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「女神新生スクラン一夜(スクラン+メガテン)」

ミアフ (2006-05-12 23:22)
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『第一夜・変わる世界』

「・・・・・・ッ!」
一瞬で烏丸の意識は覚醒した。
どうやら一瞬、気を失っていたらしい。
無表情で周囲を見回す。
『ペルソナ様』を行っていた人間は烏丸以外、呆けたように立ち尽くしている。
(・・・・・・あれは夢?それとも現実?)
自分が体験したおかしな現象。
黄金の蝶の男、フィレモンとの邂逅に烏丸はデジャ・ヴを感じていた。
遠い昔、あれと同じようなことがあったような・・・・・・。
記憶のなにかがそれを思い出すことを拒否している、と烏丸は感じた。
パンッ!
烏丸はおもむろに手を叩いた。
「「「「「えっ?」」」」」
立ち尽くしていた天満達がその拍手で気をつける。
全員、狐につままれたような顔で、互いに頭を捻っている。
「あれは、なんだったのだ?」
花井が呟いた。
「フィレモン?あれが『ペルソナ様』だったのかしら」
愛理の言葉に皆が気づいた。
「花井、お前もあの夢・・・・・・なのか何なのかわからないの見たのか?」
「えぇぇぇ!?ミコちゃんも、仮面のヒトにあったの〜」
「しっかし、なんにもない部屋だったな・・・・・・神様の住む場所にしてはちょっとワビし過ぎないか」
どうやら、『ペルソナ様』をした人間全員がフィレモンと遭遇したようだ。
各々自分勝手なことを喋っている。
「ぬぉぉぉ〜!しまった〜!」
「何?どうしたの花井君?」
花井が何かに気づいたらしい。
とても悔しそうな表情で、がっくりとうなだれた言った。
「僕と八雲君のことを願うのを忘れていた〜〜〜!!!」
「・・・・・・フン!」
ゴスッ!
美琴が無言で花井の頭をどついた。
其の拍子に花井の制服のポケットから一枚のカードがひらりと落ちた。
「ったく、馬鹿だとは思ってたけど、まさかここまで馬鹿だったとは・・・・・・」
ぼやく美琴を無視して烏丸は花井のポケットから落ちたカードを拾い上げた。
古風なイラストが描かれているトランプのようなもの。
(タロットカードかな?描かれているのは悪魔みたいだけど)
不思議な雰囲気を持つ悪魔のイラストに烏丸は興味を持った。
マンガ家として、この絵に何か惹かれるものを感じた。
「・・・・・・IBARAGIDOUJI・・・・・・茨木童子?」
白い布を被った鬼。
精緻に描かれたそれは烏丸の目から見ても超一流のイラストレイターが描いたとわかった。
「・・・・・・花井君、これ」
カードを烏丸は差し出した。
花井は傷む頭を押さえながらそれを受け取って首を捻った。
「僕はこんなものを持っていたのか?」
不思議なカードを花井は無造作にポケットに仕舞いこむ。
「うん?俺のポケットに、なんか入っている?」
今鳥がごそごそとズボンをまさぐった。
花井のカードと同種らしきものを取り出した。
描かれているのはマフラーを首に巻いた、甲冑姿の少年。
「セタンタ?なんじゃこりゃ?」
今鳥も心当たりがなさそうにカードをひらひら弄っている。
「あ〜あたしにもあった!」
「私のポケットにも入っているわね」
「ああ、アタシにもあるみたいだ・・・・・・」
女性陣三人が一斉にカードを取り出す。
天満のカードには白い服と白いリボンの愛らしい少女が描かれている。
刻まれた名は『ナジャ』
愛理のカードには翼を持つ、妖艶で美しい少女が描かれている。
刻まれた名は『リリム』
美琴のカードには犬、馬、ライオンの三つ首の女性が描かれている。
刻まれた名は『ヘカテ』
「う〜ん、もしかして、フィレモンさんがくれたのかなぁ?」
天満がカードを持って烏丸に近づく。
「ねえ?烏丸君はどんなカードもらったの?」
言われた烏丸は反射的に学ランのポケットに手を突っ込んだ。
ポケットの中に、一枚のカードが入っていた。
ゆっくりと烏丸はそのカードを取り出した。
描かれているのは青銅の剣を掲げ、首に勾玉のかざりをつけた戦士。
古来の日本風衣装を身体に纏った美青年だ。
烏丸は書かれた名を読上げた。
「・・・・・・タケミカズチ?」
握っていると不思議と気持ちが昂ぶるのを烏丸は感じた。
(なんだ・・・・・・この押さえきれない熱い何かは?)
「どうしたの烏丸君?」
「え」
「珍しいね。烏丸君、なんか播磨君みたいに不敵な表情してたよ」
烏丸はタケミカズチのカードを見る。
その武神は不敵な笑いで烏丸を見返していた。

PULLLLLLLLLU!!!

「あ、私の携帯が鳴ってる!」
鞄に入っている天満の携帯が激しくメロディを奏で出す。
天満は慌てて携帯を取り出して、
「はい、塚本です」
『ん・・・・・・天満ちゃ・・・・・・じゃなくて、塚本か?』
その電話は播磨からだった。

気を失った八雲を抱えて播磨は走った。
血の気の失せた八雲の顔に不吉なものを感じたからだ。
播磨という男はある意味動物に近い習性がある。
研ぎ澄まされた勘で物事を判断し、行動する。
「・・・・・・確か、この辺に新しくできた病院があったはず」
矢神銀座の外れに出来た『矢神サイバースクリニック』
サイバース通信が出資したかなり大きな病院である。
救急病院に指定されており、最新鋭の設備の揃った病院だった。
播磨はドアを潜って病院に入った。
「あれ・・・・・・?」
いつもなら、診察を待つ人で混雑しているはずの病院である。
「もしかして、休館日か?ついてねぇ!」
待ちあう人どころか、受付にも誰もいない。
基本的に救急病院だから、休館日でも誰かがいるはずだが、と播磨は辺りを見回す。
薄暗い病院の廊下、音無い白い壁、西日が差し込んで黒光りするソファ。
困った播磨は八雲をソファに優しく寝かせた。
「・・・・・・こういうとき、怪我とかならともかく不良の俺じゃ医療知識なんてないからさっぱり駄目だ!どうしよう!?」
その時、あることを思いついた。
ポケットから携帯を取り出し、
「マイスイート天満ちゃん!頼むから出てくれよ」
八雲の姉である天満を呼ぼうと思いついた。
天満が来たところで何の助けにはなら無い。
だが、天満を通じて誰かしらこういうことに強い人間を連れてきてもらうのだ。
一縷の望みを託してボタンを押す播磨。
数秒呼び出し音が流れる。
「はい、塚本です」
ほっと播磨は息を吐いた。
天満が出てくれたことを神に感謝する。
そしてゆっくりと事情を話し出した。

「えぇぇぇ〜!八雲が倒れた〜!!」
『ああ、俺が通りがかって、今『矢神サイバースクリニック』まで連れて来たんだが・・・・・・
なんか休みみたいで誰もいないんでな。
俺じゃどうしようもない・・・・・・あんま妹さんを動かすのも悪いと思ってソファに寝かせてるところなんだ。
塚本、妹さんを運ぶにしろなんにしろ、俺一人の手に余る。
何人か連れて来てくれないか?」
播磨の必死そうな声に天満に届く。
天満も妹の危機に焦燥感を抱いた。
「わかったよ播磨君!今、八雲を助けにいくから、それまで待ってて!」
「おう。『矢神サイバースクリニック』にいるからな!急いでくれよ」
携帯の通話がそこで切れた。
天満は烏丸や花井、愛理に美琴、ついでに今鳥にも頼んだ。
「お願い皆!私に力を貸して!」

ソファに寝かせれている八雲を見守る播磨。
「う、ううん・・・・・・」
八雲がうなされながら目を醒ました。
「!大丈夫なのか妹さん!?」
「ここは・・・・・・?」
イマイチ焦点の合わない瞳で播磨を見つめる。
播磨は安堵の表情を浮かべて説明をする。
「気が付いて良かったぜ妹さん。
倒れた妹さんを俺が病院まで運んできたんだ・・・・・・生憎、休みだったらしくて誰もいないがな」
「あ、ありがとうございます。播磨さん」
「どうやら顔色も良くなってきたみたいだな。塚本に連絡を取ったから、迎えがくるまでじっとしてな」
「わかりました・・・・・・」
播磨は立ち上がった。
サングラスの奥の瞳があるものを見つけた。
「病院は休みでも自販機は動いてるな・・・・・・ちょっと待ってな妹さん」
播磨は奥の階段付近に設置されたジュースの自販機まで駆け出した。
あまりお札の入ってない財布から百円玉を取り出した。
「・・・・・・こういう時はミネラルウォーターとかスポーツドリンクがいいんだよな」
二枚百円玉を投入し、自販機のボタンを押す。
ゴトン。
ゴトン。
播磨が買ったのはイワクラの水とマッスルドリンコ。
それを抱えて八雲が座っていソファまで戻る。
播磨はイワクラの水を八雲に手渡した。
「まあ、これでも飲んで塚本を待とうや」
自分はマッスルドリンコを空けて、一気に煽る。
炭酸が喉を駆け抜けていく。
「かーッ!うめえ」
八雲はもらったイワクラの水を空け、少し飲む。
冷たい。
水分を取ったからか、八雲の顔色が少し良くなったようだ。
播磨はそれを見て安心した。
(どうやら、天満ちゃんを呼ぶ必要はなかったかもしれねえな)
しかし、念のは念を入れたほうがいいだろう。
そう播磨は思い。
「・・・・・・うん!?」
「どうしたんですか播磨さん」
一瞬だが、白い何かが階段を上がっていったように見えた。
播磨はそれを不審に思った。
八雲に播磨は一言言った。
「・・・・・・わりぃな妹さん。ちっと確かめたいことができた。少し待っててくれ」
やたらと播磨の勘が騒ぎ出す。
階段の方へ播磨は向かった。
またも白い何かが上に上がっていくのがちらりと見えた。
「・・・・・・確かめてみるか?」
播磨は謎の白い物体を追いかけだした。

音もなく白い影は病院を駆け抜ける。
無音の白い廊下は播磨に不気味な印象を与えていた。
響くのは己の足音だけ。
無粋な音が静寂な世界の満ちている。
白い影はどうやら服か何からしい。
まるで播磨を誘うように角の向こうから。
階段の上から。
扉の向こうから。
白い影がちらちらと目に付く。
(・・・・・・全速で走ってんのに追いつけねぇだと?)
100メートルを11秒切って走れる播磨の脚力。
それを持ってしても白い影には追いつけない。
白い影は一定のペースを保ったまま、上へ上へと向かっていく。
播磨は階段を駆け上がりながら、ふと、自分が追いかけている存在は翼でも持ってるのではないかと思った。
(へっ・・・・・・馬鹿らしい想像だな)
だが、そうと思える程白い影は早い。
そうしているうちに、播磨は屋上への入り口までたどり着いた。
あるいは導かれたのかもしれない。
ここに来るまで、いくつも扉があったがどれにも鍵がかかっていなかった。
「・・・・・・はぁ、はぁ・・・・・・ホントに羽根でもついてんのかよ!」
息を切らした播磨は屋上への扉を乱雑に開いた。

「って誰もいねー?どうなってんだ?」
播磨は辺りを見回しながら呟く。
屋上にはドラム缶みたいな筒が一個置いてあるだけだった。
「まさかあの中に隠れているとか?まさかな?」
他に隠れるような場所はない。
謎の筒に播磨は近づく。
その筒は表面に凡字のようなものがびっしりと刻まれていた。
何処となく神秘的で古めかしい印象を持っている。
播磨は筒を覗き込んだ。
「・・・・・・やっぱりいないな」
筒は空洞。
くすくすくす・・・・・・
播磨の後ろから笑い声がする。
どことなく笑いを抑えたような感じの声。
「鬼ごっこは終わりだぜ」
播磨はばっと後ろを振り返った。
『ふふふ・・・・・・なかなか楽しい鬼ごっこだったわ』
入り口の屋根に少女が一人、ちょこんと座っていた。
白いワンピースに腰まで届く黒い髪。
7、8歳くらいの外見だったが、播磨の勘は警鐘を鳴らす。
「嬢ちゃん。お前は何なんだ?」
人より、一歩ばかりズレた何かを持った播磨は気づく。
目の前の少女が見た目どおりの存在ではないことに。
少女はふわりと長い髪を揺らして、空中に浮かび上がった。
ゆっくりと、播磨へ少女は言った。
『思ったとおり・・・・・・貴方は面白そう』
拳を固め、播磨は身構えた。
目の前の存在は人外の何か。
『そう警戒しないで・・・・・・私はただ、教えたかったの』
警戒する播磨に少女は人形みたいな笑みを浮かべた。
「教えたい?何をだ」
『もうすぐ、この町が大変なことになるってこと』
少女は浮かびながら、筒へと近づいていく。
『この『アマラの転輪鼓』がこの町を創り変える・・・・・・六つの転輪鼓が『創世』のために『受胎』を行う・・・・・・不完全な、それでもこの土地は霊的な力を持っているから十分な新世界が生まれる』
突如告げられたわけの解らない言葉に播磨は戸惑った。
「・・・・・・わりい。もっと解り易く言ってくれ。俺の頭じゃ理解できん」
首を振った播磨。
少女はやらやれというようなジェスチャーで説明をする。
『そうね。具体的にはこの町は無数の異界と繋がるの・・・・・・解り易く言うと魔界とか』
「馬鹿馬鹿しいぜ・・・・・・って、嬢ちゃんもまっとうなもんじゃないな。
魔界と繋がるとなんかあんのか?」
『悪魔がこっちにやってくるの』
「悪魔ねぇ・・・・・・そいつは大変だな」
播磨は自分の想像力で、悪魔を思い描いた。
おどろおどろしい化け物が矢神町を闊歩する。
まさしく、この世の終わりだ。
「で、俺に教えてどうするつもりだ?それを止めろってか?」
『さあ?ただ、貴方が八雲を連れてるのを見たから教えてあげただけ』
少女の姿がゆっくりと消え始める。
『それに、もう遅いみたいね・・・・・・転輪鼓が動き出したわ』
「なんだと!?」
見れば『アマラの転輪鼓』が発光し、激しく回転し始める。
『八雲に伝えといて・・・・・・私は見てる。八雲が答えを出すまで・・・・・・それと』
少女は完全に消えた。
播磨の耳に最後の言葉が届く。
『貴方の名前を教えてくれない?』
播磨は叫んだ。
「播磨拳児だッ!覚えとけ!」
光が周囲を覆いながら、播磨の意識は途切れていった。

「待って八雲。今お姉ちゃんがいくからね」
『矢神サイバースクリニック』に向かっていた天満。
後ろには烏丸、花井、愛理、美琴が続いている。
ちなみに今鳥は学校に残っている。
八雲とは特に面識がないから辞退したからだ。
一番はじめに気が付いたのは烏丸だった。
町を漂っていた空気の質が変わった。
「・・・・・・?」
世界に違和感を感じる烏丸。
何かが浸食するような、浸透するような。
そして、閃光が烏丸達を、世界を包んだ。
『受胎』が始まった。

あとがき

プロローグその2が終わりました。
播磨と幽霊の少女の遭遇です。
播磨には声優つながりである能力を得てもらおうと考えています。
この物語は烏丸と播磨、そしてもう一人の少年を中心に回っています。
メガテンなら、あれは必須ですから。
最後の一人は悪魔召喚師。
葛の葉ライドウみたいな感じにする予定です。

レス返し


ななしさん

これはフィレモンと対になるアレと烏丸が遭遇したことがあるからです。
そのとき、アレは烏丸の名前を知っていました。
ペルソナ2のネタになりますし、アレは登場する予定です。


ナナフシさん

ありがとうございます。
メガテンはIF、アバタール・チューナー、真・女神掘▲撻襯愁複院■欧入る予定。
一部は設定と悪魔だけですが。

ななふしぎさん

元々メガテンのSS自体が少ないですから。
実はこのネタはSHとスクランから思いつきました。
だから播磨が人修羅なんです。

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