてきたから…」
予想以上の力を使ってしまった。
このままでは、実体化もままならない。
動けなくなり、喋る事も出来なくなったキョウを、久峪が拾い上げて頭に載せた。
「あー、九峪ってばヘンな帽子被ってる〜」
「へ、ヘン…」
「ヘンだよ、キョウは紛れも無くヘンな物体だよぉ」
2人の邪気の無い口調にトドメを刺され、なんかもー色々と投げ遣りになったキョウ。
そこへ何やら影が差した。
「ボウヤ達、こんな所で何をしているのかしら?」
「「ほへ?」」
見上げると、神社の掃き掃除をしていた女性が2人を見下ろしている。
その目は、微妙に2人を警戒していた。
何せ物騒な時代だし、2人の服装は明らかに異質。
そりゃ警戒もするだろう。
ただ、やはり子供と言う事で警戒心が薄らいでいるようだが…。
九峪は全く動じず、あっさりと女性に笑い返した。
「おいかけっこしてたら、ここに居たよ」
「あら、そうなの?
…そうよね、もうこの社にお参りする人も居ないわね。
元々あまり人は来なかったけど、十日後には完全に…。
…それにしても……2人とも、カワイイ…」
「おねーさん、何だか鼻息荒いよ?
大丈夫?」
「おっと、大丈夫、大丈夫よ〜」
九峪と日魅子を見て顔を常軌させている女性の性癖はともかくとして、2人は首を傾げる。
「十日後には、なんなの〜?」
「お友達から、もうここは寂れたって聞いたんだけど〜?」
「あらあら、耳と気の早いお友達ねぇ…。
確かに、もうこの社は廃されるわ。
でも、今はまだ…。
はぁ…。
3年前に耶麻台国が滅ぼされて、狗根国に取って代わられたけど…。
昔が懐かしいわ…。
狗根国から送られてきた統治者は、横暴なばっかりだもの…」
(3年…3年前だって…!?)
九峪の頭の上のキョウが、声を出さずに驚愕する。
まさか、と思う一方、成る程と納得する。
恐らく、時の御柱の制御が完全でなかったのだろう。
日魅子一人なら、狙った時間に到着できた。
しかし、九峪という予想外の因子の為に、着地地点が10年以上ずれてしまったのだ。
この消耗度合いにも、それが一役買っている事だろう。
(ど、どうしよう…。
こんなの聞いてないよ…!?
他の火魅子候補だってまだ子供って事だし、それじゃ反乱を起こす事もできないし…。
それって、2人が一人前にこの世界で生きて、火魅子として振舞えるようになるまで僕が面倒を見ないといけないって事!?
そんなエネルギー、残ってないよ!?)
キョウの心配も他所に、九峪と日魅子は元気一杯、好奇心一杯だ。
社に興味を示し、色々と見て回っている。
お姉さんは、それを見て何やら顔を抑えていた。
何かブツブツ言っている。
「う、うぅ…もう誰もこの社には訪れず、祈ってもらえもしないと思っていたのに…。
神様…これが最後の参拝者かもしれません…。
でも、例え子供でも…この時にお参りしてくれるなんて、何と有難いことでしょう…」
感涙の涙をこぼしているようだ。
日魅子は首を傾げたが、哀しみの涙ではない事は分かる。
お姉さんの腕を引いて、注意を自分に向ける。
「ねぇ、お姉さん、大丈夫?
ここの神様はなんて言う神様なの?」
「え、えぇ、大丈夫よ。
神様のお名前?
ここの神様は3人居てね…。
一人は屁奴布居理亜晩斉、もう一人は書田紺上塔、そして最後の一人は炉裡昆子祖真理っていう神様なの。
この世にこれ以上素晴らしい神様は居ないと言うほどに強くて素晴らしい神様なのよ!
もしも耶麻台国の神々が滅びたとしても、人が生きる限り、いえ人に限らずこの世に命がある限り、その姿と形と名前を変え、しかし何一つ変わる事無く受け継がれる永遠に不滅の神様!
ああっ、どうして、どうしてこんな素晴らしい神様を祭っている社がこんなに寂れているの!?
理不尽よ不条理よ、世の中絶対に狂っている!
私は諦めないわよ、たとえこの地を離れても、何時か何処かでこの神様の事を広める事こそ我が使命、我が生甲斐、我が生き様!
と言う事で、差し当たり2人とも、この神様の説法を…あら?」
お姉さんが悦っている間に、日魅子も九峪も何処へともなく消えていた。
……まぁ、昔は男根信仰とか珍しくなかった事だし…真面目に居たのではないかな、そういう神様も。
「うーん、いつでも居るんだね、ああいう人」
「でも、ちょっと興味あったかも…」
「久峪のろりこーん」
「違うよー、肉欲込みだからペドの方だよー。
今なら犯罪にならないよ〜?
だってまだ7歳くらいだし、幼稚園の子が好きになっても普通だよ〜」
ギリギリでな。
「それじゃ、久峪のショタ・コーン」
「どこの玉蜀黍ですかそれは!?
あ、これ↑はトウモロコシって読むんだよ」
「いぇーい、ショタ・コーン決定!」
「違うよー、ショタは日魅子の方…あれ?
キョウ? ぐったりしてて動かないよ」
「え?」
九峪の頭の上を見る2人。
そこでは、姿を薄れさせかけているキョウの姿があった。
「ど、どうしたのキョウちゃん?
なんだか影が薄いよ?」
「薄いのは色素だよぉ。
絵の具を塗ったら大丈夫なんじゃないかな?」
「でも、キョちゃんて鏡の精霊なんだよね?
だったら、塗るのは鏡の方かな?
ザックの中にあったよね、マジックペンは勿論、絵の具に食紅にくさやに唐辛子にババネロ」
「お、御願いだからヤメテ…」
息も絶え絶えのキョウに、トドメを刺さんばかりの会話。
そろそろキョウも、2人をこの世界に召喚した罪悪感とか感じなくなってきている。
おお、生きてたと驚愕する二人に、最後の力を振り絞って話すキョウ。
「い、いいかい二人とも…。
ボクはもうこの姿を保てない…。
でも、死んじゃうんじゃない。
その鏡の中で、体力を回復させるために眠ってるんだ。
きっと…十年もいらないと思うけど…早くても、4年…」
「キョウちゃん疲れてるの?
虚弱児だね」
「寝てばっかりだと、頭弱くなるよ」
「お、お願いだから、黙って聞いてちょーだい…。
この世界は…君達が思っているほど、簡単に生きて行ける世界じゃない…。
だから、誰かオトナの人に頼らないといけないんだ。
いいかい、最初はそのナップザックの中身を売ったりすれば、何とか食い繋げると思う。
この世界では、君達が普通に持っている物もとんでもなく高価な代物だったり、見た事もない凄い物だったりするんだ…。
その品物が尽きない内に、誰か信用できる大人を見つ…け……。
……っく、それでも…ダメ…なら、僕……を…売れ…ば………で、でも極力やめて…。
それ、と……ごめん……」
そこまで話して、力尽きたようにフッと消えた。
九峪の頭の上から、光の粒が日魅子の手元にある天魔鏡に向かう。
2人が見守る中、キョウだった光は天魔鏡に一つ残らず吸い込まれた。
コツコツ叩いても、キョウは出てこないし、鏡も反応しない。
どうやらキョウは本当に眠りについたらしい。
2人は顔を見合わせる。
ふぅ、と同時に溜息をついた。
表情が変わる。
九峪が腰に手を当て、上空を仰いだ。
木々が生い茂っているが、空の青さはよく分かる。
「はぁ…まいったね、どーも…。
これくらいどうとでも出来るけどさ」
「試験、どうなってるんだろうなぁ…。
別に何時までに戻れとは言われてないけど」
2人の子供っぽい雰囲気は消え、何処となく冷徹な雰囲気が漂った。
日魅子は天魔鏡を投げてはキャッチし、投げてはキャッチ。
キョウが見ていれば、涙をちょちょぎらせて止めてくれと頼む事請け合いだ。
だが、今の日魅子がそれを受け入れるかと問われると…きっと物凄い笑顔で、上空50メートルくらいまで投げて、改めてキャッチするに違いない。
子供の無邪気な残酷さではなく、大人の身勝手な残酷さがそこにある。
改めて、彼らの事を記そう。
九峪 雅比古、7歳(暫定)。
姫島 日魅子、同じく7歳(暫定)。
本人によれば両親は無し。
突然3世紀の九洲に召喚された子供で、2人そろって人外の身体能力を誇る。
頭はいいが、基本的に難しい事を考える性質ではない。
そして…“ネットワーク”と呼ばれている組織において、幹部…と言うか正社員としての採用が検討されている、2人で一組の“魔王候補”である。
あっはっは、やっちまいましたよ。
最近火魅子伝にハマッて、近所のゲーム店を巡って恋解が無いか探し回っている時守です。
断っておきますが、これはプロットも出来てない、先を書くかどうかも未定の代物です。
勢いに任せて書いたのだし、まぁ、ついでだから投稿してしまえ、程度です。
何だかんだ言っても幻想砕きを優先させるつもりですし、それが終わればラブひなのSSを書くと思います。
正直、これを書き進めるに当たって、幻想砕きのネタバレになりそうな事が幾つかありますから…まぁ、それを活かせるか、必須なのかと言われると目を逸らすしかありませんが。
気が向いた時にちょくちょく書いて、それが出来て幻想砕きのネタバレにならなければ投稿、と言う形になると思います。
そもそも、戦記モノなんて書く自信がありませんしね。
まぁ、書くとしたら…肉体関係込みのハーレム物になりそうですねぇ。
いっそ、戦争は捨ててお気楽なエロスに…走れない、エロはムズい(涙)
…日魅子は未亜のように嫌悪感を抱かれないよう、気をつけねば…。
追記 幻想砕きのレスは、同じく幻想砕きで返させていただきます。
例によって水曜日に投稿する予定です。