2月2日 SIDE 遠坂凛
私は、教会の傍らに佇みながらセイバーの方に歩いていく衛宮君の表情を見て顔を顰めた。
『あのエセ神父、何か言ったわね。』
その時、一陣の冷たい風が吹いてきた。すぐ側で気配を感じてそちらを向くとアーチャーが実体化をしていた。私はそのことを確認して、あらためて衛宮君を見る。
衛宮君は、セイバーと握手を交わしていた。
そして改めてという事なのだろう。セイバーが真剣な顔をして誓約を行い、衛宮君も真面目な顔でそれを受け入れている。
むっ……
なんで、工房すら持たない、半人前のへっぽこ魔術師が、セイバーを召喚してるのよ!
「―――ふぅん。その分じゃ放っておいてもよさそうね、貴方たち」
改めて沸いてきた怒りに八つ当たり気味な口調で衛宮君に声をかける。
「――――っ!」
私の声を聞いて、衛宮君は慌ててセイバーから手を離した。
「仲いいじゃない。さっきまでは話もしなかったのに、大した変わり様ね。なに、セイバーの事は完全に信頼したってワケ?」
我ながら、ちょっと嫌味が入っていると思う。
「え……いや、そういうワケじゃないけど……いや、そういう事になるのか。
まだセイバーの事は何も知らないけど、これから一緒にやってくんだから」
へー、衛宮くんにも、マスターの自覚ってものが出来たみたいね。
「そ。ならせいぜい気を張りなさい。貴方たちがそうなった以上、わたしたちも容赦しないから」
ならば、これが決別の言葉。
「?」
衛宮君は私の言った言葉の意味が解らないといわんばかりに首を傾げる。
「……あのね。わたしたち、敵同士だって理解してる?
ここまで連れて来てあげたのは、貴方がまだ敵にもなっていなかったからよ。
けどこれで衛宮君もマスターの一人でしょ? なら、やるべき事は一つしかないと思うけど」
前言撤回、衛宮くんには、マスターの自覚ってものが全然出来てない。
「あ――――む?
……なんでさ。俺、遠坂と喧嘩するつもりはないぞ」
あのね。それでどうやって聖杯戦争を終わらせるつもりよ。
「……はあ。やっぱりそうきたか。まいったな、これじゃ連れてきた意味がないじゃない」
いったいどうやったら、衛宮くんにマスターの自覚を持たせられるのかしら?
「凛」
アーチャーが私に声をかけてくる。
むっ、全くコイツは!
「何。私がいいって言うまで口出しはしない約束でしょ、アーチャー」
余計な口を挟まないでよ。
「それは承知しているが、このままでは埒があくまい。相手の覚悟など確かめるまでもない。倒し易い相手がいるのなら、遠慮なく叩くべきだ」
気にくわないけど、アーチャーの言っていることは正論だ。
「む……そんなコト、言われなくても判ってるけど」
判ってるけど、けど……。
「判っているのなら行動に移せ。それとも何か。君はまたその男に情けをかけるのか。
……ふむ。まさかとは思うが、そういう事情ではあるまいな?」
なによ、それ。私が衛宮くんに惚れてるとでも言うつもり!!
「そ、そんなワケないでしょう!
……ただその、コイツには借りがあるじゃない。それを返さないかぎり、気持ちよく戦えないだけよ」
あんたが、やられるのを令呪を使ってまで止めてくれたのよ。
「……ふぅ、また難儀な。では私は消えるぞ。では、借りとやらを返したのなら呼んでくれ」
アーチャーは、言いたい事を言うと姿を消す。
あんたね、その嫌味な口調どうにかしなさい。そのせいで令呪を一つ使う事になったんだから。
「なあ遠坂。借りって、もしかしてさっきの事か?」
衛宮くん、それって態々確認するような事。
「そうよ。カタチはどうあれ、衛宮くんは令呪を使ってセイバーを止めたでしょ。だから、少しは遠慮してあげなくちゃバランスが悪いってコト。
さあ、何時までもこんな所にいてもしょうがないし、町に戻るわよ」
私は衛宮くんたちにそう告げると二人を待つことなく、坂を降っていく。
衛宮くんはセイバーと一緒に私の後に続きながら「バランスって妙なコトに拘るんだな。」なんてことを呟いてる。
私もこれが心の贅肉だって理解しているわ。けど、わたしは借りっぱなしって嫌いなのよ。
私たちは、お互い一言も喋る事無く教会の坂を降っていく。
私は、後ろを歩く衛宮くんの視線を感じながら、さまざまな事に思いをはせる。
衛宮士郎、彼は私の妹、間桐桜の想い人。桜は朝晩、衛宮君の家に行って食事を共にしている。私の好敵手、若しくは天敵の美綴綾子によると、そこまでされているのに衛宮君は桜の好意に気付いていないらしい。
今日、学校でアーチャーとランサーの戦闘を目撃した衛宮君がランサーに口封じに心臓を一突きにされた。あの酷い傷をよく私は直せたものだと思う。彼の傷を直す為に、聖杯戦争の切り札になったであろう宝石を使った。宝石はその場に置いて来たけどアーチャーが拾ってきてくれた。あれからまだ数時間しか経っていない。
衛宮君の記憶を消すの忘れていた事に気付いて、衛宮君の家に向かった。そして衛宮君の家に辿り着いた時に起きたサーヴァント召喚、そして塀を跳び越えて斬り掛ってきた、その斬り掛かってくる姿さえ美しいとしか言いようのないサーヴァント“セイバー”。
そして、門から飛び出し、必死の表情で3回しか使えない令呪を行使して、セイバーを制止してくれた……
工房を持っていない事はおろか、パスのつなぎ方すら知らない、そしてサーヴァントを女の子扱いする半人前のへっぽこ魔術師。
10年前の大火事が前回の聖杯戦争により起きた事を聞いた時の倒れないのが不思議なくらいの蒼白な顔、私の心配に下手な冗談で誤魔化しはしたけれど、それでも顔色はなかなか戻らなかった。彼とあの大火事は、どんな因縁があるのだろう。
「―――マスターとして戦う。10年前の火事の原因が聖杯戦争だっていうんなら、俺は、あんな出来事を二度も起させる訳にはいかない。」
他人に災禍を及ばせない。衛宮くんは、それだけの為に聖杯戦争という殺し合いに参加すると言う。それは、人間としても、魔術師としても、あまりに歪な参加理由だと言わざるを得ない。
私が教会を出てから、綺礼に何かを言われたのだろう。セイバーの所に行くまでの、呆けた様でありながら、どこか怒りを含んだ衛宮君の顔。
いったい何と言われたらあのような表情になるのだろう。
ふと、私が衛宮士郎を初めて知った日のことが思い起こした。
日が傾き、赤く染まったグランドで、どう見ても飛べない高さのバーに向かって、走り高跳びを続ける一人の男子。
私は、大抵の事が出来る。だからこそ、自分の出来ない事はやらない、やろうとはしない。だから、そのあきらめない姿が私にはまぶしく見えた。
ふと気づくと、坂を降りきり、新都と深山町との分かれ道に来ていた。
そうね。何時までも、衛宮くんと一緒にいても仕方ないし。
「遠坂? なんだよ、いきなり立ち止まって。帰るなら橋のほうだろ」
歩くのを止めた私に衛宮くんが声を掛けてくる。
「ううん。悪いけど、ここからは一人で帰って。
衛宮くんにかまけてて忘れてたけど、私だって暇じゃないの。せっかく新都にいるんだから、捜し物の一つでもして帰るわ」
うん、ここで衛宮くんと別れよう。
「――――探し物って、他のマスターか?」
そうよ、彼への借りもこれで十分。
「そう。貴方がどう思っているか知らないけど、私はこの時をずっと待っていた。七人のマスターが揃って、聖杯戦争っていう殺し合いが始まるこの夜をね。
なら、ここで大人しく帰るなんて選択肢は無いでしょう?セイバーを倒せなかった分、他のサーヴァントでも仕留めないと気が済まないわ。だから、ここでお別れよ。義理は果たしたし、これ以上一緒にいると何かと面倒でしょ。きっぱり別れて、明日からは敵同士にならないと」
うん、衛宮君の世話を焼くのもここまで。
「………………
―――ああ。遠坂、いいヤツなんだな」
えっ!何を突然。
「は?なによ突然。おだてたって手は抜かないわよ。」
そう言いながら、衛宮君の顔を覗き込む。衛宮君はそれを十分理解しているのが解る。
「ああ、それは解っている。でも俺はお前と戦いたくない。お前みたいな奴、俺は好きだ。」
何だってコイツはこんな台詞をストレートに言うのか。
「なっ!」
……………!!
「ところで、新都に行くのなら気をつけろよ。聞いた話じゃ最近、新都でのぞき魔が出没してるらしいからな。」
思わず言う言葉に詰まる私に、衛宮君はやっぱり物事を解っていない台詞を言ってくる。
「あ、ありがと。と、とにかく危なくなったら・・・」
教会に逃げ込みなさい。と忠告をしようとした時、額にバンダナを着けた男が飛び込んで来た。
「この世界に来る前から、愛してました。」
がっ!
…
…
どかっん!!
………
……
…
突如現れて、いきなり私の手を握り、ナンパを始めた男は、突然吹っ飛び、衛宮君の前を通って、塀に突っ込んだ。
あっ、アーチャーが実体化している。ってことはナンパ男を吹っ飛ばしたのはコイツか!!
「何やってるのよ、アーチャー。ただのナンパくらいの事で、大怪我負わせてどうするのよ。」
「すまん、凛。突然の事で驚いてな。」
アーチャーの言い訳を聞き流して、私はとりあえず怪我の具合を確認しようと、ナンパ男の方を向く。
「あ〜、間違えた。」
ナンパ男は軽い口調でそんな事を言うと、ムックリ起き上がった。
えっ、怪我一つしていない。
「遠坂凛さんとそのサーヴァント“アーチャー”、それに衛宮士郎君とそのサーヴァント“セイバー”さんだな。」
ナンパ男は立ち上がりながらそんなことを言った。
「貴方、サーヴァントですね。クラスはアサシン。」
セイバーがナンパ男に確認を取りながら、衛宮君の前に回り込み見えない剣を構える。
アーチャーが驚いた顔をして私の前に移動してくる。そして、どこからともなく双剣を取り出す。
私は右手に宝石を握り締め、左腕の魔術刻印を輝かす。
衛宮君が驚いた顔をした後、あわてて顔を引き締める。
「ああ、その通りだ。ところで、遠坂さんと衛宮君に、マスターから伝言があるんだが、それと君達四人に俺からの提案もある。」
アサシンは、構えを取り警戒する私達に対して、武器を取り出す事も構えを取る事も無くそう言った。
「マスターからの伝言ね、一体何かしら。」
そのような態度が取れるという事は、そのマスターからの伝言とやらで、こちらが攻撃が出来なくなると確信しているのだろう。
それはおそらく、人質か何かがあるという事だろう。
私は、声を冷たくしてアサシンに応じながら、覚悟を決める。
仮に相手の要求を呑んだ上でこの状況を打破しても、相手は同じ事を仕掛けてくるだろう。
ならば、たとえ犠牲を出す事になろうとも、この場で相手を完全に叩き潰すという覚悟を。
「『先輩や遠坂先輩と戦いたくありません。』との事だ。俺の提案というのは、俺達共闘しないかいって事なんだが。」
アサシンの台詞は私の覚悟を吹き飛ばし、激しい動揺を呼び起こした。
衛宮君も、動揺しているのが分かる。
私の事を遠坂先輩と呼び、衛宮君の事を先輩と呼ぶ人物を、私は一人しか知らない。
「貴方のマスターは誰、アサシン。」
私の声は鋭かったと思う。
「君達の想像している通りの人物さ、間桐桜、それが俺のマスターだ。」
アサシンの返答は、私の、そしておそらく衛宮君の予想通りだった。
「マトウサクラとはどのような人物です、シロウ。」
「さて、返答は君に任せるが如何するかね。凛」
私達のサーヴァントは、同時にそれぞれ己のマスターに問い掛ける。
「桜は、俺の後輩で、友達の妹で、自分にとっても妹みたいなものだ。」
衛宮君のしどろもどろの返答を聞きながら、私は自分の考えをまとめに掛かる。
「なるほど、ところでアサシン。貴方のマスターは何処に居るのです。」
しかし、衛宮君の返答を聞いたセイバーがアサシンに投げ掛けた疑問に、私の纏めようとした考えが千々乱れる。
この場に桜を連れていないのは、桜がマスターというのが嘘なためか?いや、それならわざわざサーヴァントが2人もいるところに来たりはしないだろう。ならば、アサシンは桜を放置してこんな所を出歩いているのだろうか、聖杯戦争が始まったというのに?いや、桜は間桐邸に居ると考えるのが自然だ。
「ああ、桜ちゃんなら、衛宮邸で君達が帰ってくるのを待ってる。」
何で、そんな所に居るのよ!
「俺の家でって、なんでさ?」
衛宮君が私の抱いた疑問をアサシンに訊ねる。
「それが、桜ちゃんの戦いたくないという決意の証明といった所かね。」
たしかに、戦いたくない決意の証明としては最高の方法だと思う。
でも万が一、他のマスターやサーヴァントに遇ったら如何するつもりなのか。アサシンはその可能性を桜に伝えてないのか?
「アサシンの提案はともかく、今は、衛宮君の家に急ぎましょう。」
アサシンを非難する事よりも、今は一時も早く桜と合流しなければ。
「ああ。」
衛宮君も私の意見に賛成のようだ。
私達は、そろって、深山町へと一歩足を踏み出し…、立ち止まった。
「――――ねえ、お話は終わり。」
視線が、新都への道に引き寄せられる。
視線の先には、一人の少女と一匹の巨人。
理性の感じられない眼はただ破壊衝動だけを窺わせる。
「バーサーカー」
意識する事無く口から漏れた言葉は、もしかすると震えていたかもしれない。
2mを超える巨体。鉛色をした肌。
「こんばんはお兄ちゃん。こうして会うのは二度目だね」
少女は、衛宮くんに向かって、愛らしい声を掛けた。
防具は申し訳程度に腰と両手首をだけを庇っている。
「始めまして、リン。わたしはイリヤ。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」
少女、イリヤは可愛らしくお辞儀をしながら、私にそう自己紹介をする。
手には巨大な岩石で出来た剣を小枝か何かの如く軽々と握っている。
「アインツベルン――――」
無論知っている。聖杯戦争を始めた三家の内の一家、1000年に渡り、第三魔法を追い求め続ける家系。
ただ、立っているだけで全てを破壊しそうな魔力。
「―――驚いた。単純な能力だけならセイバー以上じゃない、アレ」
思わず舌打ちが出る。
「アーチャー、アレは力押しで何とかなる相手じゃない。ここは貴方本来の戦い方に徹するべきよ」
私は、アーチャーに狙撃による攻撃を指示する。
「だが、守りはどうする。凛ではアレの突進は防げまい」
アーチャは私の指示を認識しながら、それを行動に移さない。
「こっちは四人よ。凌ぐだけならなんとでもなるわ」
アーチャーにはこの状況が解ってると思うんだけど。
「しかし、アサシンの事を信用してよいのか?」
確かに、もしアサシンの『桜のサーヴァントである』という言葉が嘘ならば、状況からアインツベルンに関係のあるサーヴァントという事になる。
「うっ」
アーチャーの指摘に思わず、私は言葉に詰まる。
視線がアサシンのほうを向く。
「なら、俺が殿を務めるから、皆は退却するといい。集合場所は衛宮邸でいいかな。」
それに対して、アサシンは一つの作戦を提案する。
疑わしき者が殿を務める。アサシンの作戦は理に適っている、ただ一つを除いて。
「貴方一人で、バーサーカーと渡り合える御積りですか。アサシン」
セイバーがその一つを指摘する。
アサシンは戦闘能力の高いクラスではない。白兵戦に特化したバーサーカーと渡り合えるとは思えない。
「なに、目晦ましを仕掛けて、時間を稼ぐだけさ。」
アサシンの口調は、自分より遥かに強い相手と戦うという絶望や悲壮とは無縁な自信に溢れている。
「何か俺にできることはないか?」
そこに衛宮くんが、真剣な声でアサシンに問いかける。
あのね、衛宮くん貴方ここに残って何か出来る事が在るっていうの
「ならば、俺が戻るまで桜ちゃんの事を頼む。」
それに対してアサシンは苦笑を浮かべて衛宮くんに返答する。
衛宮くんは、悔しげにアサシンの答えに頷く。
「相談は済んだ?なら、始めちゃっていい?」
イリヤが退屈さを滲ませた口調で最終宣告をしてくる。
もはや、別の作戦を考える時間はない。ここはアサシンの作戦に乗るしかない。
「解ったわ。アサシン、お願い」
「すまない。アサシン、頼む」
私たちは、それぞれアサシンの作戦に乗ることを告げる。
「なら、俺が目晦ましを仕掛けたらそこで全力で、退却してくれ。」
アサシンは私たちにそう告げると右手に小さな珠を握り締める。
「――――じゃあ殺すね。やっちゃえ、バーサーカー」
イリヤが愉悦を滲ませた声で開戦を告げる。
バーサーカーは雄叫びをあげながら、その巨体から信じられない速さで突進してくる。
アサシンは、それに対して右手に握った珠をバーサーカーに向かって投げつける。
それば突進してくるバーサーカーに届く事無く、バーサーカーの手前の地面に落ちる。しかし地面に落ちた瞬間、珠は目が眩むほどの光をバーサーカーの方へ放つ。
私は、それを合図に深山町へと走り出す。走り去る時、アサシンの方をチラリと見るとアサシンの右掌には先程投げたとおぼしき珠が幾つも有り、“蛍”という文字を浮べていた。
SIDE イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
「■■■■■■■■■■■■■■―――――」
わたしの開戦の合図と同時に走り出すバーサーカーに向かって、アサシンが小さな珠を投げてくる。
『そんな物でバーサーカーに傷を負わせる事なんて出来ないんだから!』
わたしのバーサーカーは負けない、たとえどんな作戦を立てたって。
アサシンの投げた珠はバーサーカーにとどく事無く、バーサーカーの前に落ちる。その途端、視界が真っ白になる。
『目晦まし!!、でもそんな事してもバーサーカーが傷つくわけじゃないもん』
……それにもう目が見える様になったし。
あたりの状況を確認すると、バーサーカーの傍で、セイバーが驚いた顔をして立ち尽くしている。そして、お兄ちゃん達は、散らばっているけれど一様に驚いた顔をしている。
『ばかばかしい。どんな作戦立てたって、使えない作戦じゃ意味ないじゃない。』
「殺っちゃえ、バーサーカー」
魔術回路を整えながら、わたしはバーサーカーに命令を下す。
「■■■■■■■■■■■■■■―――――」
バーサーカーは周りの物を巻き込みながら剣をなぎ払い、セイバーを上下二つに分ける。
セイバーは、にこりと微笑むとその姿を薄め、消えていく。
『……えっ、サーヴァントを倒した時に来るべきはずの反応が無い。』
私が驚いている間にバーサーカーはお兄ちゃんやリンを切り裂いていく。けれども、二人とも二つに分かれた体でにこりと笑い、姿を消していく。
『え、幻影』
サーヴァントが相手でも同じ、二つに分かれて、笑って、消えて、反応は無し。
バーサーカーはあっという間に、最後の相手に向かう。
「バーサーカー、待ちなさい!」
私の命令にバーサーカーは、アサシンに剣を振りかざした状態で言う事を訊く。
アサシンは相変わらず、驚いた顔をしたまま微動だにしない。
バーサーカー達がいる場所は近くにあった公園の入り口、周りに物が無いから近くに誰もいない事が判る。
『あの短時間で、実体と幻影を入れ替えた?』
物凄く腕が良い東洋系の幻使いのアサシン、そんな英霊いたかしら?
『……ううん、そうじゃない。お兄ちゃん達が立っていた場所は、分かれ道だった。目晦ましを仕掛けた時に、お兄ちゃんの家の方に走れば、ただ幻影を出すだけでいい。』
わたしは、そんな事を考えながら、辺りを見廻す。
すると、最初アサシン達がいた所に何か有る事に気付いた。
『アレはアサシンが最初に投げた珠。』
珠は2つ有り、それぞれ何かが書かれているみたい。二つの珠の周りには壊れた珠の残骸がいくつか転がっている。
壊れた珠の残骸は時間とともに、形を失い。その姿を消していく。
「■■■■■■■■■■■■■■―――――」
突然、バーサーカーが待機という私の命令を振り切って、攻撃の意思を示す。
どっど――ん
しかし、バーサーカーが行動に移る前に轟音とともに爆風が吹き荒れる。それと同時に、砕け散る珠と、突如力を使い果たしたように消え去る珠。
「―――っぅ」
耳の痛みを堪えてバーサーカーの方を見るとバーサーカーの立っている所はクレーターになっていた。
多分、アサシンの幻影が爆発したんだ、バーサーカーを1回殺すほどの勢いで。
まさか、アサシンがここまでやれるなんて。
「やるわね、アサシン。あなたはバーサーカーが倒すんだから他の奴らに殺されたら許さないないんだから!」
わたしは、もう立ち去ったであろうアサシンに、そう宣告をした。
続く
後書き
突っ込まれる前に書きます。
・Bランクで、Aランク以下無効の鎧は貫けません。
・後、申し訳有りません。第1話を、1月30日に変更いたします。
この第2話は、ここのサイトで初めてFate+GSのSSを読んだ時に、受信した電波から産まれた話です。これともう一つ、UBW編が終了したときに受信した電波が混ざって、Fate stay night−Destiny−を思い付きました。
そんなわけで、第1話終了時には、第2話は半分以上完成していました。
第3話からは更新速度が遅くなると思いますが、なにとぞ応援をよろしくお願いいたします。