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「ネギま!SEED 第8話(ネギま!+BLUE SEED)」

セフィロス (2006-07-10 22:13/2006-07-10 22:29)
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コンコン

「邪魔するぜ」

扉を開き、俺は中に入った。


ネギま!SEED 第8話


「おお、草薙君」

学園長のジジイが俺を見て声をかける。

「おっす」
「うむ、お早う。ずいぶんと早いが、何かワシに用かね」
「ああ」

そのままジジイの目の前まで来ると、俺は大きく振りかぶってバン! と、両手で 豪奢な机を思い切り叩いた。

「実は一つ…いや、二つほど聞きたいことがあってよぉ」
「う、うむ。何かな?」

俺の態度にビビッているのがありありとわかった。

(ちょっとビビらせ過ぎたか? 考えてみれば、つい先日も問題児だらけのクラスを割り当ててくれたことに感謝してかわいがってやったからな)

そう思った俺は、とりあえず大きく呼吸して気分を落ち着けた。

「まず一つは、俺の寝床のことだ」
「おお、そのことか。なかなかいいじゃろう?」
「ああ。まあな…」

ちょっと顔を上げて頭をかく。そしてそのまま冷たい視線だけを下に落とした。

「女子寮の空き部屋をあてがわれてるってことを除けば…な」
「ほ? 若い子は嫌いかの?」
「…てめ、仮にも教育者だろうが。若い女の巣窟に年頃の男ぶち込むような真似、許されるとでも思ってんのかよ?」
「ネギ君もいるじゃろうが」
「…ガキと同列かよ……」

こめかみを押さえる。さすがに少しばっかり頭が痛くなってきた。

「ま、それは冗談じゃが」
「てめえなら、本気とも取れるのが怖いがな」
「まあまあ。…本当のところは、護衛の対象である木乃香とネギ君の近くにいた方が何かと都合がいいじゃろうと思ったからじゃよ」
「あー、そうかい」
「それに最初に会ったときにも言ったと思うが、君のことは国木田君から良く聞いておったからのう。間違いを起こすような人物ではないと判断してのことでもあるのじゃよ」
「国木田のオッサンから?」
「うむ」
「…オッサンから、どこまで聞いてるんだ?」
「さて、それは言えぬのう」
「なんで」
「自分の方が、よくわかっているのではないか?」
「チッ…」

舌打ちして視線を逸らせた。むかつくが、人生経験の差だろう、腹芸で勝てるような気にはなれなかった。

「わかった。それはもういい」
「そうか。それは何よりじゃ」
「それで、もう一つ聞きたいことがある」
「ん? 何じゃ?」
「昨日話を聞いたとき、俺の護衛の対象の一人である、あんたの孫娘の方には前々から護衛がついてるって言ってたな」
「うむ。それが?」
「そいつは誰だ?」

今回の直談判で最も聞きたかったことをジジイにたずねた。

「ほ、言ってなかったかのう?」
「聞いてねえ」
「そうか。それはすまんのう」
「んなこたいいから、教えてくれ」
「うむ、君たちのクラスの生徒じゃよ。出席番号15番、桜咲刹那。彼女じゃ」

名前を聞き、俺は昨日の歓迎会であった一人のお嬢ちゃんの顔を思い浮かべた。目つきが鋭く、髪を横で縛ったお嬢ちゃんの姿を。

「あいつか…」
「うむ。彼女は幼いころからの木乃香の友達でのう。この役目にはうってつけなんじゃ」
「ダチか。だったら確かに、いいかもな」
「まあ今はその性格ゆえか、木乃香とは一線を引いた付き合いをしているようじゃがのう」

少し寂しそうにジジイが呟いた。

「それでも彼女は神鳴流という剣術の使い手でのう。腕は保障するぞい」
「何…?」

ジジイの言葉に引っかかる単語を見つけ、俺は再び視線をジジイに戻した。

「剣…術?」
「うむ。…それがどうかしたかの?」
「いや…なんでもない。話はそれだけだ。邪魔したな」

そう答えると、俺は踵を返して学園長室を出て行った。もう、ここに用事はなかった。


コンコン

「どうぞ」
「失礼します」

声の主は扉を開けると、ゆっくりと歩を進めた。

「おはようございます、学園長先生」
「うむ。おはよう、刹那君」

声の主…桜咲刹那と学園長の近衛近右衛門は朝の挨拶を交わした。

「今日はまた早いのう」
「はい。実は学園長先生にお訊ねしたいことがありまして…」
「ほう、何かの?」
「今度新しくうちのクラスの副担任になった草薙先生のことです」
「ほう…」

近右衛門の眉毛が、他人にはおそらくわからないであろうほどわずかにぴくりと動いた。

「…で、草薙くんの何を聞きたいのかのう?」
「ではずばり聞きます。あの男は一体何者なのです?」

刹那がじっと近右衛門を睨んだ。別段厳しい眼差しではないが、ふざけた答えは許さないという、確固たる強い意志が感じられた。

「それは前にも話したじゃろう? 木乃香を護るための助っ人じゃよ」
「ええ、それは伺いました。しかし私が今聞いているのは、彼の任務ではなく、彼の正体です」

視線を逸らすことなく、重ねて訊ねる。

「…彼は、信用できる人物じゃ」

しばらく睨み合ったあと、近右衛門が口を開いた。

「? いったい何を…」
「今は、それで納得してくれんかのう? 決して、刹那君の悪いようにはせん」
「……」

静寂が学園長室を包む。しばらく経ってから、刹那は首を左右に振った。

「学園長先生を信じてないわけではありませんが、少しだけでも教えていただけませんか? 底の割れぬ相手と握手できるほど、私は自分が御目出度いとは思ってません」
「むう…」

近右衛門が言葉に詰まった。

「一理…あるのう」

少ししてから、ひねり出すように呟いた。

「命のやり取りをせねばならぬ立場から言えば、当然のことか…」
「はい」

そう言ってまたしばらく睨み合う。

「国土管理室…」
「!」

近右衛門の呟きを、刹那は聞き逃さなかった。

「今ワシが言えるのはこれだけじゃ」

そう言うと椅子をくるっと反転させた。まるでこの話題はこれで終わりだと言わんばかりだった。

「…失礼します」

少し逡巡した刹那だったが、近右衛門の態度からこれ以上は聞き出せないと判断したのだろう。近右衛門の背中に軽く会釈をして刹那は学園長室を出て行った。


(桜崎…刹那…)
(草薙…護)

二人は互いが互いのことを考えていた。


キーンコーンカーンコーン…

授業の終了を告げるチャイムが鳴った。

「あ、じゃあ、今日はここまでにします」
「起立、礼」

その号令の終了とともに、まったりとした空気がクラスを支配する。

「さ〜て、ごはん、ごはん」
「今日は何にしようか?」
「う〜ん…」

学食組が教室を後にし、弁当組は机を合わせたりして弁当を広げる。

「あ、草薙さん。お昼どうします?」

ネギが訊ねてきた。

「わりい、今日は先客があってな…」
「そうですか。わかりました」

軽く会釈をして俺の前から立ち去ろうとするネギの襟首を俺は掴んだ。

「きゅ」

小動物を締め上げたときのような変な声が聞こえたが、今は無視。

「ちょっと待て。お前に聞きたいことがある」
「き…聞きたいこと…ですか?」
「ああ」

その場にしゃがみこむと、俺はネギに耳元に顔を寄せた。

「お前…神楽坂の件、どうなった?」
「ああ…」

バツの悪い表情で、こちらをうかがうように見上げている。その態度で、おおよその見当はついたが、あえてネギの答えを待った。

「すみません、誤魔化しきれませんでした…」
「…そうか、わかった。やっぱり無理だったか」
「すみません」

申し訳なさそうにぺこりと頭を下げるネギ。

「いいさ。仕事が増えるのは半ば織り込み済みだからな」
(このクラスの面々を見れば…な)

一癖や二癖で済みそうにもないような破天荒なやつらの集まりだからな。

「お前はこれ以上俺の仕事を増やさないようにしてくれりゃあいい」
「はい! 頑張ります!」

元気いっぱいにネギは答えたが、俺にはどうもその微笑を見ると不安で一杯になるんだが…。

「…ま、いいや。呼び止めて悪かったな。もういいぜ」
「はい! それじゃ失礼します」

頭を下げ、今度こそネギは俺の前から離れていった。

「さて…と」

顔を上げると、俺はクラスの中を見る。すでに半分近い生徒がいなかった。

(まだいてくれればいいんだが…)

そう思いながら顔をある席に向ける。そこには、今まさにクラスから出て行こうとしている一人のお嬢ちゃんの姿があった。

「桜咲」

名前を呼び、その人物を止める。

「なんでしょうか、草薙先生?」

振り返り、答えた。その口調こそ丁寧なものだったが、その態度がどうにも頑なな印象を与えるのは無視できなかった。

「これからメシか?」
「ええ、そうですが」
「誰かと約束でもしてるか?」
「いえ、そのようなことは…」
「そうかい。なら、一緒に食わねえか?」
「え…」

思いもかけなかった言葉だったのだろう、桜咲の表情が一瞬止まった。

「いやならいいんだが…どうする?」
「……」

顎に手を当て、何かを考える桜咲。だが、その結論が導かれるのに大して時間はかからなかった。

「わかりました。お供します」
「そうか。それじゃ、行くか」
「はい」

俺は桜咲を引き連れ、教室を出て行った。


「ここらでいいだろ」

ベンチに座ると、購買で買ってきたパンを小脇に置いた。少し離れて桜咲が同じようにベンチに腰を下ろす。

「さ、メシにするか」
「そうですね」

うなずくと桜咲はナプキンで包んであった弁当箱を広げた。

「いただきます」

弁当箱を開いて軽く手を合わせると、桜咲は食事を始めた。

「……」
「……」

うららかな日の光に包まれ、俺と桜咲は食事を進めた。こういう場合、楽しいおしゃべりなんかがつきものなんだろうが、今はそういう雰囲気ではなかった。かといって居心地が悪いものというわけでもなかったが。

(そういやぁ…)

ふと、昔のことを思い出した。

(一度、紅葉とこんなふうに一緒に弁当広げたことがあったな。荒神を捜してるときのことだったが、あの野郎、早とちりしてずいぶん浮かれてたっけ…)

紅葉の顔を思い出し、自然と笑顔が作られていた。

「…どうかしましたか?」

隣から桜咲が声をかけてきた。

「ん? 何がだ?」
「いえ、特に面白いこともないのに、食事中にいきなり微笑んだので」
「ん…ああ…少し昔のことを思い出してな」

ふっと息を吐く。

「昔のこと…ですか?」

桜咲が訊ねた。

「ああ。こんな雰囲気で一緒に弁当食べた奴のことを思い出してよ」
「へえ…その方は女性ですか?」
「ああ」
「へえ…」

俺から女の話が出てきたのが予想外だったのか、少し興味津々といった感じで桜咲が言葉をつないだ。

「今はその方は?」

桜咲の言葉に、俺の手の動きが止まった。そして、齧っていたパンをベンチに置く。

「あの…?」
「…もう、いねえよ」
「え?」
「故あってな。俺の手の届かないところにいっちまったのさ」
「!!!」

一瞬で表情が曇った。

「…すみません」

深々と頭を下げる。

「いいさ。お前だって知ってて聞いたんじゃねえんだろ?」
「でも…」
「確かに、後悔してないと言やあ嘘になる。けど、今となっちゃあどうしようもねえことだからな」
「……」
「さて…と」

最後のパンの一欠けらを口に放り込むと、俺は勢いをつけてベンチから立ち上がった。

「悪かったな、貴重な昼休みに暇人の兄ちゃんの相手させてよ」
「あ…いえ」

桜咲も慌てて立ち上がると、恐縮したように軽く頭を下げた。

「…なあ、桜咲」
「はい」
「お前には、大事なものはあるか?」

訊ねる。答えはわかりきっていても、それでも訊ねる。

「大事なもの…ですか?」
「ああ」
「はい、あります」

言い切った。僅かの澱みすらなく。

「そうか。それなら、それを大切にしな。失ってからじゃ、遅すぎるんだからな」
「それは…経験則から来る言葉ですか?」
「ああ」

ゆっくりとうなずいた。

「それと、何をどうしたらその大事なものに対して一番いいのかも考えてみるんだな。お前の考えることがイコールお前が大事にしてるものの望むこととは限らねえんだからよ」
「…ふふっ」

軽く微笑んだ。

「? どうした?」
「いえ、なんか、初めて先生らしく見えたなって思って」
「はっ、ちげえねえ」

俺もつられて笑った。

「それじゃあな」
「はい」

挨拶を交わし、俺たちは別れた。


「草薙…護か」

弁当箱の蓋を閉め、刹那が草薙の名前をつぶやいた。

「…まだ、信用はできない。お嬢様のためにも、用心してしすぎることはないからな」

自分に暗示をかけるように、そう呟いた。

「でも…」

あの目は、何かを謀っている目ではなかった。あの目から、邪気は感じられなかった。…そしてなにより、あの目は私を…

「…はっ!」
ブンブンブン

何度も首を左右に振って浮かんできた考えを打ち消す。

「今更何を…お嬢様を護ることこそ私の使命。影となって支えればそれでいい。それが最善の選択なんだ」

本当に、そうか?

刹那は自分の耳に草薙がそう囁いたような気がした。


「桜咲…刹那」

しばらく歩いたところで俺は振り返り、さっきまで隣にいたお嬢ちゃんのことを思い出していた。

「昨日襲い掛かってきたのは、十中八九あいつだろうな。雰囲気や気配が良く重なる」

昨日の刺客の片割れ、剣を振りかざして何度も俺に襲い掛かってきた物体Xのことを思い出していた。

「実力を試したかったのか、俺が信用できなかったのか、それとも他に何か理由があるのか…」

考えたところでわかるはずはなかった。

「できることなら探りを入れたかったんだが、すっかり変な雰囲気になっちまったからなぁ…」

うつむいてガシガシと頭をかいた。

「…ま、仕方ねえか。だがよ…」

視線を鋭くする。

「何を気張ってるのか知らねえが、一人じゃ限界ってもんがあるんだぜ。それにさっきも言ったが、お前が望むことが木乃香の望むことと一致するとは必ずしも言い切れねえんだからな。…まあ、種は蒔いたつもりだ。後はそれがどういう風になるか…だな」

踵を返し、俺は再び歩き出した。


後書き

こんばんは、セフィロスです。
ネギま!SEEDの第8話をお送りしました。いかがだったでしょうか?
前話に続いてのオリジナルですね。戦い終わって…というところでしょうか。殺し合いをした次の日にこんなこと、まずありえないでしょうが、それでもそれぞれの思うところがあってのこの一幕だと思います。まだ、ほんの指先が触れただけの触れ合いですが、それがいい方向に大きくなっていけばいいなと思っています。…ま、そこは作者の力量しだいですがね。
それと、感想を下さる皆さんに一つうかがいたいのですが、このあとの展開はどうしたほうがいいですかね? 大きなイベントとしては図書館島のことになりますが、その前にちょこちょこと細かいイベント(バカレンジャーの補習授業とか、高等部のおねーさまがたとのドッジボール対決とか)がありました。ここから一気に図書館島に行くか、それとも原作でもあった細かいイベントのほうに行ってから図書館島に進むか。どちらかリクエストがあればぜひお伝えください。
では、第9話で。


それではレス返し

龍牙様>草薙の格好については別に動揺はないと思っています。現に何度か刹那の刀の一閃で服が吹っ飛ばされた連中もいましたからね。御魂に関しては、闇夜ということと説明不足でしたが光源のほとんどない場所での戦いでしたので、ばれることはないと思いながら書いていました。…でも、自発で光ることってありましたっけ? どうもその辺の記憶が曖昧で。もしそうなら、ごめんなさいですね(汗)。それと草薙の服装ですが、時系列的にはこのお話はOVA版の『BLUE SEED2』の後の話ですので、ジーンズにTシャツにGジャンといった出で立ちです。

レフ・アルイ様>確かに刹那と龍宮の襲撃は敵対行為と言っていいでしょうね。でも、現段階の刹那ならこれぐらいはやってもいいんじゃないかと。龍宮の銃弾に関しては、術を組み込んである特製のものだと思ってください。

ATK51様>刹那の成長に草薙が絡むのはほぼ確定事項ですが、今回はその第一歩ということになるといいなと思っています。ゆっくりと心を開いていく様子を楽しんでいただけたらと思います。

スケベビッチ様>敵対宣言…には違いないかもしれませんが、自分としてはこれは名刺代わりの挨拶という位置づけです。歓迎会のときにできなかった挨拶を、今ここでといったところでしょうか。…ま、確かに派手になった感は否めませんけどね。

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